【東方SS】ある雨の日に
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【東方SS】ある雨の日に

2017-01-13 02:51
    これは東方の二次創作SSですよ。









    咲夜「雨ですね」

    パチュリー「そうね……」

    咲夜「今日は降る予定になっていたので諸々無事に済んではいますが……思ったより早かったので危ないところでした」

    パチュリー「そういえばランドリー達が慌ててたわね」

    咲夜「朝のうちは晴れ間が続くとの事でしたので、その間にシーツ類を全て干そうと思っていたのです」

    パチュリー「なるほど」

    咲夜「それが正午を迎える前に降ってきたものですから……」

    パチュリー「一部は洗い直しになったんじゃない?」

    咲夜「面目ありません……」

    パチュリー「ううん、責めてるわけじゃないのよ」

    咲夜「恐縮です」

    パチュリー「それより……間に合うの?」

    咲夜「洗濯でしたら、予備のものや使用されていない客間のものを代用すれば問題ありません」

    パチュリー「ま、客間に寝泊りするような来訪者なんてほとんどいないしね……」

    咲夜「霊夢くらいですね……あ、そういえば昨日、どうでした? うまくいきました?」

    パチュリー「五分って所ね……家に押しかけてやったけど、あいつ、何冊かどこにしまったか忘れてやがったわ」

    咲夜「まぁ、酷いとさらに別の誰かの手に渡っていますからね……」

    パチュリー「早苗達の漫画と一緒にされたら困るわ」

    咲夜「あれはあれで問題ありそうですが……」

    パチュリー「でも、新たな対策を施してみたから次はきっと大丈夫よ。そもそも持っていかせないようにすればいいだけ」

    咲夜「そう言って何度も突破されてますね」

    パチュリー「うるさいわね! 仕方ないじゃない、仕掛けと言ってもそこまで本気でやってないし」

    咲夜「止めさせたい所ではありますが、血を見るような事にはしたくないですしね」

    パチュリー「まぁ本の配置は変えてるから、本気で困る事はそう無いけどね。重要なものほど私に近い所に置いてるし」

    咲夜「何に興味を持つかは気分次第ですし、その辺はまだ救いかもしれません」

    パチュリー「はぁ……盗まれるの前提で話してるのが何だか哀れだわ」

    咲夜「私も自分で言ってそう思いました……」

    パチュリー「困ったものね、魔理沙にも」ハァ

    咲夜「本当です」

    パチュリー「それはそうと、そっちは昨日どうだったの? うまくいった?」

    咲夜「首尾は上々、といった所です。想像以上に働いてくれましたね」

    パチュリー「なら、あの娘の計画も案外悪くは無かったってことね」

    咲夜「まぁその分手はとられましたから、今回のような感じで色んな方が立て続けに来られると困りますが……」

    パチュリー「何の仕事を任せてたの?」

    咲夜「主に掃除と料理です。普段からやり慣れているのか、どちらもそつなくこなしてくれました」

    パチュリー「まぁそういうイメージあるしね。私も、あの娘の淹れる紅茶は好きよ」

    咲夜「あら。それは焼けてしまいますね」クスリ

    パチュリー「でも、あの娘一人で特訓でもしたのかしらね」

    咲夜「一人暮らしですし、慣れではないでしょうか」

    パチュリー「でも……実際あの娘って、本当に自分でやってるのかしら」

    咲夜「任せているように見えて実は全て操っている、と聞いた事はありますが……真相はわかりません。というか、パチュリー様の方がご存知かと思っていましたが」

    パチュリー「魔法の一種とは思うけど……あの娘の術式は基本に忠実ではあるけど細かい所で複雑なのよ」

    咲夜「その辺りの事はよくわかりませんが……パチュリー様でもわからないとなると、かなりのものなのでしょうね」

    パチュリー「個人の色が特に出るからね、私たちみたいな存在は。相手の術式を完全に読み取るのは本当に大変なのよ」

    咲夜「でも、彼女ならまた来てもらっても大丈夫です。仕事は覚えたと思いますし、私は歓迎します」

    パチュリー「あら、意外とウケがいいのね」

    咲夜「言い方は悪いですが、使える人は何人いても困りませんから」

    パチュリー「ふふっ、随分と株を上げたこと。今度来た時はお茶でも誘おうかしら」

