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ゲーム報道に見る新聞やテレビの限界
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ゲーム報道に見る新聞やテレビの限界

2013-04-02 14:05
    ゲーム報道に見る新聞やテレビの限界

    今回は田下 広夢さんのブログ『田下 広夢の記事にはできない。』からご寄稿いただきました。

    ■ゲーム報道に見る新聞やテレビの限界
    こんな記事を読みました。

    「新聞よ、20年後に生き残れ(元三井住友銀行副会長・中野健二郎)」 2013年03月24日 『MSN産経ニュース』

    http://sankei.jp.msn.com/life/news/130324/trd13032412520007-n1.htm

    詳しくは元記事を読んでいただきたいんですが、新聞離れというけれど、結局は読者は高い質のものを読みたいはずだ、というようなことが書かれています。僕もそこはその通りだと思うんですが、正直高い質の情報を新聞やテレビが流すというのは相当難しいだろうなあとも思ったりします。

    元記事に例として出してあるのは原発についての報道なんですが、正直原発の話までいくと、新聞に書かれていることにどのくらいの精度があるのか僕には論じることができません。でも、ゲームの話だったら分かるわけです。

    というわけで、グッと楽に、ゲームの報道から新聞とかテレビというメディアについて考えてみたい次第でございます。

    ●何か違うゲーム報道
    新聞とかテレビがゲームの報道していると、情報が正確じゃなくって、おかしいな、と思うことないですか? 僕はあるんですよ。それも1度や2度じゃなくて度々あります。なんなら、自分がしたコメントが載ってるのにおかしいな、と思うことすらあります。

    僕は新聞屋さんはやったことがないんですが、取材を受けることはままあります。そしてテレビの方は、派遣でテレビ東京のADさんをやっていたことがありました。バラエティですけどね。なので、なんでこういうことが起こるのかという点について、思い当たることがあります。そしてそのことを考えると、そろそろこういう旧来のメディアってビジネス上の問題だけでなく、メディアとして本質的に厳しいんだなあと考えさせられます。

    ●ゲームの専門知識のある人が少ない
    なんでゲームの報道は情報がいいかげんなことがあるのか。テレビ、新聞などなど、ゲームメディアじゃない媒体は、別にゲームの専門家が記事を書いているとは限りません。というか、ほとんど書いていないと思います。新聞とかテレビに取材を受けてよく感じるのは、僕の10倍優秀そうな人が、一夜漬けで得た知識でしゃべっている、という印象。

    最近のゲーム事情についてよく調べたなーと思う一方で、歴史的背景がすっぽり抜けていたり、ゲームユーザーの実態についての話がメディアのイメージだったりというのがよくあります。また、知識が足りない故に、メーカーの言ってることを精査せずにそのまま掲載してしまう、というのもままあるように感じます。

    テレビや新聞なんかは、メディアとしてのブランドがすごいんで、取材力はあります。取材力で言ったら、僕、多分今よりテレ東で働いていた時の方があったと思います。だって、あの時はテレ東の名刺持ってましたから。それがあるだけで、色んなところに取材に行けるのです。

    ただ、それらを精査して咀嚼できるほどのバックボーンとなる知識があるかと言えばそんなことはありません。結果、色んなところの専門家の意見を聞きかじって構成することになります。だから、ところどころでボロが出る場合があるんですね。

    ●時間が少ない
    これは特に報道系の新聞とテレビはそうです。テレビなんて、午前中に電話してきて、夕方取材できないかって話で、次の日放送とか普通にありますからね。全部がギリギリなんですよ。それを、みんな寝不足でやってるんです。僕も働いていた時期は、1日20時間労働とかでしたから。フラフラです。

    こんな状態で、情報を精査できるのかと心配になります。しかもです、そんなに頑張っているのに、情報スピードはインターネットの方が早いということが多々あるわけです。

    ちなみにあの、テレビさんとか新聞さんとか内容の確認は基本的に無いです。別にこっちは確認しなくてもいいんですけど、本当に伝わってるかしらと心配になることはよくあります。

    ●昔は誰も指摘しなかった
    それでも、インターネットとかなくて、情報がテレビや新聞ぐらいからしかたいして流れて来なかった時代はそれで良かったんだと思うんですよね。そもそも、新聞さんやテレビさんが得意な、政治の話であるとか、野球の話とかばっかりしていればいいわけです。

    僕はテレビ東京で演歌番組を作っていたんですけど、演歌のことになるとテレ東はすごいんですよ。もう、生き字引みたいな人がいて、昔あったあれこれってエピソードをみんな知ってて、あの演歌歌手は男漁りがすごくてマネージャーが困ってんだ、みたいなことまでスラスラとしゃべれるという。得意分野をガンガン流していれば、それしか見るものがないんですから、みんなそれをほうほうと言って見ていたんです。

    で、たまにゲームの話をしたって、テレビの前で見てるゲームユーザーは怒るかもしれませんが、それらは点として存在して繋がっていかないので、全体としてはテレビが言ってることは概ね正しいだろうって話に落ち着きます。一部のマニアな人達が気がついても、それが顕在化しないんですね。

    ●総合メディアが難しい時代
    ところが、インターネットができて、メディアが多様化して、しかも新聞なんてそのインターネットに足を踏み入れちゃうと、情報の多様性は求められるし、いい加減なことを言うと、みんなに突っ込まれるしで大変なわけです。

    新聞とか、テレビとかって、建前としてはノンジャンルで何の話題でもする総合メディアじゃないですか。でも、実態は違うわけですよ。得意なジャンルは滅法強いですけど、あらゆるジャンルに関して専門性なんて発揮できるわけがなくて、色々とボロが見えてしまう。だからと言って、知識も時間も限られています。

    結果、情報の多様性が求められるようになればなるほど、質が下がっていってしまうわけです。これは構造的にちょっと難しいところに来ているんだろうなと思います。もしかしたらたかがゲームの情報ぐらい、と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、その、たかがゲームの情報も、正確には届けられていないのが現状なのです。

    元記事では、もっと質の高いコンテンツを作って頑張れ、と叱咤激励していますが、「頑張れ!新聞人」では解決できそうもありません。

    コンテンツを作る構造を劇的に変えるか、それともひらきなおって総合メディアなんて思わず得意分野に特化していくか、そういうことが必要になっていくんじゃないかなあと、思うのでございます。

    執筆: この記事は田下 広夢さんのブログ『田下 広夢の記事にはできない。』からご寄稿いただきました。

    寄稿いただいた記事は2013年04月01日時点のものです。

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