最近では、愛犬にトレーニングをするという愛犬家も増えてきました。一方で「トレーニングや訓練は、犬に負担をかける」と思っている人も多くいるようです。トレーニングが犬にとって負担となるとは、罰を用いた訓練を行っているからでしょう。
本来、犬のトレーニングやしつけは、犬にとって楽しいゲームでなければなりません。トレーニングが楽しければ、飼い主も愛犬もトレーニングが好きになり、お互いに楽しい時間を共有できるようになります。こうした楽しいトレーニングをコツコツと行うことで、意思の疎通が取れるようになり、信頼関係を築くことができます。
本稿では、ドッグトレーニングをコミュニケーションのツールとして位置付けて、うまくやるためのポイントを押さえていきます。
※本稿で扱うのは、ドッグトレーニングです。問題行動への対処法とは異なります。
ドッグトレーニングは必要?
「トレーニングなどせず、常に犬の好きにさせてあげれば良いのでは?」という声もあります。もちろん、犬に自由を与えることはとても大切なことです。ケージやサークルに監禁して飼うよりは、よっぽどマシでしょう。犬は何か要求があれば、吠えるや暴れるなどをして飼い主へメッセージを発します。飼い主はその行動を見て、犬の願いを叶えてあげる。こうしたやり取りを続けると、犬は要求したい時は吠えれば良いと学習します。こうして犬はコミュニケーションの方法を学びます。
しかし、これだけではコミュニケーションとは言えません。なぜなら、要求を出すのが常に犬のみの一方通行だからです。犬にも要求があるように、我々ヒトにも要求があります。コミュニケーションとは双方で行われるものですから、こちらの要求も犬に理解してもらわないと成立しません。コミュニケーションを円滑にするためには、共通言語が必要です。ドッグトレーニングは、共通言語を使うコミュニケーションのためのツールです。楽しいトレーニングを通じて犬の能力を伸ばし、意思の疎通ができるようにするためのものです。
叱らない・罰を使わない
例えば、何かのキュー(Que:指示)で犬が間違えた場合でも、決して叱らないようにします。犬が成功できるように誘導するのがポイントです。もし犬が失敗したなら、それは飼い主の誘導が失敗だったと考えます。つまり、ミスの原因は飼い主にあるので、犬を叱るのはお門違いとなるわけです。
成功できるように仕向ける
例えば「スワレ(お座り)」を教えるケースを挙げてみます。まず、犬が立っている状態で、犬の鼻先にオヤツなどを提示をします。鼻にくっつくほど近づけます。犬がオヤツを食べようとしても、手からオヤツを離さないようにします。そのままオヤツを犬の頭の上へと移動させます。犬の頭はオヤツと共に上に向くので、立っている態勢を維持できなくなり、自然と座ります。犬のお尻が地面に着くタイミングで「スワレ」というキューを出します。うまく座れたらオヤツを与えて、褒めます。
ここで、オヤツの動かし方が悪いと失敗させてしまいます。うまくできるようにオヤツを動かしましょう。こうして成功させるように仕向けることが大切です。
犬の集中力に合わせて行う
すぐに飽きてしまう犬もいれば、高い集中力を維持する犬もいます。我々人間でも個々でばらつきがあるように、犬でもばらつきがあります。愛犬の集中具合をよく観察して行いましょう。飽きてきたと感じたら、中断しても大丈夫です。
一回のトレーニングは短かく
犬の集中力が持続するのは個体差を含んでも5~20分程度でしょう。たまに行う長時間のトレーニングよりも、毎日の短時間のトレーニングの方が効果があります。ちょっとしたゲーム感覚でサラッと行うほうが効率は高まります。
トレーニングの最初と最後の儀式
トレーニングを開始する時は”名前を呼んでからオヤツを与える(以下、「名前+オヤツ」)”を数回繰り返し、この動作がトレーニング開始の合図だと教えます。こうすると、犬はこちらに集中するようになるので、その日のトレーニングを集中して行うことができます。同時に「名前+オヤツ」という動作で、犬は自分の名前が呼ばれたら、必ず報酬(この場合はオヤツ)が与えられると覚えます。このような合図で、トレーニング=楽しいゲームと認識できるようになります。また、名前を呼ばれた犬は、喜んでこちらに意識をむけるようになります。
この最初の儀式が終わって、何かの動作のトレーニングに移る時の最初の練習は、確実に成功できる簡単な事から初めます。そして、徐々に難易度を上げるようにします。たまに失敗しても心配はいりません。3歩進んで2歩下がるぐらいで当たり前です。
