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作家は読者の奴隷ではないし、そうなってはいけない。
2016-07-25 02:5951pt
『妹さえいればいい。』最新刊を読み終えました。
前巻はほぼギャグ一辺倒で、面白いことは面白かったのですが、お話そのものは何も進んでいない印象がありました。
しかし、この巻では劇的に物語が進行します。いやー、面白いですね。ぼくはこういうものをこそ読みたいのだと思う。
物語が進むとは、ただ状況が変化することではありません。状況が「二度と元には戻らない形で」変化すること、それを物語が進むというのです。
この巻で、主人公たちの恋愛状況はドラマティックに変わり、そしてこの先、もう決して元に戻ることはありません。
それは幸せなことではないかもしれないけれど、しかしとても印象的なことです。
こういうものを読むとぼくはやはり「物語」が好きなんだなあと思いますね。
平和で幸福で、どれだけ読み進めても何ひとつ変化がないようなお話もいいけれど、でも次の瞬間何が起こるのかわからないようなサスペン -
フェミニストはオタクの敵ではないのです。
2016-07-22 02:2751ptども。海燕でゲス。
フェミニストとして高名な北原みのりさんが「萌えキャラ」を批判してこんなことを書いているでゲス。
ハッキリ言いますが、大人の女の多くは、少女ファンタジーにしがみつく大人の男を、キモイと思っています。萌えキャラがキモイ、というよりも、萌えキャラを重宝し濫用する男社会がキモイ。少女に向ける眼差しやファンタジーの過剰さに困惑し、どう身を置いていいかわからなくなるのです。なぜ男たちは、ここにいない少女たちを、執拗に求め続けるのか。その眼差しの空虚さに、恐怖するのです。
http://dot.asahi.com/wa/2016070600233.html
あー、はい。としかいいようがない意見でゲス。いまでもまだこんなことを書く人がいるんだなあ、とぐったりしますでゲス。
たとえば、この意見をこんなこんなふうに書き換えてみると、この意見のどこがどう問題なのかはっきりします -
竹本泉は天才だ! 猫好き必読の名作漫画『ねこめ(~わく)』を読もう。
2016-07-20 02:4951pt
竹本泉『ねこめ(~わく)』を3冊ほど続けて読みました。
このシリーズ、第8巻まで続いた『ねこめ~わく』の続編にあたるのですが、続編とはいっても何も違いはありません。ええ、そのまま。まさにそのままです。
そもそもこの漫画の新作を読むの20年ぶりくらいなのだけれど、何ひとつ変わっていないなあ。
連載はすでにあっちこっちの雑誌で25年も続いているそうで、竹本さんの漫画のなかでも最も長く続いている作品ですね。
四半世紀経ってもまったく変化がないというのがすごい。普通、こうやって長く続いていると経年劣化が起こるものなのだけれど、クオリティが全然下がっていない。
いやー、こんな漫画は稀有だろうなあ。なにげに竹本さん、天才なんじゃないかと思うんですけれど、どうでしょう。
ぼくの天才の定義は「独創の人」ということになるのですが、竹本泉みたいな漫画家ってほかにいないものね。
最初期の『ちょ -
雷句誠、驚異の新作! 『VECTOR BALL』は少年漫画の新次元を切り拓く。
2016-07-19 04:4051pt
えー、特に前置きもなくいきなり本題に入りますが、雷句誠さんの漫画『VECTOR BALL』が面白いです。
このあいだのLDさんとのラジオでも話したんだけれど、いやー、この漫画、まだ第1巻しか出ていないいまの段階ですでにド傑作の匂いがします。
少し前までは「この漫画、ほんとうに面白いのだろうか???」とクエスチョンマークが三つも付いている状態だったのだけれど、物語に進展に合わせてひとつ消えふたつ消え、代わりに「面白い!!!」とエクスクラメーションマークが三つ付く状態になりました。
この先、まだ増えるかもしれません。「面白い!!!!!!!!!」くらいまで行くかも。それくらい先が楽しみな作品です。
この作品の物語は――と、普段はここであらすじを説明するのだけれど、この漫画の場合、シナリオを開設することにそれほどの意味があるとは思われない。
というか、ない。お話だけ取ればわりとありが -
『ROOKIES』より面白い! 不良スポーツ漫画の名作『ANGEL VOICE』の秘密とは?
