【東方SS】ミスティア「お店を開いてみたいです!」ダンッ 【前編】
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【東方SS】ミスティア「お店を開いてみたいです!」ダンッ 【前編】

2015-11-02 00:21
    かなり前からこの手のネタはよくありますよね。はてさて、何番煎じかわかりませんが……
    でも、同人とかでよくありそうだし仕事中にネタ思いついただけだから、書かせてください
    動画や他同人誌とかに話似てたらごめん。例によってアリサナが絡むし何かに似てるなんて事はないと思うけど
    幻想郷の中でどういう物が常識や知識として通じるかは人それぞれ考えが違うでしょうけど……ネタも入り混じっていますし、この辺りはあまり気にしない方が読みやすいです
    あと、商売的な話やお料理的な話にツッコミ所満載だろうけど、その辺はご勘弁くださいませ……

    最近みすちーがツボ
    みすちーかわいいよみすちー





    以下内容






    ミスティア「お店を開いてみたいです!」ダンッ



    早苗「」

    アリス「」

    ミスティア「…………」

    早苗「……あの、もう一回お願いします」

    ミスティア「え? わ、私、お店を開いてみたいです!」ダンッ

    早苗「」ビク

    アリス「いやいや何のためにもっかいやらせたのよ」

    早苗「ダン、ビク、てのしたかったんです」

    アリス「で、お店ってもうやってないっけ?」

    早苗「訊いといてスルーとはなかなか鬼畜ですね」

    ミスティア「えっと、屋台とか出店はしてるんだけど、店舗って言うの? 場所固定でやってみたいなと思って」

    早苗「ふむ、そういうご相談ですか」

    アリス「何でここに? そういうのって里の方に組合とかないっけ?」

    ミスティア「いや、私が人間に相談しに行くのって色々とおかしいでしょ」

    アリス「それはそうだけど、慧音とかその辺りに話できないかなと思って。あんたの先生でしょ?」

    ミスティア「うん、それも考えたんだけど……その前に文さんと話したんだけど、守矢神社なら何とかしてくれるだろうからって」

    アリス「うーん、でもいくらここだからって、何でも屋じゃないんだし無理なんじゃ……」

    早苗「できますよ」

    アリス「なんでやねん」

    早苗「できるというか、正確に言えば、多少の口利きができるという感じです」

    アリス「あぁ、そういうこと。納得」

    早苗「それでお店ですけど、里で商売がしたい、ということでいいですか?」

    ミスティア「あっ、そういうのとはちょっと違うくて……」

    ミスティア「なんていうか、少しの間だけでいいので、屋台を大きくしてどっしり構えたいなぁと」

    早苗「それはステキですね! となると、山のどこかで妖怪相手に居酒屋とか?」

    アリス「店主も妖怪だけどね」

    ミスティア「そんな感じでいいかな。繁盛とか儲けとか、そういうのあんまり考えてないから」

    アリス「道楽って事ね……ま、このお気楽さは妖怪の特権みたいなもんね」

    早苗「一応人間サイドの我々にはなかなか真似できませんからね……神社とて、利益を度外視にはできません」

    アリス「姿勢の問題だけどね。霊夢とか論外」

    早苗「ま、まぁ霊夢さんは霊夢さんで良い所がありますから」

    アリス「例えば?」

    早苗「えっ? う、うーん…………」

    早苗「……元気なところ?」

    アリス「ソウネ、元気ハ大事ナ事ネ」

    ミスティア「あ、あのー……」

    早苗「あ、ごめんなさい脱線してますね」

    早苗「場所の心配をしなくてよさそうなのでそう難しい問題ではなさそうですが……」

    アリス「え、店を作るってそんな簡単なもんなの?」

    早苗「簡単だけど難しいですね」

    アリス「どっちよ」

    早苗「難しいです」

    アリス「結局難しいんかい」ビシ

    早苗「色々問題がありますからね……でも、解決できそうな気はします」

    アリス「よくわからないけど……こんなんで大丈夫そうなの?」

    ミスティア「え、さ、さあ……」

    アリス「お気楽すぎるわ……」

    早苗「まぁとにかく……居酒屋でいいんですかね」

    ミスティア「学校が終わってからだし、夕方と夜しかできないし……それでいいかなぁ」

    アリス「学業と両立なんて、素晴らしいモチベーションね」

    ミスティア「もち……?」

    早苗「まぁ事情はわかりました。では……」

    早苗「私たちで居酒屋やり遂げてみせるぞー!」ガシッ

    アリス「え、ちょ」グイ

    ミスティア「お、お~?」








    東方饗夜雀(とうほうおかみすちー)









    アリス「ねえ」

    早苗「なんですか?」

    アリス「当たり前のように、私たちも手伝う流れになってるんだけど」

    早苗「そうですよ?」

    アリス「いや、私は手伝うだなんて言ってない」

    早苗「え、駄目なんですか?」

    アリス「ダメじゃないけど……」

    早苗「じゃあ良いじゃないですか」

    アリス「良いけど、決める前に相談くらしいて頂戴」

    早苗「ごめんなさい」

    アリス「いいけど……でもあんたこそ手伝うの難しいんじゃない? 神社どうするの」

    早苗「諏訪子様に訊いてみたら、1秒で了承くださいますよ」

    アリス「1秒って……」

    早苗「容姿や動作考えると神奈子様の方が合ってそうですけど、ほら、ネタご存じないでしょうから」

    アリス「いや私もわからんわ」

    早苗「神奈子様も、神社の事を疎かにしない程度なら大丈夫って言ってくださると思いますし」

    アリス「まぁ普段から色々ほっつき歩いてるわけだし、布教活動の一つと思えばわからなくもないか……」

    早苗「それで、店の規模とか色々決めましょう。既に案がおありで?」

    ミスティア「あ、うん。基本的に屋台をそのまま店にするイメージだったし、特に他の要素について考えてるわけじゃないんだけど……」

    ミスティア「折角お店にするんだし、メニュー拡大くらいは考えてる」

    早苗「なるほど。中身については大丈夫と言う事ですかね」

    ミスティア「え、大丈夫と言われると…わかんないけど……」

    早苗「ですが、考えなければならない事は沢山ありますよ」

    アリス「例えば?」

    早苗「店を持つとなると、店舗の問題があります。土地の問題は守矢の敷地から出すからクリアしたとして……店舗は、テナントとして場所を借りるか、実店舗を建てるかしないといけません。まぁこの話だと更地に作る事になるので建てるしかありませんが」

