【東方SS】ミスティア「お店を開いてみたいです!」ダンッ 【第五話】
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【東方SS】ミスティア「お店を開いてみたいです!」ダンッ 【第五話】

2017-09-11 00:03
    なんだかんだもう五話目。終わりはまだ自分の中でも見えてませんが、ちゃんと完結させたいなぁ。
    いつもどおり、独自設定など二次設定の嵐ですのでよろしくです。

    *四話目から一年経ってしまったorz 月1ペースくらいで載せたい所ですが、なかなか時間が取れなくて……忘れられてないといいけど(T T)



    簡易キャラ紹介(このお話の開始前時点)

    ミスティア・ローレライ
    何とかお店もうまく回りだして安心している様子。ただ、開店してからわかる問題にいよいよ頭を悩まされそうで、この辺りは不安に思っているみたいだ。色んな人や妖怪の協力を経て、自分のやりたいことが実現できていることにとても感謝している。

    東風谷早苗
    先日はお菓子の提案をするなど、非常にアクティブな様子。そしてそれが衰えないというのが彼女の凄いところ。ただ、後先考えているのかいないのか時折わからなくなるのが玉に瑕。元々しっかりした子なのだが、困った事に、一定のテンションを超えるとたがが外れてしまうようだ。

    アリス・マーガトロイド
    早苗のストッパー役程度だったはずが、もはやみんなの保護者さん。自分の担当する仕事が落ち着いてきた事もあり、早苗の提案するお菓子作りを更に担当することとなった。材料の調達で紅魔に世話になることで、人とのつながりを更に実感している。

    八雲藍
    半ば傍観者でいるつもりが、もう立派に一員。数字のことも勿論だが、今は来週に控えているという妖狐デーを非常に心配している。いったい自分は何をやらなくてはならないのか、今から不安で仕方がない強力な妖狐妖怪。

    十六夜咲夜
    この店での仕事もだいぶなれたようで、今では紅魔館との行き来も全く苦にしていない様子。それどころか、レミリアがこのお店を気に入った関係で、しばらくはこちらに手を貸すよう言われているほどらしい。パチュリーの協力もあり、益々このお店への愛着も湧いてきている。

    蓬莱山輝夜
    一時のおサボり輝夜様はどこへやら。意欲的に働く姿を影から見て永琳は安堵の息を吐いて(涙を流して)いるとかいないとか。本当はやれば出来る子なんです。旅館での生活も結構気に入っているようだが、暫く永遠亭に帰っていないのでやや寂しくはあるようだ。

    古明地こいし
    自分から色々と関わっていくことで、今まで以上に楽しい人生を送ることができていると実感している。頃合いを見て姉を一日だけでも一緒に働かせてみようか、なんてたくらみも実はあるようだ。

    八雲紫
    このところは身を潜めている(あまり藍が戻らないので拗ねている)が、問題が起きていないことについては誰よりもほっとしている。やはり心配はあったようで開店当初は遠巻きに眺めたりもしていたらしいが、今では見に来る事も少ない。ただ、このままフェードアウトするような性質には思えないが……

    射命丸文
    ここ数日はおかみすちーに姿を見せなかったが、それはある取材をずっと行っていたことが理由だった。今はそれの特集を組んでいるようで、完成した時には第一におかみすちーを訪れるつもりらしい。いったい彼女は何を特集していたのだろうか……?

    河城にとり
    たびたび仲間を引き連れてお店に飲みにやってくるが、このところはあまり姿を見せていなかった。どうやら川の方で何か問題があったらしく、その関係で出てこれないのだとか。時折やってきては愚痴をこぼす彼女の表情はかなり疲れていた。

    洩矢諏訪子
    温泉の方は良くも悪くもそうそう忙しくなる事はないようで、たびたび華扇に番台を預けてはどこかへ視察に行っている。何をしているのかは神奈子も知らないようで、また何か良からぬことでも企んでいるのかもしれない。

    茨木華扇
    諏訪子のことが気になりつつも、きちんと温泉の管理を行っている辺りマメである。里の方で起きている事件についても気になるらしく、営業時間外は里や霊夢のところへ行って話しを聞いてきているようだ。

    パチュリー・ノーレッジ
    暫くお客としておかみすちーに姿を見せていたが、このたび食材提供者としてお店に関わることになった。条件から何からとても優遇していたが、それもこれもみんなレミリアの笑顔のためである。


    ちなみに、この店や旅館は現在人間の目には見えないようになってます。守矢神社に参拝に来る人もいますし通りがかった人が驚くので、今のところは人間相手にだけステルスです。頑張って誰かがそうしてくれてるんです。ご都合展開のそれだと思ってください。









