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  • 『マインドマップで語る物語の物語(1)』正式告知!

    2018-08-04 08:44  
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     そういうわけで――というか何というか、同人誌『マインドマップで語る物語の物語(1)』の最新にして正式の告知です!
     今後、計4冊か5冊くらい出していく予定のシリーズの一冊目です。ただし、これがまったく売れなかったら次はありません(笑)。いや、マジで。
     イベント価格を1冊1000円という、なかなかとんでもない安さに設定してしまったので、少なくとも200冊くらいは売れてくれないと困るのですね。
     諸経費を考えると、本来はいくら何でもこの値段は無理なのですが、そこは早期入稿によって印刷代を削ることにで破格のお値段を実現しました。
     あまり儲けは考えていないどころか、ほんとに赤字ギリギリの価格設定です。だから、みんな、買ってくれ~!
     まあ、もうちょっと裏話を話すと、今回はほんとうに原稿が早く仕上がっていて、そのおかげですべてがきわめてスムーズに運んでいます。
     具体的にいうと、コミケの2か月前にはもうすべての原稿が完成し、推敲まで済んでいました。
     我がことながら素晴らしい。みんなよくやったよ。ぼくも頑張った。偉い偉い(最近、自分で自分を褒めることにしている海燕さんなのであった)。
     まあ、今回、サークルメンバーは日本中どころか世界各地(笑)にバラバラに住んでいて、直接集まって話をしたことは一度もないのですが、それにもかかわらずすべてがとてもスムーズに、スピーディーに進行しました。
     内容に関するさまざまな議論もすべてLINEやSkypeを使って行われています。
     いやー、まさに現代。時代は変わりましたね。こんなことがあっさり実現可能な世の中になったんですね。わかってはいたことだけれど、じっさいやってみると感心する。もう、いちいち会社とか通う必要なくないですか?
     まあ、ペトロニウスさんも書いていますが(http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20180803/p1)、そもそもはLDさんが作った巨大なマインドマップを世に出すためにスタートした企画です。
     これは戦後のエンターテインメントを一望するというとんでもないシロモノなのですが、初めて見せられたとき、「何だこりゃ」という感じだったので、そのショックをみんなに共有してもらおうということなのですね。
     それから1年。よくここまで形になったものだと思うほど綺麗な本ができあがりました。はっきりいって自信作です。
     もちろん、次回以降はこれをさらに超えるクオリティ&エンターテインメント性に仕上げたいと思ってはいますが、それもこれもこの本が売れるかどうかにかかっているわけです。 さて、はたしてこの企画が、沖田さん大勝利!に終わるか、無残な失敗となって消え去るかは、いまのところはまだわかりません。すべては売り上げしだいなのです。
     いや、あまりくり返すとしつこい印象になるけれど、お願いだから買ってね。ほんとうに頑張って作ったので……。
     もちろん、通信販売も行う予定です。その場合はさすがにイベント価格よりいくらか高い値段設定になりますが、ご了承ください。
     で、内容についてはここ(https://www.monozann.com/doujinnshi/)にも書いたのですが、戦後日本の物語の歴史、そのプロローグということになります。
     ある意味、ヒーローたるアニムスくんと、ヒロインにしてやっぱりヒーローでもあるアニマちゃんを主役にした「物語の物語」とも受け取れる作品です。
     つまりは、あまたの物語(コンテンツ)を通し、ひとつの物語(コンテキスト)を見いだすある種の批評的冒険ということ。
     面白いよ。しかもシリーズを通して尻上がりに面白くなっていく。これが全巻出せなかったら無念でしかたないので、ほんとよろしくお願いします。
     夏コミ3日目、東館ト‐58bにてお待ちしております。ちなみにその前日の「堕天使条約機構」にも委託しています。こちらは東1K-30bです。
     また、今回はアージュの吉宗鋼紀さんや作家の津田彷徨さんに原稿を依頼していたりもします。これがまた興味深い仕上がり。豪華だねー。
     それにしても、いやはや、大丈夫なのだろうか。コミケは何度か参加しているけれど、毎回心配です。
     まあ、相当の冊数を用意したので売り切れることはないと思いますが、参加される方はお早めに。ちなみに、ぼくは午後から顔を出す予定です。午前中はペトロニウスさんやLDさん、銀鷹さんが売り子をやっています。
     で、これもペトロニウスさんが書いていることですが、サークル名の「プロジェクト物語三昧」はそのうち名前を変更する予定です。
     このままだとペトロニウスさんの個人サークルみたいだからね。Projecet Azukiarai Academiaというのが有力候補らしい。なんかかっこいいな(笑)。
     あ、そうだそうだ、ハバネロPに急遽お願いして(ありがとう!)、動画も作ってもらいました。ここ(https://youtu.be/0X010S57TZg)ですね。これがまた素晴らしい仕上がり。涙でそう。うるうる。
     まだ終わってはいませんが、今回、ほんとうに楽しかったです。みんなでひとつの企画を実現していくって楽しいよね。しかもどいつもこいつも有能だし、大人だし。
     ある意味、10年以上かけて積み上げてきたぼくたちの仲間の総決算にして、新たなスタート地点ともいえる企画です。よろしくなのです。それでは、コミケでお逢いしましょう! 
  • 電子書籍『花の勲章』刊行。

    2016-10-01 06:01  
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     同人誌第一弾『BREAK/THROUGH』を『花の勲章 Breakthrough』と改題して電子書籍化しました。中身は、小説部分を削った以外ほぼそのままです。約10万文字あります。
     いま読むと、作品に関する情報は古びていますが、それでもなかなか面白いですねー。意外に悪くないな、と思います。ところどころ、『戦場感覚』に至るアイディアの萌芽が見られたりしますし。
     最後の第十章「花の勲章」のテンションの高さはいま見てもすごいものがあります。ぼくが書いたすべての文章の中で最もテンションが高い文章でしょう。
     よければ『戦場感覚』と合わせてお読みください。

     目次
    第一章「少年の夢。『プラネテス』が見る風景」
    第二章「世界が空気に溶けるまで――『ほしのこえ』から『けいおん!』へ」
    第三章「阿良々木暦の可能性殺し――『猫物語(白)』とハーレムブレイカー」
    第四章「『日本沈没』か『東のエデン』
  • 電子書籍『戦場感覚』完全版刊行!