    早苗「それも食事処です。キッチンの事を考えると、必要機材も結構そろえるのが大変です」

    ミスティア「そ、そうだよね……」

    早苗「かなりお金もかかります。はっきり言って、やりたいって言ってすぐできるもんじゃありません」

    ミスティア「うう……」

    アリス「現実は厳しいわね……でも、何か手立てがあるって事よね?」

    早苗「ふっふー、その通りです」ドヤッ

    早苗「まず建設ですが、河童に任せれば問題無いです。機材も、彼女たちがたちどころに作ってみせるでしょう」

    早苗「外の世界で実際の店舗の写真を撮ってきます。それを見せれば、統率さえ取れればなんとかなるでしょうし」

    アリス「その『統率』って所に一番問題がありそうなんだけど」

    早苗「にとりさん辺りを手籠めにすれば大丈夫ですよ。諏訪子様に任せておけば大丈夫です」

    アリス「なんか袖の下的な話になりそうな……いや、そうでなくてもあいつなら色々とやりかたはあるか」

    ミスティア「(なんか裏の話みたいなのが怖いけど、早苗さんに相談してよかったなぁ。話がどんどん進んでいく)」

    ミスティア「私は何をすれば?」

    早苗「勿論建設から全てに携わる事になりますけど、メインはお店の中の事です。店舗ができても、仕入れの問題や人材配置などやる事は山積みです」

    アリス「ねえ、あんたなんでそんな詳しいの?」

    早苗「バイトしたことあるだけですよ」

    アリス「ばいと?」

    早苗「そういう所で少しの間働いた事があるんです」

    アリス「そうなの」

    早苗「外の世界とここでは勝手が全然違うでしょうけど、基礎は同じだと思いますから」

    アリス「ふーん」

    早苗「さて、店舗の事は早速河童に話を通しておくとして。デザインの原案ができたらミスティアさんに見せますので、確認してください」

    早苗「勿論口出ししまくっていいですので」

    ミスティア「う、うん」

    アリス「ダメ元で相談しに来たものの、早苗が想像以上に協力的で困惑してるわね……」

    ミスティア「思ってたより本格的になりそうで、嬉しいのやら怖いのやら……」

    早苗「ところでミスティアさん、資金はどんなもんです?」

    ミスティア「そ、そこなんだけど……」

    ミスティア「屋台や出店の売り上げをためた分しかなくて」

    早苗「おいくらくらい?」

    ミスティア「このくらい」

    早苗「ふむ……まぁにとりさんの納得するくらいの額ではありますね。しかしそうすると、材料費などに回すお金がありません」

    ミスティア「う」

    早苗「できるだけ交渉はしますが……河童は揉めると仕事を放棄しますからね……」

    早苗「新型PC辺りで何とかしましょう。W〇ndows10搭載です」

    アリス「うぃん……また変な言葉出てきた……」

    早苗「うん、これくらいならやりくりできそうですね……唐突な不足はこちらが何とかします」

    ミスティア「いいの?」

    早苗「かまいませんよ。うちの利益にもなると踏んで、こちらも手伝うわけですし」

    アリス「そういう事もちゃんと考えてるのよね」

    早苗「でも、外の世界でこんな面倒見の良い人がいたら、だいたいは詐欺ですからね」

    アリス「こわいわねぇ」

    早苗「では、デザイン原案ができたら見積もりと一緒に持ってきますので、またその時に」

    ミスティア「は、はい」

    アリス「まるで嵐のようね……」





    -数日後-


    早苗「原案と見積もりできましたよー!」

    ミスティア「はやっ」

    アリス「河童が意外に乗り気だったのが大きいわね」

    早苗「諏訪子様も色々と動いてくださったので」

    アリス「何をどうしたとかは聞かない方がよさそうね……」

    早苗「では、肝心な所を決めていきましょうか」

    早苗「こういうのは順序がありますけど……楽しい所から始めちゃいます」

    ミスティア「メニューだね!」

    早苗「基本はお酒と鰻とおでん、でしたっけ」

    ミスティア「おでんは季節的な物でもあるけど、冬も近いし入れるつもり。寒くなってくるだろうからね」

    早苗「ひとつ気を付けたいのは、メニューを決める際に、とにかく好きなものを入れていくのか、現地の流行りを基盤にするのか、材料の入手しやすい物を実装していくのか、です」

    アリス「確かに、やりたいものが入手困難なものとかだと安定して提供できそうにないわね」

    早苗「流行り廃りは多分大丈夫でしょうけど、方向性からメニューを決めるのがメインの話になりそうです」

    早苗「好きな事や物を優先するのは勿論なんですが、儲けなければ続けられませんからね」

    アリス「あ、一応その辺現実的なんだ」

    ミスティア「うーん、肉類とかどんな? もち、鳥抜きで」


    早苗「豚も牛も流通があれば普通に入手できますけど……そうですね、とんかつとかいいかもしれません」

    ミスティア「とんかつ?」

    早苗「はい。豚肉に小麦粉をまぶしてとき卵をくぐらせ、パン粉をまぶし高温の油で揚げるんです。ソースをつけて食べるんですよ。まぁ勿論、ここで作るものに卵は使用せず、小麦粉で代用しますが」

    早苗「えっと……」サッ

    早苗「起源は意外に浅く、1700年代後半からと言われています。ただそれは、とんかつと聞いて想像するものではなくあくまで起源の話です。それに昔は、コートレットと言ってフランス語を読んだものだったんでウィス」チラッチラッ

    アリス「(妖怪執事かよ)」

    早苗「日本でとんかつと言われる物が出回り始めたのはその百年後、1800年代後半。それから広まっていって、今では誰もが知る定番メニューの一つです」チラッ

    アリス「何言ってるのかさっぱりだけど、美味しいの?」

    早苗「ええ、そりゃもう。子供から大人まで、好きな人は多いです」パタン

    ミスティア「なら、それも入れたいな」

    早苗「ただ問題は、油を使う料理って、後始末や管理が大変なんです」

    早苗「フライヤーを使うかどうかにもよるんですけど、どちらにしても油を大量に使うので、気を付けないといけない事が多くなります」

    早苗「最近は環境への配慮もありますからね、沢山使って沢山棄てる、では営業できないんです」

    アリス「まぁ、例えば川に油流したらまずいわね……」

    早苗「ええ、折角店を作ってくれた河童達に、恩を仇で返す事になります」

    ミスティア「うーん、そういうのはやだなぁ……」

    早苗「飲食店ですし、油でなくてもそういう面で気を付ける事は多々ありますが、きちんとルールを設けてやれば問題はありません」

    ミスティア「とんかつ、できそう?」

    早苗「任せてください。必要な資材は用意しますし、ルールブックも作ります」

    ミスティア「何から何までごめんね」

    早苗「何言ってるんですか、こんな面白そうな事できるなんて、こちらとしてもありがたい限りですよ」

    アリス「不安だけど、こういの一番知ってるのが早苗だからね……」

    早苗「とんかつを作るなら、幾らか揚げ物は欲しいですね。天麩羅とかどうです?」

    ミスティア「天麩羅いいね。それもやりたい」

    早苗「油の種類も分けたい所ですが……その辺りは後で考えましょう」

    アリス「そういえば今更だけど、店のイメージってどうなの?」

    早苗「あ、そうでしたね。これ店舗の原案です」

    ミスティア「どれどれ……って、ちょっと、これ」

    早苗「はい、旅亭です。短期間での利用ということですが、それで潰してしまうのはもったいないので、後は有志を募って旅館にしようかと」

    アリス「抜け目ないわね……でも、それなら建てるのは里に近い所になるってこと?」

    早苗「いえ、あくまでもミスティアさんの居酒屋は対象が妖怪ですので、里からは少し遠いところにします」

    アリス「それじゃ後で旅館にしても誰も来ないんじゃない? まさか妖怪相手に旅館なんてしないでしょ?」

    早苗「ふっふー、アリスさん、我らが守矢神社は山の上にあるんです。架空索道の話が出てるとはいえ、完成のめども立ってませんし、参拝などで通うには不便です」

    早苗「そこで、守矢神社にお参りするツアーを作るんです。途中、風流な旅館で一泊。素晴らしいプランだと思いませんか?」

    アリス「それは良いわね……なるほど、これが守矢商魂」

    早苗「ミスティアさんの計画が終わるまでこの話は一切公表せず、後で有名にしていくんですよ」

    早苗「もしかしたら、このツアーや旅館目当てで通ってくれる人も増えるかもしれません」

    アリス「計画的過ぎて怖いわ。よくそんな案思いつくわね」

    早苗「全部諏訪子様の入れ知恵です」

    アリス「流石というかなんというか……」

    ミスティア「私からお願いした話なのに、まるで初めからその計画があったみたい」

    早苗「魔理沙さんの言うことじゃないですけど、こういう話というのはそこらかしこにあるもんですよ。ただ、切欠がなかったりして行動に移せないだけで」

    アリス「感服するわ。うん、でもなんだか楽しそうになってきた」

    早苗「でしょでしょ~?」

    ミスティア「頑張らなきゃ」

    早苗「というわけなので、全体的なイメージは何かといわれれば『和』、つまり一応は和食という事になりそうですが……その辺は気にしなくても」

    アリス「最初から旅館の方も作るの?」

    早苗「その辺は河童次第ですが、私の想像では、全体だけ作っておいて使うのは食事処だけですね。まぁ妖怪たちに泊まってもらって、居心地を聞いたりするのもいいですけど」

    早苗「うちは温泉事業にも手を出してますからね。温泉旅館ですよ」

    アリス「何でも繋がるわねあんたら……」

    早苗「ただ、天然温泉というわけじゃないので、そこは何とも言えません。お空さんのアレが天然と言えるのかどうか、ですが……」

    アリス「え? あの話ってちゃんと続いてるの?」

    早苗「何言ってるんですか、さとりさんと提携してこっそり色々してるに決まってるじゃないですか」

    アリス「守矢の外交怖い……」

    早苗「まぁあちら的には、好きにして、という感じでしたが」

    ミスティア「あ、あのー」

    早苗「あぁごめんなさい、また話が逸れちゃいました」

    早苗「えっと、メニューはそんな感じで?」

    ミスティア「良いと思うけど、もう少し何か欲しいなぁ」

    アリス「そうねぇ。ただ、仕入れの事も考えるとね……」

    紫「そこで、私の出番と言うわけよ」

    ミスティア「ぴゃっ!?」

    アリス「ひっ」

    早苗「わぁお」

    紫「ふふ、こんにちは」

    アリス「心臓に悪いわあんた……」

    紫「何かまた守矢が面白そうな事してるって聞いたから来てみたら、お店を出そうとしてるのね」

    早苗「相変わらず耳が早いですね」

    紫「藍に楽しそうに話してたってね?」

    早苗「そうですけど」

    アリス「お前が原因かい」

    ミスティア「どっ」

    アリス「漫才かよ。てか一人なのに、どっ、て……」

    紫「貴女も、律儀に突っ込んでる時点で、ね」

    早苗「それで、紫さんの出番だとかなんとか」

    紫「そうそう。メニューを決めてるんでしょ? なら、これを入れて欲しいのよ」

    ミスティア「これは……」

    アリス「蕎麦、ね……」

    紫「そ、蕎麦。出雲蕎麦よ。島根の有名なお蕎麦」

    早苗「出雲蕎麦って、あの出雲蕎麦ですか? 良いですね!」

    アリス「あんたらの故郷なんだっけ。蕎麦が有名なの?」
    *実際小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)と関係あるかは知らないけど、二次設定でそういう事にしてます