    第五話








    早苗「この、チョコの包装紙が店の表に落ちていたんです」

    ミスティア「これは……うーん」

    藍「今のところ状況に関してはなんとも言えないが、物自体は明らかに昨日仕入れたものだな」

    アリス「材料を運んで来た時に落としたのかも」

    輝夜「でも中身がないんでしょ? なら、誰か食べたって事よね」

    こいし「ずるい! 私も食べたい!」

    アリス「そういう問題じゃないでしょ」ビシ

    こいし「あいた!」

    咲夜「けど、衛生的な意味でもだけど、この状況、あんまりよろしくないわね」

    藍「嫌な言い方をすれば、本来であればこの分はロス、粗利からマイナスだ。たった一つの事だから目くじら立てる程の話でもないのだが、そういう問題ではないからな」

    アリス「ものすごい好条件で仕入れてるから助かってるけど、おおよそ他のものなら損得計算しないといけないからね……」

    早苗「私も嫌な事を言いますけど、誰かが食べたわけじゃないんですよね?」

    ミスティア「と思うけど……昨日は割かし雨降ってたし、外に出たら濡れちゃうでしょ。誰も濡れてなんかいなかったし」

    咲夜「袋を投げ捨てれば身体は濡れないとは思うけど、そんな事してたら誰かが目撃してるわよね」

    輝夜「それ以前に、昨日は誰も表には近づいてないわよ。それはこいしも早苗も見てるでしょ?」

    こいし「うん、誰も出てないし近づいてない。ていうか、私なら食べて包みはゴミ箱に捨てるしわざわざ外になんて投げないよ」

    早苗「そうなんですよねぇ。中のゴミ箱に捨てればバレることはないわけで……という事は、ですよ。考えられるのは……」

    アリス「私たち以外の誰かがこれを食べた……」

    一同「…………」

    藍「この際だからはっきりさせておこう。みな、ここ最近不思議に思う事はなかったか?」

    ミスティア「実は、ある」

    咲夜「私もあるわ」

    藍「私もだ」

    早苗「え、みんなあるんですか?」

    アリス「そのようね……私もある」

    こいし「え、私ないんだけど」

    輝夜「私もない」

    早苗「私も特には……ということは、調理場含む裏方組みが何か不思議に思ってるってことですね。もしかして、同じ話だったり?」

    藍「それはわからない。私の場合は勘違いである可能性も否定できないからな……」

    アリス「藍は何を思ったの?」

    藍「実は今朝、咲夜達が厨房で話をした後、誰かの気配が店の中でしたんだ」

    咲夜「今朝っていうと早朝ね」

    ミスティア「うん、私と咲夜さんで話してたね。その後ってこと?」

    藍「あぁ。まぁ二人が話してるのは見たし、他の誰かも店にいるのだと思って確認はしなかったのだが……」

    アリス「気配で判別とかできなかったの?」

    藍「そこまではしなかった。私たちの誰かだと思い込んでいたからな……すまない」

    早苗「いやいや藍さんが謝ることじゃないですよ。でも、ということは、咲夜さんとミスティアさん以外の誰かがお店にいたってことですよね」

    藍「二人が出た後で、な」

    咲夜「なるほど……私はそんな気配感じなかったし、私たちが出た直後くらいに入ったのかしら」

    こいし「怪しいね……その誰かがチョコを盗んで食べたってこと?」

    藍「それはわからない。が、あの後はほぼ旅館で話をしていて店には近づいていないし、店に誰か潜んでいたとしても気づかなかっただろうな」

    輝夜「考えてみれば物騒な話よね。空き巣みたいなもんでしょ?」

    藍「おそらくは、だが」

    アリス「チョコを運び込んだのが夕方。そこから閉店までのところでその誰かがチョコを盗んで食べ、袋を捨てたと」

    早苗「それしか考えられませんよね……」

    藍「その気配の主は近場に潜んでいて、隙を見てチョコレートを盗んだ……のかもしれない」

    こいし「なんか怖いね……」

    輝夜「他の人の話は?」

    咲夜「私は、一部食材についてなんだけど……このところ微妙に材料が足りなかったりする事があるのよね」

    ミスティア「あ、やっぱり? 私も実はそれ思ってたんだ」

    こいし「あれれ、こっちも盗まれた?」

    早苗「なんだか雲行きが怪しくなってきましたね……」

    アリス「最後に私だけど、実は里で妙な話を聞いたのよね」

    ミスティア「妙な話?」

    アリス「ええ。何でも、この頃農作物なんかの食料品がよく紛失するらしいのよ」

    こいし「うちらと同じだ!」

    アリス「今日、霊夢が里に出てたって魔理沙が言ってたらしいわね? たぶん、その件で行ったんじゃないかって思うんだけど」

    早苗「でも、もし霊夢さんが出て行ったって事は、妖怪の可能性があるって事ですよね?」

    咲夜「まぁこの店のものを盗んでいるのだとしたら、人間じゃありえないわよね」

    早苗「それもそうですね」

    藍「何となく見えてはきたな。それと決まったわけではないが、可能性は充分ありそうだ」

    アリス「今一度、見回りを強化しましょう。戸締りと在庫管理を一層厳しくしないと」

    輝夜「みんなで戸締りして、みんなで倉庫見に行かない?」

    ミスティア「それがいいね。もしかして犯人がいたりするかも……」

    アリス「その可能性もあるわ。特に地下倉庫なんて資材取りに行くときくらいしか行かないし」

    藍「用心して向かおう。まぁ、これだけの妖怪を相手にすればひとたまりもないだろうが」

    早苗「強力な妖怪に月人に巫女までいますからね~」

    アリス「遭遇したら相手が可哀想だわこりゃ」






    -地下倉庫-


    こいし「何気にここ入るの初めてだね。楽しみ~」

    アリス「楽しんでる場合じゃないでしょ」

    早苗「戸締りはしましたし、もしここから逃げられても外へ出るのに手間取るでしょうからそこで捕まえられますね」

    藍「それでも用心しておけ。少しでも怪我させられたら馬鹿みたいだ」

    咲夜「いざとなれば時を止めて捕まえるわ」

    輝夜「似たようなことして捕まえるわ」

    ミスティア「はは、心強すぎて逆に色々心配になってくる。自分が……」

    アリス「こいつらを基準にしちゃだめ」ナデナデ

    早苗「さて、ドア開けますよ」

    ギィイ

    アリス「……普段割と通ってる所なのになんだか不気味ね」

    輝夜「そういうもんよ。怖い話の後は自分の家でも変な感じするでしょ?」

    早苗「それわかります」

    ミスティア「私も」

    こいし「逆に初めて来るからそういうのあんまり感じないかな」

    アリス「あんたは意外とそういうとこらへん図太いわね」

    藍「話してないで、辺りを見回るぞ」

    輝夜「へぇ、ここが資材庫ね。本当に資材しか置いてないわね」

    早苗「何に使っても良いように作ってますけど、今のところは資材くらいしかおくものがないですね。常温保存できる日持ちするものなら保管もできますが」

    こいし「部屋はここと、隣だけか。中にはドアないんだね」

    早苗「つけようか迷ったんですが、あんまり視界が悪いのも何かと思って」

    アリス「まぁ実際それで正解ね。今回みたいな事態はそうないでしょうけど、こういう時に死角が多くあると困るわ」

    咲夜「それはそうね……にしても、何の気配もないわね」

    ミスティア「ここにはいない、のかな?」

    輝夜「まぁそもそもここに隠れ住んでるとかじゃないと思うし、もう移動したかもしれないわね」

    藍「だが、被害は今日だけではないかもしれん。また現れる可能性もあるから、今後は今まで以上に気をつけるべきだな」

    アリス「でも気がかりだし、明日は朝のうちに里に出て情報を集めてみるわ」

    早苗「私も、霊夢さんとこ行って話聞いてきますね」

    ミスティア「私はお店にいようかな。昼間にも来るかもしれないし」

    輝夜「私もそうするわ、頑張って起きる」

    咲夜「早朝に紅魔館の方を済ませてくるから、それからは私もこちらにいるわ」

    こいし「じゃあ私もいる!」

    アリス「今朝いたのも早朝だし、気をつけてね。まだ救いなのは、ガラス破ったりして侵入して来て無い事だけど、おどかすと何するかわからないだろうし」

    藍「まぁ盗みに入られたと決まったわけじゃない。それに用心していれば、仮に盗もうと思うやつがいても入っては来れないさ」

    早苗「でも、なんだか怖い話ですね。お互いが見えないところにいる相手を、お互いの誰かだと思っちゃうなんて。実際そこにいる人物は確かにお互いの誰かかどうかわからないのに……」