    2016-09-28 10:24  
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     電子書籍『戦場感覚 ポラリスの銀河ステーション』をAmazon Kindle Storeにて上梓しました。元になっているのはぼくが数年前に発表した同人誌ですが、これはいっそう完成度を高めた「完全版」ということになります。
     価格は250円で、なんと11万文字以上あります。ほぼ新書一冊分ですね。はっきりいってお得なので、よければ買ってね。この本こそぼくの思想的バックボーンになっているものです。この本を読まなければ海燕のロジックは理解できないといってもいいかも。
     ちなみに、いまさらいうまでもないことかと思いますが、Kindle書籍はKindle媒体をもっていなくてもスマホやタブレットやPCで読むことができます。ていうかそっちのほうが読みやすいです。念のため。
     また、『小学校2年生の作文に泣かせられたよ。』という書評集も同時に出しています。こちらは相対的に短いですが、ぼくの書いた書評のな
  • 電子書籍『弱いなら弱いままで』を執筆しています。

    2016-04-11 00:00  
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     ども。暇を持て余すこと幾千日目の海燕です。
     いやー、ニート飽きるわー。マジ飽きるわー。
     1日にやるべきことといえばせいぜいブログを更新することくらいですから、とにかく時間が余る。余って余ってどうしようもなくなる。
     そんなに暇を持て余しているなら、溜まっている本やアニメやゲームを一気に消化すればよさそうなものですが、そういうわけもいかない。
     人間、いくら時間が余っているからって1日10時間もアニメを見たり漫画を読んだりことはできないものなのです。
     そういうわけでどうにも暇で仕方がないので仕事をすることにしました。
     といってもぼくに依頼をしてくれる奇特な人もいないので、かってに原稿を書いて電子書籍で出すことに決めた。
     タイトルは『弱いなら弱いままで きっと主役にはなれないぼくたちのためのエンターテインメント論』になるんじゃないかと。
     同人誌『BREAK/THROUGH』、『戦場感覚』に続く内容になります。
     といっても、この2冊のようにむやみと読みづらい本にはならないと思います。
     このブログと同じくらい読みやすく、また気楽に読め、それでいて心に響く、そういう内容を目指したいものです。
     ボリューム的にはだいたい文庫本1冊ほど、10万字程度になるのではないでしょうか。
     このブログで書いた内容も多く含まれることになるでしょうが、よければ読んでいただければ幸いです。
     まあ、いつになったら出るのかはわかりませんが。来月か再来月あたりには出せるんじゃないかなあ。
     同人誌と違ってコミケに合わせたりする必要がないぶん気が楽ですね。
     いや、たぶんまったく売れないだろうし、儲からないだろうとは思うけれど、出して損はないからね。
     とりあえず執筆作業は暇つぶしくらいにはなるはず。
     また、そろそろいままで書いてきたことをまとめておく必要も感じているのですね。
     この本にはいくつかのキーワードがありますが、それらはすべてこのブログで語ってきたことです。
     扱われる作品もこのブログでおなじみのものになるでしょう。
     そういう意味では案外読む意味はなかったりするかもしれませんが、買ってくれるとぼくの生活が楽になるので感謝します。
     ほらほら、まとめて読むと案外面白いかもしれないし。当然、全編書き下ろしだし? 
     いや、ほんと、いつ出るのか、ほんとうに出るのか、さだかではないのですけれどね……。
     でも、 
  • 橋本しのぶさんの冬コミ新刊の解説を書きました。

