ドリパス 五十嵐さん

ユーザーからリクエストを募り、チケットが一定数売れた作品を劇場で公開するサービス「ドリパス」。シネコン拡大によりスクリーン数や公開作品数が増加する一方で、シネコン以外の一般の映画館が減少する中、映画の新たな在り方として現在注目を浴びています。

「あの作品を劇場で観たい!」というユーザーからの想いからリクエストされる為、ドリパスを使って上映されるのは基本的に旧作。しかし、今回初の新作映画として6/15(土)公開の『マーヴェリックス/波に魅せられた男たち』が上映されます。

『マーヴェリックス/波に魅せられた男たち』は、カリフォルニアに現れる世界最大級の大波「マーヴェリックス」に弱冠16歳で挑み、22歳の若さで他界した天才サーファー、ジェイ・モリアリティの実話を基にした物語。『オペラ座の怪人』のジェラルド・バトラーを主演に迎え、サーフィンに人生をかける男達を描いています。

今回は「ドリパス」の運営会社、株式会社ブルームの代表・五十嵐壮太郎さんに、サービス立ち上げに至った経緯から、『マーヴェリックス/波に魅せられた男たち』の感想まで色々とお話を聞いてきました。

――まず「ドリパス」を立ち上げた経緯から教えてください。

五十嵐:元々映画館が好きでよく行っていたんですけど、ある日ふらっとシネコンに行った時に観たい作品が無くて。それで近くのシネコンに移動したら、上映しているラインナップがほとんど一緒だったんですよね。「何で映画館ってオンデマンドじゃないんだろう」とう疑問に感じたのが始まりですね。オンデマンドはビデオサービスだけじゃなくて、映画館もオンデマンドで良いじゃんと。

――五十嵐さんがユーザーとして感じたことが基になっていると。

五十嵐:そして、前職を辞めて時間に余裕があった時に、劇場関係者の方とお酒を飲む機会があって、当時業界知識全くゼロの中で「映画館で上映するプログラムを観客が決めるのが面白いのではないか」というアイデアをぶつけて、本当にやろうという話になって、帳尻あわせで会社を作って……みたいなスタートでしたね。

――そこまで映画館を愛する理由、五十嵐さんと映画館の原体験はどんなものなのでしょうか。

五十嵐:今でも鮮明に覚えています。僕は小学生の時にパリに住んでいて、現地校に通っていました。日本人が周りに全然いなくて、黄色人種だっていうことで文化の壁を強く感じる経験をしました。そんな中で仲良くなるきっかけをくれたのが漫画やアニメで。『週刊少年ジャンプ』がとても人気があったんです。

そして小学2年生の時に『AKIRA』がパリの劇場で上映されて、親に連れていってもらったのですが、上映後スタンディングオベーションだったんですよ。普段は日本人だという事で虐げられていたからこそ、その光景が本当に誇らしくて、自然と涙がこぼれていたのを今でも覚えています。映画に助けられたから、だから映画に恩返しする仕事がしたいし、特に大勢で感動を共有出来る映画館が好きなんです。

――だからこそ、今ミニシアターがどんどん閉館したり、上映作品のバリエーションが限られていたり、映画館の衰退を危惧しているのですね。

五十嵐:このまま変わらないとダメになってしまう方向に進んでいると、僕は考えています。よくも悪くも人類は文明の発展から逃れられないと思うんです。ただ、その中でも「映画」という心の栄養は、これからより需要は増えると信じてるんです。だから映画館って何だろうと今一度考えて、変わっちゃいけない部分もあるけど、時代と共に変わるべき事もある。

――そこでドリパスという新しい仕組みで映画館を盛り上げようと。

五十嵐:ドリパスって観たい人が一定数集まってから上映するから、劇場にとってもリスク分散になります。「いざ公開はじめて観客が一人もいない」っていうことも構造上ありえるし、そうなると誰もハッピーじゃないじゃないですよね。だから、事前に観客がちゃんと集まる事が決まった状態で映画を上映しましょう、と流通を逆転させたわけです。

サービスを立ち上げたばかりの頃は、長い映画興行の歴史の中で、これまでは劇場支配人だったりオーナーが上映する映画を決めていましたから、観客が上映作品を決めるというスキームをサービス化したのは今までありませんでしたので、今でもすぐには賛同されない方もいらっしゃいます。でも、観たい人に観たい作品をオンデマンドで届けるのは本来の映画館の姿だし、映画館に行く人を増やそうという想いは映画に携わる人全員一致なので、最後には理解してもらえました。

今ってインターネットが発達しているから、映画ファンは映画が欧米で公開された時点で「この作品面白そう。いつ日本に来るんだろう、地元にも来て欲しいな」ってチェックしていますよね。そんな方々に「あなたたちが望めば映画を観ることが出来るんですよ」って道筋を与えたい、それは、普通の興行形態じゃなくてドリパスだから出来る事だと思っています。

CHASING MAVERICKS

――『マーヴェリックス/波に魅せられた男たち』が初の新作上映となりますが、実際に映画をご覧になられていかがでしたか?