    紫「そうよ。松江ではないんだけど、名前の通り、出雲の方」

    ミスティア「蕎麦かぁ。天麩羅にも合うし、いいかも」

    紫「私がこれを仕入れてきてあげる。だから、メニューにどう?」

    ミスティア「そうしてもらえるのなら、ぜひ!」

    アリス「いいの? なんか優しすぎて怖いんだけど」

    紫「あら、勿論商売よ? ちゃんとお金取るから。善意とはいえ、そういう所はちゃんとしないといけないわ」

    ミスティア「ど、どのくらいかかりますか……」

    紫「んー、蕎麦自体はそう高いものでもないけど……ここじゃ普通に手に入れられるものじゃないもの、これくらいは取りたいわね」

    ミスティア「う」

    早苗「そこでミスティアさん、交渉のカードを切るんです。交渉人東風谷早苗、です」

    紫「告白の言葉が残念な人みたいね」

    早苗「2の時でしたっけ」

    紫「確かそうだったわ」

    アリス「暗号はいいから話進めなさいよ」

    早苗「交渉人、というタイトルのものもあるんですが」

    アリス「知らんがな」

    紫「じゃあ、早苗はどういう交渉をしてくれるのかしら」

    早苗「温泉優待券でどうですか。マッサージ付きです」

    紫「乗ったわ」

    アリス「はやっ。てかもうそれおばさん……」

    紫「消去」ポイッ

    アリス「ギャー」ヒューッ

    ミスティア「(下手な事言ったら焼き鳥にされるなこれ)」

    紫「まぁその条件なら、これくらいに負けてもいいわよ」

    ミスティア「こ、こんなに!? いいんですか?」

    紫「そういう事言ってると気が変わるわよ?」バサッ パタパタ

    ミスティア「い、いや、これでお願い!」

    紫「わかったわ。それじゃあ、お蕎麦とダシのの仕入れは任せて」パチン

    早苗「お酒にヤツメウナギ、天麩羅、蕎麦、とんかつ、おでん……いい感じじゃないですか?」

    ミスティア「うん! 追加があれば、追々と言う事で」

    早苗「ではこれらを基盤に考えていきましょう!」

    紫「うーん、そうね、藍を自由に使ってもいいわよ」

    早苗「それはありがたいです! 次の話題は人員ですからね」

    ミスティア「一人でやろうと思ってたけど、話が思った以上に大きくなったし、やっぱり考えないといけないよね」

    紫「人員確保は大事よ。というわけで……」ゴソゴソ

    紫「はい、どうぞ」ペイッ

    藍「きゃっ」ベシャ

    早苗「(藍さんの可愛い声久々に聞いたな)」

    藍「あ、あの、事情がさっぱり呑み込めませんが……」

    紫「九尾でしょう? 利口な頭脳を使って一瞬で理解なさい」

    藍「そんな無茶な……」チラッ

    早苗「?」

    藍「把握しました」

    ミスティア「えええええ」

    紫「それで、開店の目途は?」

    早苗「河童達の動きが活発だそうで、来月には店舗が出来上がりそうです」

    ミスティア「はやっ」

    紫「その辺りは流石ね……まぁ開店日が近づいたらまた言って頂戴。準備するから」

    早苗「わかりました。ありがとうございます」

    ミスティア「あ、ありがとうございます!」

    藍「そういう話か……それで紫さまが『故郷を応援する気持ちが少しでもあるならさっさと手伝いに行きなさい』とおっしゃられたのか」

    ミスティア「(それで急に連れてこられたんじゃ、そりゃ状況わかんないね……)」

    藍「ところでアリスは?」

    早苗「たぶん、もうすぐ帰ってきます」

    紫「あ、忘れてたわ」

    ミスティア「…………」








    早苗「さて、立ち上げスタッフですが……」

    早苗「料理長はミスティアさんです。旅館の中ですが、ちゃんとお店の名前もあります。『お食事処おかみすちー』です」

    ミスティア「な、なにそれ!?」

    藍「えらくストレートだな……」

    早苗「居酒屋以外はその時点では正式に開店してませんが、一応旅亭の女将という設定です。女将であり料理長です」

    アリス「そんな無茶な」

    早苗「まぁ実際旅館の業務にミスティアさんが携わるわけではないので、名前だけです」

    ミスティア「というかそれ、私が抜けてもお店の名前は変わらないよね?」

    早苗「そこなんですけど、ミスティアさん、お願いがあるのですが」

    ミスティア「な、なに?」

    早苗「ミスティアさんが抜けてもここを継続するにあたって、メニューを変えるのはなんだか寂しく思うんです」

    早苗「なのでこの店のメニューは残しつつ経営を続けたいんですが……かまいませんか?」

    ミスティア「そ、それは良いけど……」

    アリス「その確認に何か意味があるの?」

    早苗「この旅亭の店は子店舗という扱いにするんです。親店舗は、ミスティアさんの屋台」

    ミスティア「ええ!?」

    早苗「大丈夫です、そちらに人や妖怪が押しかけるなんてことはないようにしますし、人間との色々も無いようにします」

    早苗「ただ、これからもずっとミスティアさんは料理長なんです」

    ミスティア「は、話が大きくなりすぎて、何がなんだか……」

    早苗「名前を貸してもらうだけでいいんです。何かあっても一切責任を問うような事もしません。本当に、名前だけです」

    藍「まぁ、ミスティアの屋台が親とはいえ、子店舗であった悪い事が親店舗の顔に泥を塗るという話にはならないようにする、という事だな」

    早苗「そういう事です」

    ミスティア「ちょ、ちょっと待って! そんな大役、私なんかで……」

    早苗「大丈夫ですよ。こうやって人は偉くなっていくんです。自分一人の力でできる事なんて、実はそんなにありません」

    早苗「私たちも、やりたいと思ってやってるんです」

    ミスティア「ほ、ほんとに大丈夫かな……」

    早苗「勿論、プレッシャーになって困るというなら諦めます。そうですね。実際にお店をやってみて、終わってから考えてもいいですよ」

    ミスティア「う、うん、そうする」

    アリス「今更だけど、早苗の行動力と守矢の力ってすごいのねぇ……」

    藍「裏でこういう加減があるからこそ、社会というものは正常に動き続ける事ができる。綺麗な事も汚い事も、な」

    ミスティア「こわいなぁ……」

    早苗「さて、料理長がミスティアさん、サブにも人を入れて、ホールスタッフも何名か欲しいです」

    藍「経理関係は誰がするんだ?」

    早苗「そこは藍さんがいいですね」

    藍「承知した」

    ミスティア「それすごく助かる。売上でさえも、いつも帳簿に細かく書いてないと私忘れるし……」

    早苗「経理関係も勿論大事なんですが、できるだけ料理や対応に集中してもらいたいですしね」

    アリス「でも……今更なんだけど、ほんとにこんなんでいいの? やりたい事からかけ離れたりしてない?」

    ミスティア「当初の予定とは少し違うけど、元々ひと月くらいのつもりだったし、ここまでやれるならこれもやってみたい! だから、大丈夫」

    アリス「ならいいんだけど。この子ほんとに暴走する事多いから、その辺気を付けてね」

    ミスティア「あはは、気を付けるよ」

    早苗「ぐぬぬ」

    藍「一応、自覚はあるんだな……」

    アリス「で、結局何人必要なの?」

    早苗「そう大きなお店でもないので、人数が多すぎても困りますね。4,5人くらいでしょうか」

    アリス「ここに既に4人いるわね」

    早苗「あ、いえ、藍さんは抜いてます」

    アリス「経理だからか。でも、もったいないわね。藍も割烹着とか似合いそうなのに」

    早苗「!」キラリーン

    藍「いや、そこは別に反応しなくても……」

    早苗「これは経理に回してる場合じゃないですね……」

    藍「場合だろう。数字の方が得意なんだ」

    藍「それに、なんだ。毛が入ったら大変だ」

    早苗「そこは魔力的な何かでなんやかんやすればいいだけですよね」

    藍「それは、そうだが……」

    ミスティア「(私の時点で色々とまずい気はするけどそれ……)」

    アリス「もうこの子止まらないわよ?」

    藍「頼む、紫さま以外に悩みの種を増やさないでくれ……」

    アリス「切実ね……」

    早苗「むぅ……なら、あれですね。週1でお客サービスとして登場する、くらいですね。妖狐デーを設けましょう」メモメモ

    藍「完全に諦めてはもらえないのか……」

    アリス「ドンマイドンマイ」ポンポン

    早苗「勿論夜雀デーもあります。ヤツメウナギ関連の商品は全品1割引きです」

    ミスティア「な、何か照れるなぁ……」

    アリス「なぜ」

    早苗「アリスさんどうします? ホール出ます?」

    アリス「私はイメージに合わないから。お店の内装考えると、ミスティアも藍も良い感じだけど、私はそうじゃないし」

    早苗「確かにそれはそうですね……なら、アリスさんは商管ですね」

    アリス「しょうかん?」

    早苗「商品管理です。届く商品の管理や、業者さん……紫さんとかですね、その方々との業務連絡送受、伝票管理などです」

    アリス「伝票管理って?」

    早苗「簡単に言えば取引内容などを記載した紙です。ここは簡潔に、出元と仕入れ数、金額などに限定しておきます。わからなかったら藍さんに訊いてください。藍さんとは密接に話す必要のある部署ですので」

