人気SFシリーズのリブート第3作目となる『スター・トレック BEYOND』が現在公開中です。宇宙の最果てにある未知の領域を探索する過程で、惑星連邦の存在意義の真価を問う新たな謎の敵と遭遇するジェームズ・T・カークと、彼の率いる「U.S.S.エンタープライズ号」のクルーたちの戦いを描いた本作。『ワイルド・スピード』シリーズの世界的大ヒットでジャスティン・リン監督がメガホンをとり、スタトレ史上最高のストーリー・映像を作り上げています。
2009年に公開されたリブート第一弾『スター・トレック』より、モンゴメリー・”スコッティ”・スコット役として出演し、本作では共同脚本を務めているのがサイモン・ペッグ。『ショーン・オブ・ザ・デッド』『宇宙人ポール』等、たくさんの作品で私たちを常にワクワクさせてくれたサイモンにインタビューを敢行。「大のトレッキーのリチャード」など、自身の友人に関する貴重なエピソードも飛び出しました。
―まず、サイモンさんの子供の頃の『スター・トレック』の思い出を教えてください。
サイモン・ペッグ:『スター・トレック』との初めての思い出は、アニメ版なのですが、本当に幼い頃だったので、すごく怖かった記憶があります。エイリアン等がたくさん出て来ますから。本当に作品の良さが分かり始めたのは、9歳くらいの時からですね。当時『スター・トレック』のドラマはイギリスで毎晩放送されていて。『スター・ウォーズ』は宇宙を舞台に激しいバトルが展開されるわけですけど、『スター・トレック』というのは僕達の未来を予知している様な作品で、非常にハマりました。今でもよく観ますよ。
―ジャスティン・リン監督も「『スター・トレック』は(ドラマ放映)当時から先進的な表現をしていた」とおっしゃっていました。
サイモン・ペッグ:違いを受け入れる団結や、隣人として皆で協調するという事が大切だと考えました。真の意味でこの世がグローバルな世界であれば、移民という物は存在しないはずなんですね。最近、宇宙飛行士の女性と話す機会があったのですが、彼女は「宇宙ステーションから見た地球には国境というものは無い」と。境目や隔たりというのは我々人間が作っている、と。『スター・トレック』はそういった隔たりというものを超えて描かれている作品ですので、本作でもそこを目指しました。今、世界中で不和や分離主義が生まれている中、ジャスティンも(共同脚本の)ダグも僕も、この作品は今だからこそ必要な作品だと思いました。
―きっとサイモンさんの周りには“トレッキー”がたくさんいるのでは無いかと想像するのですが、脚本を書く事になった時の周りの反応はいかがでしたか? うらやましがられたりしませんでしたか?
サイモン・ペッグ: 皆とても喜んでくれたと思います。うらやましがられたかは、分かりません(笑)。エドガーもニック・フロストもとても喜んでいましたが、大学時代に大のトレッキーである“リチャード”という友人がいました。そのリチャードには長年連絡をとってはいなかったのですが、『スター・トレック』に出演が決まった時、出演する事になったんだよとメールしました。今回も「なんと『スター・トレック』を書く事になったんだよ!」と連絡して、やはりリチャードが一番大きな反応をくれますね。何かある度にこの「リチャードを喜ばせたい!」と思っていましたが、残念ながら口外出来ない事も多かったので(笑)。
―リチャードは大変幸せなトレッキーですね!
サイモン・ペッグ:過去に遡って過去の自分に会えたらな、とよく思うんですね。7歳の頃の僕は『スター・ウォーズ』が大好きだったので「将来何が起るか分かる?」と驚かせてみたいし、大学生のリチャードと一緒にいる僕に「将来すごい事が起きるんだよ!」と教えてみたいなと、よく想像しています。
―J・Jエイブラムスについてお聞きします。これまでJ・Jはクールな人物では無いかと思っていたのですが、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』の中で、カイロ・レンがダース・ベイダーの意志を引き継いだ様に、J・Jもルーカスを引き継いでいく様な……そんなアツさを感じたんですね。サイモンさんもJ・Jのアツさを感じているのでしょうか?