    咲夜「それもいいかもしれませんね。ならいっそ、魔法使いのお茶会にでもしますか?」

    パチュリー「うちに盗みにくるやつの席なんて無いわよ」

    咲夜「あえて招き入れる事で盗む隙を与えない作戦です」

    パチュリー「なるほど、それはいいかもしれないわ。それに、話せばアリスも防犯協力してくれそう」

    咲夜「難易度がどんどん上がりますね。その状況を楽しんでしまいそうですが」

    パチュリー「どうであろうと、阻止できればこちらの勝ちよ」

    咲夜「最近は勝率も上がってきましたからね」

    パチュリー「随分と難易度の高い防衛戦ね……」

    咲夜「私は厨房の防衛が大変ですね……霊夢は論外としても、この頃いつの間にか現れて何がしか食べたり飲んだりしてるやからが増えてきています」

    パチュリー「今朝も一人来てたわね……いつ入り込んだのやら」

    咲夜「たぶん普通に歩いてきたのだと思いますけど……彼女なら堂々と歩いて来ても、誰も文句言わないかもしれません」

    パチュリー「それは能力的に?」

    咲夜「ですね。このところよく顔を見せるせいか、妖精メイド達の間で少し話題になっているみたいです」

    パチュリー「頭が痛いわね……彼女の場合存在そのものが恐れられるわけだし、あまり身近でない者からしたら近寄りがたいわよねぇ」

    咲夜「彼女の行く手を阻んだ日には、何が起きるかわかりませんし」

    パチュリー「でも、実際そんな事はしないでしょう? よく知らないけど、無闇矢鱈にやるものじゃないと聞いた事があるわ」

    咲夜「まぁ、余程の事が無い限りは、という話ですね。それでも、妖精メイド達を怖がらせるには充分のようです」

    パチュリー「祟りねぇ……ただそこにいるだけで畏怖の対象になるなんて、諏訪子も厄介な存在だわ」

    咲夜「違いないですね……ただまぁ、妖精メイド達に彼女をどうこうしてもらいたいとは思ってませんし」

    パチュリー「まぁ彼女達の仕事内容に『侵入者の撃退』は含まれてないからね……」

    咲夜「そこをいくと、美鈴は本当に何をしているのやら……そろそろ灸を据えてやらないと」

    パチュリー「また寝てたのかしら。立ったまま眠るって、相当器用だと思うのだけれど」

    咲夜「慣れれば立っても座っても眠れますよ。気配を感じたら起きる、というような眠り方も可能です」

    パチュリー「どこの武人よそれは」

    咲夜「ふふっ。でも実際にその武人が眠っている時に事を起こそうとしてみたことがあるのですが」

    パチュリー「えぇ? 貴女も意外とそういうお茶目なところあるのね」

    咲夜「お、お茶目ですか……そういうつもりはないのですが。こほん、それでですね」

    咲夜「そのときは彼女、布団に入って眠っていたのですけど、ナイフを持って近寄ってみたら次の瞬間には抜刀して私の首筋に刃をあててましたね」

    パチュリー「なんていうか、普段の間抜けな姿しかあまり印象にないから、そういうガチなシーン聞かされると感心すら覚えるわ」

    咲夜「本来実力はある子ですからね、それは私も認めます。ただまぁ、周りが異常ですね……」

    パチュリー「怪物だらけの中じゃあの娘の才能も埋もれちゃうか……ちょっと可哀想ね」

    咲夜「いわゆる中堅どころを集めて力比べでもしてみますか?」

    パチュリー「いや力比べって……貴女も随分と影響されたものね」

    咲夜「あ……すみません」

    パチュリー「ううん、いいのよ。ちょっとどうかと思うところもない事はないけど、レミィだって楽しんでるし、悪いことじゃないと最近は思うようになってきたわ」

    咲夜「あの強引さには感服しますね……ある種の才能とも言えるかもしれません」

    パチュリー「アリスにメイドさせたのも彼女でしょう? でも確か、本人も一緒に参加してなかった?」

    咲夜「ええ、していましたが……」

    パチュリー「あら、問題でもあったのかしら」

    咲夜「そう、ですね。掃除なんかは得意そうでしたので廊下を任せていたのですが……」

    パチュリー「なに? 何か壊したりしたの?」

    咲夜「いえ。精度に問題はないのですが、細かい所にこだわりすぎて進行速度に問題がありましたね」

    パチュリー「真面目すぎるのね……確か霊夢のいない間に博霊神社の掃除もやってたみたいだけど、そのときも随分丁寧にやったそうだし」