    輝夜「あれに似てるわね。壁の四隅に立って、一人が別の角へ走る。別の四隅に来た人はそこにいた人と交代し、交代した人はまた別の角へ走る」

    アリス「気づけば一人増えてる、ってやつか」

    こいし「なにそれ怖い……でもちょっと気になる」

    早苗「え、今夜は怖い話大会です?」

    アリス「誰もそんなことは言ってない」

    咲夜「たまにはいいかもしれないわね。色々聞いて、お嬢様へのお土産にしようかしら」

    藍「それはまた、非常に『喜び』そうだな……」

    ミスティア「え! 怖い話するの!?」

    輝夜「何かもう決まっちゃったみたいね」

    ミスティア「うそん!」

    アリス「怖いの苦手なの?」

    ミスティア「得意じゃないよ。そもそも夜あんま好きじゃないのに」

    藍「屋台は引くのにか……」

    ミスティア「それとこれとは別」

    こいし「線引きがいまいちわからないね……」

    早苗「今は誰も潜んで無い事がわかりましたし、とりあえず今日は施錠しっかりして旅館に戻りましょう」

    咲夜「私は一旦紅魔館に戻ってから来るわ」

    アリス「こんな遅くに……って、あんたらはむしろこれからが活動時間か」

    輝夜「まぁ妖怪だし」

    早苗「それを言われると色々と複雑な気持ちになりますね。なるだけですが」

    アリス「あんたは人間寄りだしいいんじゃない?」

    早苗「ですかね」










    -厨房-

    アリス「あら? 早苗、なんでまた厨房にいるの?」

    早苗「あ、アリスさん。明日の夜雀デーの準備ですよ」

    アリス「そういやそんなイベントあったわね……当のミスティアは戸惑ってたけど、ほんとに大丈夫なの?」

    早苗「大丈夫ですよ。当初は色々もっと考えてたんですけど、結局ヤツメウナギを一切れずつサービスするのと、イベント一つくらいに落ち着きましたし」

    アリス「イベントてのが何か怖いけど……当初はいったい何をやらせるつもりだったのよ」

    早苗「一曲くらいご披露願おうかと。ミスティアさんとかそういうの得意そうですし」

    アリス「その予定のままこなくて二人は助かったと思うわ」

    早苗「そうかなぁ、良いと思うんですが……アリスさんはどうしてここに?」

    アリス「あんたの姿が見えなかったのと、下準備の再確認。チョコの事忘れててね。明日でも間に合うし別にいいんだけど、心配事を抱えたまま寝たくないのよ」

    早苗「流石ですね。というか、私を探してくれてたんですね!」

    アリス「探してたという程でもないけどね。怖い話するとか言ってたくせに中々広間に来ないから」

    早苗「あれ、もう皆さん集合してる感じです?」

    アリス「皆じゃないわ。とりあえず輝夜とこいしは既に来て枕投げ始めてた」

    早苗「なにそれはやくまじりたい」

    アリス「子供かあんたらは……」

    早苗「童心を忘れないってとっても大事ですよ」

    アリス「納得できそうな言い分だけど、普段からの言動を知ってるから納得しないからね?」

    早苗「いじわるですねぇ……よし、と。これで完成です」

    アリス「なにそれ、チラシ?」

    早苗「とまではいかないですが、お店の表に貼る紙ですね。チラシは文さんに頼んであります」

    アリス「文の新聞だと不憫な事になりそうで怖いけど、まぁそこしかないもんね……」

    早苗「読んでる人はちゃんと読んでますよ」

    アリス「まぁね……うん、こっちもこれで大丈夫。早苗はまだいるの?」

    早苗「いえいえ、もう枕投げに参加しに行きますよ。腕が鳴ります!」

    アリス「巻き込まないでね」

    早苗「ふふっ、どうでしょうねー?」






    そして夜雀デー当日……






    わいわい がやがや

    早苗「おおっ、久々の開店前からの大盛況! これは期待できそうですね!」

    ミスティア「うえぇ!? な、なんでよ……」

    アリス「意外にも文の新聞効果があったってことじゃない?」

    咲夜「面白いこともあるものね。でも、それだけ期待されてるって事よ」

    輝夜「そうそう、自信持って!」

    ミスティア「自信も何も、表出なきゃなんでしょ? 恥ずかしいなぁ……」

    早苗「大丈夫ですよ。決まった時間にヤツメウナギを一切れサービスして、何か特技を披露するだけです!」

    ミスティア「特技……? え、もしかしてあれのこと!?」

    こいし「何かやるの? 楽しみ!」

    アリス「何か思い当たる節があるのね」

    ミスティア「うわああそういう事だったのかぁあああ」アタマカカエー

    藍「まぁなんだその、たきつけないでやってくれ。普通にうなぎを配るだけでいいじゃないか」

    アリス「来週はあんただもんね……」

    藍「私は他に何もやらないぞ。油揚げもできれば渡したくないぞ」

    輝夜「意外と我侭なのねぇ九尾って……」

    早苗「だめですよ! 妖狐デーで配るものは油揚げと決まっているんです」

    藍「そ、そうは言うがな」

    アリス「こんなみっともない藍が見られるのは油揚げと橙関係だけね」

    咲夜「複雑ね……これが紫でも幽々子でも駄々こねたってしっくりくるのに」

    こいし「珍しいくらいの真面目キャラだしね……」

    藍「くっ……ある意味紫さまの無茶振りより辛いぞこの状況……」

