【東方SS】幼少期レミリア「お願い事? うーんと、えっと……大人になりたい!」
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【東方SS】幼少期レミリア「お願い事? うーんと、えっと……大人になりたい!」

2017-01-31 17:57
    レミリア「お星さま、綺麗だね!」

    レミリア母「そうね、とっても綺麗……あ、流れ星」

    レミリア「ながれぼし?」

    レミリア母「そう、流れ星。ほら、お星さまがすーっと流れていく事があるでしょう?」

    レミリア「うん、あれ流れ星って言うんだ」

    レミリア母「そうよ。流れ星には言い伝えがあってね。流れている間にお願い事を三回言うと、その願いが叶うのよ」

    レミリア「ほえー、凄いんだねお星さま」

    レミリア母「ええ。今日はよく流れているから、レミリアも何かお願いすれば叶うかもしれないわよ?」

    レミリア「ほんと!?」

    レミリア母「ええ。とにかく、やってみたら?」

    レミリア「お願い事? うーんと、えっと……大人になりたい!」

    レミリア母「あらあら、折角のお願い事なのに、そんな事でいいの?」

    レミリア「うん! 私、子供はもう飽きたの!」

    レミリア母「飽きたって……そう急がなくても、いずれなれるわよ?」

    レミリア「今なりたいの! 一日でもはやく!」

    レミリア母「ふふ、そう……」

    レミリア「お母さんは、そんな風に思った事ってないの?」

    レミリア母「そうね……子供の頃は、私もそう思っていたときもあったわね……」

    レミリア「でしょ、でしょ?」

    レミリア母「ふふ、そうね、貴女の言う通りね」

    レミリア「えへへ。でも、大人になったお母さんは何をお願いしたの?」

    レミリア母「えっ?」

    レミリア「流れ星!」

    レミリア母「あぁ……」

    レミリア母「私は…………子供の頃に戻ってみたい、かな」

    レミリア「えっ……どうして? 大人、もう飽きちゃったの?」

    レミリア母「飽きたとか、そういうのじゃないのよ? でも、うーん、そうね……」

    レミリア母「子供の頃は、自分が子供として過ごしていた時間がどんなにかけがえの無いものだったか……あの頃はわかってなかったから、かな?」

    レミリア「よくわかんない」

    レミリア母「とても大切な時間だったって事。けど、昔の私はそんな風に思う事もなかったわ」

    レミリア母「そのときにしかできない事、そのときにしかわからない事、そのときにしか過ごせないひと時……すごく価値があるものだった」

    レミリア「……でも、子供だってできない事だらけじゃん」

    レミリア「一人でお食事はできないし、お外にもあんまり出れないし、みーんな私の事子ども扱いばっかりする」

    レミリア「あれもダメ、これもダメ……そんなんばっかじゃん、子供って……自由じゃないよ」

    レミリア「大人なら、そういう事全然ないでしょ!?」

    レミリア母「ふふ、そうねぇ……」

    レミリア母「たぶん、レミリアが言ったような事は、大人になればできるようになるわ。ひとりで狩りも食事もできるし、外にも出られるし、子供扱いもされない」

    レミリア「ほら! だから、大人がいいでしょ!」

    レミリア母「でもね……大人になるとね、色んな事ができるようになるけど、同じくらいできなくなる事もあるのよ?」

    レミリア「えっ……?」

    レミリア母「レミリアは、やりたい事とかあるわよね?」

    レミリア「うん、たーっくさんある!」

    レミリア母「ふふ、そう。私も貴女くらいの頃には、たーっくさんやりたい事があったわ」

    レミリア「でも、やりたい事できたんでしょう?」

    レミリア母「ええ、できたわ。たーっくさんたーっくさん、やりたい事をやってきた」

    レミリア母「子供の時にね」

    レミリア「え、大人になってからじゃないの?」

    レミリア母「そうね、大人にならないとできない事もあった。だけど、子供じゃないと出来ない事もたーっくさんあったの」

    レミリア母「だから、たーっくさんやりたい事はあったけど、たーっくさんできなかった事もあるの」

    レミリア「意味わかんないよ」

    レミリア母「大人になるとね、自分の過ごす時間にも色々と制限がついちゃうの。例えばそうね、私だけの時間でなくなっちゃう」

    レミリア母「私が好き勝手生きてしまったら困る誰かがいるの。もしかしたら、私がいなければ生きていけない誰かもいるかもしれない」

    レミリア「……私たちのこと?」

