【東方SS】勤勉な庭師は亡霊の心を垣間見る
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【東方SS】勤勉な庭師は亡霊の心を垣間見る

2015-03-27 21:47
    幽々子「ふふ、もう限界なの?」

    幽々子「ここをこんなに大きくしちゃって……とっても美味しそう」

    幽々子「んー、もう我慢できないわ。あーん」

    妖夢「幽々子様!」

    幽々子「ふぁい?」

    妖夢「もう春です。いつまでお餅を食べ続けるおつもりですか。お正月は終わりましたよ」

    妖夢「七輪まで持ってきちゃって。どこから持ち出したんだか……」

    幽々子「お餅を食べるのに理由がいるの?」

    妖夢「この前も、お正月の残りだからと間食してましたよね」

    幽々子「だってお腹がすくんだもの」

    妖夢「すくんだものって……はぁ」

    妖夢「確かにお餅はお正月のあまりものですので、新たに出費が出ているわけではないですが……」

    幽々子「でしょう? なら、妖夢もお餅食べましょう」

    妖夢「いただいてもいいのですか?」

    幽々子「ひとつだけね」

    妖夢「ありがとうございます」

    妖夢「……しかし、幽々子様は昔からこんなに暴しょ……沢山お食べになられてたのですか?」

    幽々子「妖夢が私をどういう印象で見ているかはわからないけど、今も昔も控え目で病弱な女よ?」

    妖夢「えー……」

    幽々子「む。それはどういう意味の『えー』かしら」

    妖夢「それは、その、あまり信じられないなと」

    幽々子「別に、常に病に臥していたわけじゃないわ。病気がちというだけで」

    妖夢「今はもう病気にかかることはありませんよね」

    幽々子「いい、妖夢? 病気とは何も、風邪や癌などというものに限らないの。精神疾患だって、立派な病気なのよ?」

    妖夢「はぁ……」

    幽々子「これでも、思い悩む事は沢山あるんだから」

    妖夢「そうですか……」

    幽々子「むー、妖夢、貴女絶対私が悩むことと言えば食に関する事だと決めつけているわね?」

    妖夢「その通りですけど」

    幽々子「うちの従者は困ったものね。主の心の悩みを察する事もできないなんて」

    妖夢「はぁ……でも、何か本当に悩む事があるのなら、私に遠慮なくおっしゃってくださいよ?」

    幽々子「そう簡単に何でも話せるものでもないのよ、こういうのは」

    妖夢「よくわかりませんが……」

    幽々子「わからないのなら勉強してらっしゃい。貴女は勤勉な割に視野が狭いから、いつも変な所で無知だったりするのよ」

    妖夢「そう、なのかもしれません」

    幽々子「わかった? わかったなら、お醤油の追加をもってきて」

    妖夢「はい……はい?」

    幽々子「だから、お醤油を持ってきて」

    妖夢「……わかりました」





    妖夢「主の心の悩みを知る、かぁ……」

    妖夢「どうにも丸め込まれた気がするけど、幽々子様がおっしゃることもごもっともだしなぁ……」

    妖夢「それに、幽々子様の昔の姿もちょっと気になる」

    妖夢「勉強して来いと言われたし、ちょっと時間をいただいて、他の人に訊いてみるか」

    妖夢「藍さんはいつも相談してるし、何度も行くのは気が引けるから……」





    咲夜「主の心の悩み?」

    妖夢「はい。瀟洒な咲夜さんならそういうのの扱いにもたけていると思いまして」

    咲夜「そりゃ、主の悩みがあればすぐに察知して対応するのが従者の役割ではあるけど……」

    咲夜「余計なお世話、っていう事もあるからね。その辺あなたは不得意そうね」

    妖夢「や、やっぱりそう思いますか」