    2014-12-18 13:09  
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     ぼくは冬コミにはみごと落選したので新刊は出せませんが、友人のはしさんが出す『艦これ』小説本に解説を書きました。せっかくですので、ここでも宣伝しておきます。
     まあ面白かったので冬コミに行く皆さんはよければ買ってやってください。『艦これ』についてくわしくないぼくでも楽しめたので、特別な予備知識はいらないはず。
     ちなみにサークルスペースは「東1-L43b」、そのほかの情報は以下を参考にしてください。http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=47575768 以下、解説の全文を転載しておきます。
     解説「すべての「提督」たちにささげる、血と泥の物語。」
     海燕
     このページを開いているあなたがすでに本編を読み終えているのか、それとも本編未読のまま後ろから本を目を通しているのかは知らない。もし前者なら、一編の壮大な物語を読み終えたという心地よい疲労感とともにこのページをめくっているはずである。こんな解説など、まったくの蛇足としか思えないことだろう。
     しかし、どうかもう少し付き合ってほしい。いま、ぼくはこの小説を読み終えて、その内容についてだれかと話しあいたくて仕方ないのだ。けれど、作者本人を除いてまだだれも読んでいないから、語りあえる仲間はひとりもいない。何だったらいますぐ電話で作者を叩き起こして熱い感想を押しつけてやってもいいのだが、早朝なのでさすがにやめておくことにした。だから、まあ、ぶつけどころのない熱量はすべてこの文章に叩きつけることにしたいと思っている。その作業にもう少しだけお付き合いください。
     いや、しかし、既に本編を読み終えたあなた、この小説、どう思います? ぼくは一読して、一驚した。何だこりゃ、と感じたね。一編のエンターテインメントとしてよくできていたことに驚いたわけじゃない。面白い作品であることは予想内だ。細部までかなりよく書けている上に、切なくも美しい物語に仕上がっていることすら、想像していなかったわけじゃない。各々のキャラクターの魅力や、コメディとシリアスのバランスなどについては、むしろ期待した通りといってもいいだろう。この作家なら、これくらいはこなす。そのことは知っていた。
     だが――そう、今回はそれだけではない。断じてそれだけに留まってはいない。それらすべての要素に加えて、ここにはたしかに「何か」がある。小説を小説にしている何か、あらゆる理屈を超えてひとの心を揺さぶる何か、言葉にしたとたん雲散霧消してしまう何かが。そう、どうやらそうらしいのだ。はるかな天頂へ向けひたすらに指をのばしつづけていた作家の指先は、どうやらその名もなく形もない「何か」に届いたらしいのである。
     いやはや、驚いたことだ。ぼくはこの作家はついに「それ」に届かないかもしれないと思っていた。仮に届くとしても、もっと先のことになるだろうと予想していたのだ。さらに何年もの辛酸と渇望の日々が必要に違いない、と。ところがどうやらぼくの予測はくつがえされたらしい。いま、ぼくの目の前にあるこの小説は、いかにも荒削りではあるものの、紛れもないオリジナリティを備えた「本物」である。
     もちろん、ここが彼が目ざした天のいただきだというつもりはない。さらなる高みへと道は続いている。しかし、それでもなお、ここから先は限られた「本物」の書き手だけが往ける領域であることに違いはない。そしてここまでたどり着いた以上、彼はさらに先へと進むだろう。ほんとうに驚いたことだ。ちょっと、彼に対する評価を改めないといけないかもしれない。
     さて――さて。ただ「驚いた」と書くためだけに規定原稿量の三分の一を使いきってしまったので、急いで本筋に入ることにしよう。本作はいま大人気のブラウザゲーム『艦隊これくしょん』を題材にした二次創作長編小説である。時間とお金はだれにとっても貴重なものだが、本書はそれに費やすに値する一冊だ。もしあなたがいまイベント会場や同人ショップでこの本を買おうかどうか迷っているなら、さっさと買ってしまうといい。損はさせない。ほらほら。
     ――と、これはまあ解説文章の常套文なので、あまり信用できないかもしれない。そういう人のために、これからこの小説の魅力についてじっくり話していくこととしたい。
     もちろん、あなたに『艦これ』の説明は不要だろう。近年、最高/最大の支持を集めているブラウザゲーム。最低限の課金で長く楽しめるシステムと、旧日本海軍の艦艇を擬人化した奇妙な設定がウケて、発表以来、あっというまに大人気を博すこととなった作品である。こんな奇抜なゲームがヒットするのは世も末という気がしなくもないが、おそらくぼくもあなたも、それを他人ごとのように嘆く資格はないに違いない。ほら、艦娘、可愛いし。
     そういうわけで『艦これ』の面白さはわかりきったことなのだが、当然、だからといって『艦これ』を題材にした作品がすべて面白いということにはならない。しかし、たったいま全編を読み終えたばかりのぼくからいわせてもらうなら、この小説はめっぽう面白い。ただ『艦これ』の魅力を十全にひき出しただけにとどまらず、「その先」へ行こうとしている冒険的な一作といえる。
     ちなみに今回のメインヒロインは金剛。可憐な容姿と個性的なキャラクターで知られ、「ボイス追加、新規実装などで他に提督に対して「好き」だと自ら発言する艦娘が増えた現在でも、その元祖と言うべき位置づけから「提督LOVE勢筆頭」と評価されている」(「艦これ攻略Wiki」より)という人気キャラクターである。
     彼女を含む無数の艦娘たちと、艦娘を率いて戦う「提督」の軽妙なボケ&ツッコミの繰り返しのなかで、少しずつ物語は進んでいく。他愛なくも楽しいラブコメディ。しかし、お話は単なる喜劇には終わらない。クリスティの『オリエント急行殺人事件』を思わせる序盤から、「100人を超える艦娘たちのなかに混ぜられたスパイはだれなのか?」というミステリを巡るシリアスな物語が始まり、サスペンスフルに進んでいく。
     ここらへんのジャンルミックスの方法論はもはやお手の物といった印象で、作家の成長を感じさせる。作者自身が凝っていると思しいコーヒー(ぼくも作者から何杯かごちそうになったが、たしかに美味しかった)に関するうんちくはともかく、この異形の構成をギリギリのラインで成立させた手際は称えられていい。いやまあ、一見本編と何の関係もないように見えるコーヒー談義がほんとうに何の関係もないあたりはどうかと思うのですが。お前は司馬遼太郎か。
     ごほん(咳払い)。まあそれはともかく、本作を傑出したものにしているのは、この秀抜な構成に加え練りこまれた世界設定である。一度でもプレイしたことがある者ならだれもが知っているように、『艦これ』本編はごくごくシンプルな作りになっており、作中で提示される情報はそれほど多くはない。したがって、『艦これ』を素材にして物語を生み出そうと望む者は、自分で世界と物語を形作るしかない。逆にいえば、そこが作者の腕の見せどころだ。
     本作の場合、作者が作り上げた「世界」はまずオーソドックスなものといっていい。この世の彼方にあるどこかで、無数の「艦娘」と「深海棲艦」が人類の命運をかけ死闘を繰り広げるファンタジックな世界。そこで文明崩壊に瀕した人類社会を背負って必死に戦っているのが艦娘を率いる「提督」というわけだ。ここらへんはゲームの設定を小説的に再現したものなのだが、まさにそのために中盤以降、SF的なセンス・オブ・ワンダーを感じさせる事実がいくつもあきらかになり、そして哲学的思索が始まる。人間とは何か。兵器とは何なのか。ひとを傷つけ、害する兵器が人々を惹きつけ、その心を奪うのはなぜなのか。そんな、たとえば相田裕『GUNSLINGER GIRL』や永野護『ファイブスター物語』の「ファティマ」へとつながっていくような問い。
     しかし、何といっても本作と直接につながってくるのは、作中で楽屋落ち的に触れられている『新世紀エヴァンゲリオン』だろう。アイデンティティを喪失したクローン生命体の少女、綾波レイが呟く「わたしが死んでも代わりがいるもの」というあの言葉の向こうにこの作品の世界は存在する。
     読者は思うに違いない。艦娘とは何だ。いったい彼女たちは何のために生きて戦っているのだ。その重すぎる問いかけに対し、本作の主人公である提督は毅然と答える。彼女たちは人間だ。それ以外の何ものでもない、と。しかし、かれのその悲愴なヒューマニズムはほんとうに正しいのか。艦娘はあくまで人間だといいながら、同じ口で彼女たちを死地へ送り込むその態度はどうしようもなく欺瞞に満ちている。ここにはあきらかに物語のメタレベルで『艦これ』のプレイヤーに突きつけられる糾弾がある。これは、『艦これ』を深く愛しながら、『艦これ』に対して無邪気であることを許さない作品なのだ。
     あるいはあなたは、ただのゲームじゃないか、というかもしれない。しかし、その楽しいゲームの世界がひとつの現実として現れた時、何と凄惨な物語が展開するのだろう。艦娘たちを愛しながら、同時に彼女たちをいかに効率よく「消費」するかを考える「提督」には、リーダーなる者の絶望的矛盾が体現されている。本作は決してそこから目を逸らさない。その上で、血にまみれ、泥に汚れたひとりの男の決断を描いていくのである。
     リーダーであるということは、ある意味で人間の限界を超えた仕事だろう。だれを犠牲にし、だれを生かすか。何を守るため、何を殺すのか。そんな、倫理的に許されるはずもない傲慢そのものの判断を下すことを要求されるのがリーダーの常であるとすれば、提督とは、リーダーとはまさにひとでなしの仕事である。そんなかれに、それでもなお艦娘たちが従うのだとすれば、それはなぜなのか。本作は強く訴えかけてくる。
     ばかみたいにあかるい笑顔で優しく抱きついてくるあの娘に代わりなんていない。ひとつひとつすべてが限りなくかけがえのない命。それを承知した上で、なお、「最善の選択」を下すこと、そして時にはその「最善」をも超えて判断していくことがリーダーの役目なのである。不可能な仕事。不可能な役割。しかし、たとえ何が正しく、何が誤っているのかわからないとしても、ひとはその限界の範囲内で選択し決断しなければならない。
     その先に待つものは祝福されざる栄光。それでも逃避は赦されない。ひとり逃げることは戦場に残る者たちを見捨てることにほかならないのだ。だから――戦え! 前門には猛虎の如き敵影、後門には餓狼のような味方。それでもなお、知謀の限りを尽くして戦術を練り、九死に一生の奇跡に賭けろ。本作はそのように訴えるのだ。
     素晴らしい。まったく素晴らしい。橋本しのぶ、会心の一作である。願わくは、ここからさらなる続編が書かれることを祈りつつ、筆を置くこととしたい。――うん、それはともかく、ネタバレで話をしたいからやっぱり作者を叩き起こすことにしよう。現在、早朝の6時だが、かまわない。いますぐ話したくてたまらないことが、まだまだたくさんあるんだから。 
  • Twitterでなにげないツイートがなぜかバズっているなう。

