人気サバイバルホラーゲーム「バイオハザード」シリーズを原作としたフルCG長編アニメの第3弾『バイオハザード・ヴェンデッダ』が5月27日より公開となります。

『THE NEXT GENERATION パトレイバー』等を手がける辻本貴則が監督を務める本作は、『呪怨』シリーズの清水崇監督がエグゼクティブ・プロデューサー、カプコンの小林裕幸プロデューサーが原作監修を行っています。今回は、清水EPと小林プロデューサーに本作の見どころから、ホラー描写へのこだわりなど色々とお話を伺ってきました。


―本作大変楽しく拝見させていただきました。『バイオハザード』という人気タイトルに、清水崇監督が加わるというホラーファンにとってもたまらない作品で。

清水:僕が監督だったら違ったかもしれませんが、今回はエクゼティブプロデューサだから意見を言いやすくて、ダメ元で無茶言っていました。歴史あるシリーズというのは難しいことも多いですが、ハッキリと判断してくれるプロデューサーの小林さんがいたので、やりやすかったです。

小林:最初は『バイオハザード』の世界観としては、強いホラー作品になっては問題なので、バランスをとるのが大変だなと構えていた部分がありました。でも辻本監督が色々な要素をうまくまとめてくださったので。

―清水崇監督が『バイオハザード』の映画のプロデューサーを務めるという点で、最初小林さんはどう思われましたか?

小林:僕は実は、ホラーって苦手で全然観てこなかったんですね。『バイオハザード』の仕事に就いて初めて観たので。この仕事じゃなかったら今も絶対観てないです(笑)。でも勉強のために色々観させていただく様になって、清水さんが携わってくれるというのは素直に嬉しかったです。『呪怨』の、世界の監督と一緒に仕事が出来るというのは。

―清水さんがエクゼティブプロデューサとして一番譲りたくないことは何でしたか?

清水:まずは辻本監督ならばアクションを活かさなきゃ、という所でしょうか。辻本さんにアクションをまかせ、『バイオハザード』の世界観は小林さんにまかせ、僕は恐怖描写や人間ドラマのリアリティをどの様にCG作品に入れ込むかと考えました。

―小林さんはいかがですか?

小林:2人の素晴らしい監督が加わってくださって、2人とも『バイオハザード』は初めてでしたから、世界観的に出来ないことは出来ないとハッキリ言わせてもらいましたが、基本的にやりたいことは実現できるように意識しました。作り手の気持ちとファンとカプコンのスタッフと、すべての方が満足出来る作品にしたかったので。

清水:『バイオハザード』の世界観を守ってくれた小林さんの役割は大きいですね。僕と辻本監督は知らずに主張することも多かったので。けれど、脚本の深見さんがとにかく『バイオハザード』に詳しくて。ファンは勿論、これで初めて『バイオハザード』を知る人や、女性にも観て欲しいと考えて脚本を書いてくださいました。

小林:深見さんは本当にお詳しいですよね。脚本はしっかりやりましね、一番時間をかけたパートかと思います。CG技術もすごいですけど、脚本をしっかり練ったので人間ドラマもしっかりしている自信があります。CGだけど人間らしさを見た目、セリフ、シナリオのなかで描けたと。

清水:いや本当に、表情とか目線とか生身の芝居同様に感じ入る部分もあります。人間もいつか抜かされるかもって。ここまで実写に近いフルCGって日本独特の技術だと思うんですよ。

小林:海外だとデフォルメアニメっぽいのが多いですものね。

清水:ドラマに感情移入出来るのって、ここまでフォトリアルだと逆に難しいはずだと思うんですよ。

―その他にCGアニメーションだからこその面白さや難しさはどんなところにありましたか?

清水:僕も辻本監督も実写畑で、今回初めてのフルCGだったんですが、なんでも出来ると思ったら逆に難しい部分もあるし、無理しても表面的にしかならない。CGだからこそのせめぎ合いがあるなと。

小林:やろうと思えばどんな表現でも出来ますけど、時間とお金がかかるので制約が多いですね。予算と製作費に上限があるので実写で出来るところは実写でやったほうがはやい事が多いです。余談ですが、飲食シーンが一番しんどいのでほぼ無いんです。ゲームの時に食べるシーンチャレンジしたこともありましたけど苦労しました。逆にCGで自由度が高いのはカメラワークですね。

清水:辻本監督はアクションが得意な方ですけど、基本的には実写であり得るカメラワークしか使わなず、ここぞっていうところで実写ではできないカメラワークを使い込みました。そこのバランスに感心したしました。落ち着いたシーンでも緩急があって、アクション中でもただカッコイイだけではすませないのが素晴らしい。

―恐怖の演出という面ではいかがですか?

