今回は竹内 健さんのブログ『竹内研究室の日記』からご寄稿いただきました。
※この記事は2013年08月03日に書かれたものです。
■シンガポールで見た、日本との産業政策の圧倒的な違い。長期的な戦略がなければ、産業の育成はできない。(中央大学教授 竹内健)
シンガポールの出張から帰ってきました。
車内から見る田園風景は本当に美しい。日本はいいなあと思う瞬間です。
今回の出張は国際会議の委員会でシンガポールに滞在したのは、実質1日だけ。
委員会の仕事以外にも、現地の大学の人と色々な話ができて良かった。
実はこのところシンガポールに呼ばれることが多く、3年連続で訪問しています。
シンガポールは半導体産業、特に回路設計はさほど強くないのですが、国策として強化しているようで、私も個人として呼ばれたり、学会を誘致したり。
そこで、旧知のエンジニアと再会。
以前は三星に居た韓国人で、アメリカの大学に留学してPhDを取った後にリクルートされて、今はシンガポールの大学の先生をしているとのこと。
シンガポールは元々、半導体の製造が強く、TSMC、グローバルファンドリーズやマイクロンなど、世界中の半導体メーカーの巨大工場を誘致している。
今後は製造に留まらず、今まで弱かった回路設計も強化するという戦略だそうです。
産業を育成する鍵は人材ですから、まずは、大学に抜群の研究環境を準備して、有力な教授をかき集めているらしい。
先ほどの人によると、アメリカのトップ10大学と同じレベルの研究環境。
そして、大量の博士学生を集めて、全員に奨学金を与える。
これは、アメリカの大学以上の好環境でしょうね。
日本との格差は歴然。
日本でも時々、政権や省庁の政策で、思いつきのように、数年間ある分野に予算がついたりします。
ただそれも、継続性は保証されず、政権が変わったりしたら、あっさり無くなります。
こういうやり方だと、優秀な人が海外から集めることは難しいし、日本人の学生だって信用してその分野に飛び込めない。
産業を育てるには、人を育てることから。
人を育てるには、10年単位の長期的な戦略、継続性が必要。
言っては悪いですが、行き当たりばったりの日本と、長期戦略に基づいて地に足つけて政策を実行するシンガポール。
彼我の差は圧倒的。
半導体に限らず、どの政策でも同じようなものなんでしょうね。
そういえば、赤道直下の非常に暑い気候なのに、データセンターでも世界の集積地になっています。
半導体+ソフトウエア+ITで戦略的に、世界中の企業、優秀な人材を集めているんでしょうね。
日本はどうするのでしょうかね。
きっと誰も戦略を考えてないから、ボトムアップで頑張るしかないのでしょう。
執筆: この記事は竹内 健さんのブログ『竹内研究室の日記』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2013年08月07日時点のものです。
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