    2014-08-22 21:06  
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     諸事情につき大変遅くなりましたが、同人誌『Fate/Bloody rounds(1)』の通信販売予約をされていた皆さまに向けて、同人誌(と、サイン色紙)を発送いたしました。明日か明後日には皆さまの所に届くものと思われます。よろしくお願いします。
     色紙に関しては、おそらく十人が十人、「なんだ、この汚い字は」と思われることでしょうが、どうかご容赦を。色紙代と送料を合わせるとほとんど黒字は出ていませんしね。
     なぜぼくはこんなだれも幸せにならないアイディアを出してしまったのだろう……。いつも思いついた時は良いアイディアだと思うんですけれどねえ。
     通販予約特典の電子書籍と短編小説についてはもう少々お待ちを。
     また、正式に『Fate/Bloody rounds(1)』の通信販売を開始いたします。SPIKEでクレジットカード決済可、送料込み1300円です。
    https://spike.cc/p/CcgYAjid
     ちなみに、電子書籍版(テキストファイル+EPUB)も販売を続けています。1000円です。
    https://spike.cc/p/en74oaDg
     また、通信販売+電子書籍はぐっとお安く1800円。
    https://spike.cc/p/gd4H8Omk
     通信販売+電子書籍+未公開18禁短編小説は2100円となっております。
    https://spike.cc/p/B9gJwUPK
     ただし、上記しました通り、電子書籍と短編小説の発行にはあと数日お時間をください。すいません、色々立て込んでいまして……(ダメな言い訳ですね)。あ、サイン色紙付きは既に書いたようにだれも幸せになれないのでやめようと思います。
     あと、同人誌『戦場感覚』及び『BREAK/THROUGH』もひきつづき販売しております。送料込み800円というお安さ。さらに2冊合わせると1500円になります。
    https://spike.cc/p/dD23B3S9
    https://spike.cc/p/pzKHubR0
    https://spike.cc/p/6r9vgAr0
     ちなみに、両者ともA5、144ページで、十数万文字の文字数があります。よろしく。なお、SPIKEを利用したくない向きは、「kenseimaxi@mail.goo.ne.jp」まで通販希望のメールをくだされば、銀行口座をお知らせしますので、そちらに振り込んでください。振込手数料はかかりますが。また、同人ショップへの委託も考えています(ただし、当然、少し割高になると思います)。
     さて、きょうの記事なのですが――何を書こう。ここ数日、何も本を読んでいないので、ひさしぶりにネタがない。というか、コミケ疲れと大きなイベント後は必ず起こる鬱で、しばらく何もできない状態が続いていたのですけれど、いいかげん始動しないとなあ。うーん。
     どうでもいい話なのですが、いま、この記事を書いている最中にリアルタイムでぼくのツイートがバズっています。 
  • 帰還。

    2014-08-19 19:00  
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     ども。コミケから帰還した海燕です。いやー、疲れた! でも楽しかった! 初の自分のサークルスペースでの活動ということであったわけですが、おかげさまでたくさんの人に来ていただいて、助かりました。
     差し入れをくださったり、暖かい言葉をかけてくださった皆さまには感謝の言葉もありません。ありがとう、ありがとう。みんなのおかげで生きているよ!
     冬コミにも参加して『Fate/Bloody rounds』の続刊を販売する予定なので、良ければ来てください。まだまだお話は続くのじゃよ。
     あと、『Fate/Bloody rounds』を読まれた方はkenseimaxi@mail.goo.ne.jpまで、感想など送ってくださると嬉しいです。書き手は自分が書いている物語が面白いと信じているうちは書きつづけられるものなのですよ。その信仰が崩れた時に、作品は「エタる」のですね。
     とりあえず、ひとりでも読んでく
  • 『Fate』は続くよどこまでも。

