弱いなら弱いままで。
モナーク・セイクレッド! 『ファイブスター物語』はどこまでSFか考察する。(2040文字)
いままで「全宇宙の全記録を書き記した書物」であり、10万年前のアズデビュート帝国のモンソロン大帝が見つけたとか、アッセルムラトラ・ディスターヴ超帝國(超帝国ユニオ)の炎の女皇帝ナインが気づいたとか書かれていたしろものであるが、ようやくその一端が掴めたようだ。
モナーク・セイクレッド、それはクラウン大銀河の中心、時が停まった空間にあり、全人類の全生涯を記録しつづける機械らしい。
そこには星団暦のフェイツ公国大公アルセニックが送り込んだファティマ「光のタイフォーン」がいるのだとか。
で、このタイフォーンはナインをマスターとして選び、「リブートします」と呟くわけですね。この「リブートします」というひとことが何を意味しているのか、謎はさらに深まる。
どうやらジョーカー太陽星団の全人類にかかわる秘密らしいのだが。新しく公開された年表を見ると、コーラス6世の星団解放とともにモナークは記録を停止するとあり、必ずしも永遠に全情報を記録しつづける機械というわけでもないようだ。
さて、いったい何なんだろうね、これ? だれがつくったんだろう? モナーク紀以前の存在だろうか?
天照のミラージュ騎士団の装束にもこのモナーク・セイクレッド・マークが記されているようでもあり、また、ドクター・ダイヤモンド・ニュートラルは偶然からその存在を知ることになったともいう。
いずれにしろ、銀河の中心で一兆を超える人間の人生を再現しつづける機械――とんでもないものが登場したものだ。
これまで、『ファイブスター物語』はファティマを初めとして幾多の科学ネタを扱いながら、サイエンス・フィクションとは慎重に距離を取ってきた。
ただのSFにはしたくないという作者の思いがそこには込められていたと思われる。しかし、モナークはあきらかにSF的なガジェットだ。
時が静止した空間で何兆もの人間の人生を再現しつづけるなぞめいた機械、これがSFでなくて何だというのか。どうしてもグレッグ・イーガンあたりを連想することを避けられない。
おもしろいことに、「ユニオ3」ナインも、その遠い子孫であるアトールの詩女ムグミカも、モナークの存在を否定する。それが人間の希望であることを認めない。
そして、ムグミカは「もうひとつの希望」として、「セントリーのファティマ」タワーを生み出し、彼女を天照のミラージュ騎士団に預けるのである。
この記事の続きを読む
ポイントで購入して読む
※ご購入後のキャンセルはできません。 支払い時期と提供時期はこちら
- ログインしてください
購入に関するご注意
- ニコニコの動作環境を満たした端末でご視聴ください。
- ニコニコチャンネル利用規約に同意の上ご購入ください。