【特撮】ルパパトにおける「断罪と救済」について
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【特撮】ルパパトにおける「断罪と救済」について

2019-02-11 19:57

    ※本文章は「怪盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー」の最終回を含む展開についてのネタバレを含みます。また、下記の作品群についても物語の核心に触れるネタバレ要素が含まれていますので合わせてご留意ください。(「仮面ライダードライブ」「仮面ライダー龍騎」)

    目次

    1、 はじめに

    2、 ピカレスク作品としての顔

    3、 ルパンレンジャーは「正義のヒーロー」か?

    4、 警察という存在をどう描くか

    5、 自らが悪であることを自覚するルパンレンジャー

    6、 ヒーロー番組の結末として

    7、 で、最終回

    8、 ピカレスクヒーローとしてのルパンレンジャーの完成

    9、 パトレンジャーの正義を発散させる最終回

    10、永遠のヒーロー

    11、おわりに

    1、 はじめに

     先日放送終了になった「怪盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー」、大変素晴らしい作品でしたね。幼少期時代を除いて、大人になってから初めて見てみたスーパー戦隊シリーズでしたが、ここまでの完成度を誇る作品は中々ないのでは?と思わされるほど面白い作品でした。また特撮沼に引きずり込まれてゆく…。

     さて、史上初のW戦隊ということで、販促上・展開上の制約も多くあろうことは予想に難くなく、制作に非常に苦労した作品であろうと思います。中でも放送中僕がずっと気になっていたのは、この物語の締めくくりとして「ルパンレンジャーをどう断罪し、どう救済するのか」という点でした。

     作品テーマの扱いの難しさから最後の結末までを振り返り、個人的に思ったことを書いていこうと思います。

    2、 ピカレスク作品としての顔

     本作は怪盗アルセーヌ・ルパンをモチーフに、また設定の下敷きにしており、いわゆるピカレスク要素のある作品と言えます。

     社会的にアウトローな存在を主人公に添えたこの手の作品群において、主人公が義賊的立ち位置にいることが少なくありません。法に触れる行為を犯している自覚を持ちながらも、常に弱者や虐げられし者達の目線に立ち、視聴者や読者の視点からは本当の正義は主人公達にありと思わせるような物語が多く見られます。

     似たような例を挙げるとすれば同じアルセーヌ・ルパンを設定に取り入れた「ルパン三世シリーズ」、同じく怪盗の活躍を描く「ペルソナ5」などでしょうか。これらの作品では主人公達は公的な組織である警察に追われる立場でありながら、真なる悪を挫くヒーローとして描かれ、視聴者に対して彼らが罪人であるという意識を深く持たせません。彼らが警察に捕らえられることは物語としてのバッドエンドであり、視聴者にとっての正義の勝利とは必ずしも結びつかないのです。

    3、 ルパンレンジャーは「正義のヒーロー」か?

     この作品がもし、「怪盗戦隊ルパンレンジャー」というタイトルであったなら、上記の作品らと同じような典型的なピカレスク作品として語ることが出来たでしょう。理不尽に奪われた大切なものを取り戻すためにギャングに戦いを挑む義賊、と言う構図で主人公達「のみ」に感情移入することは容易だったはずです。

     さて、ここで問題となるのはこの作品が「怪盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー」というタイトルであるということです。そう、対立する警察サイドのキャラクターが同列の主人公として並び立つ作品である、ということです。

     番組OPのナレーションで「君はどっちを応援する?」というあおりがあるように、本作品は2つの主人公サイドどちらの視点からも語られます。警察の視点からすれば、怪盗は正体不明・目的不明の違法行為を繰り返す集団であり、一貫して逮捕するべき存在として描かれます。

     そう、「ルパン三世」や「ペルソナ5」と違い、ルパンレンジャーは罪を犯している存在である、違法な集団であるということが警察サイドの物語でことさらに強調されるのです。

     主人公が一貫して社会悪として扱ってきた存在に対して警察として、友人としてどういう結論を下すのか、という点にこの作品最大の難しさが隠れていると考えたわけです。

    4、 警察という存在をどう描くか

     警察という組織をこういった子供向け番組で扱うのは意外とデリケートなことなのではないかと思います。

     公的な組織であり、社会的正義を体現するべき存在として市民の模範となるべき姿を見せなければならない。そのイメージを大きく壊す描き方は、特に大人向けの作品と比べて避けられているように思えます。子供が憧れる職業の一つとして、頼るべき存在として描かれるよう気が配られていることが多いです。