    2014-08-07 07:00  
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     どもです。このあいだ、新潟駅前でてれびんと逢ったのですが、普段、LINEで24時間会話しているから、いざ逢っても何も話すことがありませんでした(笑)。
     互いに黙ってスマホを眺めているばかり。完全に現代のダメな若者そのもの。36歳にもなってぼくはいったい何をやっているんだ。全然ひととして成熟していないじゃん! 色々反省しましたにょ。
     いやー、それにしても、最近、戦場感覚だとか、現代幸福論だとか、妙にマジメな記事が続いていますねー。いったいぼくはどうしてしまったんだろう?
     ダメだ。本来のおれはこうじゃないはずだ。もっとこう、おっぱいのこととか書きたい。おっぱいおっぱい。どうせ女性読者なんてほとんどいないんだからおっぱいについて書き散らしたところでイメージは壊れないはず。
     いやまあ、昨日、1日で5本ほど記事を書いて、きょうまた何本か書く予定なのでマジメな話をするのに飽きてきたってだけなんですけれどね。愚痴を云っていても仕方ないので書きますけれど。
     あー、女性読者ほしいなあ。キャラクターイラストをイケメンキャラに変えようかな。自画像と思われると困るんだけれど。
     そういえば、話が飛びますが、TYPE-MOONが『Fate/Grand Order』という作品を発表していますね。『Fate』のオンラインゲーム(?)のようですが、セイバーとジャンヌ・ダルクが同時に描かれているイラストが公開されています。
     また、シナリオライターを務めるぼくらの奈須きのこの日記を読んでも、思わせぶりなことが書かれていて、期待を煽ります。
     ほんとうにこういう面白そうな設定を考えさせるとこのひとは凄いなと。21世紀のオタク・クリエイターとしては最高の才能なんじゃないでしょうか。 
  • 夏コミにて同人誌『Fate/Bloody rounds(1)円卓戦役開幕』を販売します!

    2014-08-04 13:23  
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     血と炎の「円卓戦役」がいま、幕をあける――!
     海燕とかんでたくまの合同サークル「残念教養講座」は、夏のコミックマーケットに参加します。
     日時及び場所は、
     3日目(8月17日)西館せ04a
     になります。
     新刊『Fate/Bloody rounds(1)円卓戦役開幕』は『Fate』シリーズの二次創作小説同人誌です。内容的に際どいところはありますが、18禁ではありません(笑)。
     ダークでアダルトなエンターテインメントを志しました。まあ、第1巻の時点ではそれほど目立ちませんが、この先、昏い、陰惨なエピソードも出て来る予定です。それでも、物語は最後には光の差す方向へ向かって行くことでしょう。
     しかし、そう、「第1巻」ということは、実はシリーズものです。今後も物語は続いてゆく予定なのです。この本が売れなくても出しつづけますが、売れてくれると一定の部数を出しやすくなるので、ぜひお買い求めいただきたいと思います。
     まあ、小説書きとしてあまり才能がないと思われる海燕さんですが、断言します、このシリーズは面白いです。少なくとも『Fate』が好き、あるいはセイバーが好きな方なら楽しんでいただけるのではないかと。
     『Fate』のことはくわしく知らないという方でも読んでいただけるとは思いますが、やはり『Fate』について最低限の知識はあったほうが良いには違いないでしょう。そこはまあ、二次創作小説ですから。
     なお、表紙には友人のかんでさんが「原案」としてクレジットされていますが、本編の文章は100%ぼくが書いています。複数人の文章が入り混じって読みにくくなっている、ということはないので、ご安心ください。
     本編の物語は、『Fate/stay night』で描かれた「第五次聖杯戦争」から1年後を舞台にしています。聖杯戦争に参戦した7人のマスターのうち、生きのこったのは衛宮士郎と遠坂凛のみ、サーヴァントでの生存者はセイバーのみ、という設定です。
     いったいどういう展開を辿ったのか謎ながら、いまは仲良く楽しく暮らしている衛宮士郎とセイバーのもとに、暗雲がただよいはじめるところから物語は始まります。
     どうやら冬木の街をふたたび何者かが徘徊しているらしい。それも聖杯戦争のサーヴァントたちに劣らぬ強大な力を持った者たちが。そして、遠坂凛が襲撃されたことをきっかけに、一気に戦いは再開します。士郎とセイバー、聖杯戦争最強の主従を待ち受けるものとはいったい――?
     まあ、「Fate/Bloody rounds」というタイトルからある程度は推測できることと思うので、ネタバレしてしまいましょう。この作品のテーマは「セイバーと円卓騎士たちの物語」です。
     セイバーと士郎は、かつての聖杯戦争とは異なる、「円卓戦役」と呼ばれる戦いに巻き込まれていくことになります。その戦いを通して、セイバーは「王とは何か?」、「忠誠に報いるとはどういうことなのか?」、ふたたび考えさせられることになるでしょう。そして、最後には本編とも、『Fate/Zero』とも違う結論に至ります。
     あとがきにも書いたのですが、この作品は『Fate/Zero』への不満から出発しています。作品としてそうする必要があったことはわかるけれど、あのセイバーの描写はあんまりだよね、と。
     いや、『Fate/Zero』そのものは大傑作なのですが、セイバーの描写だけはなんとも哀しい。なので、この『Fate/Bloody rounds』は「偉大な王としてのセイバー」を描くことをひとつの目標としています。
     戦場に果てた円卓の騎士たちはほんとうにセイバーを恨んで死んでいったのか? セイバーはほんとうに自分がそうと考えているような愚かな王だったのか? その問題に答えを出したいと思います。
     設定上、本編には、『Fate/stay night』や『Fate/Zero』のキャラクターはほとんど出て来ませんが、そのかわり、モードレッド、ランスロット、ガウェイン、トリスタン、パルシファル、アグラウェイン、サグラモールら、花の円卓騎士たちが次々と登場し、敵味方に分かれて戦いあうことになります。
     ほぼ全員、アーサー王伝説から持ってきた人物ですが、ある意味ではオリジナルキャラクターです。また、この巻ではほとんど登場しませんが、女の子のオリキャラも考えています。
     物語は、最後にはセイバーと宿敵の一大決戦へとなだれ込んでゆくことになるはずなのですが、だれひとりそこまで読む人がいなかったらむなしいので、ぜひ、お買い求めください。いやー、買ってよー、今回はちゃんと面白いと思うんだ。
     以下、目次。