清水:僕は最初はそればかり考えてました。人気あるキャラクターは勝手に殺せないが、ではどう怖くするか?と。でも辻本監督ならアクションだろうとも。脚本の深見さんは辻本監督と昔からの仲ですが組むのは初めてで、しかも『バイオハザード』に詳しいので普通書かないような細かいト書きまで書くんですよ。辻本監督はまとめるのが大変そうでしたが、その相乗効果でバランスのとれた作品になったと思います。怖さっていう意味だと冒頭の部分でしょうね。ゲーム『バイオハザード1』で印象的だった洋館がでてくるのでファンの方はテンション上がると思います。

小林:辻本監督は清水さんがやりたいことをうまく残していると思いました。おどかし要素もあります。○○の中から出てくるシーンとかね。(※編集部注:映画を観るまでのお楽しみにしておきます)

清水:僕は子供のゾンビを出したかったんです。でも、ゾンビだからって子供絡みの暴力描写は難しい。だから年齢設定を話し合ったり、直接でなく、気配を感じさせる不安要素で表現したり、より印象として残る様に。

―清水監督はゲーム『バイオハザード』をプレイしたことがありますか?

清水:実は最初は黒沢清監督に勧められました。「清水君バイオハザードやったほうがいいよ。勉強になるよ。カメラワークもすごいしね」って。黒沢監督ってご自身の映画では、そんなカメラワークしないのに(笑)。でもそんな不思議な縁はあったんです。

小林:ゲームはインタラクティブなので、映画やドラマの様に物語を段取って見せる事が出来ない。かかる時間も人によってバラバラなので。映画は逆に演出、編集で操作できるので、
お客さんの気持ち良さと作り手がやりたいことをうまくやって、ダレ無い様にするのが必要ですよね。
一少しゲームのお話になりますが、小林さんはシリーズ1作目の時に、ここまで永年愛されるコンテンツになると思いましたか?

小林:一作目のときは一作目が終わることしか考えてなかったですね。終わるのかな?完成するのかな?って気持ちで作ってました(笑)・

清水:しかもホラー苦手ですしね(笑)。

小林:そうそう苦手なんですけど、でも作っているとネタがわかるので怖くない。

清水:作っている側になるとそうなんです。僕も中学生くらいまで見れなかった。友達に薦められても「絶対こんなの作ってる大人は頭がおかしい」って思ってました。でも、ドキドキするような刺激的な物語は好きだったので、人々にいたずらを仕掛けて飽きさせずに感銘を与えるという点ではホラーも人間ドラマも同じだなと思えるようになっていきました。

小林:いたずらをしかける側は楽しい

清水:胸キュンと同じ。

一『バイオハザード』スタートから20年という月日が経ち、ユーザー、観客側の変化を感じる部分はありますか?

清水:『バイオハザード』シリーズは優秀で、これだけ幅広いコンテンツになったのには理由があると思います。虚構ではすまない、現実に通じる世界観を背景に持っているからだと思います。「いつかフィクションではすまなくなるかも」という社会的・集団的不安を内包しながら描いている。人間の手による汚染や自滅への警告を万人にわかり易く娯楽の中に網羅している。

小林:ハロウィンとかそうですけど、日本も変わってきて、今ってゾンビメイクする子が多いじゃないですか。そういう風に、ホラー映画は女の子同士とか高校生でも観に来てくれるのが嬉しいですよね。

清水:恐怖や不安すら娯楽で楽しめるのは、人間の特権だと思います。昔はポルノと同じ一部のマニアックなものだったけれど、ホラーは市民権を得てきた。男女問わず、観たいものは観たいし、きっと本能的なところなんでしょうね。

一そんなお2人が選ぶホラー映画の1本って何ですか?

清水:僕、一番怖いのホラーじゃないんですよ。『鬼畜』っていう野村芳太郎監督の映画があって、子供の頃に観てしまってトラウマで。未だにメインテーマを聴くと怖いです。

小林:僕は最近のだと『死霊館』が好きです。

清水:よく出来ていますよね、面白い。

一最後にこれから映画をご覧になる方にメッセージをお願いします。

小林:本作はフルCGアニメーション映画ですけど、ホラー要素も強いですし、アクション要素もあり、映画として面白い作品になっているので期待してください。

清水:ホラーが苦手な人もいるし、CGアニメかって色眼鏡で見ちゃう人もいると思いますが、ドラマも含め様々な要素が詰まった見応えある作品なのでぜひ劇場で観ていただきたいです。女の子同士でキャーキャー言いながら見ても楽しいでしょうし、どなたにも刺激的でキュンキュン出来るとも思います。

一今日は貴重なお話をどうもありがとうございました!

『バイオハザード・ヴェンデッダ』
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