五十嵐:ドリパスは基本的に旧作上映ですけど、やはり新作をみんなで観にいくという体験は素晴らしいものだし、実現出来て良かったです。そしてこの映画がとても良い作品だった。起業したての時を思い出しました。

サーフィンを描いた作品なんだけれども、人間の生きる指針がこめられていて、サーフィンを知らない人でも楽しめますね。登場人物達はサーフィンが好きすぎるあまり、時折家族を蔑ろにしてしまうダメな部分もある人々なんですが、好きすぎるからこそ、サーフィンでは偉業を成し遂げていく。僕も映画館が好きで「こうなればいいな」って思った事にまい進して今があるので、駆け出しの時を思い出し感動しました。夢を実現させた経験のある人、そして今夢を持っている人にオススメしたい作品です。

――五十嵐さんの次なる夢、ドリパスでの今後の展望を教えていただけますか?

五十嵐:映画を観る人って、「スピルバーグの作品は全部観る」といったコンテンツファンと、失恋してしまったから「自分の気持ちに近い映画を観よう」という風に気分で映画を観る人と、「なんとなく世間で話題だから」というコミュニケーションのネタとして観る人と、大きくわけて3パターンの人がいます。

ドリパスはありがたい事にコンテンツファンの皆さんにはご活用いただいているので、今後は気分で映画を変える人々や、コミュニケーションのネタとして消費する、特に1年に1本映画を観るといったライトユーザーの皆さんに便利な仕組みを作りたいです。

ライトユーザーの方は「この作品に2時間と1,800円をかける価値があるか」と天秤にかけて映画を選びます。そうした時に確実に「求めている読後感」を与えられる作品を提案出来たら、もっと映画館に訪れる人が増えるのではないかと。例えば『マーヴェリックス/波に魅せられた男たち』でいうと、ポスターだけでは伝わらない情報がたくさんあって「サーフムービーだと思って観たら生き方を考えさせられた」という良いギャップを、映画を観る前の方に可視化出来たら素敵ですよね。今はどうやれば一番便利なのか、映画館が盛り上がるのか、そんな事を考えています。

――新しい仕組み、とても楽しみにしています。どうもありがとうございました!

株式会社ブルーム代表取締役社長/CEO 五十嵐壮太郎さん

1982年生。東京都出身。幼少期、フランス、ベルギーと海外での生活を送る。

小学校卒業と同時に帰国。2006年、一橋大学経済学部卒業後、株式会社博報堂に入社。

営業職として、大手出版社、新聞社、通信キャリア等担当。コンテンツビジネス、

企業の広告戦略立案から実施まで幅広く担当する。

2010年3月、株式会社博報堂を退社。同月より、音楽活動と並行で起業の準備を進める。

2010年7月、株式会社ブルームを設立。代表取締役に就任。

ドリパス

https://www.dreampass.jp

株式会社ブルーム

http://www.blue-m.jp [リンク]

マーヴェリックス/波に魅せられた男たちhttp://www.disney-studio.jp/movies/mavericks/ [リンク]

6月15日(土)ヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル池袋ほか全国ロードショー

監督:カーティス・ハンソン 『L.A.コンフィデンシャル』/マイケル・アプテッド『ナルニア国物語/第3章:アスラン王と魔法の島』

出演:ジェラルド・バトラー、ジョニー・ウェストン、エリザベス・シュー、アビゲイル・スペンサー

配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン Disney-studio.jp/mavericks/

アメリカ映画/カラー/ Chasing Mavericks 上映時間:1時間56分  全米公開:2012年10月26日

© 2013 Twentieth Century Fox Film Corporation and Walden Media, LLC. All Rights Reserved. 

<ストーリー>
16歳の高校生ジェイ・モリアリティは、カフェで働く母親と2人暮らし。彼は、世界最大級の大波として知られる≪マーヴェリックス≫が、自分が暮らすサンタクルーズから近くに出現することを知り、隣に住む伝説的サーファー、フロスティ・ヘッソンに協力を求め、大波を乗りこなすテクニックとスピリッツを教えてもらうことになる。大波を制するには強靭な体力や技術だけではなく、自然と向き合い死の恐怖とも対峙し、怪物のような大波に挑んで行く強い心が必要だ。この不可能に近い挑戦に二人三脚で乗り出したジェイとフロスティの間には、固い絆と父と子のような友情が芽生えて行くのだった。幼なじみで、のちにジェイの妻となるキムとの淡い恋、シングル・マザーとしてジェイを支える母親との心の繋がり、さらにはフロスティの家族を襲う悲劇など、様々な人生模様を紡ぎながら、ついにジェイが≪マーヴェリックス≫に挑む日がやってきた・・・。


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