文豪ってイケメンが多いと思いませんか? 筆者は中学生の折、芥川龍之介に珈琲が似合うか緑茶が似合うか、クラスメイトと真剣に議論したことがあります。しかし、まさか、「あの文豪」がキャラ立ちして、そのCVにあの有名声優があてられ、しかも虚実をほどよく織り交ぜた「文豪CD」なるものが世に送り出されていようとは…。
日本文化ここに極まれり。難しいことは抜きにして、ご紹介いたしましょう。
●果たして文豪シリーズとは?
アップルフォレストの特設ホームページで概要を確認してみましょう。
天国の大手出版社。
芥川龍之介に夏目漱石……ここでは日本の歴史に名だたる文豪たちが、生前のように真面目に堅実に、執筆にいそしんでいる―――と、思いきや……
ネットゲームに熱中する者あり、酒を飲んで暴れる者あり、編集部から逃亡する者あり……
カタいイメージが強い文豪たちの、意外と身近でおかしな日常をドラマCD化!
というわけで、シュールなのにどこか微笑ましい内容です。
2012年7月に発売されたのを皮切りに、続々と世に送り出されています。そんなイケメン文豪たちのシリーズですが、第1巻「吾輩たちは文豪である」、第2巻「文豪失格」、新作第1弾「不良文豪とホスト」まで発売中。
第一弾では芥川龍之介を鳥海浩輔が、夏目漱石を藤原啓治が担当。日本の誇る二大イケメン文豪を、渋く、時には愛らしく演じています。更に、突き抜けた潔癖症・泉鏡花を石田彰が、ただの変態・谷崎潤一郎を遊佐浩二が担当。そして、編集者として近藤孝行が登場。この編集者、彼らにいたぶられるかわいそうな若手の役回りです。
第2巻「文豪失格」では、憂鬱すぎる文豪・太宰治が登場。CVは櫻井孝宏。そして、文学界のアイドル・中原中也を岡本信彦がヤンキー感たっぷりに演じています。ロリコンとして描かれる川端康成には小山力也。童貞でシスコンでアキバ系な宮沢賢治として中井和哉が登場。こちらでも近藤孝行の編集者が登場しますが、第1巻とは打って変わってサディストです。追い回される文豪たちの泣き顔が目に浮かぶ、スピード感のある展開です。
新作第1弾「不良文豪とホスト」は2013年3月29日に発売されたばかり。
谷崎潤一郎と中原中也にくわえ、新登場のハジケすぎる天才・坂口安吾を立花慎之介が担当。あらすじとしては、どうやら安吾と中也がお金の事情でホストを務め、客として訪れた谷崎と遭遇する模様です。
●気になりすぎる内容
このCDに登場する文士の共通点は、個性的、という事。
キャラはかなりデフォルメされており、谷崎潤一郎は女好きのど変態、太宰治は天然タラシのようで暗黒面を抱えております。しかし、まったくの嘘でもないのが面白いところ。
ドラマの設定には奇抜なものがあっても、意外にも違和感はありません。現代的な感覚を取り入れつつ、史実に基づいたエピソードが取り入れられています。例えばドラマのなかで中原中也と太宰治が酒場で遭遇していますが、これは実際に起きた出来事です。その店で中原が散々太宰に絡んだのも事実。また、太宰治が芥川龍之介を敬愛していたといったエピソード、これもまたまぎれもない事実です。
舞台は、現代の秋葉原や、天国であったりと、生前の時代はまるで無視。しかし、そんな荒唐無稽な設定のおかげで、実際には出会えるはずのなかった文士たちの交流が微笑ましい雰囲気で描かれています。
●密やかな文壇ブーム
そういえば、芥川龍之介の恋文が話題になったのも記憶に新しいですね。気難しい顔で文机に向かってばかりいたわけではない、文豪の人間性が今まさに注目されているのかもしれません。文豪というと思い切った天才か落第生が多く、東大主席の夏目漱石は前者の筆頭です。まさに文豪。しかし、近代に近づくほどアウトロー的雰囲気が漂ってきます。太宰や中原などは、その代表格でしょう。
文学女子にさらっと「文豪CD」についてリサーチしてみたところ、夏目漱石周辺で親交の深い正岡子規や寺田寅彦の登場が切望されているようです。
ほかにも、田端を拠点として育まれた室生犀星と萩原朔太郎の清新な友情や、川端康成と三島由紀夫の濃密過ぎる師弟関係や、宮沢賢治と学生時代の愉快な仲間たち「アザリア会」…というように、有名無名の文士を含め、文学界に萌えどころは多数あります。時代を遡れば、江戸時代には、松尾芭蕉と「蕉門一門」といった俳諧の「文豪」がいます。果ては戦国時代や平安時代にも遡ることができるでしょうし、海外なら、アルチュール・ランボーといった魅惑的な詩人など…素敵な「文豪」は無数に存在します。
また、近現代の日本の文壇には面白い人物相関図があります。その一連の師弟関係や交友関係がクローズアップされれば、歴女に継ぐ新しい種族「文女」が生まれるかもしれません。
どうやら「文豪」と人気声優と相性も悪くないようです。
有名声優による朗読CDや朗読アプリも増えていますし、通勤の行き帰りに美しい日本語を心地よい音声で楽しむのもいいのではないでしょうか。意外に知らない文豪の素顔。このCDを機会に、彼らの作品を読み、はまってみるのも一興でしょう。
※この記事はガジェ通ウェブライターの「小雨」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?
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