    早苗「まぁとにかく今日はミスティアさんですから、お願いしますね!」

    ミスティア「うう、頑張るけど……うーん、あれかぁ……ちょっとしかしてないし、そもそも特技じゃないんだけどなぁ……」

    アリス「特技をするかは別にしても、とにかくそろそろ開店時間よ」

    咲夜「じゃ、それぞれ位置につかないとね」

    早苗「夜雀サービスにはまだ時間がありますので、とりあえずは通常開店しましょう!」







    こいし「いらっしゃいませー! おや?」

    こぁ「…………」

    こいし「えっと、一名様ごあんなーい?」

    こぁ「それでお願いします」

    こいし「ではこちらにどうぞ~」



    アリス「はい、メニューよ」

    こぁ「どうも」

    アリス「でも珍しいわね、この時間に一人で来るなんて」

    こぁ「ええ、そうでしょうね、そうですよ。そりゃ当然ですよ」

    アリス「……なんかちょっとやさぐれてない?」

    こぁ「やさぐれもしますよ! 私だけ! ここ連れてきてもらってないんですよ!?」

    アリス「あー、そういえばレミリア達が来た時あんたいなかったわね」

    こぁ「私だけ来てないので、それで来たわけです」

    アリス「まぁ事情はわからないけど……仕事はいいの? 休憩時間?」

    こぁ「サボって来ました」

    アリス「通報通報。小悪魔がここにいるわよ、と……」

    こぁ「ちょ、勘弁してください!! 何ですかそれ魔法使いネットワークとかあるんですか!?」

    アリス「まぁ通報はしないけどさ……後で怒られても知らないわよ?」

    こぁ「いーんです! たまには労働者も我慢の限界がくるんです!! ビールください!!」

    アリス「はいはい。料理はどうする? いい頃にまた来ましょうか?」

    こぁ「はい!」




    早苗「お待たせしました~、天ぷらそば野菜天モリモリです」

    にとり「おっ、きたきた。いやぁ、きゅうりの天麩羅もしてくれるなんてありがたいねぇ」

    早苗「その辺は臨機応変にしますからね! 事前に話をいただけないと難しいですが」

    にとり「ん~うまい。いいねこのお蕎麦」ズルズル

    早苗「出雲のお蕎麦ですからね! ちょっと甘めのだしですが、三つ葉なんかも良い感じ出してます」

    にとり「蕎麦湯ももらえるんだよね?」

    早苗「勿論です! メニューには載せてない隠しですよ!」

    にとり「後でもらうよ」

    早苗「ぜひぜひ」

    にとり「んー……ねえ早苗さん、今時間大丈夫?」

    早苗「とりあえずひと段落した所ですから大丈夫ですよ。この後ミスティアさんのイベントがありますけど、私は特に何もしないですから」

    にとり「んじゃ二件ほど話したいんだけど、いい?」

    早苗「おりいった話になります?」

    にとり「うんや、そう時間も取らないよ。すぐ済む」

    早苗「何のお話でしょう?」

    にとり「一つは、外注を受けてもらえないかなって。そういうのはやってない感じ?」

    早苗「外注って言いますと、お届けをしてほしいって事ですか?」

    にとり「いや、年に一度の大規模な宴会があるんだけど、そこに来て料理してほいいんだよね」

    早苗「あーなるほど……どうでしょう、ちょっと相談してみないとわからないですけど……いつになるんです?」

    にとり「それが、明日なんだよね」

    早苗「ええっ、それはまた急ですね……」

    にとり「そうなんだよ。実は調理担当が急に寝込んじゃってさ……急遽補充が必要になったんだけど、誰もできなくて困ってるんだ」

    にとり「このままじゃ明日の宴会は中止するしかなくて……」

    早苗「中止は嫌ですね……ううん、話してみますけど、絶対の保障はできないですね」

    にとり「うん、勿論可能ならでいいよ。無理は承知だしね」

    早苗「いえいえ。営業後に相談という形になりますが、大丈夫です?」

    にとり「勿論。そのくらいに訪ねてくればいい?」

    早苗「あ、そうです、そうしていただけると非常に助かります」

    にとり「まぁアジトからここ近いしね。よろしく!」

    早苗「いえいえ! それで、もう一つの話というのは?」

    にとり「実は調理担当が急に寝込んだ事に繋がるんだけどさ……」

    にとり「調理器具一式が無くなっちゃってさ、予備を取りに里近くの倉庫へ行ったみたいなんだよね」

    早苗「里の近くというと、足洗いの噂になったあの場所ですか?」

    にとり「そうそう。霊夢さんとあこは使わないって約束してたんだけど、ちょっと必要なものを探さなきゃいけないから行かせたのよ」

    早苗「ほうほう」

    にとり「したら、そこで妙な話を聞いたらしいんだわ」

    早苗「それって、ここ最近里で噂になってるっていう?」

    にとり「あれ、なんだ知ってたのか」

    早苗「いえ、何か噂が流れてるってだけで、内容は全然知らないです」

    にとり「なら、聞いておいた方がいいかもね。なにせ、被害は各地で起きてるみたいだから」

    早苗「被害、ですか」

    にとり「ああ。何でも、物が無くなるらしいんだよ。金品からガラクタまで、色んなものがね」

    早苗「!」

    にとり「いつ盗まれたのか、はたまた何かの拍子になくなっちゃっただけなのか……ただ、被害は多く出てるけど、いまだに何の目撃情報も無いから、里じゃ妖怪の仕業だって噂になってるんだって」