    咲夜「あの暴食少女が主となると大変でしょうけど……我儘加減で言えば、まぁうちも負けてないから。わかりやすくていいけどね」

    咲夜「でも、心の内を察するのは難しいわよ? 一夜で習得できるものでもないわ」

    妖夢「それはわかってますけど、色んな人の話を聞いてみたいなと思って」

    咲夜「訊かれても、なんて答えたらいいかわからないのが実際の所ね」

    咲夜「長らく一緒にいれば、相手が望む事も望まない事もおのずとわかってくると思うけど」

    妖夢「わかる事も勿論ありますよ。でも、突然意味深に心にも悩みがあると言われると、困ってしまうんです」

    妖夢「何が正解なのか、そこへたどり着くのにいくつ手がかりを見つけて、どこで確証を得るのか」

    咲夜「あのねぇ、推理小説読んでるんじゃないんだから……」

    咲夜「最近主とうまくいってないの?」

    妖夢「そういうわけじゃないですよ。けど元々、幽々子様はつかみどころがない方ですし、幽々子様に関して知らない事も多いので、少しでも理解できる部分を広げられたらと」

    咲夜「はいはい、勤勉なのはわかったから」

    咲夜「深刻というわけでもないみたいだし、それなら色々見て回るのもいいかもしれないわね。うちの様子見ていく?」

    妖夢「いいんですか?」

    咲夜「勿論、あなたの望む光景が見られるかどうかは保証できないけど」

    妖夢「それでも是非お願いします!」

    咲夜「じゃ、ついてらっしゃい」

    妖夢「はい!」




    咲夜「最初に言っておくけど、あなたが欲しいと思っているような解答を説明する事は可能よ」

    妖夢「といいますと?」

    咲夜「相手の心を理解するということは、相手が思う事に応えていくと言う事。そしてそれの積み重ねは、小さな事から始まるわ」

    妖夢「理屈はわかります」

    咲夜「例えば……」


    こぁ「パチュリーさまぁ。この本はどちらに整理するんでしたっけ?」

    パチュリー「それは神学の棚」

    こぁ「ふへぇ、遠い……」

    こぁ「はぁ、はぁ……つ、疲れた……ちょっとお茶飲もう……」


    咲夜「こぁが一人で紅茶を飲み始めたわ。あなたならどうする?」

    妖夢「え、自分だけ飲まずに、パチュリーさんにもお茶を淹れますけど」

    咲夜「普通そうするわよね。でも、今回の場合それはしなくていいのよ」

    妖夢「どうしてです?」

    咲夜「ついさっきここへ来てこの光景を見た妖夢には到底わかる筈もない解答なんだけど……」

    咲夜「パチュリー様の机の上は今本で埋まってる。まず置き場がないのが一つ」

    咲夜「お茶が欲しい時はパチュリー様も置き場を作るから、それがしるしでもあるわね」

    妖夢「ふむ……」


    幽々子『よーむぅー、ごはんまだぁー?』


    妖夢「(しるしどころか……)」

    咲夜「二つ目は、パチュリー様は今のどがかわいているわけではないということね」

    妖夢「どうしてそんな事がわかるんですか?」

    咲夜「パチュリー様の本日の体調、図書館内の気候、扱う本の状態、その辺りから大まかに判断するのが第一」

    咲夜「第二に、その日の食事などから次に欲しくなるものを考える……まぁ簡単に言えば、洋菓子を食べるなら紅茶を淹れる、くらいの事ね」

    咲夜「コーヒーが好きな人は、食事の後にでも飲みたくなるでしょう?」

    妖夢「お茶でも同じですね」

    咲夜「そして三つめに、こぁの言葉にパチュリー様が全く反応を示さない事」

    咲夜「少しでも反応を示されるのなら一言付け加えるけど、今回は何も無かったから特に必要ないと判断したの」

    妖夢「な、なんかすごいですね……そこまで考えて行動してるんですか」

    咲夜「こぁが? 考えてないと思うわよ?」

    妖夢「えぇ?」ズコー

