長唄唄方の三代目 杵屋佐喜さんが、YouTube内に「杵屋佐喜チャンネル」を開設し、長唄の新曲『カレーライスの唄』のMVを公開しました。現在、新型コロナウイルスの影響により先の見えない不安が続いている中、親子で共に過ごす時間が増えたというご家庭も多いかと思います。そこで杵屋佐喜さんは、自宅で手軽に作って食べられる“カレーライス”をテーマに、自ら作詞作曲。さらに、佐野真隆さんによる可愛らしいアニメーションによって、親子で楽しめるMVが完成しました。

みんな大好きカレーライス

カレーを作る場面が少しだけ流れたあと、歌舞伎座の舞台が表れました。

今日のお客さんは子どもたちでしょうか。なんだか学校の休み時間のような声が聞こえてきます。そしていよいよ、三味線の音色が響き渡り「カレーライスの唄」が幕を開けました。

すると、なぜか中央から登場したのは、小学生くらいの小さな女の子。うやうやしくお辞儀をすると、カレーの製法について紹介をはじめます。女の子がカレーを作っている間、動物たちもお手伝いをしながら見守っています。

そして、あっというまに「絶品カレーの できあがり~♪」。この瞬間の喜びは、誰もが共感するところですよね。でも、このMVがさらに面白くなるのは、ここから。女の子がカレーを一口食べようとすると…

カレーが誘う たのしい世界

なんと、カレーに匂いをかぎつけた龍がやってきて、その一口を食べてしまいました。女の子たちはその龍の背中に乗って、古き良き日本画の世界へと入り込みます。

尾形光琳が描いた『紅白梅図屏風』と思わしき景色の中を、『鳥獣戯画』のウサギやカエルが無邪気に歩く不思議な世界。女の子は彼らに次々とカレーライスを振る舞っていきます。続いて、大雨を降らす『風神雷神』にもカレーライスを振る舞うと、怖い顔が満面の笑みに変わり、赤い太陽が顔を出しました。

そんな空想の世界から、現実の世界へと戻ってきた女の子。また新たなアイデアを思いつくと、玉ねぎを切りはじめます。涙がポロポロ出てきて水中メガネをかけると、今度は海の中へ…。「忘れちゃ~いけな~い シーフード♪」

その後も、野菜の様々な切り方を紹介したり、お米を炊くのを忘れて泣いてしまったりと、楽しい歌詞が続きます。特に、お米を炊き忘れたあと、これまでの登場人物たちが協力して田植えをしたり、稲を刈って収穫したりするシーンは、私たちの想像力を大いに刺激してくれます。

そして最後は、この舞台を観覧してくれた人たちへもカレーライスが振る舞われました。みんなとびっきりの笑顔で喜んでいるのを見ると、こちらも嬉しくなりますね。

このMVを公開した杵屋佐喜さんは「唄、三味線、囃子による長唄の魅力をぎゅっと詰め込み、思わずカレーが食べたくなるような、そんな思いを込めて作りました。舞台に立つ事ができなくなった今、何より演奏でお客さまに喜んでいただける事こそ、私たち音楽家の生きる価値です。私たちの愛する長唄をもっと面白く!分かりやすく!親しみやすく!これからも、邦楽の魅力をどんどん発信していきたいと思っておりますので、是非ご覧下さい」と、コメントしています。

新型コロナウイルスの影響により、様々な活動が制限される企業や人が多い中、MVという新たなカタチで発信をはじめたこの事例。親しみやすいテーマやアニメーションによって“長唄”の魅力が広く伝わり、新たなファン層が生まれていく予感がします。

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