今回は壇 俊光さんのブログ『壇弁護士の事務室』からご寄稿いただきました。
■凶悪冷血メディアと荒廃識者
「少年2人の実名、顔写真掲載=吉祥寺路上刺殺で週刊新潮」 『@niftyニュース』
http://news.nifty.com/cs/headline/detail/jiji-07X113/1.htm
※現在、このページは削除されています。
東京都武蔵野市吉祥寺本町の路上で起きた女性刺殺事件で、強盗殺人容疑で逮捕された少年2人の実名と顔写真が、7日発売の「週刊新潮」(新潮社)に掲載された。同誌は「凶悪冷血『未成年ペア』肖像写真と荒廃家庭」と題する記事で、無職少年(18)とルーマニア国籍の少年(17)の実名と顔写真を載せ、家庭環境などについて書いている。
光市事件以来、加害少年を乗せると部数がとれるということで、低俗な雑誌は、味をしめているようである。
週刊新潮が、報道の自由とか言うと報道の自由に謝れって感じであるが、問題はこれだけではない。
報道の自由とプライバシーに関しては、トホホな面がある。
こんな記事を見た。
「犠牲者の氏名伝える意義は 朝日新聞「報道と人権委員会」」 2013年03月04日 『朝日新聞』
http://megalodon.jp/2013-0304-2128-41/www.asahi.com/shimen/articles/TKY201303030327.html
藤田博司委員(元共同通信論説副委員長)と宮川光治委員(元最高裁判事)と長谷部恭男委員(東京大学法学部教授) の例のアルジェリアの事件を念頭にした対談である。
宮川委員 遺族は精神的な衝撃を受けた直後なので、一人一人の遺族への取材では、十分な配慮をしなければいけないのは当然のことだ。ただ、本件のような事例では、遺族は氏名の報道を拒否できないと思う。氏名を報道するかどうかは、報道機関がその責任において判断することであり、遺族が決めることではない。そのことははっきりさせておいたほうがいい。長谷部委員 この事件について、遺族の方の感情や、亡くなった方の名誉やプライバシーなどを理由に氏名を出さないというのは、なかなか簡単には説明しにくいところではないかと思う。
驚いた。遺族の氏名を報道するかは、報道機関の問題で、遺族の方の感情とか名誉とかは無視しろということである。
原稿チェックしたのかは知らないが、このままの文言であれば、元最高裁判事とメディア法の大家とは思えないゲスっぷりである。
事件報道については、さらに凄い状況である。
犯人かも分からない段階で、実名報道、&警察リークのプライベート事項を嬉々として載せている状況である。
「【PC遠隔操作事件】処分保留で釈放、別件で再逮捕について弁護人が語る」 2013年03月03日 『Yahoo!ニュース』
http://bylines.news.yahoo.co.jp/egawashoko/20130303-00023718/
新聞報道の中で「捜査関係者」「警視庁幹部」が匿名でコメントし、「弁護士に励まされているうちに、自分が無実だと思い込んだのではないか」「今回も誤認逮捕というなら真犯人からのメールが逮捕以来途絶えていることをどう見ればいいのか」などと述べていることを挙げ、佐藤弁護士は「いったい何を考えているのか」「真犯人からのメールは1/5以降途絶えているのではないか」「こういう馬鹿なことを言う人が幹部というのはとんでもない」となどと憤慨。「鯛は頭から腐るというが、警察組織はおかしくなっている」と批判した。
記者が、警察情報の裏をとろうと、警察が言っていたと弁護側に吹っかけてくることはよくある。しかし、こちらにしてみれば怪情報である。警察に聞いてもはそんなことは言っていないとシラを切られる。それでも、こちらには、その怪情報に対して弁護人として責任をもって対峙することを求めてくる。それならソース側の責任ということで、こちらがその発言をした警察を連れてこいと言っても連れてこず、そのソースが間違っていると説明しても信用しようとしない。
Winny事件でも「2ちゃんねるで著作権侵害目的でWinnyを作ったという書き込みをしたのか」「どの書き込みを言っているのか?」「分からないけど、警察がそう言っている」のくり返しであった。「確立で言うと、警察が言うことが正しいことが多いので、警察の言うことを信じます」と言った記者もいた。
さらに、佐藤弁護士は一連の報道や記者の姿勢について、次のように厳しく批判した。
「最初に大げさに報道され、報道の責任を言ってきたが、このあたりで冷静になって、本来あるべき報道の姿勢に戻ってもらいたい。自分がペン やマイクを握ることにしたのは何をやるためだったのかを思い出してもらいたい。君たちは、まるで彼が無実であるということを証明しろと言わんばかりの態度 ではないか。反省するべき」
佐藤先生もいうもんだ。
完全にアグリーである。
Winny事件では、弁護団は間違いだ、自白したら執行猶予だ、取材をさせろと言った国民的メディアがあったことは、忘れてはならない。
執筆: この記事は壇 俊光さんのブログ『壇弁護士の事務室』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2013年03月21日時点のものです。
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