    アリス「まぁ、やってみるわ」

    早苗「帳簿や伝票を纏めて帳票と言いますが……パソコンは無いので、全て紙で確認・管理する事になりそうですね」

    藍「膨大な量になりそうな所だが、規模を考えればそうでもないか?」

    早苗「やってみないとわかりませんけど……ミスティアさん、材料っていつもどうしてるんですか?」

    ミスティア「え? 自前がほとんどだけど……」

    早苗「まじですか」

    ミスティア「農園があるからね。厳密に言うと私の農園じゃないけど。おでんの大根とかは、その辺りから」

    ミスティア「ヤツメウナギは捕まえてさばいてる」

    アリス「さすがね」

    早苗「その辺りは大丈夫と言う事でよさそうですね。となると、相手は紫さんやお肉の業者さんとかくらいか」

    藍「そこまで外の世界に忠実に考えなくてもいいんじゃないか?」

    早苗「それもそうですね……あちらの常識にまだ私は縛られてるみたいです、ううん」

    早苗「伝票云々は忘れてください。とにかく、例えば紫さんが持ってきてくださったお蕎麦の数を確認したりをお願いします」

    アリス「わかったわ。入荷する数はどこで知るの?」

    早苗「発注数はミスティアさんの方から。それをアリスさんが受け取って、持って来てもらった時に次回必要な数を相手に言ってもらえば大丈夫です」

    藍「突然必要な物があったりした場合は、私が動こう」

    アリス「なら、配膳する人と厨房にもう一人くらいが足りないって事?」

    早苗「ホールスタッフは私だけでも回りそうではありますが……お客さんの数次第ですね。もう一人いれば助かりはしますが、沢山来られると私だけでは到底無理でしょう」

    ミスティア「うーん、そこまで繁盛するかなぁ……」

    アリス「家飲みが基本だもんね、皆。わざわざお金を出してまで飲み食いしに来るかどうか……」

    早苗「ちっちっち、ちゃんと考えてますよその辺も」

    早苗「立地は妖怪の山の麓です。それでいて、今回は妖怪がターゲットです」

    藍「鴉天狗辺りに来てもらおうというのか?」

    早苗「そうです。文さんはまず取材にも来てくれますし、他の天狗たちも気になってやってくるでしょう」

    アリス「でも、それだけじゃ弱い気がするけど」

    早苗「次は紅魔館ですよ」

    ミスティア「紅魔館?」

    早苗「実はサブ料理長として咲夜さんをお迎えしています」

    アリス「えぇ!?」

    ミスティア「どうやらそうらしいわね。見積もりに書いてある……」

    アリス「よ、よくOKもらえたわね……」

    早苗「レミリアさんに許可もらいに行ったら、えらくあっさりくれましたよ。その代り、行くからちゃんともてなせと言われましたけど」

    アリス「腕の良い料理人貸してくれて、しかも客としても来てくれるって……付き合い良いわねあいつら……」

    早苗「そこで働く妖精メイド達も来る予定です。要するに、働く妖怪がターゲットになってるんです」

    早苗「テーマは、日々の疲れを癒す、です」キリッ

    藍「それなら温泉くらいは一緒に解放してもよさそうだな」

    早苗「あ、それもそうですね。ふむ、管理がちょっと大変になりますが、その方がミスティアさんのプレッシャーも幾らか緩和されて良いかもしれませんね」

    アリス「まとめて、癒しの空間って事か。まぁ、いいんじゃない?」

    早苗「ふっふー」

    アリス「ねえ、さっきからその『うっうー』みたいなの何なの?」

    早苗「言ってみてるだけですけど、うっうーを知ってるってアリスさんだいぶんこっちに染まりましたね」

    アリス「…………」

    早苗「残りの人材は……募集かけますか」

    ミスティア「え、公募?」

    アリス「それ大丈夫なの?」

    早苗「宣伝にもなりますし、誰か来てくれるかもしれません」

    藍「だが、妖怪にしか宣伝しないのだろう? 周知は難しいと思うが」

    早苗「そこはまぁ、地道にするしかないですね……まぁまだ時間はあるので」


    ーーーー
    文「ふむ、おかしいですね。誰かに噂してもらえそうになってくしゃみが出かけたのに、実は全然触れられなかったから出なかったみたいです」

    はたて「日ごろの行いじゃないの?」

    文「ハァ?」
    ーーーー


    早苗「あ、そうだ」

    早苗「ミスティアさん、お店をするにあたってお祝いを持ってきました」

    ミスティア「わぁ! ありがとう!」

    アリス「はやくない?」

    早苗「個人的なものですし。はい、これ」ドン

    ミスティア「お酒? これは……あ、ミスティアって書いてる」

    早苗「そうです! ミスティアっていう、マスカットのリキュールです」*実在します

    ミスティア「どれどれ……わ、甘い」カポッ トクトク コクリ

    早苗「果物系のリキュールですしね。ただ、度数が低いわけではないので飲み過ぎるとあれですけど」

    ミスティア「がばがば飲むタイプのものじゃないだろうけど、飲みやすいしジュースみたいに飲んじゃいそうだね」ぷぇ

    アリス「これも出すの?」

    早苗「これは難しいですね……外の業者さんとの交渉になりますので。紫さんに頼んでもいい気はしますが、ちょっとそこまでは……」

    ミスティア「ううん、これは大事に飲ませてもらうよ。ありがとう」

    藍「では、とりあえずは人員の確保だな」

    早苗「そうですね。他の細かい所はまた詰めていきます」

    ミスティア「いよいよ動き出してきた……うう、ちょっと不安」








    数日後



    アリス「で……集まったのがこいつらと」

    こいし「はぁーい!」

    輝夜「こいつらって、口の悪い雇い主ね」

    アリス「私は別に雇い主でもないけど……」

    アリス「てかあんたらはどうやってここの求人知ったわけ?」

    早苗「文さんが気を利かせてチラシを折り込んでくれたみたいです」

    アリス「ちゃんと読む人もいるのね……」

    輝夜「私は読んでないけど、えーりんがチラシ見つけて、働いてきなさいって」

    アリス「…………」

    早苗「こいしさんは、またどうして?」

    こいし「うーん、この頃はね、面白い物を見てるだけじゃなくて体験してみたくなってきたの」

    早苗「とてもいいことだと思います」

    アリス「でもこいしって他の人に気づかれなかったりするんじゃない? 接客してるのにスルーされるって悲しいと思うけど」

    こいし「無意識モードはオフにするから大丈夫だよ。だって今も、みんなわかるでしょ?」

    ミスティア「来た時はわからなかったけど、今ははっきりわかるね」

    アリス「ってかいつの間にオンオフ切り替えできるようになったのよ……」

    こいし「うーん、三か月くらい前から?」

    アリス「意外と最近なのね……」

    ミスティア「えっと、それじゃあ……輝夜さんは和のイメージにぴったりだし、ホール任せてもいい?」

    輝夜「学園モノの学園祭のノリでやればいいの?」

    ミスティア「ふぁ?」

    早苗「もうちょっと本格的ですが、たぶん問題無いです」

    アリス「理解できない言い方で話を進めないであげて!」

    ミスティア「ええと、じゃあこいしさんはレジ周りと接客でお願い」

    こいし「お会計すればいいの?」

    ミスティア「うん。でもそんなに大変じゃないだろうから、ホールも担当してね。会計の時だけ抜ける感じで」

    早苗「私と輝夜さんで基本回す感じですね」

    輝夜「ふーん、なんかゲームみたいで面白そうね。プレイする専門でいたいけど」

    アリス「サボらないでよ?」

    輝夜「そんな子供みたいな事しないわよ」

    アリス「休憩中にゲーム始めて、休憩終わっても戻ってこないとかありそう」

    輝夜「なっ、無いわよ、たぶん」

    ミスティア「そこは断言してほしいところね……」

    こいし「ねーねー、メニューってこれだけ?」

    アリス「あ、お品書きもうできたんだ」

    ミスティア「一応こんな感じで作ってみたよ。和紙を使って、デザインも凝ってみた」