トレーニングを終える時も、確実に成功できるような簡単な事で終えるようにします。最後に成功した印象が残っていると、犬も人も「今日のゲームは成功だった」という記憶で終える事ができます。反対に「失敗だった」となると、次回のトレーニングへのモチベーションが上がりません。成功して終える事で、次のトレーニングへモチベーションを維持できるようになります。
テキトーでも大丈夫
完璧を求めても意味がありません。我々も完璧ではないはずです。犬も同様です。完璧を求めると、失敗が目立ってしまいがちです。まだ覚えていない事を学習するためのトレーニングですから、失敗するのは当たり前です。なので完璧など求めず、気楽に行うことが肝心です。その日のトレーニングが上手くいかなくても「明日やれば良いじゃん!」ぐらいの気持ちで丁度よいのです。
トレーニングが上手くいかない時には、お互いの体調も関係していることがあります。気分が乗らない時は休みましょう。あくまでトレーニングは楽しいゲームですから、生真面目になり過ぎても面白くありません。犬も人も楽しめるように、気楽にテキトーでも全然大丈夫なのです。
トレーニングはいつから始めて、いつ終える?
この問いの答えは実にシンプルです。犬を迎え入れた日からトレーニングを始めます。そして犬が健康なうちは、トレーニングを続けます。ドッグトレーニングは、飼い主との信頼関係を強くするだけではなく、犬の欲求をも発散させることができます。例えば、ノーズワークなどの能力を開発するトレーニングは、犬の感覚器官を鍛えます。犬の生まれ持った能力を最大限に発揮したトレーニングを行うことで、脳トレにもなり、犬はどんどん賢くなります。そして、トレーニングを通じて沢山褒められる犬は、自信をつける事ができます。
最初はトイレトレーニングから始めることになるでしょう。次にスワレなどの行動のトレーニング、他の犬や人に慣らすトレーニング、次に犬の能力を伸ばすトレーニングを行うことで、どんどんと信頼関係は強くなります。
こうしたトレーニングの概念は、動物愛護先進国・動物福祉先進国と言われるヨーロッパでは、ごくごく当たり前のことです。
トレーニングは誰が行うがベスト?
これはもちろん、飼い主が行うべきです。トレーニングを通じてコミュニケーションを取るのですから、飼い主が行います。ここで、訓練士に預けてトレーニングをしてもらっても、信頼関係は訓練士と結ばれます。これでは意味はありません。訓練士やドッグトレーナーには、トレーニングの方法を教わり、飼い主が実行します。トレーニングの仕方が理解できれば、犬の一生を通じて楽しいトレーニングができるようになるでしょう。
如何でしたでしょうか。具体的なトレーニング方法は、ドッグトレーナーやドッグビヘイビリストにアドバイスをもらうと良いでしょう。このような専門家に依頼する時は、ここに記したようポジティブな方法を教えてくれる人に依頼しましょう。通常の犬のしつけやトレーニングに於いて、体罰など用いる専門家には依頼しないことが得策です。体罰は犬を怖がらせ、信頼関係を壊します。これは、世界中の行動学者や心理学者、プロフェッショナル協会が訴えている事実です。ドッグトレーニングで体罰を用いることは、どんな理由があっても正当化できるものではありません。
ポジティブで楽しいゲーム感覚のトレーニングを行うことで、犬は飼い主を信頼し、モチベーションも向上します。これはトレーニング効率を上げるだけではなく、お互いの意思の疎通をスムーズにします。反対に罰や体罰は犬の心を傷つけてしまいます。繊細な犬なら、心を閉ざしてしまうこともあります。
毎日の楽しいトレーニングを飼い主が行うことで、愛犬との絆はより良いものになるでしょう。犬は家族の一員です。是非ドッグトレーニングを活用して、愛犬と強い絆で結ばれたドッグライフを送ってください!
画像は全て著者が撮影したもの
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(執筆者: MASSAORI TANAKA) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか
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