ゆかりんが記憶喪失になる話【東方SS】
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ゆかりんが記憶喪失になる話【東方SS】

2015-03-04 00:13
  • 4
独自設定や原作設定の改変がありますので注意ですよ
特に、紫と藍、幽々子についての独自設定が満載です。この辺りのキャラの過去やそれぞれのストーリーの創作に抵抗がある方は見ない方がいいです
あと、原作設定であってもその要素が生かされていなかったり全く違うものとなっている場合があります。元々私の二次創作は基本的に原作に忠実にという意向ですが、「知らなかった」「知っているが敢えてこうしたかった」などの理由により、原作に沿わない事が出てくる可能性があります

ゆかりん達の過去を考えるとしたら、こんな感じかなぁってくらいの設定です。というか、本当にものすごく勝手に想像した内容になってます
また、この話が私の中での紫、藍、幽々子の独自設定のベースになってはいますが、これが最終稿という感じで考えているのではなく、あくまで「こんな過去かもしれない」というくらいで書いてます。ただ、全く別の過去や設定があるというわけではなく、これに他の設定が付随したり所々変更したりというくらいです
まぁ、あくまで二次創作ですので

また、当記事は「SS」です
小説でありそうではなく、シナリオでありそうではありません(SSがどういうものかという内容の記事をいずれ書こうと思います)

「形式にとらわれずに、文字で表現する世界」と思っていてください
(認識が難しい場合は「小説のような何か」と思っていておkです)