     仮面ライダードライブの主人公である泊進ノ介は、人間の悪に悩みながらも警察官としての使命として市民を守る決断をしました。仮面ライダークウガの一条刑事は、戦う力を持つ五代に対してあくまで一般市民として扱い、戦いは自分たちの仕事であると言い放ちました。他にも様々な作品に素晴らしい警察官の姿が描かれています。

     …まあ広く様々な作品を見ると、仮面ライダー龍騎の仮面ライダーシザースや、仮面ライダードライブの仁良刑事など例外的存在もいますが、彼らの野望は割と完膚なきまでにたたきのめされ、それなりの制裁もされてるし、まあ置いておくとしましょう。

     脱線しましたがともかく、警察戦隊パトレンジャーにおいても国際警察の3人は警察官としての本分に忠実で、高潔な正義の人物達として描かれてきました。そんな彼らがずっと警察として追ってきた怪盗に対して、たとえ彼らが親しい人たちだったからといって、罪をなかったことにしていいのでしょうか?警察として紡いできた物語を締めくくるために、一年間闘ってきた怪盗に対して、警察官としての何らかの答えを出さなければならないはずです。

    5、 自らが悪であることを自覚するルパンレンジャー

     一方の怪盗サイド、ルパンレンジャーはというと、こちらも罪なんてへっちゃらほいというわけにはいきません。大切な人を取り戻すという意志は揺るぎないものではあるものの、度重なる警察との戦いの中で自らの罪を自覚する場面が多くなっていきます

     魁利は圭一郎にいなくなった兄の姿を重ね、彼と対立することで兄へとったつらい態度への後悔を思い出し苦悩し続けます。初美花は咲也との距離が縮まるにつれ、正体を隠して騙しているという罪悪感を大きくしています。

     「ルパン三世」においてはルパン達が自らの罪を自覚したり後悔することはほとんどありませんし、視聴者もそれを不自然には思いません。だって主人公は彼らしかいないから。

     しかし「ルパパト」においては警察サイドの視点があるが故に怪盗の罪が浮き彫りにされ、またそれ故魁利達が苦しむ展開が多くなります。

     最終盤、とうとう怪盗の正体が明らかになります。その正体に思い悩む圭一郎の前に挑発するかのように魁利は姿を現します。魁利は圭一郎に怒りをぶつけられることで自らの罪を自覚したかった、責められたかったのに圭一郎の予想外の反応に逆に激昂してしまいます。二人の積み重ねてきた関係性から生まれた名シーンですね。

     自ら「怪盗向いてるわ」と開き直り覚悟を決めた魁利ですら、罪の重圧を感じることの重要性を噛みしめているということがわかります。

    6、ヒーロー番組の結末として

     じゃあルパンレンジャーが逮捕されればそれでいいのかといえばそういうわけにもいきません。彼らもまた、感情移入するべき主人公として描かれてきたキャラクター達です。前述の通り、彼らが己が正義を貫き通した末に逮捕される、というのはバッドエンドにほかならないでしょう。

     また、仮にも子供向けヒーロー番組の主人公(それもどちらかと言えば比重の重いサイドである方の主人公)が単に断罪されて終わり、というのももの悲しいです。1年間応援してきたヒーローの無情な最後は子供が受け止めるにはつらいものがあります。

     怪盗が罪を精算するというプロセスは、警察の物語の到達点へ至るため、またここまで苦しんできた怪盗の心を解放するために必要なことではあります。しかし同時にそれらを総括した一つの物語の終着点へ至る道を作るために、怪盗へ最後の救済が与えられるべきだと思っていました。

    7、で、最終回

     そして迎えた最終回、物語の結末は、まあ見たとおり、一言で言えば「待ていルパ~ンあばよとっつぁ~ん」エンドですね。結論を描かず決着を視聴者の想像に委ねる、と言う形になりました。彼らの物語はまだまだ続いていくよ、ということでメタ的な視点で言えば続編や外伝などが作りやすくなるなどといった効果がありますし、上述のように相反する主人公達の主義主張を片方折るような決着を避けることもできました。

     こういうある意味結論の棚上げとも言えるような結末は、まあ納得いかないという人もいるでしょうが、しかし「怪盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー」という番組の終わりとして非常にしっくりくる清々しい終わりと感じた人も多いのではないでしょうか。

     この終わり方をするために必要な要素は最終回でしっかりと描かれました。

    8、ピカレスクヒーローとしてのルパンレンジャーの完成

     ルパンレンジャーに対して必要な「断罪」と「救済」について、それを満たすための要素として足りなかったのはルパンレンジャーをピカレスク作品のヒーローとして確立するためのピースでした。