    早苗「それって、最近も起きてるんですよね?」

    にとり「だね。うちの調理器具が無くなったのも、そいつの仕業じゃないかって一部の仲間が話してる。物盗りなんて魔理沙だけで充分だよ全く」

    早苗「あはは……」

    にとり「霊夢さんが動いてくれてるみたいだからそう長くは続かないだろうけど、それでも心配だし?」

    早苗「ですねぇ……まぁにとりさんたちの倉庫からも物を盗ったという事は人間じゃないでしょうね」

    にとり「厄介だよなぁ。せめて姿を見せてくれたらいいのに」

    早苗「あはは、それこそ魔理沙さんくらいですよ、そんな堂々としてるの」

    にとり「違いない」

    早苗「あ、そろそろですよ、ミスティアさんによる夜雀デーイベント」

    にとり「そういやチラシ配ってたけど、何なの?」

    早苗「見てればわかります」



    ミスティア「きっ、きょきょ、今日はみなさん、来てくれてあっ、ありがとうございますっ」

    アリス「ガッチガチにあがってるわね」

    輝夜「まぁこう仕立て上げられてるとね」

    ミスティア「日ごろの感謝を込めて、今日はヤツメウナギを一切れずつですがサービスいたしましゅ……いたします」

    魔理沙「よっ、いいぞーさすが店主、心が広いね~!」

    ミスティア「ひぃ」

    こいし「はいてんちょ、トングね」

    ミスティア「う、うん」

    咲夜「ほほえましいですね」

    藍「ううむ……理屈はわかるのだがな……」

    アリス「ま、あんたも腹を括りなさいな」ポンポン

    輝夜「でも、思ったより地味じゃない? さっきの瞬間だけは客の目引いたけど、それからはまぁ配って終わりだし」

    早苗「ふっふー、それだけじゃないですよ! 特技を披露してもらうと言ったはずです」

    アリス「歌ってもらうわけじゃないんでしょ? 何させる気なの?」

    早苗「解体ショーですよ」

    輝夜「解体? 何の?」

    早苗「解体と言えばマグロ! この日のためにマグロを仕入れてきたんです!」

    アリス「まぐろ?」

    輝夜「うっわ、凄い事させるわね」

    藍「……紫様はよく許可したものだ。というか、そんなお金用意できたのか?」

    早苗「知り合いの漁師さんに頼んだんです」

    輝夜「それって外の世界の知り合いよね。あんたってどういう扱いになってるの? 急に出てきてびっくりされなかった?」

    早苗「その辺はなんやかんや手があるので問題ないです」

    アリス「なんやかんやって何よ?」

    こいし「なんやかんやは……なんやかんやです!!!!!」

    藍「ううん、その辺りの事はもういい。頭が痛くなりそうだ」

    アリス「で、まぐろって?」

    こいし「誰か相手してよう(´・ω・`)」

    輝夜「ドンマイ。てかミスティアの所に戻ってあげなさい、一人にしたら可哀想」

    こいし「はぁい」

    アリス「(今の言うためだけにこっち来たわけ……)」

    早苗「えっと、マグロとは、海の生き物です。魚です。3メートルくらいの」

    アリス「は? 3メートル!?」

    早苗「ですよ~。超おいしいです!」

    藍「サバ科マグロ属の硬骨魚類だな。数十センチクラスから大きいものだと早苗の言うように3メートルにまでなるものもいる」

    輝夜「てかマグロってサバ科だったんだ。いがい~」

    アリス「そ、そんなでっかい魚どうすんのよ。てかほんとに美味しいの? 大きいものって大味でスカスカしてそうな印象なんだけど」

    早苗「甘いですね~。マグロの味を知ってしまったらもう忘れられませんよ。特にトロなんてもう……くー、たまらんです!」

    藍「市場で出回っているものは競りにかけられるのだが……ものによっては一億円以上する事もある」

    アリス「いっ、いち、おく……」

    早苗「ただ、大きいですし質がとてもいいですからね。全ての部位を綺麗に使えば、正直それでも儲けが見込めるというわけです」

    輝夜「勿論、お寿司作るわよね?」

    早苗「とーぜんです! 大トロも中トロもなんでも!」

    アリス「よくわかんないけど、そんな大きな魚をあの娘さばけるの?」

    早苗「実は何度も動画を見てもらって、一度だけ実践してもらいました」

    藍「いつの間に……」

    輝夜「てかそのときもマグロ仕入れてたって、すごい額になりそうね」

    早苗「もらったからタダです」

    アリス「一億もするようなものどうやったらタダでもらえるのよ!」

    早苗「いやいやいや、流石にそんな特大サイズじゃないですからね。物もキハダマグロですし。あと、どうやってもらったかは秘密ですが、まぁ色々あるんですよ」

    藍「キハダか……クロマグロなんかに比べるとだいぶ安くはあるが……」

    早苗「大間のクロマグロと言いたい所でしたが、流石に無茶でした」

    輝夜「紅魔館も侮れないけど、早苗も全然負けてないわね……今年一番驚いたわ」

    早苗「えっへん」

    アリス「なんかこれ以上は訊かないでおいた方がよさそうね……」

    早苗「(ホントはもらったんじゃなくて紫さんに頼んで色々してもらったんですけどね)」

    藍「細かい事を考えるのはよそう細かい事を考えるのはよそう」

    アリス「藍が壊れてきたわ」

    輝夜「早苗の常識外れが過ぎたのね、可哀想に」

    アリス「ま、絶対紫が色々絡んでるだろうからそれででしょうね」

    早苗「あれ普通にばれてる」



    こいし「そろそろ終わりかな? うなぎなくなったよ」

    ミスティア「そ、そうだね」

    こいし「なんでまだ緊張してるの?」

    ミスティア「ううう、あんな大きな魚さばくのなんて一度の練習じゃ慣れるわけないよ……ほんとにできるかな……」

    こいし「よくわかんないけど私はお皿持ってはけるね」

    早苗「さあ! それではお次はマグロの解体ショーです!」

    咲夜「サポートにつくわ」

    ミスティア「ごくり……」

    マグロドン!