    咲夜「それが彼女のいいところなのでしょうけど……うちは広いですからね」

    パチュリー「雑にはできないけど、ある程度は速さが求められるからね。まぁ、誰にでもよしあしはあるでしょ」

    咲夜「ただ、自分でも面倒になりかけたのかはっちゃけそうになったので、『常識の範囲内でお願いね』と釘を刺しておきました」

    パチュリー「賢明ね……早苗はこの頃何を思いついてやりだすかわかったもんじゃないし」

    咲夜「あのままだと廊下の箒がけ競争とか開催しそうでしたね」

    パチュリー「ありそうね……でも、もしそうなら他にも誰かいたっぽいわね」

    咲夜「実際に姿を見てはいませんけど、気配は感じました」

    パチュリー「思い当たる節がありすぎて困るわ」

    咲夜「まぁ誰であろうと、厄介な事には違いありません」

    パチュリー「違いないわ」

    咲夜「…………」

    パチュリー「…………」

    パチュリー「……そういえば咲夜は今暇なの?」

    咲夜「仕上がり待ちです」

    パチュリー「あぁ、例のあれか。もう取り付け完了しそうなんだ?」

    咲夜「そのようです。さすが、仕事が速いですね」

    パチュリー「本職じゃないはずでしょうにね……でも、あの技術力には私も感心するわ」

    咲夜「最近は早苗の差し金もありますからね。どんどん知識や技術を高めているようです」

    パチュリー「かくいう私も世話になったからね……正直、かなり助かってるわ」

    咲夜「図書を瞬時に検索できる機器ですね」

    パチュリー「私はあまり使う事がないけれど、こぁや客人には良いと思うわ。おかげで仕事もはかどってるし」

    咲夜「なんだかもう、本来の彼女の姿を忘れてしまいそうですね」

    パチュリー「あれはもう河童というよりただのメカニックだわ」

    咲夜「そちら専門に働いても問題なさそうですしね……幻想郷に無いものを次々と生み出していますし」

    パチュリー「でも、そんな事ばかりして、紫が怒らないのかしら」

    咲夜「目に余るようならお咎めを受けると思いますが……早苗の差し金とあれば、最近は彼女が絡みますから」

    パチュリー「あぁ……活動報告を逐一受けているから状況は筒抜けってわけね。でも、それも災難な話ね」

    咲夜「愚痴ではないですが、一時は私にさえ苦労話をぽろりと漏らす所まできていましたね」

    パチュリー「あっちで振り回されこっちで振り回され……大変な妖怪ね」

    咲夜「ただ、妖夢の話ではないですが、彼女も本来は強大な力を持つ妖怪ですからね。この状況に苦笑いを禁じえません」

    パチュリー「幻想郷にいる妖怪ってとんでもない力を持ってるのが多いけど、そのほとんどが力を無駄にしてるか埋もれさせてると思うわ」

    咲夜「その力を一種の脅し程度にしか使う事ができていませんからね……彼女で言えば、本来早苗達も恐れ戦いたって不思議では無いはずですし」

    パチュリー「彼女が本気を出したら周りはどうなるかしら」

    咲夜「実際どうなるかはわかりませんが、分析と噂を元に考えれば、少なくともここは半壊するでしょうね」

    パチュリー「まぁ私も勝てる気はしないわね。レミィとフランならどうかしら」

    咲夜「タイミングと運が絡んできそうですね。戦略や計算では確実に負けるでしょうけど、単純な力比べではこちらに分があると思います」

    パチュリー「1VS1だときつそうね……私か咲夜がセコンドにつけば悪くないかも」

    咲夜「お嬢様方は彼女とは相性が悪いと思いますからね……そこをカバーできれば勝機はあると思います」

    パチュリー「頭脳戦に持ち込まれる前に潰す……先手必勝の型が有効そうね、藍には」

    咲夜「……やはり、武道会のようなものを開きたくなってきました」

    パチュリー「血気盛んね……私は想像するだけで充分だわ」

    咲夜「血の気が多いわけではないですが、元々そういうのは嫌いではないですし」

    パチュリー「でもまぁ、いい余興にはなるんじゃない? 私は参加しないけど」

    咲夜「それは残念です」

    パチュリー「……ほんと、早苗みたいにならないでね?」

    咲夜「……肝に銘じます」

    パチュリー「……いま、その早苗が外を飛んでったわ」

    咲夜「この雨の中をですか?」

    パチュリー「急いでたみたい……あ、続けてアリスが飛んでったわね」

