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『ファインディング・ドリー』監督「ハンディキャップを克服する物語を描いているとは考えていなかった」
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『ファインディング・ドリー』監督「ハンディキャップを克服する物語を描いているとは考えていなかった」

2017-01-16 20:30
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    『トイ・ストーリー』『モンスターズ・インク』などなど、数々の名作アニメーションを生み出してきた「ピクサー・アニメーション・スタジオ」。今夏に公開された『ファインディング・ドリー』も大ヒットを記録しました。

    そんな『ファインディング・ドリー』の「MovieNEX」発売に伴い、ガジェット通信はピクサーの作品作りの秘密に迫るべく、アメリカ・サンフランシスコの「ピクサー・アニメーション・スタジオ」に潜入! 今回は、監督のアンドリュー・スタントン&プロデューサーのリンジー・コリンズ2人のインタビューをお届けします。

    【関連記事】ジョブズのアイデアが活きるオフィスは楽しいクリエイティブたっぷり! 「ピクサー・アニメーション・スタジオ」に行って来た
    http://getnews.jp/archives/1578804 [リンク]

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    ―豊富なボーナス映像の中で、ぜひ観て欲しいコンテンツはありますか?

    リンジー・コリンズ(以下、リンジー):私はキャラクターたちがドリーのことについて話している「突撃︕海中インタビュー」が好きだわ。

    アンドリュー・スタントン(以下、アンドリュー):ああ、それぞれが話しているのを録音しているやつ。

    リンジー:そう。例えばベイリーがエコロケーションをしていたり、「ここ全然覚えてない」と言っていたり。(ブルーレイが発売されて)子供たちと一緒に家で観ていて、とても面白いと思った。

    アンドリュー:あれはもともと映画のティーザーになる予定で録音したんだよね。

    リンジー:そう。

    アンドリュー:それぞれのキャラクターたちが登場して“誰か”のことを話しているのが面白いだろうと。そして最後にドリーが登場する。(ティーザーでは使われなかったけど)ボーナス映像に収録されてよかったね。

    リンジー:よかったわ。

    アンドリュー:僕が好きだったのは、自分自身が長い時間をかけた(思い入れのある)部分だということもあるんだが、タンク・ギャングの物語のところだ。マーリンとニモがドリーを探すのをタンク・ギャングが助けるくだり。結局は物語が変わって削除したシーンなんだが、その決断は賢明だったし良かったと思っている。でも彼らの冒険物語を考えるのは楽しい作業だった。特にマーリンとギルのやり取りの部分はね。このシーンを観てもらえるのが嬉しいよ。
    (※編集部注:アメリカのデジタル配信のボーナス映像で、MovieNEXには収録されておりません。下記YouTubeをご覧ください)

    【参考動画】「ファインディング・ドリー MovieNEX」前作のタンク・ギャングたちが登場!?
    https://www.youtube.com/watch?v=uJzke-G5LzM [リンク]

    ―では、映画本編のシーンで、何度も観て欲しいのはどこですか?

    アンドリュー:それぞれみんな好きなシーンがあるんじゃないかな。

    リンジー:そうね。

    アンドリュー:多分いくつかあるだろう。

    リンジー:ええ。……主人公が「忘れんぼう」という設定が(物語を作る上で)いかに大変だったかということを、クリエイターたちがボーナス映像の中で語っているわよね。これを観た後に本編を観た人が、『ファインディング・ドリー』をここまで作り上げるのがどんなに難しいことだったかを理解してくれることを願っているわ。(笑)

    アンドリュー:観て欲しいシーンを選ぶのは難しいな。僕はいつも映画の核となる部分を観て、ちゃんとうまくできたかを確認する。そこが一番気になる部分だからね。脚本を書いている立場だからかもしれないが、いつもメランコリーな部分を観てしまう。だから、ドリーが一番落ち込んでいる、海の中で一人ぼっちになって過去を再発見するシーン。それから、これは観ていない人にとってはネタバレになってしまうが、家族と再会するシーンかな。これらのシーンはトーンだけじゃなく、物語全体の基盤となっている部分をうまく作り上げることができたと思っている。監督で脚本家という目線で作品が完成した後に見直して、「そうだ、これらのシーンがこの作品のすべてだ」と思うよ。ズレてないし、うまくやれた。物語の核を捉えることができたね。

    ―ボーナス映像「もうひとつのオープニング集」には未公開のオープニングシーンが5つも収録されていますが、最終的に実際に公開された映画のオープニングに決まった理由はなんですか?