    アリス「うん、良い感じね」

    早苗「今の所メニューはこれだけですが……何かアイディアでも?」

    こいし「うーん、ご飯ものって無いのかなって」

    ミスティア「ごはんかぁ。それは考えてなかったよ……」

    早苗「皆酒飲みですからね、こういう席で白米を食べる事は少なそうです」

    輝夜「コースでも最後に出てくるくらいだものね。むしろ口直しくらいのイメージだわ」

    アリス「強いて言うなら、うな重かな?」

    早苗「ちょっと彼のキャラはここにはいないですね」

    輝夜「似た人って考えると、探偵団はこの面子じゃ無理よ」

    アリス「無視無視」

    ミスティア「おにぎりくらい作ろうかな?」

    輝夜「おにぎり頭って、やっぱり彼の」

    アリス「ちょっと黙ってくれない?」

    輝夜「(´・ω・` ) 」

    早苗「まぁともかく、それはいいかもしれませんね。〆にも使えそうですし」

    こいし「そうじゃなくってさ! 天麩羅あるんだから、天重が欲しいよう」

    アリス「天重ときたか……まぁタレがあればできる、のかな?」

    早苗「蕎麦があるんですし天重がメニューにあってもおかしくないですが……居酒屋からどんどん離れていきますね」

    アリス「とんかつの時点で統率無いと思うんだけど」

    ミスティア「うーん、その辺こだわりがあるわけでもないし、お酒が飲める料理店ってくらいで別にいいんだけど」

    アリス「店主が良いと言うならまぁいいか」

    こいし「んー、メニューが無理なら、まかないメニューでもいいよ」

    ミスティア「えっ、まかない必要?」

    こいし「……ないの?」

    ミスティア「いや、あってもいいけど……」

    こいし「よかったぁ」

    輝夜「あんたそんな食いしん坊キャラだっけ?」

    こいし「ううん、こういう店で働いた時に出るまかない、っていうのに魅力があるんだよ」

    早苗「わかります、結構わかります。裏メニューみたいで、何か良いんですよね」

    輝夜「言いたいことはわかるけど、残念ながらそういう気持ちはわからないわ」

    アリス「あんたは普段から、言えば何でも与えられそうな感じするわね……」

    ミスティア「あと、やむなく廃棄になったものは食べてもいいよ。捨てるの勿体ないし」

    早苗「ミスティアさんがお料理されるわけですし、管理的にも問題ないですしね」

    アリス「どういう事?」

    早苗「捨てる事になったものを食べていいとなると、廃棄を前提とした作り方をしてしまう人が出るからです。勿論、ここにそういう人はいないとわかってますが」

    早苗「廃棄や歩留まりもきちんと勘定しておかないと経理がぐちゃぐちゃになりますからね」

    アリス「色々あるのねぇ」

    アリス「(ぶどまりって何かしら……)」

    早苗「歩留まりとはあるメニューのものを作る時、必要となる材料から得られる実際の完成品の事です」

    早苗「例えば100gのネギを焼いた料理を作るとして、100gのネギを加工して得られる焼きネギは100gではないですよね。作業工程でどうしてもロスが出て、仕上がりは90gなどになってしまう」

    アリス「端を切って捨てたり、調理して軽くなったりって事?」

    早苗「そんな感じです。仕入れの際も、調理工程で端を切るからって値下げしてくれるわけじゃないですから、このロスの事は頭に入れておかなければなりません」

    早苗「で、歩留まりとは、調理工程が終了し出来上がった実際の分量、先の例で言えば90gの焼きネギの事を言います。まぁ重量に限定した話ではないですけどね。実際は焼くための油や調味料なども加味していくわけですし」

    ミスティア「(そんな事まで考えた事なかったや……)」

    アリス「ほんと色々あるのね……というか今更だけど、エスパーやめなさい」

    早苗「あはは、アリスさん何か言いたげだったので、用語解説の出番かなぁと思って」

    こいし「お姉ちゃんばりの洞察力だね。まぁお姉ちゃんの場合は丸々見ちゃうんだけど」

    アリス「たまに怖いわ……」

    早苗「それで、メニューの話でしたね。他に何かあります?」

    こいし「はいはーい」

    アリス「今度は何?」

    こいし「お魚メニューってないの?」

    早苗「さかなと言うと、鮮魚の方ですか?」

    こいし「うん。お刺身とか」

    早苗「それは難しそうですね……何せここには海がありませんから、魚といえば川魚になってしまいます」

    輝夜「そういえば鮭っているのかしら」

    早苗「あー、どうなんでしょう。でも最近、淡水での鮭の育成や抱卵の成功例がありますし、もしかしたら……?」

    アリス「よくわからないけど、魚料理は厳しいの?」

    早苗「どうでしょう、流石にそういう所まで紫さんに頼むのもあれですしね……」

    ミスティア「川魚なら手を加えたりできるけど……もっと良い魚がいるってことよね?」

    早苗「魚と言えば、マグロなんかも最高ですからね。でも、マグロは海の生き物です」

    輝夜「聞いてると食べたくなってくるわね……」

    早苗「あーーーー!」

    アリス「な、なに?」

    早苗「海の幸が微妙ということは、天麩羅ってエビないんですよね……」

    輝夜「え、ちょ、それはありえないでしょ」

    早苗「迂闊でした……このところ天麩羅なんて食べる事なかったから、すっかり忘れてました」

    輝夜「エビ天の存在しない天麩羅が伝わってる現実……ていうかイカも無いわねそれじゃあ」

    早苗「野菜天しかないですねそういえば……あとは茸とか」

    輝夜「菜食主義者じゃないんだから……」

    早苗「ううん、その辺はきちんと考えたい所ですね……まだ日はありますし、建築の進捗状況と合わせてそちらも交渉先を考えてみましょう」

    ミスティア「海の魚ってどんなだろう、お料理するの楽しいかなぁ」

    早苗「マグロの解体ショーとかもあるくらいですからね、さばき甲斐はありますよ」

    ミスティア「わぁ!」

    アリス「メニューもいいけど、仕事内容は詰めて考えなくてもいいの?」

    早苗「んあぁ、そうですね。注意事項なども色々ありますし、ホール関係の話もしたいと思います。ただ、藍さんが戻ってからで」

    アリス「そういえば藍はどこに行ってるの?」

    早苗「鬼退治に」

    アリス「はぁ?」

    早苗「退治は冗談ですが、華扇さんに会いに」

    アリス「なんでまた?」

    早苗「お酒の確保ですよ。華扇さん色々ステキなお酒をお持ちですから」

    アリス「あぁ、そういう事か」

    早苗「酒虫を貸してもらうのは流石に無理でしょうけど……こう、いくらでも沢山美味しいお酒が飲めるといいのかなぁと」

    ミスティア「お酒の量は沢山確保しておきたい所ねぇ。雀酒は流石に量はそんなにないから」

    アリス「(華扇も、良いお酒は持ってるだろうけどそんな沢山あるわけじゃないだろうに……)」

    輝夜「月のお酒も出す?」

    ミスティア「メニューにあれば目玉にはなりそうだけど……大丈夫なの?」

    輝夜「えーりんからちょろまかせばなんとか」

    アリス「すぐにバレて出せなくなりそうね……」

    ミスティア「ありがたいけど、安定性がないのはちょっと困るね……」

    輝夜「まぁ、ちょろまかすのは冗談にしても、一応訊いてみるわ」

    ミスティア「うん、ありがとう」

    こいし「うぬー、地底名物のお酒は無い事もないけどなぁ……」

    アリス「……そっちは結局鬼が絡んできそうな話になりそうね」

    早苗「しかも既に華扇さんが声をかけていたというオチ付きで」

    こいし「おちたくないよぉ!」

    アリス「ところで咲夜は打ち合わせ無し?」

    早苗「咲夜さんは今日スケジュール合わなくて……明後日に会う約束をしてます」

    ミスティア「あれ、現場の様子見はいつだっけ?」

    早苗「それは三日後ですね」

    アリス「なんか私はただ呼ばれて来てるだけだけど……早苗とミスティアはちゃんとそうやって話進めてるのね。早苗、まるでミスティアのマネージャーみたい。なんか感心したわ」