    レミリア母「……そうね、違うとは言わないわ。けど勿論、嫌だとか思ってるわけじゃないわよ?」

    レミリア「うん」

    レミリア母「例えば今私が『世界を旅したい』って言ってあなた達を置いて出て行っちゃったら……」

    レミリア「やだ! お母さんいなくなるのやだ!」

    レミリア母「ふふ、意地悪言ってごめんね?」

    レミリア「うぅ……」

    レミリア母「でも……子供の頃は、そういう事を考えずにやりたい事、思い描いている事に挑戦していけるの」

    レミリア母「子供には、いくらでも可能性がある。目の前の時間が、夢と希望に満ちている」

    レミリア「…………」

    レミリア母「あの時こうしてみたかったとか、あんな事やっちゃったとか、この歳になってくると色々と思う事があるのよ」

    レミリア「……そういうの思わないように色々やって、早く大人になればいいじゃん」

    レミリア母「ふふ、厳しい事言うのね」

    レミリア「良い歳のとり方していれば、大人になってそんな風に思わなくてすむんじゃないの? そういう歳のとりかたすれば……」

    レミリア母「そうね、レミリアの言う通りね」

    レミリア「でしょ!」

    レミリア母「でもね……私は、そんな風に生きてきたつもりなのよ?」

    レミリア「そうなの?」

    レミリア母「ええ。レミリアみたいに、たーっくさんやりたい事があったから、毎年毎年、毎月毎月、毎日毎日、満足できる時間を過ごしてきたつもり」

    レミリア「なのに、子供に戻りたいの?」

    レミリア母「ええ、戻れるとしたら、戻ってみたいわね」

    レミリア「わかんないよ……」

    レミリア母「自分の過ごしてきた時間があるからこそ、あの時こうしてみたかったなぁって思ったり、もう一度あのときの時間を過ごしたいなぁって思うのよ」

    レミリア「お母さんは、何歳くらいに戻ってみたいの?」

    レミリア母「そうね……いつでもいいわ。レミリアくらいの歳、もっと幼い頃、レミリアよりもうちょっと歳をとった時……」

    レミリア母「いつの頃もね、何かあるたびに驚いたり泣いたり笑ったり、色んな経験があったわ。その時のことは、今でもよく覚えてる」

    レミリア母「勿論、嫌な事もたくさんあったわ。良い思い出ばかりじゃない、辛い事や悲しい事、時には全部捨ててしまいたくなるような気持ちになるときだってあった……」

    レミリア母「だけど、どれも私の大切な時間だって、その時は気づけなかったのよ」

    レミリア「私は、お母さんといる時間、大好きだよ?」

    レミリア母「ふふ、ありがとう。私も、今の時間だってとても大切な時間だと思っているわ」

    レミリア母「……私たち吸血鬼の命は長い。普通の人間より、何倍も長く生きる事になる」

    レミリア「そんなの当たり前でしょ?」

    レミリア母「そう、当たり前。当たり前だから、大切な事に中々気づけなかったりするの」

    レミリア母「例えば、もし、人間と仲良くなったら? 人間と恋に落ちたら?」

    レミリア母「人間と私たちでは、流れる時間に対する感覚が全然違う。同じ一日でも、私たちにとっては長い人生の中のほんの僅かな瞬間に過ぎないと感じてしまう」

    レミリア母「でも……そう思っているうちに、人間の命は尽きてしまうのよ」

    レミリア「……人間なんかと仲良くなんて絶対ならないよ」

    レミリア母「ふふ、そうね、そうかもしれない。でも、長い人生だもの、何が起きるかわからないわよ?」

    レミリア「えー、絶対に無いよ、種族が違うんだもん。お母さんだって、人間なんかと仲良くなった事なんてないでしょう?」

    レミリア母「……………………そうね」

    レミリア母「どうだったかしらね……」

    レミリア「お母さん……? 泣いてるの……?」

    レミリア母「えっ?……ううん、大丈夫よ。ありがとね」

    レミリア「でも、そっかぁ、大人になるって大変なんだ。なんだか辛そうに思えてきた」

    レミリア母「ううん、それは違うわよ?」

    レミリア「えっ? でもお母さん、子供に戻りたいって。今より昔の方が、良いって思うんでしょう?」

    レミリア母「勿論、やり残した事があるからとか、今じゃできない事があの時ならできるとか、そういう思いも無い事はないわ」

    レミリア母「だけど、そういう意味じゃない。私が子供に戻りたいのはね……」

    レミリア母「今が何にも変える事ができないとても大切な時間だと、その時にしか感じられない事があるんだと、もう今の時間がこれから生きていく中で戻って来ることはないんだと……それを、子供の頃に感じたかったって、今思うからなのよ」