では、以下内容











紫「あー暇ね。暇すぎるわ。暇すぎて融けるわ」

藍「全くもって意味がわかりません。というか、暇ならご自分のお部屋を掃除されてはいかがですか」

紫「それは昨日藍がしたでしょう? なら、今日やっても意味はないわよ」

藍「お願いですから、自分の部屋くらい自分で掃除してくださいよ……あーもう、床でごろごろしないでください」

紫「もう、藍はいつからそんなあれこれ言う子になったのかしら?」

藍「私だってあまり言いたくはないですけど、自由奔放すぎる様を見て何かを言わずにはいられないのです」

紫「自分の家なんだから何しててもいいじゃない別に」

藍「それは構いませんけど……ああ、なんていえばいいのやら……」

藍「それより、今日の結界の確認は済んだのですか?」

紫「それも藍がしてくれるでしょ?」

藍「今日の夕飯がかなり遅れてもいいなら、それでかまいませんけど」

紫「えーそれじゃ就寝時間に間に合わないじゃない! 両立しなさいよ」

藍「無茶言わないでください!」

紫「もう、しょうがないわねぇ……」

藍「結界管理も大切なお仕事なのですから、だらけたらダメです」

紫「はいはい。じゃ、行ってくるわぁ~」

藍「いってらっしゃいませ」

藍「……ふう、ようやく行かれたか」

藍「まったく、紫さまのだらけ癖には困ったものだ。いつからああなってしまったのやら……」

橙「藍しゃま、ただいま帰りましたのです」

藍「おお、橙おかえり。迎えに行けなくてすまなかったな」

橙「橙は一人でも帰れるのです。だから大丈夫なのです」

藍「えらいぞ。でも、何が起きるかわからないし、一人で帰るのは危ない」

橙「ふぇ、橙はもう大人ですよう」

藍「そうだな。橙は立派だ。でも、いくら立派でも、危ないものは危ないんだ」

橙「そういうものですか」

藍「そういうものだ」

橙「ところで、紫さまはおられないのですか?」

藍「紫さまはお仕事に出かけられたよ」

橙「そうでしたか。紫さまは真面目ですね。憧れちゃいます」

藍「うーん、それは、どうなんだろうか……あまり、手本にしなさいとは言えないな」

橙「でも、橙は紫さまの事も大好きですよ? 時々藍しゃまが頭を抱えてるのも見てますけど、紫さまは紫さまですから」

藍「そうだな。変な事言ってごめんな。私も、紫さまは凄いと思うよ」

橙「では、橙は宿題をしてくるのです。一人で頑張りますから、藍しゃま、横から何か言ったりしないでくださいね」

藍「うん、わかった。私は別の所にいるとしよう」

藍「橙は宿題、紫さまは仕事か。家事も粗方終わってしまったし、紫さまではないが私も暇になってきたな……」

藍「……たまには、いいよな?」

藍「よいしょ」

藍「…………すやすや」










霊夢「で、今度は何をしようってわけ?」

紫「どうして私がやってきただけでこうも警戒されないといけないのよ」

霊夢「あのねぇ……あんたが来るとロクな事がないわけ。どうせまた面倒事でも持ち込んできたんでしょうに」

紫「酷いわぁ。単に遊びに来ただけなのに」

霊夢「遊びにって……その様子だと、結界の様子でも見に行ってきたの?」

紫「あら、わかる? まぁ行ってきたんじゃなくて、これから行くんだけどね」

霊夢「ならさっさと行ってきなさいよ」

紫「もう、いけずなんだから」

霊夢「意味が分からないわ。何でもいいから、さっさと行きなさい」

紫「わかったわよ。今度ゆっくり遊びに来るわ」

霊夢「はいはい」

華扇「……行ってしまいましたね」

霊夢「うわ、あんたいたの」

華扇「さっき来たところです」

霊夢「神出鬼没というか……突然やってくるのやめてよね」

華扇「私としては突然来たわけではないのですが……見られて困るものでもあるのかしら?」

霊夢「そんなものは別にないけど」

華扇「今日もお茶を飲んで昼寝する一日?」

霊夢「う……し、仕方ないでしょ、他にする事ないんだから」

華扇「する事がないのではなく、見つけようとしないとりかかろうとしない、ではなくて?」

霊夢「……あーもう! わかったわよ、ちゃんとするわよ」

華扇「それでいいのです」





紫「ん……結界に異常は見られないわね。状態良好、特に気になる所も……」

紫「あら? どうしてこんな所にほころびが……これは、何のほころびかしら。結界に影響はないようだけど……」

紫「感触からして、何かの残り香ね。放っておいたら消えるだろうし、大丈夫ね」

紫「さ、帰ってお酒でも飲みながらゆっくりしようかしら」

ピシッ

紫「え、なに?」

バシュッ

紫「きゃ……さっきのほころび……? でも、もう跡形もないわね。いったい何が……」

紫「…………?」

紫「……うん、あれ?」

紫「うーん…………うん?」

紫「私、どうしてこんな所にいるんだっけ」

紫「お買い物の帰り……? でも何も持ってないし、これから行く所だったかしら」

紫「とりあえず、家に帰りましょう」










紫「ふう、遠かったわ……あの距離飛ぶのも一苦労……」

藍「あ、紫さまお帰りなさいませ。もう夕飯の準備は整って……」

紫「!?」

藍「紫さま? どうかされましたか?」

紫「え、あ……」

藍「? 紫さま?」

紫「ま、間違えました!」

藍「はい? あ、ちょっと」


紫「はぁ、はぁ……ここ、私の家……よね?」

藍「紫さま?」

紫「ひいっ」

藍「もう、何なんですかいったい。今度は何の遊びですか?」

紫「え、あ、あの」

藍「なんです?」

紫「こ、ここ私の家だと思うんですけど……」

藍「そうですけど。というか、どうして敬語なんですか。不自然極まりないですよ」

紫「え、そ、その……私の家、ですよね?」

藍「もう、いい加減にしてください。反応に困るじゃないですか」

紫「こっ、ここ、困ってるのは私です!」

藍「はい? 紫さま……あのですね」

紫「どうして私の家に堂々と侵入してるんですか!」

藍「へ……?」

紫「も、もしかして侵略……? でも、私なんかどうこうした所で何の足しにも……」

藍「ゆ、紫さま……?」

紫「近づかないで! というか、どうして私の名前知ってるの!?」

藍「え、ちょ、ちょっと……いくらなんでもこんなの、性質の悪い冗談ですよ……?」

紫「それに、よく見れば狐……しかも、きゅ、九尾……」

紫「わ、私をどうするつもり? とって食うつもりなの……? お、おいしくないわよ、きっとおいしくなんて」

藍「ちょっと待ってください。どうしてそんな話になるんですか」

紫「きゅっ、九尾の狐が一端の妖怪風情に何の用ですか!」

藍「お、落ち着いてください! 暴れないで!」

紫「や、やぁ! 食われる、そんなのは嫌ぁ! いやっ、いや! いやっ……」

藍「紫さま! 紫さ……おっと!」

紫「…………」

藍「気絶してしまわれた……いったい何がどうなってるんだ……」














東方SS:ゆかりんが記憶喪失になる話




















どうすればいいかわからないというより、そもそも意味がわからない。
気絶してしまった紫さまを布団に寝かせ、看病しながら私は眉間にしわを寄せる。
つい一時間程前、結界の見回りから帰ってこられた紫さまは、私を見るなり錯乱して倒れてしまった。
私にむかって、どうしてここにいるんだとか、自分を食べるつもりかとか、全くらしくない言葉を沢山投げかけてきた。
その様子はまるで……

藍「記憶喪失……」

本当に、意味がわからない。
紫さまは誰もが怖れる大妖怪だ。私なんかでは到底及ばない程の力を持つ、幻想郷の支配者。
それが今では……まるで名も知られていない、新参の妖怪。それも、非常に力の弱い妖怪みたいだ。

どうしてこんなことになった? 結界の見回り中に何かあったのか?
しかし、紫さま程の方に何か影響を及ぼせる物がある事自体疑わしい。

藍「私の事、知らない素振りだったな……」

ここが自分の家である事は認識していた。
でも、姿を見て私が九尾の狐だという事はわかったようだが、私がここにいる理由は全く知らないようだった。
そして、自分の事も一端の妖怪風情などと言っていた。

自分が妖怪である事や、ここに住んでいる事はわかっている。
が、自分がどれほどの存在で、どんな者を従者にしているか、それは覚えていないようだった。

だが、私は紫さまの式神としてここに存在できてきる。だから、紫さまと切れてしまったわけではない。
深層心理か、あるいは無意識の一部で本当の自分を守れている状態なのだろうが……

紫「ん、う……」

藍「ゆ……」

声をかけようとして、止める。
まだ記憶を失った状態だとしたら、私がここに居る事でまた錯乱するのではないか?
でも、だからって姿を隠すわけにもいかない。きちんと話をすべきだ。
こんな状態など一時的なものだとは思うが……本当に心配だ。

紫「う……あれ、私……」

藍「紫さま」

紫「ん……?……っ!?」

紫さまはゆっくりと目を開き意識を覚醒させていったが、おそらく視界に私が映ったのだろう、次の瞬間には物凄い勢いでその場を離れようとした。
だが、うまく立ち上がる事はできず、途中で床に手をつき転び、這いつくばる。そのままずりずりと匍匐して壁際まで行った。
それは、惨めとしか形容できない姿……こんな紫さま、見たくない。