    咲夜「察するに、また余計な事をして怒らせたという感じでしょうか」

    パチュリー「そんな感じがするわ……ほんと、仲いいわねぇ」

    咲夜「うちに迷惑かけないでくれたら、それは良いことなのかもしれないですけどね」

    パチュリー「ほんとそれよ」

    咲夜「でも……悪いことばかりでもありません」

    パチュリー「……フランの事?」

    咲夜「はい。ここ最近、以前より活動的になられてきましたし」

    パチュリー「……複雑だけど、確かにそれは認めざるを得ないわね」

    咲夜「早苗達は相手が誰であろうとお構い無しですからね。厄介と思う事の方が多そうですが、悪いことばかりではありません」

    パチュリー「最近は一人で外に出ることさえあるみたいだしね……」

    咲夜「あ、おそらくそれは一人ではないと思います」

    パチュリー「客人でも来てるの? まぁ既に不法侵入者だらけだけど」

    咲夜「それは否めませんが……このところ仲良くしている方がおられます」

    パチュリー「なるほど、そういうことね。確かに、あの娘なら良い友達になってくれそう」

    咲夜「どこか似たようなところがありますからね……」

    パチュリー「良い意味でも悪い意味でも、ね……フランの持つ狂気を、あの娘も持ってると思うわ。ただ、あの娘はそれを表に出す事は少ないみたいだけど」

    咲夜「似ていると言っても、種族が違いますし育った環境も状況も違いますからね」

    パチュリー「そうね……でも、あの娘は自分でここまで明るくなったのかしら。最近、見える時はよく笑っている気がするわ」

    咲夜「時間はかかったでしょうね……ただおそらく、彼女は姉のために自ら克服したのだと思われます」

    パチュリー「あの娘達にも色々あるのね……」

    咲夜「ですね、ふふっ」

    パチュリー「ど、どうして笑うのよ」

    咲夜「いえ、すみません。でもなんだか、そうやって他の妖怪の事を思い浮かべてそんな事をおっしゃる姿が何だかほほえましくて」

    パチュリー「う、うるさいわね。私だって、たまにはそう思う事もあるわよ」

    咲夜「それだけパチュリー様も変わってきてらっしゃるという事ですよ」

    パチュリー「……そんなに私って冷血だったかしら?」

    咲夜「その言葉に違和感が無い程度にそうだった時期はありましたよ?」

    パチュリー「……そう」

    咲夜「人も妖怪も、誰かと接していれば自然と変わっていきます。この人と関わったからこうなった、あるいはあの人と関わったからああなった、という風に」

    パチュリー「平行世界理論かしら」

    咲夜「ですね。あまり詳しくはありませんが、そういうものですよね?」

    パチュリー「可能性の数だけ世界が存在する……確かにね。一つ選択が違うだけで、例えば今日外出するかしないかが違うだけで、未来の私は正反対に違うかもしれない」

    咲夜「違う場所に住んでいるかもしれませんし、仲が悪かった誰かと仲良くなっているかもしれません」

    パチュリー「なら、皆がここまでこんな風に変わってきたのって?」

    咲夜「早苗の影響……ううん、そう思うと非常に怖ろしくさえ思えてきますね……」

    パチュリー「ある意味彼女に皆が絆されているわけね……ある意味、早苗教って言えそう。あの娘元々素質があるのね」

    咲夜「ただの妄想ですが、仮に霊夢と早苗が対立したとしても、今後次第では早苗の方が戦力的に高くなるなんて事もありえそうですね」

    パチュリー「究極の人たらしね」

    咲夜「ですね……あ、今度は諏訪子が庭を歩いていますね」

    パチュリー「あの娘も暇ね~。二人そろって神社ほっぽって大丈夫なのかしら」

    咲夜「守矢神社がどういう仕事をしているかはわかりませんが、神奈子が怒る事はそう少なくはないでしょうね」

    パチュリー「あの人も苦労してるわね……」

    パチュリー「……咲夜の話じゃないけど、うちは諏訪子とも相性が悪そうね」

    咲夜「ですね……雨ともなれば戦場に出ることもできませんし」

    パチュリー「対して諏訪子は雨の中だと戦力を増しそう……ふふ、考えてみると案外面白いわね。考えるだけだけど」

    咲夜「最近、掃除の合間に考える事が多くなりまして。これだけ色んな妖怪が勝手に上がりこんでくると、本気で彼女達をたたき出そうとしたらどうなるだろう、などと考えてみるのです」

