今回は神田知宏さんのブログ『IT弁護士カンダのメモ。』からご寄稿いただきました。
■ハイパーリンクと名誉毀損(弁護士 神田知宏)
一年前の高裁判例になりますが、最近請けた事件で使うことがあったので、記事にしておきます。
「ハイパーリンク(リンク)と名誉毀損」というテーマです。
端的に言うと、ウェブページに悪口を直接書くのではなく、悪口の書かれたウェブページへのハイパーリンク(リンク)を書いただけで名誉毀損や侮辱になるのか?という争点です。
この点、総務省の「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」「プロバイダ責任制限法検証に関する提言」(http://www.soumu.go.jp/main_content/000122708.pdf)の15ページあたりには、リンクだけでは発信者情報開示請求ができない、と記載されていました。そのため、プロバイダからも同様の主張がされていました。
審理の結果、東京高等裁判所平成24年4月18日判決は、「本件各記事が社会通念上許される限度を超える名誉毀損又は侮辱行為であるか否かを判断するためには、本件各記事のみならず本件各記事を書き込んだ経緯等も考慮する必要がある。」としつつ、「本件各記事にはハイパーリンクが設定表示されていてリンク先の具体的で詳細な記事の内容を見ることができる仕組みになっているのであるから、本件各記事を見る者がハイパーリンクをクリックして本件記事3を読むに至るであろうことは容易に想像できる。そして、本件各記事を書き込んだ者は、意図的に本件記事3に移行できるようにハイパーリンクを設定表示しているのであるから、本件記事3を本件各記事に取り込んでいると認めることができる。」として、結論としては、ハイパーリンクによる名誉毀損を認めました。
要するに、自分の意見の一部としてリンク先の記事を取り込んでいる場合には、リンクだけ書いたとしても、名誉権侵害や侮辱になる、ということだと読み取れます。
逆に、「取り込んでいない」ということであれば、リンク先の記事について責任を負わない、という可能性はあると思われます。検索サイトなどはリンク先の記事を取り込んでないということで、責任を負わない、ということになるのでしょう。
執筆: この記事は神田知宏さんのブログ『IT弁護士カンダのメモ。』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2013年04月16日時点のものです。
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