藍「紫さま、どうか落ち着いてください」

紫「あ、ああ……わ、私を殺すの……?」

藍「そんな事は致しません。まず、そこに座って深呼吸してください」

紫「やっ、や……怖い…こわいよう……」

藍「大丈夫です。私は紫さまの味方です」

紫「私に、九尾の知り合いなんていないわよ……騙して、食べるつもり……?」

藍「私は紫さまの配下です。間違ってもそんな事はしません」

紫「はい、か……? そんな、ありえないわ……下手な嘘吐かないで……」

藍「紫さま。こちらは見なくてもいいですから、落ち着いて聞いてください」

藍「紫さまは、記憶を失っておられます。ですから……」

いや、ダメだ。
記憶が無い相手に「お前は記憶を失っているんだ」なんて言っても、怪しいだけでしかない。
むしろ不審者認定されてしまい、以後ほぼ永遠に信用を勝ち取る事はできなくなってしまう。

藍「……わかりました。私は一旦ここを出ます。向こうの部屋にいるので、落ち着いたらいらしてください」

藍「夕飯の準備もできていますので」

紫「…………」

紫さまはこちらを見る事は愚か、返事すらくださらなかった。
でも、聞いてもらえたと思ってここを出るしかない。
私はゆっくりと立ち上がり、部屋を出る。
その際に紫さまの方を見たが、紫さまはこちらを見ずに頭を抱えて震えていた。



藍「さて、これからどうするか……」

ありえないくらいの異常事態に、正直私自身冷静でいられていない。
だが、考えなければならない事は山のようにある。
紫さまがこうなってしまった原因を探る事もだが、いつ紫さまが元に戻るかもわからない以上、幻想郷の管理は一時的に私が行わなければならない。
そうなれば霊夢にも協力をお願いするしかなくなる。果たしてあの巫女が素直に頷いてくれるかどうか……
橙は暫く事情を話して慧音の所で面倒を見てもらった方がいいかもしれない。この状況を見せるのは酷であろう。
あとは、この状況を一人で抱え込んでしまうと悪い方向にしか行かないだろうから、相談できる相手を探す事……

藍「幽々子様か、妖夢しかないな……」

紫さまがこちらに来られたらまず話をして、とにかく落ち着いてもらうしかない。
私は敵ではない事を認識してもらう必要がある……できれば自らのお役目や私の事くらいは思い出してほしいものだが……

藍「橙。ちょっといいか」

橙「藍しゃま? 宿題のお助言でしたら、謹んでお断りさせていただきますよ?」

藍「宿題の途中ですまないが、お使いを頼みたいんだ」

橙「今からですか? でも、もう遅い時間ですよ……?」

藍「ああ。本当ならこんな時間に外へ出る事をさせたくないんだが……」

橙「何か大事な用事なのですね? わかりました。橙、頑張ります」

藍「うん、ありがとうな。ちょっと慧音先生の所に行ってきてほしいんだ。それで、これを渡してほしい」

橙「先生の所ですか? わかりました」

藍「着いたらこれを渡して、その場で読んでもらってくれ。それから、慧音先生の言う事をきちんときくんだぞ」

橙「ふぇ? わかりましたけど……」

藍「遅くなるだろうから、そのまま慧音先生の所に泊めてもらうといい」

橙「ふぁ、そういう事でしたか。でも、お夕飯はどうすれば」

藍「こちらの事は気にしなくていい。必要な事は全てこれに書いてあるから、あとは先生に任せるんだ」

橙「わかりました。では、行ってきますね」

藍「ああ。くれぐれも気を付けるんだぞ」

橙「はいです」

橙は宿題を鞄に片付け、手紙をもって出掛けて行った。
本当はこんな時間に一人で外へ出したくないが……私が今ここを離れるわけにはいかない。緊急事態だ、やむを得ない。

藍「さて、紫さまがいつこちらに来られるか……」

物凄く警戒しておられたからな……こちらに来ていただけないかもしれない。
そうなると説得するのは骨だが……
しかしそういえばこの状態、似ている。あの頃の紫さまに……

紫「あ、あの……」

藍「!」

藍「来ていただけましたか」

紫「……はい」

藍「良かった。さ、こちらに。夕飯も用意してあります」

紫「…………」

藍「そんなに警戒しないでください。毒など入ってはおりません。ほら、この通りです」

そう言って机に並んだ料理を一つ口にしてみせる。
そしたら紫さまは、おずおずとこちらにやって来られ、机の前にお座りになる。
そして料理を一口……

紫「あっ、美味しい」

藍「ありがたき幸せ」

紫「……あの」

藍「はい」

紫「貴女は……その、どういった目的で……」

……やはり、そう簡単に警戒は解けないか。

藍「突然の事で驚かれたでしょう。ですが初めに申しておきます。私は、貴女の敵ではありません」

紫「……貴女、九尾の狐ですよね? そんな強大な妖怪がどうして私なんかの所に……?」

藍「私は、貴女の仕事を手伝いに来ました」

紫「仕事……? 私は何もしてない……ただの無名な妖怪だし……」

似ていると思ったが、やはりか……
紫さまははるか昔……まだ大妖怪と呼ばれる存在になられる前、幻想郷の統治者としてこの地に君臨する前に記憶が戻ってらっしゃる……
これは記憶喪失というより、何らかの理由で記憶がロールバックしてしまっていると言う事か……?
仕事という仕事もなく、私にも見覚えがない……まだ私と出会う前の紫さまだ。

私が初めて紫さまに出会った時……紫さまはまだ、全く力を持っていないただの妖怪だった。
それも、人間と見分けがつかない程に小さな存在だった。
そういえば、初めて会った時はこんな風に怯えてらしたっけ。