2016-07-18 22:5651pt
ども。『ポケモンGO』配信が待ちきれない海燕です。
ぼくはiPhone使いなのだけれど、iOS版もAndroid版と同時に出るかなあ。出たら夏休みに遊びに来る甥っ子といっしょに遊ぶ予定。
さて、きょうはいまひとつ知名度がないサッカー漫画の名作『ANGEL VOICE』の話。
あまり知っている人は多くないかと思いますが、『チャンピオン』で全40巻も続いた作品です。
で、これが面白い。1話1話はそこまでのインパクトはないかもしれないけれど、40巻を通読するともうめちゃくちゃ面白いのです。
やめられない止まらないテイストの漫画は数あれど、そのなかでもかなり上位に入るのではないかという一作です。
内容をわかりやすくいうと、サッカー漫画版『ROOKIES』というのが適切だと思う。
何かと力を持て余した不良たちが集まってサッカー部を再生させるという話なのですが、そこにひとひねりがして -
オススメのBLと百合を紹介するよ!
2016-07-12 16:4151pt
文乃ゆき『ひだまりが聴こえる』を読みました。
『さらば、佳き日』の作家によるボーイズ・ラブ漫画です。
最近、BL漫画と百合漫画ばかり読んでいるような気がするなー。
べつに腐男子というわけでもないけれど、未発見の秀作を探していると自然とそのジャンルになるんですよね。
で、この作品、難聴の青年を主人公にした物語となっています。
さすが『さらば、佳き日』の作家だけあってかなりよく描けているのですが、この作品の場合、BL要素がむしろ枷になっているような気も。
Amazonの感想を見ても、きわめて高評価ではあるものの、「BLらしくない」とか「BL要素が薄い」といった意見が散見されます。
作者自身、あとがきで「終盤になってボーイズがラブする要素がないことに気づいてあわてた」という意味のことを書いているくらいで、男の子同士の友情の物語として終わらせてもなんの違和感もない話です。
まあ -
漫画を真に受けなくて何を真に受けるのだ!
2016-07-11 17:2651pt
茜田千『さらば、佳き日』を読みました。
てれびんが例の動物的直感(一応は動物の範疇だろう)でどこからか見つけ出してきた作品なんですけれど、これは素晴らしかったです。
ひさびさに漫画読んでいてぞくぞくした。
おそらく好みが分かれる作品ではあるだろうけれど、ぼくとしては非常にオススメの漫画なので、ぜひ、この先のネタバレは読まずに買って読んでほしいところ。
まあ、ネタバレしても作品の素晴らしさが色あせることはないにしても、可能ならネタバレなしで読んだほうがいい。
そういうわけで、以下、ネタバレありです。いいですか、ネタバレしますよ?