    咲夜「もう身についている事だもの。考える必要なんて無いのよ」

    妖夢「あぁ、そういう事でしたか……」

    咲夜「こぁも自分のやる事でいっぱいいっぱいになっちゃうタイプだけど、パチュリー様への気遣いは彼女の日常に組み込まれてるから」

    妖夢「はえー」

    咲夜「いつも完璧というわけでもないしね」

    妖夢「咲夜さんはいつも完璧って感じしますけど」

    咲夜「そうでもないわよ。たまに、報告が恐ろしくなるような失敗もするわ」

    妖夢「そうなんですか。なんか意外ですね」

    咲夜「何事にも限界があるからね。できない事までできるとは言わないわ。やれと言われるけど」

    妖夢「その辺は同じですね……」

    咲夜「こんな風に、心情を読み取っていくという意味では、説明もできる。そしたら、例えばパチュリー様が今お悩みの事が何かも、おのずとわかってくるものよ」

    咲夜「それにも勿論、限界はあるけど」

    妖夢「うーん、わかるようなわからないような……」

    咲夜「まぁ他に比べるとうちはわかりやすい方かもしれないわね」

    レミリア「さーくやー?」

    咲夜「さて、次はお嬢様ね。ついてきて」


    パチュリー「……何しにきてたのかしらね」




    レミリア「あ、いた」

    咲夜「お呼びでしょうか」

    レミリア「ねえ、何かお菓子ない? ちょっと小腹がすいちゃって」

    咲夜「そうですね、今日は抹茶のフロートをご用意いたします」

    レミリア「ん、それ美味しそう! じゃ、それお願い」

    咲夜「はい。では、いつものお部屋でお待ちください」

    レミリア「はいはーい!」

    咲夜「……という感じ」

    妖夢「え、普通の会話みたいでしたけど」

    咲夜「実はお嬢様、最近洋菓子に飽きてきてらっしゃるという悩みがあるの」

    妖夢「そうなんですか」

    咲夜「勿論、それをお嬢様の方から口にすることはあまりないわ。お嬢様なりに、私たちに気を遣ってくれてるというのもあると思うし」

    妖夢「そういう気遣いうちはないですね……」

    咲夜「そう? 見落としているだけで、あると思うわよ?」

    妖夢「そうでしょうか」

    咲夜「なるほど。あの人がお悩みになられるのもわかるわ」

    妖夢「えっ、それってどういう……」

    咲夜「あなたは型にはまりすぎてるのよ。もう少し物事を別の角度からとらえる事も大事なのよ?」

    妖夢「それはよく言われます……」

    咲夜「これは想像だけど、妖夢は毎日の食事など、主に尋ねてから作ってるんじゃない?」

    妖夢「え、それはそうですよ? だって、幽々子様がその日食べたい物をご用意するわけですから」

    咲夜「それも大事だけど、その望んでいるものを先取りして理解して用意するのも大事なのよ」

    咲夜「さっきも、お嬢様に『何が食べたいですか』と尋ねれば『たまには和風なのもいいかなぁ』なんておっしゃったと思うわ」

    妖夢「先取りして……難しそうですね」

    咲夜「それは日々の積み重ねでわかってくるものなのよ。妖夢はきちんと仕事をこなしてるわけだし、それがわからない人じゃないと思うけど」

    妖夢「恐縮です……なんだか咲夜さんいつもと違う感じですね」

    咲夜「……まぁ、相当丸くなったと自分でも思うわ」

    咲夜「それで話の続きだけど、こういう小さな事から始めていけば、そのうち普段は表情にすら出さないような悩みも何となくわかってくるわ」

    妖夢「そうですか……ちょっと頑張ってみます」

    咲夜「参考になったかしら?」

    妖夢「充分です!」

    咲夜「本当はこうやって言語化する必要無いのよね。自然と身に着けていくものだから」

    妖夢「ですよね……」








    てゐ「はぁ? 読心術?