    ガヤガヤ ザワザワ

    魔理沙「なんだあれ。でっかい魚のようだが……」

    にとり「鯖かな? でもあんなでっかいの見た事ないぞ」

    こぁ「ひゃはは、すっごいでっかい魚ですねぇw なんですかねあれ鯖? 鯖を砂漠でさばく、なんつってーww」ヨッパライー

    ミスティア「……緊張するなぁ」

    早苗「では本日の大目玉イベント、マグロの解体ショーを行います! 勿論、切ったマグロはご試食いただけます!」

    咲夜「解体するとは聞いていたけど、意外にしっかりしたマグロね」

    早苗「マグロとは! 大きいものなら3メートルにもなります! 今回ご用意したのは小さいサイズのものですが、それでも見ごたえはありますよー!」

    ミスティア「では……いきます!」グッ

    ミスティア「まずはこちら、尻尾の方から切り落としていきます」ガッガッ

    魔理沙「す、すごい音するな……」

    にとり「ほえー、でっかい包丁だな。まぁあんなの切るんだし当たり前か」

    ミスティア「尾を切ればそのマグロの価値がわかるみたいですね。詳しい事はわかんないけど……」

    ミスティア「次は頭を切ります。エラの部分から切り込みを入れて、思いっきり切ります」ゴスッ

    魔理沙「切るというか叩いてるみたいだな」

    咲夜「頭を丸ごと調理する、かぶと焼きなんてものもあるわ。栄養のある部分も多いし、イメージつかないかもしれないけど、頭もなかなか捨てがたいのよ」

    ミスティア「次は、カマの部分です。ここを切り落とします」ザクッ

    咲夜「カマ焼き、なんてのもあるわ。カマっていうのは両サイドのヒレ部分の事で、少し身も一緒に切り落とすことになるわね」

    ミスティア「お腹側には脂身が見えます。脂ののった部分をトロっていうんだけど、このカマにもついてるからカマも結構美味しいです」

    ミスティア「次は身をさばきます。背中から横に切っていきますよ」ザッザッ

    ミスティア「しっかり切れ込みを入れたら……今度は縦からきります。これで赤身がごっそりと取れるわけです……よい、しょ!」ザクザクザク

    咲夜「っ、と。取れたわね」ゴロッ

    魔理沙「おお、すっげ。でっかいなぁ」

    アリス「小さい魚だと切り身にしても特に何も思う事はないけど、こうも大きな魚だとブロック一つ切り分けるだけで驚きよね」

    にとり「でもあれ、なんか赤黒いというか……」

    咲夜「いいところに気がついたわね。切りたてはこんな風に黒っぽい赤身だけど、時間が経てば綺麗な赤身になっていくわ」

    ミスティア「さて、次はお腹側です。こちらも同じようにして……よっ」ザクザク ゴスン

    ミスティア「とれました~」

    早苗「ミスティアさん慣れてきましたね」

    輝夜「二度目で?」

    早苗「あ、いや、それもですけど、場に慣れたって事です」

    咲夜「この窪んだ所に内臓が入ってるわ。内臓は予めとっておいてるから見ることはできないけどね。さ、今ちょうどこれで半分に切れたわ。骨のところについてる部分、これを中落ちっていうんだけどここも結構美味しいわよ」

    魔理沙「なんか通が好みそうな名前だな」

    早苗「アルビノの中落ちですね」

    アリス「狩りに出なくていいから」

    こいし「?」

    ミスティア「さて、次は中央の骨をとります。ひっくり返さずこのまま切ります」ザクザク

    ミスティア「切込みを入れていって…………えいっ」ベリベリ

    ミスティア「はがれました」

    咲夜「キハダマグロはこうやって5枚おろしにするのよ。あとは柵取りしていくわ」

    ミスティア「ふいー……なんとかなったかなぁ」

    魔理沙「すげー! 見てて圧倒されたぜ」

    にとり「でっかい魚にも驚きだけど、それをさばいたのも見事だなぁ」

    早苗「だいぶ無茶振りしたつもりでしたが本当にやっちゃうなんて……すごいです!」

    アリス「無茶振りの自覚あるんかい」

    咲夜「さあ、マグロの試食始めるわよ。赤身と中トロ辺りでいいかしら?」

    早苗「はい! 一口大に切ってもらって、お寿司にもしましょう。手まり寿司みたいにすれば試食も大丈夫です」

    魔理沙「う、うめー! なんだこれめっちゃくちゃ美味しいぞ!」

    にとり「鮭や鯖とはまた違った味わいだな~」

    早苗「さあさあ! 気に入っていただけたでしょうか。お酒との相性も抜群です! お刺身からあぶり焼きまでなんでもしますよ! 勿論お寿司もおっけーです! 食べたい方はぜひご注文をお願いしまーす!」

    コッチニヒトツクレー ワタシモホシイ! コッチモダー!