サイモン・ペッグ:確かにJ・Jは素晴らしい野心をお持ちの方だと思います。でも、今おっしゃっていただいた例えについて言うと、J・Jはカイロ・レンじゃないんですね。カイロ・レンはダース・ベイダーを引き継いだとしても、上手く後は継げていないと思います。彼はとても甘やかされたダメな人間で、悪役としてもまだまだ大成していないと思うんです。また、自分の父親を殺してしまいますよね。という事は、カイロ・レンが自分の父親を殺してしまうというのは、J・Jがルーカスを殺してしまう事になってしまいます(笑)。
カイロ・レンが凶悪なる“悪役”を目指している事に比べると、J・Jは素晴らしい監督だと思います。実際に僕も意見を求められて答えたのですが、カイロ・レンが自分の思い通りに行かない時に物を壊すシーンがあります。でも、J・Jは常に期待に応え続けきた監督なわけです。言ってみれば、J・Jはスピルバーグとルーカスとコッポラの子供という立ち位置だと思います。
―そういった意味でも、今後J・Jに期待する事はどんな事ですか?
サイモン・ペッグ:J・Jはまだ映画を“量産”してはいないんですよね。彼の初めての映画が『M:i:III』(2016)で、その後『スター・トレック』(2009)、『SUPER8/スーパーエイト』(2011)、『ミッション・イン・ポッシブル/ゴースト・プロコトル』(2011)と続いていくわけですが、『SUPER8/スーパーエイト』を除いて全て続編なんですね。『SUPER8/スーパーエイト』もスピルバーグのトリビュート的作品なわけで。もちろんシリーズ作品の中にも彼の主張はこめられているとは思いますが、私としてすごく楽しみにしていて待ち遠しいのは、本当の意味で彼の主張、彼の世界を描いた映画なんです。誰かの車を運転するのでは無く、自分の車を運転してもらうのととても楽しみにしています。
―ジャスティン監督にお話を聞いた際、映画では見えないキャラクターの背景や性格作りに膨大な時間を割くとおっしゃっていました。サイモンさんも脚本を書く際にそういった時間を共にしたのでしょうか?
サイモン・ペッグ:はい。真の意味でキャラクターを理解しないと、しっかりと描く事が出来ません。ジェイラーやクラルの様に新しいキャラクターがいて、特にクラルは、映画の中で描いているのはほんの一部なんですね。クラルという悪役は皆さんがご覧になった以上に複雑なキャラクターなんです。
―そんな魅力的キャラクター描写が本作の何よりの魅力だと感じました。サイモンさんが演じたスコットも素晴らしいキャラクターで。サイモンさんはスコットの他に『ミッション:イン・ポッシブル』のベンジー等、他作品でも素晴らしい演技をされています。人が惹き付けられる魅力的な演技の秘訣は?
サイモン・ペッグ:僕がスコットやベンジーを演じる時に哲学としているのは、生身の人間が演じているリアルさを可能な限り出す事です。例えば、巨大な魚に襲われているシーンがあったとして、観客が「私もそういうリアクションする」「自分もこうなるな」と思ってもらう様に演じたいのです。「自分がシークレット・エージェントだったら」「自分が宇宙船の乗組員だったら」……という事ですね。
自分の歴史を振り返ると、インディーズ映画出身なので芝居のスタイルもそこから来ていると思います。エドガー・ライトとずっと仕事をしてきましたが、彼の作品は「極めて普通の人があり得ないシチュエーションに直面してしまう」というお話がほとんどですよね。家電量販店に務めている普通の男がゾンビと戦ったり、警察官がとんでもない事件に巻き込まれたり、アル中がエイリアンと戦わなくてはいけなかったり……(笑)。僕自身もイギリスの田舎出身で、今はこんなとんでもないハリウッドという場所で仕事をしていますが、至って普通の人間なので皆さんが共感してくれるのでは無いかと思います。
―またエドガーやニックとの“大暴れ”を観たいと切望しているファンが、日本にもたくさんいます! 近いうちに一緒に映画を作るご予定は?
サイモン・ペッグ:もちろん! 3人共忙しいのでスケジュールをあわせるのがなかなか大変なのですが、近いうちに作る予定だよ。僕とニックは制作会社を作ったので、また色々と面白い事をしたいと考え中なんだ。
―とても、とても楽しみにしております! 今日はありがとうございました。
(撮影:レイナス)
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http://getnews.jp/archives/1542197
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