    レミリア「毎日、満足できるように生きてきたんじゃなかったの?」

    レミリア母「そうよ。でもね……ううん、だからこそ、今にしてこう思うのよ」

    レミリア「よくわかんない……」

    レミリア母「その時その時にはわからないものなのよ。だから、昔の事を思い出したりて、ふとこう思う時があるの」

    レミリア「後悔してるわけじゃないってこと?」

    レミリア母「その通り。レミリアは賢いわね」

    レミリア「えへへ」

    レミリア母「子供の時にしか過ごせない子供の時の時間、それは一生の宝物よ。勿論、今の時間だって、何にも変えられないとても大切な時間だけどね」ナデナデ

    レミリア「ふぁ、えへへ。うん!」











    レミリア「(……綺麗な夜空。こんな空を見ていると、思い出すわね)」

    美鈴「あ、今の流れ星じゃないです!?」

    パチュリー「見えなかったけど……消えるのが速すぎてわからなかったわ」

    こぁ「勿体無いですね~、私なんてお願い事しちゃいましたよ! 十回くらい」

    咲夜「それ、おそらくちゃんと言えてないわよね……」

    フラン「十回なんて無理だよ。あの速さじゃ一回も無理」

    こぁ「皆さん酷いっ……まぁ十回は嘘ですが」

    美鈴「嘘かーい」

    レミリア「ねえ、何の話してるの?」

    パチュリー「あ、レミィ起きたの」

    レミリア「え、別に寝てなかったけど」

    咲夜「静かに目を閉じておられたので、お休みされているのかと」

    美鈴「起こさないでおいたんですよね」

    レミリア「まぁ、意識はこっちになかったけど……」

    こぁ「考え事でしたか?」

    レミリア「ん……別に、それ程の事でもないわ」

    パチュリー「そう。なら、一緒に星を眺めましょう?」

    美鈴「流れ星に願い事しましょう! 次流れてくる時がチャンスですよ!」

    こぁ「今度こそ十回唱えてやる……」

    咲夜「いや、確か三回でいい気がするけど……」

    レミリア「願い事、か……」

    パチュリー「困ったものねぇ。でも……レミィは何かお願いするの?」

    レミリア「お願い事? うーんと、えっと…………」







    この歳になって、たまに思う事がある



    歳をとった今だからこそできること
    幼かったあのときにしかできなかったこと
    やろうと思えば今でもできること
    やりたくても今ではもうできなくなってしまったこと
    ちょっと考えてみただけでも、沢山の、本当に沢山の「やりたい事」が浮かんでくる


    あの時お母さんが言っていたように、私もやりたい事を沢山やって生きてきた

    自分が満足して生きていられるように、後悔が無い人生を過ごすために、可能性の広がる未来を作るために



    もしかしたらあの時、心の中では「私はそうはならない」なんて気持ちがあったかもしれない


    だけど今まで、いっぱい経験して、いっぱい考えて、いっぱい足掻いて

    そうやってきたからこそ、今の自分がここに存在していて、だからこそこうして思う事がある


    それは、後悔なんかじゃない。昔に戻ってやり直したいって意味でもない






    あのときから今まで、本当にあっという間に時が流れてしまった

    色んな人と出会って、色んな人と交流して、色んな人と過ごしてきて、そして今がある

    たぶん、こうしている今の時間でさえ、何十年後何百年後には「この頃に戻ってみたい」なんて思うんだろう

    そして、今まで生きてきた時間の分だけ、同じような事を思い始めている



    まだまだ、お母さんの生きた時間には遠く及ばないけど……

    この歳になってようやく、お母さんの言っていたこと、少しは理解できてきたのかもしれないわね……









    -終-
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