    こいし「大盛況だね」

    藍「凄い勢いだ。この様子だとすぐに完売だな」

    アリス「大成功って感じか……侮れないわね」

    輝夜「借金してマグロを買ってたとしても余裕で返せる算段っぽいわねこれ」

    藍「きちんと販売すればな。今回はだいぶ無料配布しているようだし、実際計算したとしたらどうなるやら……」

    輝夜「ん、予算てか計画に入ってるんじゃないの?」

    藍「マグロの事はついさっき知ったくらいだ。早苗が自前で用意したようだし、予算には一切影響ないな」

    アリス「いくら配布してるとはいえ、売った分は丸儲けになるのか……実はこういう所でマイナス分の補填してたりして」

    藍「それは店のことを考えればありがたい話ではあるが、個人負担になってしまう以上良い事ではないな……」

    こいし「純粋に成功したといえなくなってしまう、ってやつ?」

    藍「まぁ、捉え方次第ではあるが、そういう事だな」

    アリス「複雑よね……でも本来の経営ってもっと大変なわけだし、ほんと恵まれてるわね私たち」

    輝夜「権力やお金、伝手を持ってる人は強いわね。そういう意味じゃ、私は全然ダメね」

    アリス「珍しく感傷的じゃない、どうしたのよ」

    輝夜「ううん、別に。ちょっと昔を思い出しただけ、ちょっとだけね」

    ミスティア「わわ、次は炙りで次はお寿司、次は、えーとえーと」

    藍「まぁ、手伝いに入ってやるか。そろそろ咲夜と早苗だけでは回らなくなりそうだ」

    アリス「そうね。まぁ、思った以上に盛況だし、今日は大成功といったところかしら」

    こいし「すごいすごい!」

    輝夜「もうひと頑張りしますかねー」





    そして大盛況のまま時間は流れ、閉店へ……





    早苗「いやーすごい盛況でしたね! それに、二度目であんなに上手に五枚おろしにできるなんて、ミスティアさんもすごいです!」

    ミスティア「もう無我夢中だったよ……あんまり覚えてないもん、今日」

    アリス「お疲れ様。みんな改めてミスティアのこと見直したと思うわよ」

    輝夜「そうそう。しかも私たちもこれからマグロ食べられるんでしょ?」

    こいし「おおっ、やったね!」

    藍「後のことまで考えてあったのか。抜かりないな……」

    咲夜「今とりわけてるわ。今日のまかないはマグロ丼よ」

    こいし「なにそれ美味しそう!」

    早苗「しかも秘伝のタレに漬け込んでありますよ! きゅっとしまった赤身がとてもおいしいんです!」

    ミスティア「勿論トロも残してあるから、こっちはお寿司でいただこうか」

    輝夜「豪勢ね~。というか、このために今日の夕飯は軽めだったのね」

    アリス「大盛況だったし、本当に美味しそうね……私も楽しみかも」

    早苗「ではいただきましょう!」ガッショー

    もぐもぐ もぐもぐ

    こいし「おいしー!!」

    アリス「ほんとね……海の魚はこんなに美味しいのね」

    輝夜「タレの方もいい味してるわ。しっかり主張してそれでいてしつこくない」

    藍「鮪は久しいが……こんなに美味しかったか」

    ミスティア「ほんと。外の世界にはまだまだ私の知らない、美味しい食材が沢山あるんだね!」

    咲夜「ふふ、なんだかすっかり料理人みたいね」

    ミスティア「えっ、あ、そ、そういうつもりじゃ……」

    アリス「いいのよ。もう皆そんな感じに思ってるし」

    早苗「幻想郷公認の料理人妖怪になれそうですね!」

    ミスティア「ひああ」グルグル

    輝夜「ところで、今日は開店準備に追われてあまり話題にしなかったけど、例の妖怪の件はどうだったの?」

    アリス「その件ね……早朝に顔を覗かせた限り、確かに里では少々話題になってはいたけど、規模が小さいし特に危険視まではされてなかった感じかな」

    早苗「私は霊夢さんを探したんですけど、見つからなかったです。里の人に聞いてみた感触としては私も同じで、皆さん単なる物盗り程度の認識みたいですね」

    藍「盗られたものは様々だが、実はどれも食べ物に関するものばかりらしい」

    こいし「それって昨日のチョコみたいな?」

    早苗「にとりさんが、調理道具一式盗まれたって言ってましたし、それもですね」

    咲夜「道具まで盗むという事は、その用途も知った上でのことなのかしら」

    輝夜「においがついてるから、とかかもよ?」

    ミスティア「しっかり洗ってるのに?」

    藍「嗅覚に優れた妖怪なのかもしれん。外の世界ように、洗剤もそう進化してないからな」

    早苗「進展はあまりないですね……被害に遭った所も規模も様々ですし」

    アリス「怪我をしたとかそういう話はないし、そこがまだ救いね」

    早苗「ですね。まぁ霊夢さんが退治に出てますし、大丈夫でしょう」

    こいし「でも、会えなかったっていうのはちょっと不思議だね」

    華扇「それにはちゃんと理由があるわ」

    アリス「ひっ! びっくりした……」

    藍「丁度アリスの後ろから現れる形だったからな……」

    輝夜「まぁ私は見えてたけどね」

    アリス「なら教えてよ!」

    早苗「それで、理由って何です?」

    華扇「霊夢は今、森の向こうにある廃村に行ってるのよ」

    咲夜「廃村?」

    こいし「へー、そんなところがあったんだ」

    藍「廃村……あまり覚えが無いな」

    華扇「なんでも、ここ最近出現したらしいわ。霊夢も知らなかったみたい」

    ミスティア「でも、何でそんなところに? 誰からの依頼?」

    華扇「詳細はわからないけど、里の人からみたいよ?」

    早苗「ふむ……山へ山菜でも採りに行ったら知らない集落跡があって驚いた、というところでしょうか」

    藍「だろうな。私も少し調べてみるか……」

    咲夜「それはそうと、貴女は物盗りの話知らないの?」

    華扇「農作物があらされるってやつ?」

    輝夜「なんか微妙に違ってそうね……調理道具とかも盗られたらしいわよ」

    華扇「あら、じゃあ知らないかも……ここ数日のことなの?」

    アリス「そうらしいけど、実際の所は知らないわ。私たちも、まぁ実際被害に遭った可能性があるのはあるけど、話でしか聞いてないから」

    華扇「可能性?」

    早苗「えっとですね」


    少女説明中


    華扇「そんなことがおきていたの……」

    咲夜「まぁ何か証拠があるわけでもないけどね……厨房の方に関しては私たちが分量間違えたって可能性もあるし」

    華扇「その、嫌なことを言うようだけど、誰かお客さんが食べちゃったとかは?」

    アリス「昨日は雨が降ってお客さん少なかったし、もしそうだとしたら特定は簡単だけど……」