    妖夢「え? いや、そこまでは……」

    てゐ「心の悩みを理解するとか、あんたまた難しい事考えてるねぇ」

    妖夢「必要な事だと思いまして」

    てゐ「まぁ、できるに越したことはないね。でも、そういうのは鈴仙に聞いてよ。あたしゃ従者でもなんでもないんだから」

    妖夢「えっ、そうなんですか?」

    てゐ「そうよ! あたしゃおししょーと契約を交わした、いわばおししょーと対等な立場なんだから」

    妖夢「知らなかった……」

    てゐ「まぁ言ってしまえば向こうは月人だからね。おししょー達がそう思ってるわけじゃないだろうけど、ハナから身分が違うといえばそうなんじゃないかね」

    妖夢「複雑ですね……」

    てゐ「全然? 単純な話だよ」

    てゐ「あのさぁ。何でもかんでも難しく考えすぎなんじゃないの? 気楽にいこうよ」

    妖夢「気の抜き方がわかりません」

    てゐ「肩の力抜いてさ。一回考える事放棄してみたら?」

    妖夢「それはちょっと……」

    てゐ「荒療治も必要だよ。不安なら、主に許可もらってからやるとか。でもあの人なら察してくれそうだけどなぁ」

    妖夢「そうでしょうか」

    てゐ「あんたは何でも決めつけてかかりすぎだよ」

    妖夢「う、同じ事を咲夜さんにも言われた……」

    てゐ「紅魔館にも行ってたのね。まぁ、色々見て回るのもいいと思うわ」

    てゐ「んじゃ、鈴仙とこ案内するよ」




    輝夜「うっ、気持ち悪い……」

    てゐ「鈴仙は多分今頃おひるごはんの準備かな。こっちだよ」

    妖夢「え? あ、あの、輝夜さんが何か辛そうですけど……」

    てゐ「あれは二日か三日くらい徹夜でゲームしてた顔だよ。そっとしとくのが一番」

    妖夢「は、はぁ……」



    鈴仙「え、心の悩みを解決する?」

    妖夢「うん。私にはそれが足りないって言われて」

    鈴仙「ってもなぁ……うちじゃ参考にならないと思うけど」

    鈴仙「お師匠様はこっちが考えるまでもないし、輝夜様はなんていうか、何をどう悩んでるのかもわからないし……」

    妖夢「そこなのよね。うちも、何をどう悩んでるかわからなくて」

    鈴仙「自然体でいいんじゃないの? そういうわけにもいかない?」

    妖夢「できる事があるならやっていきたいなって」

    鈴仙「うーん、気遣いみたいなもんかな?」

    妖夢「そういうのの積み重ねも大事って咲夜さんは言ってた」

    鈴仙「あのメイドか……でも確かに、そういう事であの人に勝てる気はしないわね、悔しいけど」

    鈴仙「じゃあ、輝夜様が何を考えてるか二人で当ててみる?」

    妖夢「それ、私不利じゃない?」

    鈴仙「勝負するってんじゃないんだから」





    輝夜「うーっ……さすがに58時間耐久はやばいわ」グテー


    鈴仙「輝夜様は居間でぐったりしてるわね……」

    妖夢「てゐさんが、二日徹夜でゲームしてたんだろうって言ってたけど」

    鈴仙「そういやこの所部屋から出てきてなかったわね……あの様子だと夕方過ぎから始めて三日の徹夜か……」

    妖夢「えっと、輝夜さんが今何を欲しがってるか……とか?」

    鈴仙「わかりやすいと思うかもしれないけど、相手は輝夜様よ。何を欲しがるかわかったもんじゃないわ」

    妖夢「えぇ? こういう時って、飲み物とか薬とかじゃないの?」

    鈴仙「普通はね……でも輝夜様の思考回路は普通のそれとは違うから」

    鈴仙「あれは……次にアイスを欲しがるわね」

    妖夢「あ、アイス?」


    輝夜「何だかゆでだこの気分……冷たい物が欲しいわ」

    輝夜「えーりんー、えーりんー、いないのー?」


    鈴仙「……間違いなく里の人たちには見せられない姿ね」

    妖夢「オンとオフの切り替えができる、とも言えますね」

    鈴仙「前から思ってたけど、妖夢って良く言う事に長けてるわよね」

    妖夢「え、そう?」

    鈴仙「うんうん。そこは間違いなく良い所だと思う。使いどころを間違わなければ」


    永琳「どうしたの? 気分悪くなったの?」

    輝夜「わかる? ちょっと立て込んでたのよ」

    永琳「そう……まぁいいわ」

    輝夜「それで、アイスみたいなのない? なんだか熱くなってきちゃって」

    永琳「アイスよりもお薬飲んでひえ〇タ貼って寝なさい」ペシ

    輝夜「きゃっ。もう、永琳のいけず」


    鈴仙「ね」

    妖夢「すごいなぁ……」

    鈴仙「まぁ、何となくわかってきちゃうのよね」

    妖夢「うむむ」

    鈴仙「妖夢だって理解力に乏しいわけじゃないし、幽々子さんの事ならわかりそうなもんだけど?」

    妖夢「わかるようでわからないというか……」

    鈴仙「考え方ひとつだと思うけどね、私は」

    妖夢「うーん……」

    鈴仙「……あの狐に訊いたりはしないわけ?」

    妖夢「いつも相談聞いてもらってるし、毎度行くのも悪いかなって」

    鈴仙「それこそ思い違いじゃない? 私らは関わり合いになれそうにないけど、あの狐は身内には面倒見よさそうだし」

    妖夢「それは、そうだけど……」

    鈴仙「相談してもらえるって、結構嬉しいものよ?」

