あの革命戦士・長州力選手が素人をリングに上げてプロレスで対戦する――そんな一報を受け取ったガジェット通信編集部。筆者はプロレスファンとして複雑な心境になりました。かつてはインディー団体を敵視し、練習場へ試合を直訴に来た大仁田厚選手に「またぐなよ」とフェンスをまたがせなかった長州選手が、素人をリングに上げ、さらには自分が対戦するなんてことあるはずがない。実際に自分の目で確かめるべく後楽園ホールへ取材に向かった筆者は、自分の認識の間違いに気づいただけでなく、一流の“プロレス”を目撃することになりました。
この企画は、『キリン のどごし』が日本中から夢を募集し、それをかなえる模様をCMで放送する、というもの。3万5000人の応募の中から選ばれた夢は、37歳のサラリーマン、寺島力(つとむ)さんが書いた「プロレスラーになってリングに立ちたい」というものでした。
「素人が記念にリングに上げてもらってプロレスごっこをするんでしょ?」と思ったら、それは間違い。ずっとプロレスファンだったという寺島さんは、
・20歳までプロレスラーを目指し、格闘探偵団バトラーツのジム生だったこともある
・試合までの1か月半、カズ・ハヤシ選手の指導のもと特訓を積む
と、ファンなら思う「生半可な素人が神聖なリングに足を踏み入れてはいけない」という気持ちに忠実に、苦しい練習に耐えてこの日を迎えたのです。
12月15日、全日本プロレスファン感謝デーが終了した後楽園ホールで試合は開催されました。試合前には寺島さんのプロフィールが紹介される“煽りV”を上映。上映後には大きな拍手が起こり、寺島さんの挑戦を温かく迎えるファンの姿が見られました。
この日の布陣は豪華。実況はフリーアナウンサーの福澤朗さん、解説は、先ごろ引退を発表した渦中の人、小橋建太選手が務めます。「後楽園ホールに、ジャストミーート!」と、かつての全日本プロレス中継で人気となったフレーズを披露する福澤さん。小橋選手には、会場から大きな「小橋」コールが巻き起こります。
そしてスーツ姿で寺島力“選手”の入場。セコンドには藤波辰爾選手、武藤敬司選手、カズ・ハヤシ選手と、こちらも豪華な布陣でリングに上がります。
そして長州選手の入場……と思いきや、花道に現れたのはみこしに乗った“長州小力”。会場は大ブーイングで迎えますが、そのまま試合が始まってしまいます。
ゴングが鳴ると同時に、小力さんにチョップを見舞う寺島選手。小力さんはロープに走るもののフェイントで、まともに試合をする様子がありません。寺島選手のドロップキックで場外に落ちた小力さんは、そのまま会場から逃げ去ってしまいます。……まあ、お約束というやつですね。
すると会場に『パワーホール』が流れ、本物の長州力選手が入場! 会場が一気にヒートアップします。
コールを受け、いよいよ寺島さんの夢がかなう本当の試合が始まります。ロックアップからチョップの連発、さらにドロップキックまで披露し、長州選手をコーナーへ追い詰める寺島選手。
形勢はあっという間に逆転し、ブレーンバスターからストンピングでカバーに入る長州選手。寺島選手はカウント2で返しますが、サソリ固めを受けて絶体絶命の状態に。技を解いた長州選手に向かって下からチョップで応戦し、さらには掟(おきて)破りの逆ラリアット。長州選手は冷静にリキラリアットで反撃し、寺島選手から3カウントを奪って試合は終了します。
試合後のインタビューで「生きて試合を終わることができたー!」と叫ぶ寺島さん。長州選手との対戦は「怖かったです」と心境を披露しましたが、「病気をかかえて一生戦っていかなくてはいけない3歳の息子に、戦う父親の姿を見せたかった」と、この企画に挑戦した本当の理由を話します。
「夢をしっかり持って、夢はかなうということを証明しましたよね」と健闘をたたえる長州選手。小橋選手は「寺島さんの気合の入ったチョップ、気合の入った顔、ナイスファイト。いいチョップでした」と寺島さんのチョップを絶賛。指導にあたったカズ・ハヤシ選手は「見てるこっちが感動しちゃいましたね」と涙を見せます。
ここだけの話、筆者もちょっと涙が出てしまいました。プロレスは、対戦に至るまでのストーリーがないと思い入れを持って試合を見られず、単発の試合は成立しにくいものなのですが、たった1晩の1試合のカードが、立派にプロレスとして成立していました。いいプロレスを見せてもらいました、寺島さんありがとう! 筆者も夢を持って戦っていくぜ! このCMは1月に放映を予定しています。夢を持ったすべての人に必見! 見逃すなコラッ!
キリン のどごし
http://www.kirin.co.jp/brands/nodogoshi/index.html
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