    こいし「ううん、でも見てる限りだけどそんな事してる人みなかったよ」

    早苗「そもそもチョコはスタッフオンリーの場所にしか置いてませんし、お客さんの線は薄いと思います」

    華扇「すた……なんて?」

    早苗「あぁ、従業員以外立ち入り禁止の場所です」

    藍「里でも似たような事件が起きているらしいから、同一犯による可能性を今の所は考えている」

    華扇「なるほど。まぁ、特定ができていないのなら、用心するしかないわね」

    輝夜「次に来たらお相手してあげたいわね」シュッシュッ

    アリス「あんた能力すごいのは知ってるけど、パンチ弱そうよね……」

    輝夜「弱いわよ、か弱いもの」

    アリス「はいはい」

    早苗「一度腕相撲大会とかしてみたいですね。まぁ本戦に行く人決まりきってますけど」

    アリス「なら何のためにするのよ……」

    咲夜「決勝戦より最下位決定戦の方が盛り上がりそうね……」

    ミスティア「うわああああ!!!」

    華扇「えっ、どうしたの?」

    藍「厨房からだな……」

    輝夜「あれいつの間に?」

    咲夜「マグロを取り分けたお皿を持って行っていたのよ」

    アリス「とにかく行きましょ!」




    早苗「ミスティアさん大丈夫ですか!?」

    ミスティア「ひああ……あ、うん……」

    藍「部屋中水浸しだな……何があった」

    ミスティア「え、えっと、水浸しなのは私のせいなんだけどね……」

    アリス「転んだとか?」

    ミスティア「ううん……お皿を流しに持って行こうと厨房に入ったんだけど、そしたら何かがいたんだ」

    輝夜「まさか、例の泥棒妖怪?」

    ミスティア「だと思う。冷蔵庫あさってたし」

    こいし「うわ、話してるときに来るとか……」

    ミスティア「最初影に隠れて見えなかったし、姿を見たとほぼ同時に飛び掛ってきて……」

    咲夜「それで大声をあげたのね」

    ミスティア「うん……でもそいつ、飛び掛ってはきたけど襲っては来なかった」

    華扇「そのまま逃げたのね。勝手口が空いてるわ」

    早苗「てことは、驚いた時にお水を?」

    ミスティア「うん。というか、あああ、その方が一大事なんだった……」

    輝夜「え、どういうこと?」

    ミスティア「蓄えてた水がほとんど全部流れちゃった……」

    早苗「えっと……?」

    アリス「蓄えて?」

    咲夜「私が説明するわ。実は私たち、水にこだわって料理してるのよ。水道水や井戸水は使ってない。質に影響するからね……アリスならわかるんじゃない?」

    アリス「うん? あぁ、紅茶とかでってことね。確かに、水の硬度とかで味も香りも変わるから、水選びは大事ね」

    咲夜「料理も同じって事。水が違うだけで料理の質が全く変わってくるのよ。だから、料理には特定の水しか使ってないの」

    早苗「まぁ都会の水道水は美味しくないけど、田舎の水道水は美味しいですからね。それだけでもずいぶん違うんですから、ミスティアさんのこだわりとなるとだいぶ違うって事ですよね」

    アリス「で、その水が流れたと……え、それ大丈夫なの?」

    ミスティア「あんまり大丈夫じゃない……」

    咲夜「ほとんどなくなっちゃったから、新たに汲んでこないといけないわね」

    こいし「それってどこで汲んでくるの?」

    ミスティア「妖怪の山のずっと上の方だよ。湧き出てるところがあるんだ」

    早苗「あ、それなら知ってます。でもあそこ、行きにくいっちゃ行きにくいんですよね」

    輝夜「そんなところまで一人でいつも汲みに行ってるの?」

    ミスティア「手伝ってもらったりする事もあるし、一度に運ぶ量はそんなに多くないからね」

    藍「つまりは、蓄えておいた明日使用する分の水が足りないという事か」

    ミスティア「そういう事。ほぼ毎日汲みに行ってるんだけど、明日は出かけなきゃいけないからさ。汲みに行けなくて」

    早苗「あ、その話皆にしなきゃだった!」

    咲夜「えぇ、まだしてなかったの……」

    アリス「話さないといけなかったって、何かあったの?」

    早苗「ありまくりですね! 実は明日、朝から河童たちの宴会料理を作りにミスティアさんが行くんです。だから明日の開店はミスティアさん抜きになります」

    こいし「え!? それって大丈夫なの!?」

    ミスティア「咲夜さんが残ってくれるからその点は心配はしてないけど……要は明日の朝、私が水汲みに行けないからそれをお願いしなきゃいけなくなるの」

    藍「そこを心配していたわけか。まぁ水汲みくらい何とでもなるだろう」

    輝夜「そうそう、ただ水汲んでくるだけでしょ。ラクショーよ」

    ミスティア「心強いなぁ。なら、ついでに他にもお願いしていい?」

    早苗「どんとこい! 超常現象」

    アリス「何で超常現象なのよ」

    早苗「どんとこい、と言うと言わずにはいられないんですよ」

    アリス「よくわからないけどスルー安定案件だったみたいね」

    早苗「ひどい」

    藍「して、頼みとは?」

    ミスティア「水汲み地点のちょっと下流に大きな池があるんだけど……最近、主が現れるようになってね」

    輝夜「主……ですって?」

    こいし「なにそれわくわくする!」

    ミスティア「妖力を取り込んじゃったのかそいつのせいで生態系が崩れてる気がするんだ。だから、ちょっと退治をお願いしたい。私じゃ無理そうで……」

    早苗「!!! これは!! 狩りの予感!!」テーテレッテー

    アリス「始めなくていいから」ベシ

    輝夜「でも、クエストを受けて討伐に行くなんてまるっきりそれじゃない」キラキラ

    アリス「ああもう何でもいいわよ、それでいいわよ」

    ミスティア「よくわかんないけど、頼んでいいのかな」

    早苗・輝夜「もちろん!!」

    藍「早苗はともかく、輝夜がものすごく輝いてるんだが……」

    咲夜「話が勝手に大きくなってる気がするわ」

    アリス「気にしたらもう負けよ」

    ミスティア「ひああ……」

    華扇「問題にならないといいけど……はぁ」

    早苗「じゃあ、明日の朝は『湖の主』の討伐ですね!! クエストを受領しました!」ドン!←ハンコ押すあの音

    アリス「マグロも美味しくいただいたし、片付けして寝ましょ寝ましょ」








    次回、第六話! クエスト「山の池に潜む脅威」ッ!!

    第六話へ続く




    一年も間あいちゃいましたけど、完結まで書ききります!
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