    早苗「私だってやる時はやるんですよ~?」

    アリス「はいはい、今まで半信半疑でごめんなさい」

    輝夜「その様子見って私も行っていいの?」

    早苗「それは勿論OKですけど……もう建設も結構進んでますし、どうせならみんなで行きます?」

    こいし「私もいきたーい!」

    アリス「もうできかけてるの? 河童侮れないわね……」

    ミスティア「いまだに諸々の話に実感ないよ……」

    早苗「じゃあ今日は藍さんが戻ったらホールの話して解散で。次は三日後ですね!」






    二日後


    ミスティア「わ……」

    咲夜「和食はあまり経験がありませんが……こんな感じでも?」

    ミスティア「うん、ううん、充分! てかすごい!」

    早苗「流石咲夜さんですね。言われたメニューを的確にこなしてしまいます」

    咲夜「このくらいできないとお嬢様にお仕えする事はできませんから」

    ミスティア「えっと、なんか私の出番なさそうなんだけど……」

    咲夜「何を言いますか。少なくともこの期間、あなたは私の上司です。してもらいたいことを何でも申し付ければいいのです」

    ミスティア「な、なんか申し訳なくなるんだけど……」

    早苗「それが仕事というものですよ。社会に出ると、時に年齢や普段の生活に関する事なんて関係なくなりますから」

    咲夜「まぁ、そんなに固くならなくてもいいかもしれないわね。ラフにいった方がいいかしら?」

    ミスティア「う、うん、それでお願い、します」

    咲夜「貴女が敬語になったら意味ないじゃないの……」

    ミスティア「あ、うん、ごめん」

    早苗「なんだか微笑ましいですねっ」

    ミスティア「それで、何か気になる事とかある?」

    咲夜「そうね……調味料に幅を持たせたいんだけど」

    ミスティア「というと?」

    咲夜「天麩羅は蕎麦に入れるだけじゃなくてそのままも食べるのでしょう? なら、ダシの他に、大根おろしや抹茶塩を用意するとか。あと、お客様が好みで加減ができるよう、食卓に置く調味料も複数用意したいわ」