     序章「カムランの戦い」
     第一章「ふたたび戦いへ」
    1.夢の王国
    2.朝の会話
    3.衛宮家の朝食
    4.ロンドンからの電話
    5.和やかな時間
    6.碧眼の男
    7.強襲
     第二章「キャメロットの騎士たち」
    1.田舎村の少女
    2.選別の剣
    3.対話
    4.妖姫モルガン
    5.襲撃者たち
    6.騎士ランスロット
    7.和解の時
     第三章「騎士団集結」
    1.「敵」の陣営
    2.ふたりの騎士
    3.騎士ベディヴィエール
    4.圧倒
    5.一方的な掃討
    6.酒宴
    7.貴公子、再来
     第四章「円卓戦役開幕」
    1.黒騎士メレアガンス
    2.叛逆者ランスロットのものがたり(1)
    3.叛逆者ランスロットのものがたり(2)
    4.王妃グィネヴィア
    5.疑心暗鬼
    6.一触即発
    7.魔術師マーリン
    8.円卓戦役開幕
     番外編「黄金の王」
    1.騎士リース
    2.リース対ランスロット
    3.円卓の騎士団
    4.ローマ
    5.逃亡
    6.少年王の奇跡

     また、本文から一部を抜き出してみましょう。

    「おはよう。セイバー」
    「おはようございます、シロウ」
     セイバー。
     士郎はこれほど完璧に美しい容姿をもった人間を、映画のスクリーンのなかにすら見たことがない。単なる造形の繊細さのみならず、内側からにじみ出るような「何か」が彼女にはあった。それははてしない修羅の時を超えてきたために生まれた精神性なのかもしれないし、あるいは彼女が生まれ持ったたぐいまれな高貴さなのかもしれない。いずれにしろ、この美少女は並大抵の美女とは比較にならなかった。
     士郎はこの少女とともに聖杯戦争を戦い抜いたのである。一見すると単なる至上の美少女としか見えないが、その実、彼女こそは聖杯戦争でも最優と謳われた「サーヴァント」だった。いずれ劣らぬ英雄であったアーチャーやランサーたちですら、その実力において彼女に及ばないのだ。


     ひとり、豪奢な自室で物思いに耽っていると、甲高い音が鳴って彼女の耳を刺激した。電話だ。こんな朝に、何者からだろう? 小走りで駆け寄って、受話器を取る。その向こう側から、まだ若い男の声が響いてきた。
    「わたしだ」
     相手は名のりはしなかったが、そのひと声で、すぐに何者なのかわかった。それくらい聞き覚えのある声だったのだ。ロンドンの〈時計塔〉にいた頃は、毎日のようにこの声を聞いていた。
    「はいはい、あなたね。どうされたんですか? なんの御用?」
    「ずいぶんな挨拶だな。用がなければかけてはいけないかね」


     凛は追跡者の人数を数名と見た。彼女ひとりで十分に相手し切れる数だ――相手が尋常の人間であるなら。もし聖杯戦争のサーヴァントのような怪物的戦力が混ざっているならその限りではない。
     何秒かの静寂のあと、闇のなかから街灯の下へ、幾つか人影が顕れた。この闇夜にジャンパーのフードで顔を隠した、見るからに怪しい男たちである。服装こそ現代的だが、手には何と鞘を持っている。その中身はまさか竹光や木刀ではあるまい。真剣と考えるべきだった。
    「あなたたち――」
     凛がさらに声をかけようとした、そのときだった。一切の前ぶれなく、先頭の男が斬りかかってきた。鋭い斬撃! 並の少女であればそのまま斬り伏せられていたに違いない。
     しかし、彼女は遠坂凛であった。素早くバックステップしてその一閃を避けると、瞬く間に攻撃の準備に入る。


    「マーリン! 助けて! 村が盗賊に襲われそうなの!」
     しかし、魔術師は首を振った。
    「だれも助けることはできぬ。あのような野盗どもを追い払うことはできるじゃろう。しかし、しょせん亡びが早いか遅いかの差に過ぎぬ。いずれ諸国家がブリテンへと侵略を始める。その時には、この国は亡び去る運命なのだ。わしはただその運命の時を待っているだけじゃ」
    「なんで? どうして国を守れないの?」
    「王がいないからだ」
    「王さま?」
    「さよう、偉大なるウーサー・ペンドラゴン王亡きあと、だれも至尊の玉座に座す者がおらぬ。岩に突き刺さった宝剣を抜き、竜の宝冠の後継者となる者があらわれぬ限り、この国は亡びへの道を突き進むことじゃろう。だれにも止められぬ。わしにもどうしようもないことじゃ」
     アルトリアの目が、光った。
    「王さまになる人がいればいいんだね?」
    「そうじゃ。しかし、並の人物では王は務まらぬ。岩の宝剣を抜けるような傑物でなくては――」
    「じゃあ、わたしが王さまになる!」
     マーリンはしばし沈黙した。


     その小集団の先頭に立っているのは、金髪碧眼の少年であった。おどろいたことに、宮廷の美女さながらに、あるいはそれ以上に秀麗な美貌のもち主だ。リースは、これほど美しい人間を見たことがない。あのモードレッドですら、この人物に比べれば人間的な生々しさを感じさせる。まるで、生きた人形のよう。
    「そこのお前」
     その少年は、平原の草のなかに隠れたつもりのリースに声をかけてきた。
    「出て来るがいい。隠れたつもりでも、わたしには見えている」
     リースは舌打ちした。何と目がいい奴だ。まるでおとぎ話の妖精の目ではないか。が、仕方ない。出てゆくとしよう。かれの逃亡を邪魔立てするつもりなら斬るまでだ。