藍「信用しろと言っても難しいでしょうけど……私は貴女の味方です。家族なのです」

紫「か、家族……?」

藍「ええ。わけあって、私は紫さまの家族となったのです」

紫「え? え?」

突拍子もない事を言っているのはわかる。
だが……紫さまが強大な力をお持ちになってから再会した時、紫さまは私を殺す事もしなければ再起不能にする事もしなかった。
あの時紫さまは「わざわざ」私に会いに来たのだ。

たとえ全てを支配しかねない力を持っていても、永遠に戦い続けなければならないものがある。
それは……孤独だ。
あの時紫さまは私を求めてくれた。だから、今度は私が求めたい。
まぁ、当時の紫さまに戻っているとすれば、孤独が最大の相手になっていた頃だろうから、というのもあるのだが。

藍「(あまり計算でこういう事を言うものではないな……)」

胸が痛むが、仕方ない。

紫「で、でも、やっぱりおかしいです! 貴女みたいな妖怪が、私なんかに……」

藍「そうですね。確かに、私には一つ目論見があります」

紫「あう……」

藍「信じられないかもしれませんが、貴女にはとても大きな力が眠っています」

紫「大きな、力……?」

藍「ええ。私はそれにあやかりたい。だから、今のうちから仲良くしたいという事です」

紫「何を言ってるの? 私にそんな力なんてありませんわ……」

藍「いえ、あります、確実に。それこそ、九尾の私が言うのです。紫さまの言葉を借りれば、一端の無名妖怪をこんな風に騙す意味などないでしょう?」

紫「それは、まぁ……」

藍「紫さまは普段通りにしていればよいのです。私は、そのお手伝いをしますから」

紫「…………」

実を言うと、少し興味はあった。
私が初めて紫さまに出会った時から何年もの時間が経ち、紫さまは最強と言ってもいいほどの力を持った妖怪へと成長された。
だが、その過程を私は知らない。何度か尋ねた事もあるが、結局教えてもらえていない。
潜在的に力は持っていたのかもしれないが、如何にしてここまで鍛え上げたのか……紫さまの以前の私生活には興味がある。

藍「やはり、信用できませんか」

紫「貴女の言う事が嘘か本当かはわかりませんけど、私の生活は面白いものじゃありませんよ?」

藍「かまいませんよ。私は確信していますから」

藍「これから、私の事はこき使っていただいて構いません。買い出しでも炊事でも、何でもやりますよ」

紫「そ、そんな! 九尾の狐にそんな事させられません!」

はは、これが毎日何でも容赦なくやらせるようになるのだから……慣れとは恐ろしいものだ。

紫「と、とにかく、今日はもう寝るだけです。おやすみなさい!」

藍「おやすみなさいませ」

紫さまは早口でそうまくし立て、部屋を出て行く。

藍「?」

が、すぐに戻ってきた。

紫「片づけは私がやります。貴女は居間で本でも読んでいてください」

おお……これは、なんだか感動的……
だが、これが本来の紫さまでもあるのだ。
他人の心を理解し、優しく、身内に甘い。八雲紫という人物は、元々そういう性格の持ち主なのだ。

藍「(しかし、見れば見る程不思議な光景だ……寒気すら覚えるかもしれん)」

本当に、慣れというのは恐ろしい。
紫さまと初めて会った頃は、こんな光景が当たり前だったというのに……

流石に仕事を奪うまでするのは気が引けるので、言われた通り夕飯の片づけは紫さまにお願いする。
ただ、私はその姿を後ろから見ているのだが。

紫「……お皿を洗う姿を見て、何か面白いですか?」

藍「ええ、とても」

これがこんな非常事態でなければ、紫さまへの敬意の念も忘れて大笑いしただろう。
普段だらしない紫さまが、自ら進んで皿洗いをしているのだ。私だけじゃない、霊夢達が見れば、きっと容赦なく笑う。
ふふ、だんだん昔の事を思い出してきた。

紫「……片づけは終わりました」

藍「はい」

紫「……よく考えたら、入浴がまだでした」

藍「そうですね」

紫「……入れてきます」

藍「はい」

紫さまは何ともいえない表情で今度こそ部屋を出て行く。

藍「……非常に不謹慎だが、何だか楽しい」

忘れかけていた、どこか懐かしい生活感……紫さまがいつも通りでないだけで、こうも違うとは。
まるで別人のようだから、無理もない事だが。

藍「そろそろ来る頃だが……」

橙はもう慧音の所に辿り着き、その慧音が妖夢に連絡してくれている頃だろう。
妖夢か幽々子様がこちらに駆けつけてきてくださると思うが……
幽々子様なら何かご存じかもしれない。なにせ、紫さまとは古くからのご友人であり、今も昔も仲が良いいのだから。

藍「……懐かしい」








その当時、紫さまは本当に非力な妖怪だった。
元は人間だったのか知らないが、現在風に言えば、スペルカードを持たない敵。言い方を悪くすれば、雑魚。
森の奥に住まいを構え、そこでひっそりと暮らす無名の妖怪。

紫さまは、はじめて私に会った時から「八雲紫」と名乗っていた。
それが人間として生きていた頃の名なのか、妖怪として生まれ持った名なのかはわからない。
けど、自分の名前だけは、はっきりと名乗った。

