今回はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。
■余裕とは効率の悪さ
これまで何回かのエントリで述べてきたこと。それは利益率の低い産業に力を入れないと、景気は回復しないということ。IT産業など急成長している産業は派手で目立つが、ハイリスクハイリターンな産業でもある。
変化の乏しい、ある意味停滞してる第1次、第2次産業で手堅く稼ぐことで、ハイリスクハイリターンな産業に投資できる。食料や資源、生活必需品などは景気が悪くても買わないわけにはいかない。
景気が良い時に大儲けできない代わりに、景気が悪くても需要はさほど低下しない。一方IT産業などは景気の波をもろに受ける。日本はハイリスクハイリターンの産業に偏りすぎたから、景気悪化に苦しんでいる。
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「失われた20年で日本人が失ったのは「余裕」」 2012年12月18日 『狐の王国』
http://d.hatena.ne.jp/KoshianX/20121218/1355828380
このブログ主は精神的なものを「余裕」といっているようだが、余裕というのは効率の悪さを許由することだ。利益率の低い産業を「もっと儲かる産業に注力しよう」と、衰退させてしまった。効率のいい産業はバブルのように景気のいい時は大きく儲けられるが、不況の時はもろい。
つまり「余裕を失った」というのは、精神的なものにとどまらず、産業の構造の変化でもあるのだ。他のエントリでも述べたが、金融立国として脚光をあびたアイスランドは、不況に耐えられなかった。効率の高さはリスクの高さでもある。
ところがどうもそれに気づいていなく、日本が不況なのは効率が悪いからだ、もっと効率のいい産業にリソースを集中させなければ、と考えている人が多い。これはもう逆効果。わざわざ事態をさらに悪化させているようなものだ。
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ハイリスク(ハイリターン)の事業というのは、ギャンブルと同じで余った金で行うぐらいでなければならない。一か八か生活費全額をギャンブルに投入したら、裏目に出た時目も当てられない。
いまのような苦境の日本が、一発逆転のような成長産業への投資をしても、景気は良くならない。成長性は低いが安定した雇用を生み出す産業こそが景気のカギを握る。
誤解しないでほしいが、将来の投資をやめろと言ってるのではない。未来の主導権を握るために、科学技術や教育に対する投資は重要。しかしそれと目の前の不況対策とはつながらないということ。個別に両方しなければならない。
第1次、第2次産業はその国の基礎体力であり、体力がしっかりしていればこそ、冒険に挑戦できる。少しぐらい失敗しても新たな冒険に挑戦できる。それを考えず、冒険ばかりやって「今度こそ一発逆転だ」とやってては、どんどん資産を食い尽くし、そのうち破産するだろう。
砂漠の国の王様が水道を見て「これは便利だ」と蛇口だけ買って帰るようなもの。水道の本体は水源地から延々と続くインフラ、そしてそれを建造できる経済力にある。
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今後日本に限らず先進国は停滞するだろう。それは先進国内部の問題ではなく、発展途上国が追いついてきて、先進国の役割を一部代替えできるようになったからだ。つまり発展途上国と先進国の境界が徐々になくなっていく。これはしかたのないこと。
ここでよく言われる話は、先進国は第1次、第2次産業を途上国に任せ、先進国しかできない産業に特化すべきという主張。これは俺からすればまったくの間違い。墓穴を掘るに等しい。これからは先進国も途上国も同じ土俵で競う時代になる。先進国の優位性は諦めなければならない。
一見、それは先進国の衰退に思えるかもしれない。農業や工業で途上国と同じレベルで競うことになるのだから、「先進国は衰退した」「文明のレベルが低下した」と感じるのも無理ないが、それは「途上国はレベルが低い」という先入観がもたらすものだ。
先進国のレベルが低くなったのではなく、途上国のレベルが上がったのだから、途上国と対等なレベルで競うことは恥ではない。
逆にそういう考え方に切り替えないと、効率のよい産業に邁進し、アイスランドの二の舞になって取り返しの付かないことになるだろう。冷静にならなければならない。同じ土俵で競って、勝つことが、これからは重要。
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日本だってかつてはそうだったよね。欧米から見れば、戦争で徹底的に叩きのめした日本が、いつのまにか自分たちを追い上げ、追い越そうとしてる。自分たちのほうが優位だと思っていたのに、いつの間にか並ばれている。1980年代に起こったジャパンバッシングはその結果なのだろう。今度は日本が途上国に追い越される番なのだ。
どの国も急激に経済が発展する成長期があり、それを超えると成長率は鈍化する。まあ人間と同じですな(笑)。10代後半に急激に成長し、それを超えると成長は鈍る。運命は受け入れなければならない。
しかしだからといって日本は負けるわけにはいかない。繰り返しになるが、これからは途上国と同じ次元で、競争し、なおかつ勝利する戦略が必要。
執筆: この記事はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。
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