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続々・幹から枝葉へ、枝葉から幹へ
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続々・幹から枝葉へ、枝葉から幹へ

2013-06-27 20:30
    続々・幹から枝葉へ、枝葉から幹へ

    今回はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。

    ■続々・幹から枝葉へ、枝葉から幹へ
    むかし「ニャロメのおもしろ数学教室」という本があった。「天才バカボン」とかを描いていた赤塚不二夫が、マンガで数学を解説した本だ。1981年の出版らしい。なかなか面白かったと思う。マンガだから読みやすいし。

    実際、大好評だったようで、シリーズ化された。「ニャロメのおもしろ宇宙論」「ニャロメのおもしろ生命科学教室」「ニャロメのおもしろコンピュータ探検」「ニャロメのおもしろ体の不思議探検」「ニャロメのおもしろ性教室」など。

    数学と宇宙論は非常に面白かった。できもよかった。しかしその後になるとだんだんと、面白くなくはないが、別に赤塚不二夫のマンガでやる必要ないんじゃね?と思うレベルだった。

    これはわりと一般的な評価で、何かの書評でも、このシリーズは最初に出たものほど完成度が高いと評されていたように思う。つまり後になるほど陳腐になっている、と。

       *   *   *

    で、その書評では、原因を、数学や宇宙論は難しいけれどその分、むかしから「入門者にどう解説したらいいか?」がよく研究されていて、赤塚不二夫のマンガもそれに沿った形で説明されているので、わかりやすいのだと、述べていた。

    当時なるほどなと思ったものだ。雑誌Newtonとかでも宇宙論とか数学はたびたび特集される。あらかた「これはこう説明するのがわかりやすい」というセオリーが完成されている。

       *   *   *

    こうして長い歳月をかけて研究された「入門者にわかりやすい説明」というのは、必ずしも実際に数学者や科学者が発見したプロセスとは一致しない。研究者たちが暗中模索の中、紆余曲折を繰り返して発見した法則が、一旦きちんと整理され、それをどう説明したらわかりやすいか?という観点から再び分解され、順序も並べ替えられている。それが入門者向けの説明だ。

    無駄な紆余曲折は省かれ、後日簡潔な説明方法が発見されたものは、そちらを採用することで親切設計になっている。その代わり研究者たちが苦労した生々しいさというのは削ぎ落とされてしまっている。

       *   *   *

    さて枝から幹への話。結論を先に述べ、相手の質問や反論に応じて説明を補っていくという状況だと、「わかりやすい説明」をしてしまう傾向がある。論者の頭の中にはすでに整えられ完成されたモデルがあり、それをできるだけ最小限の手間で簡潔に相手に伝えようとするわけだ。

    事実関係や論理的に証明可能な事柄ならそれでいいのだが、人間の思考の大半は、その正当性が証明できない。せいぜい「この考え方が一番妥当だろう」という程度。しかし「一番妥当」というのはかなり主観が含まれるので、相手はそう簡単には納得しない。あら探しだってやろうと思えばいくらでもできる。

       *   *   *

    一方で幹から枝の話。一冊の本を読むとか、直接会って互いの人生経験とかも交えながら会話するとかの場合、論者が紆余曲折の末にその結論にたどり着いた事柄が、説明の中に含まれるのではなかろうか。最初はこう考えて、一生懸命それが正しいことを証明しようとした。ところが何年かけてもできなかった。そんなある日…と。ある意味自分語り(?)。

    ネットを見渡してみると、そういう情報は少ないのではなかろうか。もちろんないわけではない。しかしそういうサイトはたいてい巨大なサイトで、長文の文章が何章にもわたって書かれている。つまり一冊の本と同じ。ある意味これも「テキストサイト」かもしれない。

    ブログやtwitterの時代になって、そういうサイトは比率的に減ったように思う。結論が手っ取り早く手に入るサイトが好まれる。「まず私がこの研究を始めたきっかけをお話しよう。それは20年前の…」とかいう出だしの文章を見ると、もうそれだけで大半の人はページを閉じてしまうだろう(笑)。

       *   *   *

    純粋なロジックで正当性が証明できないものについては、この「その考え方に至った経緯」の説明が説得力を持つのだと思う。同意できないにしても、「なるほど、それはそれで筋が通ってるな」という程度には相手を納得させるには、ロジック(因果関係)よりも、時系列が重要な気がする。

    A地点から出発し、B地点にもC地点にもたどり着ける場合、なぜ自分がB地点にたどり着いたのかは、ロジックでは説明できない。そこに至るさまざまな(偶発的な事象を含む)経緯を語って初めて伝えられるものがある。

    むろんそれは正しい証明にはならない。しかし考え方というのは、その正しさよりも、いかに多くの考え方に触れるかが重要。そもそも常に正しい考え方などほとんどないのだ。いや、いいかえれば、そういうものはあるけれど、それで解決できる問題というのは、とっくのむかしに誰かが解決してしまっていて、いま残っている問題の解決には、あまり役に立たない。

    うまくいく時もあれば間違ってしまう時もある、そういう扱いにくい「考え方」を、我々は場面場面で駆使していくしかないのだ。

    参考サイト:

    Amazon.co.jp:「ニャロメのおもしろ数学教室 改訂版」 赤塚 不二夫(著) 『amazon』

    http://www.amazon.co.jp/dp/486081407X

    執筆: この記事はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。

    寄稿いただいた記事は2013年06月24日時点のものです。

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