出会いは本当に唐突だった。
当時その森を実質支配していた私は、まだ八雲藍の名前を与えていただいていないが……名前の事はまぁいいだろう。とにかく、その当時私は、暇だったから辺りを見回りに行っていた。
見回りと言っても秩序ある何かを見て回るわけじゃない。面白そうな事はないか、ただそれを探していた。
天狐は高貴な存在だが、私の存在は狐社会のそれとは少しだけ違っていた。
別に、はみ出し者というわけではない。九尾の狐として恥じない生き方はしていたつもりだ。
だがそれでも、天人のような生活は好きじゃない。人間と関わりも持ちたくはない。
一度だけ、幼い頃に人間とかかわった事はあったが、その人間はすぐにいなくなってしまった。まぁ、人間と妖狐では寿命が違いすぎるから当然だ。
ともあれ、私は森を適当に歩き回っていて、その途中で紫さまに出会った。

藍『おや? こんな所にこんな建物などあったか……?』

紫『えっ?』

藍『む?』

紫『ひっ、ば、ばけもの……』

紫さまに初めて言われた言葉がこれだった。

紫さまは、それは大層驚いた様子だったが、実はその時私も驚いていた。
その森の事は知り尽くしているつもりだったが、そこに見たこともない妖怪がいたのだから。
それだけじゃない。その妖怪は、いつの間にか住居を構え、ひっそりと暮らしていた。その時になるまで、私は全く知らなかった。

暫くは硬直したようにお互いを見ていたが、先に我にかえった紫さまははっとして逃げてしまった。
あまりに唐突の事だったので、私はぽかんとそれを見ているだけで、後を追う事ができなかった。修業が足りないと思った瞬間だった。

それから私は何度か紫さまの住居へ行った。
その度に紫さまは驚いて逃げた。
その様子は、傍から見れば強者が弱者を追い回し虐めているようにも見えたかもしれないが、不思議と私に追い回しているという認識はなかった。
むしろ私が遊ばれているような、そんな感覚に近かった。

はじめてまともに話ができたのは、紫さまと初めて会ってから一年くらいしてからだったか……
その日は紫さまに会いにいくつもりもなかったのだが、そういう時に限って上手い具合に会ってしまう。
こうも何度も顔を合わせていると、嫌でも相手を意識してしまうというもの。
観念したのか、紫さまは少し険しい表情をこちらに向け、声の限り叫んだ。でもその声は震えていた。

紫『わ、私をどうするつもり? とって食うつもりなの……? お、おいしくないわよ、きっとおいしくなんて』

紫『いや、でも自分で食べた事ないしわからないけど……』

元々取って食おうとしていたわけじゃない。
私のあずかり知らぬうちに私のテリトリーに住居を構え、何も知らず平然と暮らしている……そんな底辺妖怪に興味がわいただけだ。
……いや、もしかしたらこの時からわかっていたのかもしれない。
そもそも、私が関知できない時点で異常なのだ。紫さまは、この時既に、妖怪最強とも言える力をその身に宿していたのだろう。
ただ、本人がそれに気づいていないだけで、その才能は紫さまの中で眠り続けていた。

藍『くく、ははは』

紫『な……何がおかしいのです!』

藍『これまで命乞いをしてきた奴はごまんと見てきたが……お前ほど緊張感の無い奴は初めてだ。どの妖怪も人間も、私と敵対したならばなりふり構わずひれ伏し泣き叫び、乞う』

紫『わ、わたしだって……』

藍『確かに、この私に目をつけられたのだ。お前は今、死の瀬戸際にいると言っても過言ではない』

紫『…………』

藍『だが……お前は実に運が良い。喜べ、この私がお前に興味を持った』

紫『興味……?』

藍『そうだ』

……今、こうして当時の自分を思い返すと……おそろしい。
私は紫さまにあんなことを言っていたのだ。今言ったらどうなるやら……

それから私は、暇になれば紫さまの所へ行った。
紫さまは暫くは警戒を解いてくださる様子はなかったが、時間が経つにつれ、少しずつ世間話のようなものもしていった。
それは、他の人間や妖怪とあまり親しく接点を持たない私にとって、何ともむずがゆく心地の良い時間だった。
まぁ、私の武勇伝を話すと紫さまは決まって不満そうな顔をしたが。


紫さまは確かに力は弱かったが、当時から頭はかなりよかった。
単純な思考力で言えば既に私以上。いや、あれはどんな人間でも妖怪でもきっと敵わなかったに違いない。
今でこそ紫さまの頭脳は神をも超越していると言っても過言ではないが、当時からそうだったのかもしれない。

ある時、私が妖狐の森の正確な測量を行うのに夢中になっていると、横から紫さまがおずおずと意見をしてこられた。
名もなき妖怪に解けてたまるかとその時は思い聞き流していたが、後になって紫さまのおっしゃった式で検算し再計算してみると、数分の狂いも無い証明が完成してしまった。
この頃からだろう。私が紫さまに、本格的に興味を示し始めたのは。

今まで、どの人間も妖怪も、相手にしてきてつまらない者ばかりだった。
力比べでは私の足元にすら及ぶ者はいない。知恵比べでも私より素早く計算を完了させ、証明を仕上げられる者など誰もいない。
だが、紫さまは今まで相手にしてきた者達の何十倍、いや、何百倍何千倍もの頭脳を発揮して私を打ち負かした。
それも、完膚なきまでに。

それからというもの、私は毎日紫さまの所へ行った。
棲家に戻らず紫さまの家に無理に押しかけて泊り込んだ事もあった。
もうその頃になると紫さまもあまり私を警戒しなくなっていたから、夕飯を共にする事もざらになっていた。

紫さまを自分の弟子にしてやるという旨の発言をした覚えもある。
紫さまがその時の言葉を覚えていらっしゃるかはわからないが……できれば忘れていてもらいたい。
他にも、今では恐ろしくて冗談でも口にできないような事を沢山言った。