    妖夢「それじゃあ、やっぱり相談してみようかな」

    鈴仙「ま、答えが見つかるかは知らないけどね」

    鈴仙「とにかく私の場合は、そこまで考えた事ないわね。考えても、気が利く、程度にしか思わないでしょう」

    妖夢「うん、ありがとう」





    藍「というわけでうちに来たと」

    妖夢「いつもすみません」

    藍「いや、それは構わないのだが」

    藍「丁度紫さまもお休みになられた頃だしな、どれ、こちらで話を聞こう」




    藍「心の病気、か」

    妖夢「幽々子様はそうおっしゃってました」

    藍「話を聞くに、病気という程ではなさそうだが……思い悩む事があるのも事実だろうな」

    妖夢「それを察する事ができれば、という所です」

    藍「結論から言うと、それは単純で難しい」

    妖夢「え、え?」

    藍「幽々子様とて幾つもお悩みを抱えていらっしゃるだろう。それら全てを把握し、解決の糸口を見つけ出すのは不可能だろうな」

    妖夢「で、でも」

    藍「全てに応える必要はない。いや、一つにすら応える必要はないのかもしれん」

    妖夢「どういう事でしょう……」

    藍「単純な事柄なら気にするまでもない。例えば食事の話だが、妖夢は何も悪い事をしてしまっているわけではない」

    藍「その日食べたいものを尋ねるのも良い事だからな」

    妖夢「自分で察するのが大事だと、咲夜さんが言ってました」

    藍「勿論そうだ。今日食べたい物が何も言わずに出てきたり、やってほしい事をこちらが言わずともやってもらえていたら、それは嬉しい事だ」

    藍「だが」

    藍「尋ねられて返事をした時、相手がそれに応えようとしてくれる……それもまた、嬉しい事に変わりはないだろう?」

    妖夢「そうですけど……うー、なんだかよくわからなくなってきました」

    藍「例えば、その日の夕飯の内容を気にしているのかもしれない。例えば、次の宴会の日取りを気にしているのかもしれない」

    藍「あるいは、幻想郷の行く末を憂いていたり、生活の心配をしていたり」

    藍「親しい知人の融通が利かなかったり」

    藍「何を悩んでいるかなどその人次第で、それも山のようにある事だ。立ち向かうには無謀すぎる」

    妖夢「…………」

    藍「本当は言葉にするものではないのだが……例えば、だ」

    藍「妖夢が何か思い悩んでいる事があるとしよう」

    藍「それについての正確な解決策を見つけるべく、他の誰かが妖夢に尋ねるかもしれない。何を悩んでいるのか、と」

    藍「だが、妖夢に何も尋ねる事なくその相手は解決策を模索するかもしれない……その状況を、妖夢はどう思う? 適当な事するもんじゃない、とでも思うか?」

    妖夢「それは思わないです。こんな自分の為に何かをしてくれるなんて、それだけで……」

    妖夢「あ……」

    藍「そういうものだ」

    藍「相手の想いに正確に応えようとするのは勿論良い事だが、正確で無くとも、その善意の行動だけでありがたく思うものなのだよ」

    藍「表に現れるものが全てではない。その裏に隠されているものとて、大切なものに変わりはない」

    藍「咲夜が言うのはおそらく、そういう隠された物も小さな積み重ねで感じ取っていけるようになる、という事だろうな」

    妖夢「なるほど……」

    藍「まぁ、その様子だと幽々子様も『売り言葉に買い言葉』状態ではあったのだろう。あのお方も、妙に子供っぽい所がおありになるからな」

    妖夢「それはよく思います」

    藍「そこでもう一歩出る事ができれば、幽々子様の心配事も薄れる事だろう」

    藍「変わる必要まではない。変わらずとも妖夢にはそれができると思う」

    妖夢「なんだかやれそうな気がしてきました」

    藍「力まずゆっくりやるといいさ」

    妖夢「はいっ」






    幽々子「よーむぅー、ごはんまだぁー」

    妖夢「もうすぐできますから、幽々子様はお部屋でお待ちください」

    幽々子「今日はやけに時間かかってるじゃない。一体何を……あら、それ茶碗蒸し?」

    妖夢「ええ、良い食材が手に入ったので」

    幽々子「ふーん。今日はじゃあ、いつものじゃないのね」

    妖夢「たまには違うものをと思いまして。普段通りの方が良かったですか?」

    幽々子「ううん、そんな事ないわ。じゃあ、向こうで待ってるわね」

    妖夢「はい。すぐにお持ちしますので」

    妖夢「(そういえば、結局昔の幽々子様がどんなだったか訊くの忘れてたな……まぁ、また今度藍さんに訊いてみよう)」



    幽々子「あら、もう桜が咲き始めてるわね」

    幽々子「今年はどんな年になるのかしら……でも」

    幽々子「楽しみが一つ増えたかもしれないわ、ふふ」




    -END-








    サムネ画像

    西行寺幽々子:zakoneko様
    白玉楼:鯖缶様
    桜:nya様
    青空:額田倫太郎様
    桜吹雪:ビームマンP様
    MikuMikuDance:樋口優様



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