    早苗「塩にしても、数種類置くということですか?」

    咲夜「そうね。岩塩からごましおなど、幅広く。他にも、ソースは普通のソースと甘めのソースを用意するとか、ね」

    ミスティア「何とかできそうだけど、難しそうなのもあるな……」

    咲夜「幾らかはうちから持ち出すから、次回は味付け辺りを詰めていきましょうか」

    ミスティア「ありがとう! 私も色々考えて次回に臨む事にするよ」

    「あーだこーだ」

    「あーでもないこーでもない」

    早苗「ふむ……流石、厨房は私が言えそうな事は何もなさそうですね」スタスタ



    早苗「んーっ……ふう」

    早苗「今日は気持ちいい晴空ですね~」

    魔理沙「お、いたいた」

    早苗「あ、魔理沙さん。こんにちは!」

    魔理沙「おう。探したぜ」

    早苗「何か御用でも?」

    魔理沙「いや、何か面白そうな事をしてるって聞いたからな、視察に来たんだ」

    早苗「ミスティアさんの居酒屋の話です?」

    魔理沙「そうそうそれそれ。驚いたぜ」

    早苗「まぁ大々的な宣伝はまだしてませんし」

    魔理沙「私たちは店に飲みに行くって事をあまりしないからな、最初は斜に構えて聞いてたけど、話を聞いているうちに興味がわいてきたよ」

    早苗「誰から聞いたのです?」

    魔理沙「華扇からだ。華扇は藍から聞いたみたいだ」

    早苗「一昨日ですかね。華扇さんにはお酒の面などでお世話になりますから」

    魔理沙「華扇の酒だけでも期待できるのに、他にも色々あるんだろう?」

    早苗「はい! お酒だけでなく、お料理もとっても美味しいと思いますよ!」

    魔理沙「あいつの屋台はたまに行くからな、ハズレじゃないのもわかるさ」

    早苗「開店日はまたお知らせしますけど……来てくださるんですか?」

    魔理沙「勿論行かせてもらうぜ! あんまり高いと困るけどな」

    早苗「高くはないでしょうけど……材料の関係もありますから、今は何ともです」

    魔理沙「まぁそうだろうな。だが! そこで、こいつの出番というわけさ」スッ

    早苗「なんですか?」

    魔理沙「茸だよ、見ればわかるだろ」

    早苗「スーパー?」

    魔理沙「なんだそりゃ?」

    早苗「いえ、なんでもないです」

    魔理沙「よくわからんが……メニューってもう完全に決まってしまったのか?」

    早苗「一応は決まりましたが、多少の増減はあると思いますけど」

    早苗「もしやキノコ料理を推奨したいと?」

    魔理沙「その通りだ。しかも、材料は私が提供してやるよ」

    早苗「おお! それは何とも嬉しい話ですね!」

    魔理沙「ただし、条件がある。キノコ料理に関してのみで構わないから、タダにしてくれ」

    早苗「それは、材料費と引き換えに、という事ですか?」

    魔理沙「そういう事だな。茸を沢山渡すから、その代り私のはタダにしてほしい。勿論、たんまり余るだろうからそれは好きに使えばいい」

    早苗「何とも魅力的な案ですが……訊いてみないとですね」

    咲夜「良いと思うわよ?」

    魔理沙「うわ! いきなり背後に現れるなよな、心臓に悪いぜ……」

    ミスティア「茸なら焼いたりするだけでも美味しく作れるし、お手軽に品数増えていいかも!」

    早苗「茸ステーキとかもあるくらいですからね!」

    魔理沙「もう秋なんだし、ちょうどいいだろ? 何なら栗とかも拾ってくるが……」

    ミスティア「ううん、あんまり増えても困るから、茸だけでいいよ」

    魔理沙「そうか。で、条件は呑んでくれるんだろうな?」

    ミスティア「もちろんだよ! 沢山くれるんでしょう?」

    魔理沙「採れた分だけやるから問題ないぜ。たぶんな」

    咲夜「確約ができないのは不安ね……どうしようかしら」

    魔理沙「おいおい、やっぱり無しとか言わないでくれよ?」

    早苗「うーん、それならみんなでキノコ狩りにでも出かけてみますか?」

    ミスティア「えっ、今から?」

    早苗「あ、いえ、別に今でなくてもいいんですけど。魔理沙さん、茸は魔法の森で探すんですよね?」

    魔理沙「まぁそうなるな」

    早苗「なら、料理長自ら森に出向いて状態を把握しておくんです。その時、試作品の分を採ってきましょう」

    ミスティア「そうね、それがよさそう」

    魔理沙「その時に沢山採っていかないでくれよ?」

    咲夜「試作品を作る分しか採らないわよ。開店もそんなに先というわけでもないし、貴女がちゃんと茸を採って来れるかの確認もあるから」

    魔理沙「何で信用されてないのかね……まぁいいけどさ。採取ポイントも目星つけてるんだぜ」

    ミスティア「ちなみに何の茸探すの?」

    魔理沙「そんなの松茸に決まってるだろ」

    早苗「ま、マツタケ!」ヒエー

    咲夜「また高級な物が採れるのね……」

    早苗「でもあの辺に松の木なんてありましたっけ?」

    魔理沙「だからスポットなんだよ。ある地帯に結構いい感じの場所があるんだ。もしかしたらアリスも知ってるんじゃないか?」

    早苗「確かに知ってそうですね。でも、松茸の採れるポイントとかって誰も教えてくれないイメージありますけど……いいんですか?」

    魔理沙「旨い飯にありつけるチャンスなんだし、まぁいいさ。言いふらすような面子でもないだろう?」

    ミスティア「そういうのは守るよ」

    咲夜「その後採りに行く事はあるかもしれないけど、それでもかまわないの?」

    魔理沙「別に私の所有地ってわけでもないからな。私がどうこう言うのも変な話だ」

    魔理沙「採取のポイントもその時教えてやるよ。まぁ気が向いたらまた採りにくるなりすればいい」

    ミスティア「えらく気前がいいね」

    魔理沙「その分旨い料理を出してくれるんだろ? ならそれで商談は成立だぜ」

    ミスティア「逆に失敗できないな……メニュー考えなきゃ」

    早苗「私は土瓶蒸しがいいです」

    魔理沙「焼くのが良いけど、折角だし個人じゃ作るのが難しそうな料理にしてもらいたいな」

    早苗「私は土瓶蒸しがいいです」

    咲夜「まぁその辺も色々考えておくわ」

    魔理沙「おう、よろしくな~」

    早苗「私は土瓶蒸しが……」

    魔理沙「土瓶蒸しはわかったって!」

    ミスティア「あはは……挑戦してみるよ」

    早苗「そうと決まれば、魔理沙さん、私は今から視察に行きたいです! だめですか?」フンスフンス

    魔理沙「私は別にかまわんが……」

    咲夜「うーん、残念だけど私はここで帰るわ。あまり長い間紅魔館を空けるわけにもいかないし」

    ミスティア「今日はありがとうございました。次は……いつにしよう?」

    咲夜「明日は厳しいけど、明後日なら時間が取れるわ。今日と同じ時間くらいでもかまわない?」

    ミスティア「なら、それでお願い」

    咲夜「了解。それじゃ、またその時にね」シュンッ

    早苗「一瞬で消えてしまわれた……」

    魔理沙「わざわざ時を止める意味あるのかこれ」

    ミスティア「ねえ、私も行っていい?」

    魔理沙「勿論だ。というか、お前に来てもらわない事には意味がないだろ」

    ミスティア「だよね。じゃあ、魔法の森にいこ~」

    早苗「おー!」




    魔法の森



    魔理沙「いいか? 松茸ってのは赤松の木の所にある。何故かって、松の木に寄生して生きてるからだ」

    ミスティア「寄生?」

    魔理沙「ああ。茸っていうのはそもそも、植物じゃない。菌類なんだよ」

    ミスティア「ええっ!? 菌……?」

    魔理沙「ああ。だからカビなんかと同じだな」

    早苗「ほら、ジメジメした所に対して、茸生えるとか言うじゃないですか」

    ミスティア「あー、うん、言う」

    早苗「カビもそもそも『生える』って言ってますしね」

    魔理沙「カビって言うとイメージ悪いかもしれんが、カビだって薬にもなるって言うしな」

    ミスティア「言われてみれば……」

    魔理沙「だから自分で作る場合、その菌を木なんかに植え付けるんだ」

    早苗「茸を育ててる所って面白いですよ。この辺じゃあんまり見ませんけど」

    魔理沙「里でも誰かやってそうだけどな、意識して見てないだけで。まぁ、そういう話は今はいい」

    魔理沙「今回採るのは松茸だが、菌類という事もあり、茸の幾らかは毒をもつものも結構あるんだ」

    魔理沙「きちんと判別できない場合は絶対に手を出さない方が良い」

    早苗「魔理沙さんが言っても説得力ないですね、なんか」

    魔理沙「う、うるさいな」

    魔理沙「ドクツルタケみたいな完全にアウトな茸もあれば、食べ方次第では毒となるヒトヨタケみたいな茸もある」

    早苗「お酒を飲むときに食べるとやばい茸ですね、ヒトヨタケ。一夜で自己消化してしまう事からこの名前がついたとか」

    魔理沙「よく知ってるなお前」

    早苗「これでも理系ですし」

    ミスティア「魔理沙もすごいよ。魔理沙はどうして知ってるの?」

    魔理沙「自分で得た知識も中にはあるけど、パチュリーのとこの本や香霖堂に置いてある雑誌に書いてたりするからな。覚えたんだ」

    ミスティア「ほえー……でもそのヒトヨタケっていうのは、毒キノコなんだね。居酒屋には最悪の茸ね」

    早苗「アルコールを摂取した時、身体の中ではアセトアルデヒドを分解してるんですけど、このキノコはそれを阻害しちゃいますからね」

    ミスティア「死ぬわけじゃないの?」

    早苗「簡単に言うと、ずっと悪酔いした状態が続くって事です」

    魔理沙「お酒は飲み過ぎると、もう二度と飲むまい、とか思うだろ? あれがずっと続くと思うと……辛いな」

    ミスティア「それはやだね……」

    魔理沙「話が逸れちまった。とにかく、毒のある茸なんか客に出したら大問題だ」

    ミスティア「しかも自分らで採ろうって言う話だし、特に気を付けないとね」

    魔理沙「予想ついてると思うが、誤って毒キノコを採取しないようにしようって話だ」

    早苗「カキシメジですっけ、マツタケに似てる茸」

    ミスティア「やっぱり似てるのあるのか……怖いなぁ。シイタケとかでもいいよ?」

    魔理沙「シイタケこそ、きちんと栽培した場所じゃないと怖い。ツキヨタケっていう似た茸があってだな、これがまた間違って採取される事が多いんだ」

    早苗「夜になると光るアレですね」

    ミスティア「……今回ほんとに大丈夫なの?」

    魔理沙「任せろ。まぁカキシメジにしたって食べて死ぬわけじゃないし、最悪試食して確かめるさ」

    ミスティア「不安になってきた……」

    魔理沙「平気だって。似てるといっても、物によっては似てるかなってくらいだし、微妙だったら採らなければいいさ」