ある日のことだ。紫さまがいつになく嬉しそうな顔をしていたので尋ねてみると、里で友達ができたと言った。
里といえば、人間の住む場所だ。つまりは、人間の友達ができたと言っているのだ。
私は呆れながらも紫さまの話を聞いた。
その人物は、とても綺麗で、落ち着いていて、そして不思議で悲しい力を持っているのだという。
その友人と、ただ名前を呼び合うのがひたすらに楽しいのだとか。当時の私にはあまり理解できなかった。

だが、私は更に驚く話を紫さまから聞かされた。
紫さまはなんと、鬼とも面識があるというのだ。
鬼と言えば絶大な力を誇る種族で、その存在はどんな強力な妖怪だろうが鬼と言う言葉を聞いただけで顔を引きつらせる程。
無論私とて鬼の強靭さは重々わかっており、いつか機会があれば手合わせしてみたいとも思っていた。
そんな存在と、紫さまは知り合いなのだという。
知り合い、という言葉に何だか拍子抜けしたが、更に驚く事に、まるで友達のような存在だという。
当時の私にしてみれば、ひたすら意味がわからないだけであった。
もしかしたら、その当時からその鬼も、紫さまの力を見抜いていたのかもしれない。


確かに紫さまはその身に計り知れないほどの力を潜在していたが、その力が顕現する様子は全くなかった。
紫さま自身そんな力がある事を信じておらず、毎日ただ生きるためだけに生活をしていた。
力をつけてはどうかと修行のようなものを勧めてみた事も何度かあったが、どれも丁重にお断りされてしまった。
私も私で、そんな紫さまを眺めている毎日になんだか満足してきていた。
誰からも怖れられ出会うだけで命を乞われていたこの私が、こんな生ぬるい生活の中に生きる事を選ぶとは……
だが、それも悪くないと思った。




しかし、そんな平穏な日々は唐突に終わりを告げる。



いつものように紫さまの棲家を訪ねたのだが、その日は珍しく紫さまはいなかった。
その日はどういうわけか無性に紫さまと話がしたかったので、私はそこで暫く待つ事にした。

だが、どれだけ待っても紫さまは戻ってこない。
紫さまは、食料を調達するなど少々出かける事はあったが、基本的にこの家や周辺から離れる事はなかった。

そういえば、と思い出す。
いつだったかに、紫さまは楽しそうに里でできた友人について話していた。
もしやと思い、私は里の方に足を向ける。
紫さまは私の話し相手なのだからと、少しその友人に嫉妬していたのかもしれない。
だが、それはすぐに別の感情へ変わった。

紫さまの友人の住処は聞いたことがなかったが、紫さまの話からだいたいは推測できた。
果たして、紫さまはそこにいた。
いたのだが……

藍『どうした……?』

紫『…………』

紫さまは、友人の家と思われる邸宅の庭にいた。大きな美しい桜が特徴的な場所だった。

藍『おい、何が……』

紫『……っ』

藍『おい……おい!』

その美しい桜を見上げていた紫さまが、突然力なく倒れた。
寸での所で身体を支えたが、その身は驚くほどに軽く、存在そのものが希薄になっていた。

藍『お前、いったい何を……』

紫『ねえ……藍』

藍『なんだ?』

紫『あなた、いつだったかに、私に凄い力が眠ってるって……そう、言ったわよね……』

藍『ああ……正直、私も驚く程の力が潜在されている』

紫『っ……でも………ったの……』

藍『うん?』

紫『ダメだったの……私の…私なんかの力じゃ、全然だめだったの……』

藍『何を言って……』

そこでふと、気が付いた。
目の前の大きく美しい桜が……枯れて、いや、まるで時が戻っていくように、花がしぼんでいく。
満開に咲きほこっていた桜は見る見るうちに輝きを失っていき……最後には、花はおろか葉一つつかない枯れ木となっていた。

藍『お前、まさか……』

紫『助けられなかった……あの子の苦悩から救ってやれなかった……』

藍『馬鹿! だからと言ってお前もこんなことをしたら……っ!?』

紫さまの身体がどんどん軽くなっていくのがわかる。
紫さまは、その友人を助ける……いや、助けられなかったせめてものお詫びとして、友人に何かをしたのだ。
紫さまが何をしたのか、その当時はわからなかった。
ただ、それを行った事で紫さまの存在はどんどん希薄になっていき、今にも失われてしまいそうになっていった。

紫『楽しかった……』

藍『え……?』

紫『貴女と過ごした不思議な日々は……最初は怖かったけど、でも、どんどん楽しくなってきて……』

藍『そういう話はやめろ。私を誰だと思っている。このような窮地、たちどころに……』

藍『どういう事だ……処方できない、だと……』

紫『貴女の言っていた事、私に大きな力があるって……ダメだったけど、やっぱりダメじゃなかったのかな……』

紫『貴女のそんな顔を見ていると…もしかしたら最期にあの子にした事は、大きな…力があったからこそ……できた事なのかな、って……』

藍『ふざけるな。何を勝手な……こんな時だけ…無名の妖怪風情のくせに……』

紫『…あなたに……もっと、そうだん……していれば、よかった…のかも……しれない……』

藍『もういい、喋るな。静かにしていろ。今、何とか方法を……』

紫『さいごまで、しんじられなくて…ごめん…ね……』

紫『もしも…また、あえたなら……そのときは…………』

藍『おい……おい! 寝るんじゃない! 起きろ!』

紫『…………』

藍『何故だ……お前の力は…お前のその想いにすら反応しなかったというのか……』

藍『畜生……畜生…………』




紫さまは、死んだわけではない。
普段使い慣れない強大で多量の力を出し切ったために、その身体が防衛本能を働かせ、睡眠状態に入ったのだ。
長い長い睡眠に。生きているのか死んでいるのかもわからない程、深く、深く。