     すべては、約束された勝利のために。
     『Fate/Bloody rounds(1)円卓戦役開幕』、A5、144ページで、イベント価格1000円です。通信販売も行いますが、こちらは送料込みで1300円を予定しています。
     既に過去の記事で書きましたが、今回、「セルフクラウドファンディング」を実施したいと思います。これは、手数料無料のクレジットカード決済サービス「SPIKE」を利用して、さまざまなサービスを提供する試みです。
     初めは13のサービスをご用意しましたが、すでに7番と12番は締め切りを迎えたので、以下にはそれらを除く11のサービスを列挙してみます。
     イベントでの同人誌の取りおきだけでいいというひとは3番を、通販だけでいいというひとは8番を選んでもらえば、クレジットカード払いで簡単に本を入手できることになります。なお、複数冊の本をご希望の方は、複数回お申込みください。
     のちほど銀行口座への振り込みでの販売も行うことを考えていますが、「SPIKE」を利用したほうがあらゆる意味で簡単で、手数料もかかりません。ぜひ、この試みにご協力ください。ちなみに、取り置きなどしなくてもイベントに来れば普通に入手できることは確実ではあります。
    1.純粋なカンパ。(作者の愛と感謝以外の特典なし。締め切りなし)――500円。
    https://spike.cc/p/bRZpHDK9
    2.夏コミ後、本編の電子版、つまりEPUBファイル及びテキストファイルをダウンロードサイトを利用し入手する権利。(締め切り8月14日)――1000円。
    https://spike.cc/p/en74oaDg
    3.夏コミでの同人誌の取り置き。(当日は無料で本が入手可能。締め切り8月14日)――1000円。
    https://spike.cc/p/GkzzUi1e
    4.夏コミでの同人誌の取り置きに加え、夏コミ後、本編の電子版、EPUBファイル及びテキストファイルをダウンロードサイトを利用し入手する権利。(締め切り8月14日)――1500円。
    https://spike.cc/p/8pTW9WVB
    5.夏コミでの同人誌の取り置き、本編の電子版入手の権利に加え、夏コミ後、非公開の18禁短編小説の電子版(テキスト、EPUB)をダウンロードサイトを利用し入手する権利。(締め切り8月14日)――1800円。
    https://spike.cc/p/iEO7jOAa
    6.夏コミでの同人誌の取り置き、本編の電子版入手の権利、18禁短編小説入手の権利に加え、作者のサイン色紙を手渡し。(締め切り8月14日)――2000円。
    https://spike.cc/p/INMIoc22
    8.夏コミ後、指定住所に同人誌を発送。つまり通信販売の予約。送料込み。(締め切り8月14日)――1300円。
    https://spike.cc/p/CcgYAjid
    9.同人誌の通販に加え、夏コミ後、本編の電子版、つまりEPUBファイル及びテキストファイルをダウンロードサイトを利用し入手する権利。(締め切り8月14日)――1800円。
    https://spike.cc/p/gd4H8Omk
    10.同人誌の通販、本編の電子版入手の権利に加え、夏コミ後、非公開の18禁短編小説の電子版(テキスト、EPUB)をダウンロードサイトを利用し入手する権利。――2100円。
    https://spike.cc/p/B9gJwUPK
    11.同人誌の通販、本編の電子版入手の権利、18禁短編小説入手の権利に加え、作者のサイン色紙を送付。(締め切り8月14日)――2300円。
    https://spike.cc/p/nmr6lfed
    13.同人誌の手渡し、電子版の権利、短編小説の権利、サイン色紙に加え、夏コミ後(8月17日)の打ち上げに参加していっしょにさわぎ、ついでに冬コミ販売予定の次回作について色々話をする権利。当日飲食無料。場所は新宿のイタリアンレストランを考えています。普通に支払った場合の予算は4000~5000円程度になるのではないでしょうか。(締め切り8月10日)――10000円。https://spike.cc/p/XwlQQLge
     では、そういうわけで、夏コミでお逢いできることを楽しみにしています! よろしくお願いします。買ってね! 
  • なぜひとは闘わなければならないのか。

    2014-08-01 05:06  
    51pt
     今年の初めあたり、ぼくは「フラワー・フォー・フレッカ」と題した記事を書いています。TONOの名作漫画『ダスク・ストーリィ』の感想記事ですね。
    http://ch.nicovideo.jp/cayenne3030/blomaga/ar433781
     この記事についたコメントにいまさらながらに気づいたのですが、これがなかなか興味深い内容だったので、いまさらながらにレスをつけたいと思います。まずは「フラワー・フォー・フレッカ。TONO『ダスク・ストーリィ』にひとの勇気を見る。」の一部を引用することから始めましょう。

     TONOの物語はいつも人間に優しい。人間の弱さ、愚かさ、醜さ、小ささに優しい。それはひとの弱さや醜さをそのままに許容しているということだけでなく、それらを慰撫し、救済しているという意味で優しいのだ。
     そしてまたきびしく残酷でもある。ひとを励まし、ふたたび戦いの荒野へ導くという意味でそうだ。その優しさときびしさが相まって、ひとつの物語世界を形作っている。TONOの作品とはそういうものである。
     たとえば第一巻の「第五夜」を見てみよう。ここでタスク少年は気がつくとあるパーティーに参加している。招待主は「フレッカ」と呼ばれる正体不明の女の子。
     しかも参加者のなかで彼女を知らないのはタスクひとりらしい。タスクが「フレッカなんて知らない」というと、かれはパーティーからはじき出される。
     やがて、真実があきらかになる。フレッカはタスクの友人の美少女ニッキーの身代わりとなって刺された少女だったのだ。そして、そのパーティーはフレッカが死の直前に、彼女があこがれた人々の幻想を集めて開いたものだったのである。
     何もかも偽者ばかりのパーティー。フレッカはタスクに語る。
    「あなたに何がわかるのよ 私みたいにさえないみっともない子の人生が あなたやニッキーみたいにきれいでかっこいい人には絶対わからないわ にせものでいいのよ 知ってる人になんか もう会いたくない!! だって家族も友人もずーっと私の事なんかばかにしてるんだから」
     そんなフレッカに向かって、タスクは述べる。
    「ばかにしてなんかないよ 誰も君の事をばかにしてなんかいないよ 君はうすれてゆく意識とたたかいながら 苦しい息の下 必死でくりかえした “ニッキーがあぶない” “ねらわれてるのはニッキーだ”って おかげで犯人の男はすぐにとりおさえられた 君の言葉がニッキーを助けたんだ ニッキーも彼女の家族もどれほど君に感謝しているか そしてきのうまでぼくは君の事なんか全然知らなかった でも今は思ってるよ あんな恐ろしい目にあいながら なんて勇気のある女の子だろうって」
     ここには真実の物語がある、とぼくは思う。そしてこれこそぼくが求めてやまない物語の形なのだ。
     わかるだろうか。これは勇気の物語である。恐怖と絶望があるからこそひときわ輝く勇気の物語である。ひとが偉大でありえるという話、人間の燦然と輝くプライドのストーリー。
     ここにこそ美がある。人間存在の美、ひとの魂の高潔さの美しさが。そう、ひとは己の業を呪い、どこまでも堕ちてゆくこともできる。一方、フレッカであることもできる。
     そして、ぼくは皆、フレッカであるべきだと思っているのだ。いうまでもない、だれもがフレッカでありえるわけではない。しかし、だからこそその高貴さは際立つ。

