今回はRuccaさんのブログ『ルッカ*ルシカ ブログ』からご寄稿いただきました。
■「私だったらイヤ」から一歩抜け出すことへの気づき。
今日はこちらの記事を拝見して、いろいろ思うことがありました。内容はユニクロのセール車内広告デザインの、まるでスーパーのチラシのようなダサさ(下記写真参照)への批判に対しての記事です。
「人のデザインを私たちはどう評価し学ぶべきか」 2012年12月03日 『Hideki Akiba Private Blog』
http://akibahideki.com/blog/cat5/post-23.html
先日ユニクロの電車内中吊り広告や新聞広告のデザインが話題になりました。文字だらけのレイアウト、赤をベース、黒と黄色という昔のスーパーのチラシ風のテイストで、「不快感しか感じられない」「センスを疑う」といった、どちらかというと批判的な意見のほうが目立ったようにも思えます。
またそんな声の主が、デザイン関係あるいはライターなど、私と近い業界にいる人の声が多かったことも気になりました。
人のデザインを私たちはどう評価し学ぶべきか | 秋葉秀樹個人ブログ より写真と本文を引用
「人のデザインを私たちはどう評価し学ぶべきか」 2012年12月03日 『Hideki Akiba Private Blog』
http://akibahideki.com/blog/cat5/post-23.html
『Hideki Akiba Private Blog』
http://akibahideki.com/blog/
はじめに…私は専門学校を卒業して約5年グラフィックデザイナーや文房具の商品プランナーをしたのち、アパレル会社に転職して13年売り場で働いて、そのあとまたDTP&webデザインの勉強をして、家電量販店の販促ツールデザイナーから再びはじめるようになり、フリーになって現在に至っています。
最初のデザイナー時代は小売の販促広告をつくる仕事が多かったので、転職後売り場勤務になっても、「自分は広告の経験者なのよ」と店のPOPや載せてもらう広告などに口を挟むことが多かったです(←けっこうヤな奴)
ある年異動になり、店長として某老舗百貨店の中のショップに行く事になりました。
異動先の店舗はその百貨店内でも売上が良かったため、毎回セールの時に百貨店側も協力してくれていて、ウチの店だけのセールハガキを出してくれることになってました。
注・写真はイメージです。この百貨店ではありません
ただ、百貨店が出すそのハガキは、官製はがきにテキストだけのモノクロで、しかも輪転機印刷だから刷りもキレイじゃない、なんというか・・・地味というより「ダサい」のです。同窓会のハガキのような感じ。
内容も「顧客の皆様に感謝を込めてうんちゃらら~」の定形なあいさつ文の後に、コットンブラウス9800円→7800円、など価格や割引率が数行書かれただけのもの。
一応ファッションブランドなのでイメージってものがあるし、会社からも顧客には写真の載ったキレイなセールハガキを出すし、二重になるからダサいハガキはやめた方が逆にいいんじゃないかな?と思ったのですが、ずっとその百貨店で働いてるスタッフさんが、
「いや店長、このハガキが強いんですよ!」
というのです。
なので、まあ経費は百貨店持ちだし別にいいか、と、そのダサいハガキも一緒に出しました。できるだけ手書きのコメントも添えてみて(でもこれは会社からのも同様)。
そしたらなんと、DMの帰りが良かったのは圧倒的にそのダサいハガキの方だったのです・・・!
たくさん届くアパレルブランドからのきれいなセールハガキの中で、テキストだけのその地味でダサいハガキは逆な意味で目立ったのだろうか?
さらに、そのダサさがウチのブランドでも特にその百貨店で買い物する客層(老舗だけどセール好きのお客さんが多い)にアピールしたのだろうか?