    パチュリー「なるほど。でも、それはいつか検討してみてもいいかもしれないわね……」

    咲夜「ただ、追い出せそうにない妖怪もこの頃は増えてきていますから……」

    パチュリー「そういえば一昨日だっけ、あの娘も来てたわね」

    咲夜「一昨日といいますと、図書館へ来られた時のことですか?」

    パチュリー「そうそう。実に意外だったけど、きちんと入場許可をもらって入ってきてたわ」

    咲夜「案外真面目ですね、彼女は」

    パチュリー「本当は本を貸すつもりなんてなかったけど、私に挨拶もあったし、珍しく礼儀正しかったから許可しちゃったわ」

    咲夜「でも、それが本来の彼女の姿なのでしょうね」

    パチュリー「そうね……ただ、あっちでそうしている時間があまりに長すぎたから、禁忌を犯したのでしょうね」

    咲夜「あちらでの事にあまりいい思い出はないですが……」

    パチュリー「ふふ、随分と楽しかったみたいね」

    咲夜「それはもう。パチュリー様もいらしたらよかったですのに」

    パチュリー「嫌よ。痛い目見るのがわかってて行く訳無いじゃない。私の目的はロケットを作ってそれが無事月に辿り着けた時点で達成したのだから。それに……」

    咲夜「それに?」

    パチュリー「服も汚したくなかったしね」

    咲夜「ふふっ、これは一本取られましたね」

    パチュリー「本音よ」

    咲夜「でもまぁ……あんな世界では確かに退屈して禁忌に手を出したくもなるというものですね」

    パチュリー「そんなにつまらない場所だったの?」

    咲夜「少なくとも私は桃を取る事位しか楽しみがなさそうに思えましたね。あちらの方々はそれが常識なのでしょうけど」

    パチュリー「常識、ね。まるで米文学でも読んでるみたいだわ」

    咲夜「といいますと?」

    パチュリー「自分が当たり前と信じてきた世界や常識が、実はそうではなかったってやつ。または、同じことが繰り返される灰色の日々が何かを切欠に変わって色づいてしまう……あるいはその固定された文化からの脱却を描写する話」

    パチュリー「文学は時代背景を映し出すわ。文学を嗜めばその時代がわかる」

    咲夜「ええと、つまり……?」

    パチュリー「是非とも月に『絵の具』を一滴落としてみたいわね」

    咲夜「??」

    パチュリー「そういえば咲夜達が月へ行ってる間彼女に会ったのを思い出したけど……その時の事を思うとほんと、物凄く変わったわね」

    咲夜「え、あぁ、色々と心境の変化があったみたいですね」

    パチュリー「その時の事もあってかしら。あの時は、まさか禁忌を犯してしまうような人には見えなかったわね」

    咲夜「こちらに来てからも色々とあったようですし、あれだけ長く生きていれば変わりもするのでは?」

    パチュリー「そうね……」

    パチュリー「(長く生きていれば、か……)」

    咲夜「けど、先日彼女が来られた時は読み聞かせのための絵本を探しておられたのですよね?」

    パチュリー「そうね。里にある本は大方読みつくしてしまったから、と言っていたわ」

    咲夜「そういう所だけを見ていると、お淑やかで気品高い女性に見えるのですけどね」

    パチュリー「ま、何でもいいじゃない。輝夜がどんな人でどう変わったかなんて」

    咲夜「そうですね」

    咲夜「でも……彼女でさえ、早苗には強く影響されている気がします」

    パチュリー「底なしねあの緑巫女は……ああ怖い怖い」

    咲夜「守矢勢に、八雲勢や永遠亭勢、地底勢まで、一人ずつですが引き入れてることになりますね……」

    パチュリー「藍は離れるだろうけど、下克上起こされたら凄い事になりそうね……」

    咲夜「パチュリー様も楽しみ方をご理解なされてきましたね」

    パチュリー「……もうこの手の話は喋らないから」

    咲夜「ふふっ」

    パチュリー「むー……なんか気に食わないわね」

    咲夜「気のせいですよ、きっと」

    咲夜「……そろそろできたかしら。にとりの様子を見てきますね」

    パチュリー「そうね。私も整理に戻らないと。長居してしまったわ」

    咲夜「お嬢様が起きだす前に済ませてしまいたいですしね」

    パチュリー「違いないわ。今日は何を言い出すやら」

    咲夜「それも一つの楽しみですけどね」

    パチュリー「ふふ、そうね」


    ある雨の日のこと。

    ただぼんやりと外を眺めて他愛も無い話をする……

    そんな時間があったっていいじゃない。


    パチュリー「……変わったわね、私も。ふふ」


    咲夜はもう行ってしまったけど、もう少しこの雨を眺めていたい。そう思った。


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