     で、この記事に対し、こういうコメントが付いたわけです。

    海燕さんは、フレッカとは別のものを目指す人達をどう見ているのですか?
    海燕さんがフレッカの高貴さに憧れることと、「ぼくは皆、フレッカであるべきだと思っているのだ。」と思う事は別だと思います。
    例えば、「恐怖に翻弄されつつ、しぶとく生き残る人」が、フレッカ(恐怖と絶望に立ち向かう人)に、必ずしも劣るわけではないと思うのですが、いかがでしょう?
    バイソンにはバイソンの生き様があり、亀には亀の生き方が、ヤギにはヤギの生き方があって、それぞれ等しく尊ばれるものだと思います。

     一読、なるほど、と思いましたね。「恐怖に翻弄されつつ、しぶとく生き残る人」が「恐怖と絶望に立ち向かう人」に、必ずしも劣るわけではない。その通りです。
     このコメントを読んで、ぼくは瀬戸口廉也がシナリオを書いた名作ゲーム『SWAN SONG』のあるセリフを思い出しました。「醜くても、愚かでも、誰だって人間は素晴らしいです。幸福じゃなくっても、間違いだらけだとしても、人の一生は素晴らしいです」。
     このセリフは物語終盤に出て来るのですが、『SWAN SONG』全体の主題を象徴するものと云っても良いでしょう。主人公である尼子司はここで、人間の生き方に優劣はないのだと云っているように思えます。
     どんな生き方を選ぶとしても、それはすべて素晴らしいのであって、成功とか失敗とか、勝利とか敗北といった世間のあたりまえの価値観だけでは人間の「生」を計り知ることはできないのだ、と。
     ぼくはこのセリフに心から感動しましたし、また、このコメントに共感しもします。たしかに「誰だって人間は素晴らしい」し、どんな生き方も「それぞれ等しく尊ばれるべき」ではあるでしょう。
     しかし――それで終わりなのか? 「誰だって人間は素晴らしい」のだから、どういう生き方を選ぼうとそれは勝手で、色々なあり方が「それぞれ等しく尊ばれるべき」であるのだから、どんな生き方をしようがひとに文句をつけられる筋合いはないのか?
     たしかにそういうふうに考えることもできるでしょう。ですが、その考え方は矛盾していると思うのです。なぜなら、それなら他者の「素晴らしさ」を尊重することなく、傷つけ、踏みにじるような生き方もまた「等しく尊ばれるべき」である、ということになってしまうからです。
     ぼくもまた、司が云うように「誰だって人間は素晴らしい」と思う。さまざまなありようが「等しく尊ばれるべき」であると考える。しかし、それと「ひとはどう生きるべきなのか」という問題は切り離して考えなくてはならないとも思っています。
     そうしなければ、「どんな生き方もひとしく素晴らしい」という言葉は、単なる現状肯定や堕落をそそのかすものとしか見えなくなってくるはずです。
     だから、ぼくはこう云うのです。なるほど、たしかにこのコメントで書かれているように、「パイソンにはパイソンの生き方があり、亀には亀の生き方が、ヤギにはヤギの生き方がある」。
     だが、それでもなお、パイソンはパイソンなりに、亀は亀なりに、ヤギはヤギなりに、「いまある自分」より一歩でも、半歩でもより良いありようを目ざすべきなのだ、それが人間の人間らしい生き方というものなのだ、と。
     そう、「恐怖に翻弄され」るひとは、「恐怖に翻弄され」ながら前を目指すべきだし、絶望に打ちのめされるひとは、まさに絶望に打ちのめされたそのままの姿で、それでもなお、先へ進もうとするべきなのである、とぼくは云うのです。
     おそらく、この押し付けがましい「べき」という断定に反感を覚えるひともいるでしょう。ひとがどう生きようがそのひとの自由ではないか? そんなこと、だれかに押し付けられる理由はないではないか? そういうふうに考えるひともいるに違いありません。
     しかし、ほんとうにそうでしょうか? 中島みゆきに『ファイト!』という名曲があります。「闘う君の詩を、闘わない奴らが笑うだろう。ファイト!」というサビの部分を、だれでも聴いたことがあるに違いありません。
     ただ、なにぶん昔の歌であり、全曲通して聴いた経験はないというひとも少なくないのではないでしょうか? あらためて全曲を通しその歌詞を検討してみると、その、まさに壮絶としか云いようがない内容があきらかになります。
     くわしい歌詞は、たとえばこちら(↓)を参考にしてもらいたいのですが、全曲を通して聴いてみると、「ファイト!」という何気ない言葉はきわめて重い意味を持っていることがあきらかになります。
    http://blogs.yahoo.co.jp/anno_yuki/36823400.html
     それは単に「がんばれ!」などという微温な内容ではなく、まさに言葉通り「闘え!」という凄まじくも優しい激励なのです。その歌詞の、たとえばこの一節。