    アンドリュー:いくつ目に収録されているか覚えていないが、実際にベビー・ドリーの声を担当したリンジーの娘がアフレコを担当したベビー・ドリーがアップでカメラの方を向くオープニングシーンがありますが、このシーンが出来たときに「これこそがオープニングシーンになるべきだ」と皆が思ったよ。ただ、初期のバージョンは複雑すぎたので、そこからさらに練り直して、いくつかの段階を得て両親とのかくれんぼのシーンに行きついたんだ。おそらくメディアのみなさんが記事を書く際も何度も文章を練り直すと思いますが、映画製作も同じで、最終的に本編に残ったのは編集で精錬された物です。ただ、オープニングシーンは、この未公開シーンで観られる、「ベビー・ドリーがアップでカメラの方を向くシーン」が出来た瞬間に確定しました。

    ―海の生き物を描くにあたり、おそらく人間や動物をデザインするよりも難しかったと思いますが、どういう苦労があったのでしょうか?例えばベイリーやデスティニーの目は離れていますよね。

    アンドリュー:顔の横に目があるとかいったことは確かに問題ですが、なるべくその生き物の生理学的特性とか外見から反れないようにしているよ。実は、マーリンとニモのモデルとなった魚は同じく馬のように目が離れているのだが、それは採用しなかった。あまりに目が離れていると人間っぽさがなくなるからね。ベイリーは脇役で笑いを取るキャラクターだからそれが許される。ベッキーも鳥や鶏らしく描くことができる。必要があれば実物とは変えるが、ほとんどの場合はその生き物の特性を活かすようにしている。

    リンジー:変える理由の一つとしては、サイズ感の問題もあるわ。デスティニーとドリーの大きさの差がものすごいとか。でっかいクジラと小さな魚を一つの画面に収めるのにはいろいろと問題があった。それと同時にキャラクターに親密さを出したりといった遊びを入れるのが楽しかったわ。

    アンドリュー:それが映画作りの醍醐味でもある。僕たちフィルムメイカーは常に問題を解決しようとしている。物語であれビジュアルであれ、映画作りはパズルのピースをつなげているようなものだ。そういう問題を解決するのは楽しいし、解決することができるか、というのが日々のモチベーションとなる。全てが簡単だったら、寝てても映画はできるからね。

    『ファインディング・ハンク』を作ってと皆に言われる(笑)

    ―日本では、ニモとドリーはもちろん、ベビー・ドリーやハンク、ベイリーやデスティニーといった新キャラクターも人気がありました。アメリカではどのキャラクターが人気でしたか?

    アンドリュー:同じだよ。みんなこれらのキャラクターが大好きだ。特に人気があるのはベビー・ドリーだね。

    リンジー:アメリカでもハンクも人気よね。あの動き方とかどこへでも移動できる能力とか、見ていて楽しいしカッコイイから。

    アンドリュー:分析したことはなかったが、もしかしたら、彼がタコで、しかも本物のタコよりも見ていて楽しいという一方で、性格はとても無愛想だという矛盾がウケているのかな。この二つの要素が人気を呼ぶのかもしれないね。

    リンジー:私が一番好きなのはベイリーよ。

    アンドリュー:ベイリーは面白いよね(笑)。僕はデスティニーも大好きだね。パペットを思い出させる。目と口の位置が面白くて、話しているとパペットみたいだ。とても魅力的だと思う。

    ―これらのキャラクターが主役となる作品が今後できるのでしょうか?