・・・そんなわけでデザイナー時代、かっこいいもの、センスいいものが正義だと思ってた自分にとって「売り場」は、「お客さま」とは自分と同じ価値を感じる人ばかりじゃないというのをこれでもかというくらい学べた場でした。
たとえば「接客」
私自身は買い物中に店員に話しかけられるのは苦手でほっといてくれと思う方なんだけど、店舗に来るクレームって「接客がしつこい」よりも「店員が話しかけて来なかった」の方がずっと多いんですよね。
そして「しつこいと嫌われる」と思いがちだけど、「もうひと押し」があったほうがモノは売れる。「もうひと押し」されてつい買ってしまってもそれで不満を持つお客様ってそんなにいない。
(まあこのへんの呼吸は販売員のスキルにもよるけれど。本当にデキる販売員とはお客様が買いすぎちゃっても後悔させない人だと思う。)
セールの前は顧客に電話をかけるんだけど、きっと100人中100人がセールスの電話はうざいと感じると思うし、だからそれが本当に嫌だったんだけど、実は掛けてみると「あら、いい情報をありがとう!行くわね!」といってくれる方も少なくないのです。
マイナスじゃないかな?とも思える「文字だらけのダサいハガキ」も「ちょっとしつこめな接客」も「セールのおしらせ電話」も、きちんとターゲットして心をこめて行なえば、そう嫌われることもない上に、実はとても効果的である・・・のですよ。
しつこいのは嫌い。セールスはうざい。広告がダサいのはダサい。
これらをイヤだと声を出す人はとてもとても多いんですけど・・・実はそうでもない。これは私が多分ずっと「お客さん」の立場でいたら絶対に気が付かなかったことだと思いました。
販売員時代は自分がまたデザインをするとは夢にも思ってなかったのですが、売り場でこの「自分のようなタイプ」が唯一絶対的な「一般」ではない、というのを学べてきたことはとても大きかったと感じています。
「私だったらイヤ」はそんなに「絶対」ではないということ。
かっこよくセンスよくお洒落なデザインはステキだけど、それが絶対正義ではない。
大切なのは情報をその情報が欲しい人にわかるように届けること。「欲しい人は誰か、どんな人か、その人はどんなものをまず見る人か」を知ること。
そういう目線をたくさん持つことが、デザインに大切なことなんじゃないかなって。
ユニクロの先の広告は「美しい」とはとても思えないけど、あれを私は「予算がなくて安いところで作った」などとは全く思えないです。狙ってだと思います。あれはさっきの百貨店でいう「ダサいハガキ」と同じなんだろうなと。(しかも計算された)
自分ができるモノに対する評価とは、自分が過ごしてきた時間の中で得た経験の中から初めて評価できます。「好き」とか「嫌い」とか「カッコいい」とか「ダサい」とか、その多くは自分の経験でしか得られなかったことと言えるでしょう。
もっと多くの年齢層か感受するシチュエーションを考えてみると私にはとても難しい話です、しかし考えることをやめてはいけないように思えます。
もう表面的にしか見えない評価、それはデザインの評価ではないと思うんです。
「人のデザインには何らかの因果性がある」ということをもっと人から学ぶとするか。と。
人のデザインを私たちはどう評価し学ぶべきか | 秋葉秀樹個人ブログ より引用
これ、とても共感します。
自分はイヤだと思うこと、自分はダサいと思うこと、その美意識は大事。でも、自分のそればかり基準にしてデザインすると、大切な中身を届けるべき人へ届けることができなくなってしまう。
今デザインの仕事してて、販売の13年は全く回り道だったかと思うと実はそうでもなかったな、と思うのはこんな時かも。
「自分はこんなサービス要らない」「自分はこういうのは流行らないと思う」
新しい何かを作る時「自分」の価値観を基準にして考えすぎると、お客さんを見失うということはデザインだけでなく他にもいっぱいとあると思う。
「顧客目線」って簡単に言うけど実はとっても難しいことですよね。
このユニクロの広告、いろいろ教えてくれてるなと思います。
●参考サイト
秋葉秀樹さんのブログ→
『Hideki Akiba Private Blog』
http://akibahideki.com/blog/
ユニクロの広告に対するまとめ→
「どうしたユニクロ!?ひどすぎる新聞広告に心配の声まで!まとめ」 2012年11月22日 『NAVERまとめ』
http://matome.naver.jp/odai/2135355820375056401
●参考図書
デザインの考え方について。私がもう何回も読んでいるおすすめの本です。
「デザインセンスを身につける (ソフトバンク新書) [新書]」 ウジ トモコ(著) 『amazon』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4797367075/
相手の立場になって考える「おもてなし」「ホスピタリティ」について。デザインを作る人にも必要な心構えのヒントがたくさんある本です。
「ディズニーと三越で学んできた日本人にしかできない「気づかい」の習慣 [単行本(ソフトカバー)]」 上田 比呂志(著) 『amazon』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4844371339/
執筆: この記事はRuccaさんのブログ『ルッカ*ルシカ ブログ』からご寄稿いただきました。
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