    魔理沙「勿論、里の茸職人に見せたりして確かめもする。ちょっとお金かかるだろうけど」

    ミスティア「それがいいよ。安全が一番」

    早苗「いえ、知り合いにその筋の方がおられますから、話してみます。お金もかかりませんし、すぐできます」

    魔理沙「まじかよ。守矢の伝手こええ」

    早苗「エッヘン」ドヤッ

    ミスティア「守矢さんとこだけは敵に回したくないなぁ」

    魔理沙「まぁ色んな意味でな……ともあれ、早速採りにかかるが……」

    魔理沙「当たり前だが、赤松があれば必ず松茸があるわけじゃない。普通、松茸なんてものは探しても見つからないもんだ」

    ミスティア「探す方法があるって事よね?」

    魔理沙「正解は無いけどな。探し方なら、自己流ではあるが一応ある」

    早苗「どんな方法ですか?」

    魔理沙「赤松を見つけるのが第一段階だが……木のすぐ下にあるとは限らない事をまず知っておきたいな」

    ミスティア「なんで? 赤松に寄生してるんじゃないの?」

    魔理沙「赤松にというより、赤松の根に注目するんだ。木の根は何も、上から下にだけ伸びるわけじゃないだろ?」

    早苗「横にも広がってますね。ということは、木から離れた場所にあるかもしれない、という事ですか?」

    魔理沙「そういう事だ。地上から調べるのは難しいが……赤松の根が通っていたという理由で、別の木の下にちょうど生えてたって事もある」

    ミスティア「とにかく、じっくり探せばいいのよね?」

    魔理沙「まぁ、そういう事だな」

    魔理沙「次だが、季節が季節だ、落ち葉が凄い」

    早苗「紅葉、そして落葉の季節ですからねぇ」

    魔理沙「上から眺めてたってなかなか松茸なんて見つけられるわけじゃない。落ち葉の下にこそ、目的のブツは存在する」

    ミスティア「かき分けて探すの?」

    魔理沙「そうだが、いちいちそんな事してたら日が暮れるなんてもんじゃない」

    魔理沙「葉の下に何かがあれば、当然そこは膨れるだろ? そういう場所を中心に探してみるといい」

    ミスティア「でも森の中だし、そういう所なんてごまんとあるよ……」

    魔理沙「まぁそこは慣れるしかないな……慣れたって、落ち葉を探ってみたら石があっただけでした、なんてこともよくある」

    魔理沙「そしてもう一つ、気にしておくことがある」

    魔理沙「松茸は赤松に寄生してる。ということは、だ。一つ見つけられたら、芋づる式に沢山採れる可能性もあるってわけさ」

    ミスティア「その辺りを中心に探せばいいのね?」

    魔理沙「そういう事。だいたい生えてるポイントなんてものは同じか近い場所だから、一度覚えれば次の年も採れる可能性が高いな」

    早苗「最初の一つを見つけるのがヤマですね」

    魔理沙「こういうのは焦っても仕方ないんだ。落ち着いてじっくりやらないとな」

    魔理沙「あぁあと、成長具合にも気を付けるんだ。シイタケみたいにカサが開ききってるものより、カサの内側が幕切れしてないものがいい」

    ミスティア「幕切れしてない、って?」

    魔理沙「つぼみみたいになってる状態だな。開いていくにつれ、価値も下がっていく」

    魔理沙「だが勿論、小さい状態のもの、いわゆる子供な茸は良くない。カサが開こうとする直前くらいが一番いいんだ」

    ミスティア「判断難しそうね……」

    魔理沙「その辺は私が見るさ」

    早苗「でも、採れる場所はもう目星つけてるんですよね?」

    魔理沙「まぁな。毎年採りに来れるように調整して採取してる場所が幾つかある。今から行くのはその一つだ」

    魔理沙「何度でも言うけど、くれぐれも口外するなよ? 別に採られるのは構わないんだが、見つけ次第どんな状態のものでもぶちぶち採られたらたまったもんじゃない」

    魔理沙「まぁ探していれば良い感じのやつもカサが開いたやつも、色々見つかるだろうな」

    ミスティア「とにかく見つけたら報告、でいいのかな?」

    魔理沙「それでいいけど、私も万能じゃないぞ」

    早苗「相談して採取するか考えましょう」

    魔理沙「ただ、カサが開いてるからって悲観しなくてもいい。あんまり開きすぎてるとなんだけど、焼いて食べる分には問題無いからな」

    魔理沙「香りはカサが開ききってから二日程度しかもたないって言われてるが、その辺りのものは除外すればいい」

    早苗「あれしましょう! 松茸酒!」

    魔理沙「お、良いね。あれがまた美味いんだ」

    ミスティア「そういうのもあるんだ……メニューに追加できるかな?」

    早苗「使う量もそんなに多くはないし作るのも簡単ではありますけど……他のお料理の事も考えると、あまり余裕はなさそうですね」

    魔理沙「きっと松茸料理は高値だろ? それに、今日も含め採れる量なんて本当に少ないぞ」

    ミスティア「あんまり手が出ないような値段にして、贅沢品にしちゃおうかな」

    魔理沙「それが良いと思うぜ。注文が来れば一儲け、来なければ身内で最高級の味わいを堪能できる……素晴らしいじゃないか」

    早苗「うーっ! 今からよだれが止まりません!」エヘヘ

    魔理沙「炭火焼ができるといいな。あとは……なんだ?」

    早苗「土瓶蒸し! 土瓶蒸し!」

    魔理沙「お前ほんとそれ好きな」

    早苗「えへへ。あとは……松茸ご飯は微妙ですかね? 定番ではありますが、ごはんものはウケが悪そうという話になってるんです」

    魔理沙「好きな奴は好きだけどな~。炊くなら少量ってわけにもいかないだろうし、その辺りは難しそうだな」

    早苗「うーん、事前に調査でもした方がいいでしょうか……これも相談したほうがよさそうですね」

    魔理沙「そういや知り合いっていうのはもしかして、秋姉妹の事か?」

    早苗「そうですよ。秋に関する事なら何でも間違いなく正しい答えが返ってくると思って」

    ミスティア「穣子さん?」

    早苗「です。きっと色々教えてくれます」

    魔理沙「素朴な疑問なんだが、妖怪の山にも松茸あるんじゃないのか?」

    早苗「きっとあると思いますけど、言うなればあそこは穣子さんのテリトリーでもあるので、勝手な事をしたら怒られちゃいますよ」

    魔理沙「その辺厳しいのか。まぁ、当たり前か」

    ミスティア「竹林のタケノコも同じだね。一度赦しちゃうと他も赦さないといけなくなるし、そうすると荒らされるからって妹紅さんが言ってた」

    魔理沙「心無い事するやつはどこにでもいるからな。こういう場所は教えないに限る」

    魔理沙「さ、無駄話はいいだろ。探しに出かけるぞ」

    ~少女移動中~

    早苗「おー、赤松林ですね」

    ミスティア「範囲はそう広くはないけど、こんな森の奥にこういう場所があるなんて知らなかったよ」

    魔理沙「結構奥の方だからな、里の人間たちはまずここまで入らない」

    早苗「そうでなくても、松茸を探して歩く妖怪なんて聞いたこともないですしね」

    魔理沙「まぁ三妖精くらいは探しに来るかもしれんが……イクチに群がるくらいだ、松茸の価値もロクにわかりそうにないし、あまり知られたくはないな」

    早苗「すぐ近くにいたりして」

    魔理沙「おいおい勘弁してくれよ……?」

    ミスティア「縛り付けておいて、夜目にして放置しようか」

    魔理沙「何気に怖い事言うなお前……」

    早苗「まぁとにかく、探しましょう。憧れの松茸は目の前ですよ!」

    ミスティア「憧れなんだ……」

    早苗「憧れです! 高級品です! 贅沢です!」

    魔理沙「何か前も訊いた気がするが、早苗のとこはこういうの食べないのか? 山の幸に関しては結構贅沢してそうな気もするんだが」

    早苗「別に粗食にしてるわけじゃないですけど、あまり贅沢はしないようにしてます」

    魔理沙「命蓮寺みたいなもんか?」

    ミスティア「あのお寺って粗食なの?」

    早苗「詳しくは知りませんけど、あちらも贅沢はしてないはずです」

    魔理沙「守矢に土地代払わないといけないしな。そのせいだったりして」

    早苗「変な事言わないでください! 諏訪子様はそこまでケチじゃありません!……たぶん」

    ミスティア「たぶんて」

    早苗「ううん、土地代なんていただいてないはず……うーん、なんか気になってきた……」

    魔理沙「いや、実際どうかは知らんが、私のは冗談だからな?」

    ミスティア「守矢の土地を貸してるの?」

    魔理沙「諏訪子が地ならしした土地に寺を建てたって話だが……詳しくは知らん」

    ミスティア「それより松茸探そうよー」

    早苗「ううん……」



    採取も終わり……




    ミスティア「意外と沢山あったね」

    早苗「あれだけあれば大丈夫そうですね。ただ、開店時期にどうかですが……」

    穣子「育ってない松茸も結構あったんでしょう? なら大丈夫よ。乱獲さえしなければ」

    早苗「無事に茸メニューも増やせそうですね!」

    魔理沙「しかし、あれだな。予想していたとはいえ、期待を裏切らないというかなんというか……」

    穣子「結構沢山の毒キノコがあったわね……わざと?って思うくらいに」

    魔理沙「早苗のやつカエンタケ採ろうとしてたんだぜ、信じられるかよ」

    早苗「いやぁ、ベニナギナタタケかと」

    穣子「確かに似てはいるけど、普通触ろうとすら思わないわよ……」

    魔理沙「ネタか? ネタなのか? って思ってどう声かけようか迷ったわ」

    早苗「うー、もういいじゃないですか。終わった事なんですから」

    ミスティア「だけど、あんなに良いポイントだと色んな人に狙われそうだね」

    魔理沙「まぁ見つかったら見つかっただ。その時は別のポイントで探す事にするさ」

    早苗「霊夢さんに見つかったらおしまいですね」

    魔理沙「笑えないな……たまにお土産に持って行くが、偶然手に入れた事にしてる。追及されたらたまったもんじゃない」

    穣子「まぁとりあえず、松茸以外はこちらで引き取るわね。いい?」

    早苗「はい、お願いします。いつもお世話になります」

    穣子「私たちだって、諏訪子様のおかげで色々と助かってるし、お互い様よ」

    魔理沙「ほんと守矢は危なっかしい事多いけど、しっかりしてる所も多いんだよな」

    ミスティア「そのうち幻想郷を内側から支配しかねないわね……」

    魔理沙「はは、紫が真剣に目を付け対策を考える日もそう遠くないかもしれないな……」







    諏訪子「へくちっ」

    神奈子「あら、どうしたの? 体調でも崩した?」

    諏訪子「うー、誰かが噂してるんだよきっと」

    神奈子「悪い話じゃないといいけど」

    諏訪子「信用ないなぁ」








    予定してたよりかなり長くなりそうなので分けます。


    後半へ続く

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