    アンドリュー:『ファインディング・ハンク』を作ってくれとみんなが言う(笑)。その他にも『ファインディング・マーリン』とか『ファインディング・ベイリー』とかを希望する声も。なんでもありだ。

    リンジー:私たちは冗談で、まずはアンドリューを探す(『ファインディング・アンドリュー』)のが先だと言ってるの。

    アンドリュー:&一同:笑い

    リンジー:だって、ピュ〜!って。「まだ早すぎる〜!」ってね。

    アンドリュー:僕は自分の人生の8年間を魚と共に過ごしたんだよ。(笑)長い時間だ。僕がまた4年間を捧げなくてもいいなら僕自身も彼らをまた見たいと思っている。(笑)誰かがやってくれるといいね。

    ―『ファインディング・ハンク』が、20年後に(笑)。

    アンドリュー:多分ね。(笑)

    「ジェネレーション・ニモ」(ニモ世代)と呼ばれる層があるんだよ

    ―『ファインディング・ニモ』も『ファインディング・ドリー』も世界中で大きな成功を収めました。その理由はなんだと思いますか?

    アンドリュー:ニモが世界中で人気になって、ホームビデオの人気にも驚かされた。世界で一番売れたDVDだ。つまりみんな家で何度も作品を観てくれている。『ファインディング・ニモ』を観て育った、「ジェネレーション・ニモ」(ニモ世代)と呼ばれる層があるくらいだ。『スター・ウォーズ』はそうだと思うけど、全ての続編がそういった状況で作られているわけではない。その(ファン層が確立しているという)恩恵を受けることができて幸運だったね。

    リンジー:ええ。みんな『ファインディング・ニモ』を観ているはずよね。ほぼ100%の人が。だからすでに観客はいて、次に何が起こるか観たいと待っていてくれるのはとても幸運だったわ。

    ―MovieNEXが発売されたことによって、家で子供が一緒に作品を観る機会もあると思いますが、どういうメッセージを受け取ってほしいですか?

    アンドリュー:主体性というか、自信…というか自己認識だね。どんな親も子供には自分で自分の問題を解決できるようになってほしいと思っている。子供が思っている以上にうまく解決できるように。誰も一人ぼっちになるために生まれてきたわけではないが、もし一人ぼっちになった時、どれくらい自分でやっていけるか。自分でやっていけるという自信がどれだけあるか。ドリーの物語はそれを教えるのにちょうどいい。

    リンジー:そう。それに、誰もが何らかの欠点を持っているもの。でも力をつけていこうとがんばるうちに、その欠点こそが本当のスーパーパワーだということが見えてくる。欠点こそが最大の強みになり得る。視点を変えるだけでいいの。他の人からは、「あなたのそういうところが好き」と言われたりする。それこそが、みんながドリーを見ている視点なの。ドリーが忘れんぼうだからあまり好きじゃないという人は誰もいないわ。ドリー本人以外はね。彼女自身は自分のことを恥ずかしく思っていたり、心配していたりする。だから彼女に自信を持って欲しかった。

    ハンディキャップを抱えているキャラクターを描いたものだと、これっぽっちも思ったことはなかった

    アンドリュー:これを告白するのはちょっと恥ずかしいんだが、この作品がハンディキャップを抱えているキャラクターを描いたものだとは僕はこれっぽっちも思ったことはなかった。でも、ハンディキャップを抱えた子供を持つたくさんの親たちから感謝の言葉をもらった。障害を持つ子供たちが克服しなければならないことなどがたくさん描かれているという。でも僕はそれを狙っていたわけではない。僕はドリーのことを自分の弟や妹と同じくらいよく知っているけど、あまりに長く知っていると、例えば目の色とか身近なことは、忘れて気づかないこともある。その人そのものしか見ていないからね。だから、僕にとってはドリーはドリーでしかなかった。ハンディキャップを克服する物語を描いているとは考えていなかったんだ。でもそう言われると、確かにそうなんだね。