私は紫さまを元の棲家に連れて行って、いつも紫さまが夜を過ごしていた場所に寝かせてやった。

藍『もしまた会えたら、か……』

紫さまの持つ力の強大さは私がよくわかっている。
もし無意識的にもそれを使ったというのなら、次に紫さまが目を覚ますのは相当先の事だろう。その時は、九尾の私と言えども生きていないかもしれない。
だけどどうしてか、笑いがこみあげてきた。
次に会った時、紫さまはいったいどんな反応を示すだろう? また、慌てふためいて私の事を怖れるだろうか?
それとも今度は……









藍「……少し、眠ってしまったか。ん?」

何やらあったかいと思ったら、毛布がかけられていた。
それ程長く眠っていただろうか? いや、それよりも……

藍「やはり、あの頃と変わらないな……」

辺りはもう暗くなっている。
紫さまはもうとうに入浴を済ませ、ご就寝されているだろう。
そういえば、妖夢か幽々子様はもう来られたのだろうか? この様子だとまだのようだが……

藍「ん?」

紫「あ」

藍「まだ起きておられたのですか」

紫「ううん、ちょっと、気になって……」

藍「何がです?」

紫「その…………な、なんでもないです!」

藍「あ、ちょっと……」

紫「ぎゃふん」

慌てて部屋を出て行こうとした紫さまだったが出入口の所で何かにぶつかり、派手に転ぶ。

藍「あ、幽々子様……」

幽々子「晩御飯食べてたら遅くなっちゃった。それで、紫が変になったって聞いたけど?」

藍「ええ、まぁ……あ、あれ?」

紫「…………」

幽々子「紫……?」

紫さまは涙を流しておられた。
立ち上がる事もせず、目の前に現れた幽々子様を見たまま。
そう、その様子はまるで……

紫「幽々子……?」

幽々子「なぁに? 紫」

紫「幽々子……」

幽々子「ゆーかり」

紫「ゆゆこ」

幽々子「ゆかり」

それから暫く、二人は何も言わずにただ見つめ合っていた。
その時間は永遠のように長く、あの時見た桜のように美しい。
私はここにいてもいいのだろうかと自問する程に、二人の時間は神聖なものに感じられた。

どれだけそうしていただろう、やがて紫さまが静かに言葉を紡ぎ始める。

紫「……良かった…良かった……」

幽々子「どうして泣くの? 悲しい事なんてないじゃない」

紫「うん、うん……」

幽々子「もう……」

そしてまた、静かになる。
だが今度は、幽々子様が踵を返す事で時間が動き出した。

幽々子「それじゃ、私は帰るわね~」

藍「え、あ、あの……」

幽々子「大丈夫。もうすぐ『はがれる』わ」

藍「え、それはどういう……」

幽々子「まだもう一つ、やり残したことがあるのよきっと」

藍「?」

幽々子様は私の次の言葉を待たずに、すっと姿を消してしまわれた。

紫「……あの」

藍「へ? は、はい」

紫「ひとつ、お願いがあります」

藍「ええ、何なりと」

紫「その……外に、出ていただけませんか?」

藍「外に? わかりましたけど……」



紫さまに促され、外に出る。
そのまま私は家から少し離れた位置まで連れて行かれた。

藍「あの、紫さま?」

紫「……ここから、歩いて来てくださらない?」

藍「歩いて……」

そこで、気が付く。
幽々子様がおっしゃられた言葉の意味、紫さまが、あの時の紫さまが今ここにおられる理由……
そうか…紫さまは、あの時の出会いを……

藍「……わかりま……ああ、わかった」

紫「で、では、お願いしますね」

藍「少し間を空けたら、そちらに向かう」

紫「はい」


ゆっくりと、大地を踏みしめ歩く。

今この時、この瞬間だけは……はるか昔、あの過去の時間が流れている。

紫さまは、長い眠りに就かれた後、復活を果たし眠っていた強大な力を目覚めさせた。

その時私は、確かに紫さまと再会を果たした。紫さまはおっしゃっていた通り、私を見ても驚いたり怖れたりすること無く、凛として私を迎えてくださった。

だが、そうじゃない。

紫さまがやり直したいのは……






藍「おや? こんな所にこんな建物などあったか……?」

紫「えっ?」








もしも…また、あえたなら……そのときは…………









笑顔で、貴女の事を出迎えてあげたいな。























妖夢「そういえば先日の件はどうなったんですか?」

幽々子「うん~?」

妖夢「うん~? って……ほら、慧音さんが突然訪ねて来られた時の」

幽々子「あぁ、あれね」

妖夢「紫さんが大変な事になっていたとか……今ではすっかり何事もなかったようにしてらっしゃるみたいですけど」

幽々子「それはそうよ。紫はその時の事を覚えてないはずよ。だけど、記憶の底にはきちんとしまい込んであるはず」

妖夢「え、よく意味がわかりませんけど……」

幽々子「そうね。妖夢はわからなくても良いと思うわ」

妖夢「えぇ~? どういう事ですか?」

幽々子「あれは紫の、特別な残滓。本人も気づかないうちに本人から漏れ出ていた、あの時の心」

妖夢「あ、あのー……」

幽々子「……私は、紫に何をしてもらったのかしらね」

妖夢「え、幽々子様、紫様に何か借りがあるのですか?」

幽々子「さあ……」

幽々子「あったのかもしれないし、なかったのかもしれない。でも……」

幽々子「私はそれを、思い出すべきではないのかもしれないわね」






-了-

















言い訳とか


本当はもっとネタっぽく書くつもりだったけど、なんか途中から変に感情移入しちゃってガチ話に移行しちゃった感じです……
おそらく、原作の設定ガン無視しちゃってる部分が幾つかあると思いますが、その辺はご容赦いただけたらと思います