この物語は、ある男女が新婚夫婦と偽ってひっこしてくるところから始まります。
お似合いの夫婦に見えるふたりは、実は兄と妹。親に黙ってふたりで暮らしているのです。
いったいこの兄妹はどうしてふたりで暮らすことを選んだのか? 恋人のようにも夫婦のように -
積み重なった「成功」を確定させるにはどうすればいいのか。
2016-07-10 02:4651pt
ハリウッド映画『ストレイト・アウタ・コンプトン』を観ました。
20年以上前にロサンゼルスに実在したギャングスタ・ラップ伝説のグループの栄光と没落を描いた作品です。
とても面白かったのですが、あまりにも日本人の常識からかけ離れた物語なので、情報なしで見ると戸惑うかも。
とはいえ、あるいはその戸惑いこそが異世界にふれるセンス・オブ・ワンダーということも考えられるので、やはりネタバレ情報は見ないほうがいいかもしれません。
この世に実在する「異世界」をのぞき見してみたい方はぜひご覧になってください。あまりの「ルールの違い」に唖然とするはずです。
ちなみに、くわしいことはペトロニウスさんがブログで解説しているので、そちらをご覧ください。
http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20150915/p1
さて、黒人文化におけるこの映画の位置づけとか、ア -
個人の立場が平等になればなるほど、幸福になる才能の格差があきらかになる。
2016-07-02 18:3651pt
いまさらながら永田カビ『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』を読みました。
すでに各所で話題のこの本、人気のあまり品切れが続き、電子書籍刊行の予定が早まったそうです。
読んでみると、じっさい面白い。30歳を目前にして「さびすぎ」る日常を送る著者が、一念発起して「レズ風俗」へ行きちょっとだけ人生を前進するようすがセキララに描かれています。
セールスポイントは物事を綺麗ごとに落とし込まない点にあるといっていいでしょう。
自虐と自傷でズタボロになっている自分を分析するところから始めて、それならどうすればいいか? どうすれば「人生の甘い蜜」を啜れるのか? と著者が思索を進めていくようすは事実だけがもつ迫力に充ちています。
「レズ風俗」という言葉を見て購入をやめる人もいるかもしれませんが、少しでも気になる方はぜひ読んでほしいですね。
これは歳をとってもまったく大人になれない人間の実 -
なぜ一部の男性たちはボーイズ・ラブを嫌悪し非難するのか。
2016-06-30 13:0151pt
溝口彰子『BL進化論 ボーイズラブが社会を動かす』を読んだ。非常に面白い一冊だ。
ぼくにボーイズラブ作品一般の知識がないために完全に理解したとはいい切れないが、それにしてもセンス・オブ・ワンダーを感じさせるような素晴らしい読書体験だった。
この本はBL(ボーイズ・ラブ)小説ないし漫画の「進化」を語っている。
そう、BLはいま「進化」しているのである。
それはBLのヘテロノーマティヴ(異性愛規範的)で、ホモフォビック(同性愛嫌悪的)で、ミソジナス(女性嫌悪的)な一面の超克である。
BLに対して、それらの作品はミソジナスでありホモフォビックであると、あるいはもっと直接に女性差別であり同性愛者差別であるのだという批判がある。
その種の批判はどの程度的確なものだろうか。
個人的には「一理はある」と認めないわけではない。
ミソジナスだったりホモフォビックだったりするBL作品は過去に存在したし、いまも存在するだろう。
『BL進化論』はBL作品における以下のような「ノンケ宣言」を引用する。
「オレは男色やないっ、好きになったんがたまたま男の人だっただけや‼」
「(……)あいつは冗談でも、オカマやゲイと遊ぶような男じゃないから」/(……)/「あいつ、ノンケなのよ。一度なんか迫ってきたゲイボーイ、蹴り殺しそうになっちゃってさ」
「オレあ基本的にノーマルなんだよ」
これらの「ノンケ宣言」は、素直に読む限りやはりホモフォビックな言説といわざるを得ないだろう。
したがって、少なくないBL作品にホモフォビアを見て取ることは誤ってはいない。
しかし、ここで注意するべきは、同時にそれはBLそのものの可能性がミソジニーやホモフォビアによって閉ざされていることを意味しているわけではないということである。
ミソジナスではないBL、ホモフォビックではないBLは理論上は存在しえるし、現実に増えて来てもいる。それが『BL進化論』で語られている事実だ。
つまり、ホモフォビックなBLやミソジナスなBLは単体として個別に批判されるべきなのであって、BL全体がホモフォビックでありミソジナスな表象であるという批判は成り立たないのである。
それならば、なぜこうも「BLは同性愛者差別だ」という批判がくり返しくり返し語られるのだろうか。
そこにはやはり批判者たちの「BLフォボア」ともいうべき心理が介在していると考えるしかない。
ようするに
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