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アベノミクスのバロメーターは「-0.2%」 ‐1月消費者物価‐
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アベノミクスのバロメーターは「-0.2%」 ‐1月消費者物価‐

2013-03-08 18:05
    アベノミクスのバロメーターは「-0.2%」 ‐1月消費者物価‐

    今回は脇田栄一さんのブログ『ニューノーマルの理』からご寄稿いただきました。

    ■アベノミクスのバロメーターは「-0.2%」 ‐1月消費者物価‐
    今朝、総務省が発表した1月の全国消費者物価指数は以下の通り。(前年同月比)

    ・総合 -0.3%
    ・生鮮食品を除く総合(コア指数) -0.2%
    ・食料およびエネルギーを除く総合(コアコア指数) -0.7%

    ----------------------------------------------------

    全国消費者物価指数は、いわば「アベノミクスのバロメーター」。

    インフレ目標「2%」を公言し、強力な金融緩和を弓矢の一本、などと選挙マーケティングを行っているのであれば、首相は毎月、このバロメーターについて言及しなくてはならない。責任を負うのは日銀だけ、というのは大間違いだ。(ちなみに安倍首相のいう2%目標というのは、上から2番目のコア指数)

    アベノミクスというのは、「円安誘導からの輸出企業売上げ拡大を起算点とし、給与を増やして国内の需要を促進させ、強力な金融緩和がそれらをサポートする」、といった論理構成だとも解釈可能だが、円安誘導に関しては欧州懸念が再燃しつつある事から、少々頓挫気味。G20からも歯止めが掛かった事から要人発言は抑制された。 経済界は給与拡大に及び腰、結果、需要を刺激するには相当な困難を要する、というか道筋がまったく見えない。 (防災政策に関しては、必要だが、景気刺激とは別個に考えなくてはならない)

    日銀人事が注目を集めているが、予想されるいくつかの新政策に関し、市場は既に織り込みがかっている。新体制による新政策が実行されたとすれば、確実にいえる事は「日銀当座預金のブタ積み」が嵩むだけ。リスク資産を買い込む、というのであれば日銀が損失を被った場合には国庫納付金が減少する。

    日銀が発表している直近の財務内容(2012年度上半期)を観てみれば、資産は拡大し、税引前当期剰余金は赤字、上記リスク資産購入の結果、裏目に出た、という結果となっている。資産が拡大しているのは、追加緩和の結果。国債買い入れ額が償還額を(前年同期比で)18.5兆円上回ったからだ。ちなみに、追加緩和見通しが強まったため、共通担保オペ入札に連続的未達が発生し、結果として基金における当オペは減額している。

    新総裁の下、リスク資産購入を拡大させるか否かが議論されており、そういう意味において注目ポイントとなる損益状況だが(上半期)、原則、日銀はETFを売らない事になっており、含み損が発生した場合には引当計上する事になっている。 日銀発表によれば(上半期)、経常損失は為替差損や保有株式の減損などによって「-1833億」、そしてETF損失引当積立てから特別損失を計上、結果として最終利益である剰余金も-2329億の赤字となっている。

    前述の国庫納付金というのは、ここから捻出される事になるのだが、仮に通期ベースで評価損が嵩む事になれば、納付金は当然ながら減少する。金融関係者などは日銀ETF購入を好感するが、そのような報道には警戒感が必要だ。なぜなら評価損拡大で、間接的に穴埋めするのは納税者になるからだ。

    日本と米国の場合ではここが違っており、FRBの場合は運用リスクは財務省が負い、責任は政府にある。日銀の場合も上記運用リスクの責任を、米国のように政府が負うような体制なのであれば、安倍首相が「強力な金融緩和」を推進・公言するのも頷ける。そうすれば、日銀にしても「強力な金融緩和」を推進できるだろう、しかし実態はそうなってはいない。

    多くの経済学者の方が言っているように、(金融緩和によって)「納税者負担で穴埋めする可能性がある」、という事は金融政策の名の下の実質的財政政策だという事になる。冒頭で述べたとおり、安倍首相が彼自身の考えに共感する人物を日銀総裁に選び、それによって2%目標を達成しようとするならば、月々発表される消費者物価指数について政治(安倍首相)が説明責任を果たす義務がある、といえる。

    今回の総務省の結果(1月消費者物価)では、アパレル(被服・履き物)が「-7.9%」と急落、教養娯楽関連も「-1%」。逆に上昇したのは生鮮食品だが、生鮮食品は「インフレ目標」に含まれていない。

    前年同期比では、家庭における耐久消費財が「-16.5%」、エアコン(-30.2%)・冷蔵庫(23.4%)と大幅下落が目立っている。

    逆に上昇したのは、負担となる電気代(+4%)。細かく言えばキリがないが、つまりのところ、アパレル・娯楽・耐久財などが下落し、エネルギー構成品目は「全面高」。結果、実質的購買力とされているコアコア指数は冒頭で表記したとおり、「-0.7%」の落ち込み具合だ。 (以下エネルギー構成各品目)

    電気代(+4%)、都市ガス(+0.3%)、プロパンガス(+3.6%)・ガソリン代(+4.6%)とこぞって上昇、灯油に至っては「+7.5%」と跳ね上がっている。そして実質購買力は低下の兆候が見て取れる。

    インフレ目標2%に対し、今現在は「-0.2%」。目標値までの道筋は遥か遠く、中央銀行は新体制が築かれたとしても、前述の体制を考えれば、強力な金融緩和を本当に推進できるのか甚だ疑問だ。

    執筆: この記事は脇田栄一さんのブログ『ニューノーマルの理』からご寄稿いただきました。

    寄稿いただいた記事は2013年03月05日時点のものです。

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