さて、今回の話は簡単に纏めると

・紫は昔、凄い力を持っていたが目覚めていなかった
・藍は力が目覚めていない頃の紫と出会い、彼女を気に入っていた
・それと同時期に紫は幽々子と知り合いになる
・ついでに萃香とも知り合いであることがわかる(時期は敢えて書いてない)
・幽々子は自らの人生に悲観し自害するが、紫がそれを何とかしようとする→西行妖に死体を封印
・封印で強く力を使ったため紫は長い睡眠へ(一応この辺、紫が毎日12時間寝てる事や冬眠が必要な事などに関係してます。最強の力を持つがそれを維持したり満足に使う若しくは使った後回復するとなると、充分な休息が必要的な)

ちなみにこれら全部外の世界での話で、紫と藍が幻想郷に来るのはまだ先の話です
幻想郷と紫のつながりについてを考えずに書いているので、ここの設定を作らないとこのSSだけでは幻想郷云々まで考えると話が見えなくなっちゃいます(紫が力を目覚めさせてから云々の事だし、矛盾はしないはず……)
また、紫の家ですが、外の世界で生活していた家とその周辺がまるまる今の幻想郷の棲家になっている設定です。なんやかんやして持ってきたわけです

藍のそれ以前の話やその後の話なども全部考えてはありますが、それはまた別の機会に

幽々子は自分が西行妖に封印されている事を知らないという所から、紫が行った事について何も知りません。もしかしてと思う所はあっても、もう幽々子自身、それを考える事はしないでいるつもりです

紫は生まれついての妖怪なのでしょうけど、当時の藍からすればただの矮小な存在でしかなかったので、藍は紫が、人間が妖怪になったのか元から妖怪かわからないと言う事です。紫は今でもその辺りの事を藍に話そうとはしないので、藍はいまだに紫の事で知らない事が幾つかあるのです

藍は式神なので憑く前と後で何か矛盾してないかっていう点ですが
式神とはいえ、元の九尾の狐(藍の元の姿と性格など)に紫の式云々を上書きで追加したような感じのイメージなので、本来の式神の云々よりむしろ、繋がりを持たせるための儀式くらいでとらえてます
この辺りは物語やキャラ設定の上で都合の良いように考えているので、本来の式神とは~~みたいな話はガン無視です。二次創作なんだし、そういう都合の良い式神であったっていいじゃない


さて、物語の解説ですが

幼い頃、まだ力が目覚めていない頃の紫の想いが何らかの形で今まで結界の隅に残っており、それが今回憑依したという感じです
その想いとは、「当時の紫が」幽々子のその後を知りたかったり、藍との出会いをやり直したかったりというものです
今の紫も昔の紫も同一人物ですし何ら変わりはないのですが、紫は幽々子を封印した後の長い眠りで力を目覚めさせ、いわば生まれ変わったみたいになってます
このため、紫は紫なんですが、当時の弱かった紫はもう現れる事はないですから、ある意味別人であるとも言えます(この辺は敢えて深く言及しません。独自設定なのにw)
ただ、当時の紫からしてみれば、永遠に目覚めないかもしれないという危機的状況にあった事も事実ですから、もし二度と目覚めなかった時のために、あるいは自分が目覚めるのが藍の死後であった時の為に、何らかの形で藍と接触ができるよう最後の力を振り絞り残滓を残したのかもしれません。それが結界に引っかかり今まで残っているというのは、幸運、いや、紫の想いのなせるわざなのでしょう。みたいな

そういうわけで、紫の残滓は、幽々子のその後を確認し、藍との出会いをやり直す……今度こそ、怖がらずに迎えるため、もう一度あの場面をやり直したのです

そんなわけで、紫と藍はただの主従関係というわけではないのです
やっほいゆからん。ナイスカップリング
幽々子と紫もありだと思う。ゆかりんテラウラヤマシス。単純に、三人ともばいんばいんですからそういう意味でも良いんですよね(ゲス顔

紫はまだメリーとの関係性とかもあるので、色々掘り下げて二次創作ができそうですね
どの時間軸にしても矛盾が出るだろうし、それをどう扱うかがカギになりそう


ていうかタイトルなんか変だな
ゆかりんの昔の話、とかのが正確な気がするけどまぁいいや

ともあれ好き放題書いてしまったので、色々と問題のような気もしますが……まぁこういう話もあるんだな程度でひとつ
こういう真面目なSSもどんどん書いていきたいですね
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SS読ませて頂きました。
そして、無意識に涙を流していた私が居ました。

こういうSSも、良いものですね。
53ヶ月前
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アル・ウィンドさん
コメントありがとうございます!
そう言っていただけると書き手冥利につきます。
実は私、この手の話の方が好きだったりします。尊敬するライターさんがおっしゃられてましたが、こういう話を書く時は書いてる人も泣いてます。慣れてくるとなんだか恥ずかしくなってきますけども。
53ヶ月前
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すごくいい話だと思いした。
52ヶ月前
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くさやさん
ありがとうございます!
二次創作を盾?に好き放題書いてしまっていますが……この手の話も少しずつ書いていこうと思うので、またよかったら見てやってください。あちこち書きっぱなしで更新がおぼついていませんがorz
52ヶ月前
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