    リンジー:私は子供たちと一緒に観たの。子供たちはもちろん何度もこの作品を観ているけれど、一緒に座って観ていたら、未公開シーンや、どんなに製作が大変だったかを私たちが話しているのを観ている様子が面白かったわ。製作の過程をわかってもらうだけではなく、クリエイティブな面での失敗をわかってもらうことができるの。というのも、中には一回で完璧にできたと思っている人たちもいるようなのだけれど、実際にはボーナス映像にあるように、たくさん失敗している。最終的に成功するために何度も失敗を繰り返している。みんなにそれをわかってもらうことはいいことだわ。

    アンドリュー:これを超えるメッセージはないね(笑)。

    ―以前に、ドリーの物語を作ったきっかけは、あなたがドリーのことを長い間気にかけていたからとおっしゃっていたと思います。ドリーの物語はあなた自身の感情を反映している部分もあったということでした。この作品に限らず、物語を作られる時には、いつもキャラクターに共感する部分を持っておられるのですか?

    アンドリュー:どんな監督も、自分自身の物語を語るか、もしくは自分が共感するかのどちらかの作品を作るものだと思う。たとえ自分が書いた脚本でないとしても、完成するまでの仕事量や努力を考えると、何らかの繋がりを感じていなければできるものではない。でなければ、作品を作るという情熱や毎朝起きて仕事に向かうエネルギーは出てこないはずだ。(作品を作るのは)大変なことだからね。だから、何かしら自分に訴えてくるものが必要だ。うまくいっている作品は、どんな物語でも、監督自身のことを語っているか、共感しているものを語っているかのどちらかだ。この作品は『ファインディング・ニモ』の時と同じく、伝えたいことがあった。ドリーというキャラクターはすでにいた。でも彼女自身が、自分で色々なことをできると信じていなかった。

    リンジー:独立独歩ね。

    アンドリュー:そう。それが一番わかりやすい言葉だね。これが子供を持つ親としての僕に訴えかけてきたことだと思った。でも作品を作っている間に、自分自身がそういう部分を持っていたことに気がついた。多くの場合、なぜそのキャラクターに共感できるのかは自分の頭より先に心でわかっているものだ。

    素晴らしい作品を生み続ける「ピクサー」の社風とは?

    ―ピクサーは今年30周年を迎えましたが、ピクサーの作品はどれも高い評価を受け、人気があります。これはおそらく若いクリエイターの教育など、ピクサーの社風が影響しているのではないかと思うのですが、そのあたりについて教えていただけますか?

    リンジー:その通りだと思うわ。初期の頃から若い才能あふれる人々を集めて、できるだけ早くチャンスを与えてきた。だからこの会社は初期に素早く成長したのだと思う。『トイ・ストーリー』が公開された頃にね。その初期の成長期からいるスタッフが今もまだたくさんこの会社にいるのは素晴らしいことだわ。そのために、物語を作る共同作業にも大きなメリットが得られる。共同作業は大変だわ。よく冗談で、「失敗のために共同作業している」と言っているの。だって、作品を作り始めて最初の3、4年くらい、つまり、うまくいく直前まではずっと失敗しているのだから。失敗している時の共同作業は大変なの。失敗は恥ずかしいし、心細いし、傷つくし。だからこの会社が作りだした長年の付き合いの家族のような社風には、それを癒す働きがあると思う。もちろん常に新しい人たちも入ってきているけれど。クリエイターたちの家族のような雰囲気があるからこそ、「さあ、長くつらい工程だがもう一回やるぞ」という気にさせてくれるのでしょう。

    アンドリュー:つい先日、この先10年間に製作する長編映画についての会議をしていたんだが、面白いのは、ボードに書き出されたのは作品名ではなく監督名だった。それが僕にとっては大きな意味を持った。僕たちは常に、作品ではなく、人材に投資をしてきた。というのは、人こそが作品を決めていくものだから。僕はこのことをとても誇りに思う。

    リンジー:ボードに監督の名前が書かれることね。彼らに、物語を語る機会を与える、ということ。それができるなんて、私たちは幸運だわ。

    ―素敵なお話どうもありがとうございました!

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    『ファインディング・ドリー』MovieNEX(4,000円+税)発売中・デジタル配信中!
    (C) 2017 Disney/Pixar
    公式サイト:http://www.disney.co.jp/movie/dory.html

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