     上述しているルパン三世等の作品で主人公達が断罪されるべき存在という意識を視聴者に持たせなかったのは、彼らが作中で弱きを助け悪しきを挫くヒーローとして「認められた」からです。「ルパンは大事なものを盗んでいきましたあなたの心です」の「あなた」の部分の視点が今ひとつ足りてなかったことが、視聴者から、そして彼ら自身からも罪の意識を取り払えない一つの要因でした。

     で、最終回。もうおわかりでしょうが、ルパンレンジャーが助けたかった身内三人が逆に怪盗になって彼らを助けに来たという展開でした。自分たちが助けた人が、(きっとその人達には認めてもらえないと覚悟していた)同じ手段でもって逆に自分達を救ってくれることによって、自分達の今までの行為をある種肯定してくれた、というところがポイントですね。ピカレスク作品による代表的な救済方法、「他の誰が蔑んだとしてもあなたさえ本当のことを知ってくれていたらいい」というやつです。

     これによってルパンレンジャーは罪悪感から救済され、晴れて救った人たちに認められたピカレスクヒーローとして完成し、断罪されるべきという意識を視聴者の中で希釈させることに成功しました。

    9、パトレンジャーの正義を発散させる最終回

     ルパンレンジャーをヒーローとして確立しきったところで、パトレンジャーの正義はどうなるのかという問題については、決着の棚上げというラストによって一応の結論を出しています。これからも怪盗に対しては断固たる態度をとっていく、という姿勢はラストシーンからも明らかです。

     しかし、それでは彼らの立場がないというものです。だからなのか、一年間正義を貫いたパトレンジャーの戦いの総決算として敵組織ギャングラーの首魁、ドグラニオとの最終決戦はパトレンジャーが締めることになりました。ルパンレンジャーを罰しきることが作中で出来ない以上、せめて両戦隊にとってのメイン敵組織であるギャングラーに対してのとどめはパトレンジャーに任せようということですね。どちらかと言えばサブ戦隊的な扱いをされてきたパトレンジャーにとっては結構破格の扱いだったんじゃないかなと思います。

     販促の都合なのか今まで登場しなかったスーパーパトレン1号やスーパーパトレンエックスが登場したり、ボロボロの姿からの素面名乗りなどこれでもかというほど見所を詰め込んできました。咲也の「苦しまなくていい人が苦しんだんだ!」なども心を打つ台詞でしたね。

     正義か悪かといった立場で揺れ動いていたルパンレンジャーに対して、大量虐殺や人身売買などの非道を行い一貫して悪を貫いたギャングラーという組織。そのギャングラーに最後の正義の鉄槌を下す役目として、パトレンジャーほどふさわしい存在もなかったと思います。

    10、永遠のヒーロー

     さて、両戦隊の戦ってきた意味をそれぞれ確立したところであのようなラストを迎えたことによって、ルパンレンジャーとパトレンジャーは子供達の中で永遠の存在になりました。

     一年間テレビの前で一緒に戦ってきたヒーローの姿は、番組終了後も子供達の心に残り続けます。彼らの精神性は作中の戦いが終わった後も子供達の中でずっと続いていくのです。

     教育番組とまでは言いませんが、こういった子供向け番組には子供に夢を与える、願いを込めるメッセージがあります。ヒーローがその信念の元で今日もこの空のどこかで戦っているかもしれない、という思いは子供達を勇気づける大切なメッセージです(例えば「仮面ライダードライブ」の主人公泊進之介は、最終回で「たとえ変身できなくても俺は仮面ライダードライブだ」と言い放ちその精神性はずっと残っているよというメッセージを残しました)。

     見る側の想像に結論を委ねることによって、番組は終わっても彼らの精神性はずっと残っていくことになった、と考えると、下手に決着を描いて白黒つけるだけが正解じゃないと思います。

     ちゃんと「VS」の形で始まったものを同じ「VS」の形で終わらせるというのも収まりがいいですし、OPの冒頭ナレーションの「君はどっちを応援する?」というあおりが最後につながっていくというのも美しいですしね。

    11、おわりに

     限界オタクの激長トークに付き合っていただきありがとうございました(ごめんね?)。

     初のW戦隊という試みに対して、販促の不調やピカレスクを扱う難しさなどの要因で、制作陣は本当に苦労されたと思います。そういった逆境を乗り越えあまつさえ利用して、最高の展開、最高のラストを作ってくれたと思っています。

     未回収の要素(ルパン家の謎やルパンコレクション全回収の効果など)が外伝作品などで回収されるとうれしいですね。また彼ら7人の話の続きが見てみたいとも思います。

     本当に素晴らしい作品でした。大人になってからこういうものを見るのもいいものです。是非この作品の魅力がより多くの人に知られればいいなと思っています。

     ありがとうございました。

     ちなみにおじさんは「兄ちゃん、…ごめん」で泣きました。


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