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「常識」の構造
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「常識」の構造

2013-09-06 16:30
    「常識」の構造

    今回はメカAGさんのブログからご寄稿頂きました。

    ■「常識」の構造
    某プロブロガーの話で彼は「常識」とは別に「真理」があるという。これについてちょっと考えてみた。なんだかんだ彼の話はいい刺激になる。

    彼は「真理」と「常識」を個別に捉えているようだが、思うにそれは「常識の核(コア)」のように思える。人間の、というか生物の基本行動原理。数学でいえば公理のようなもの。そこから二次的にさまざまな行動パターンが生み出され、その一つが我々が「常識」と呼ぶものなのだろう。

    常識というのは、ある意味生物の進化と似ている。盲腸のようにかつて役立っていたが、現在は不要になってしまったものが残骸として残っていたりする。生物の進化は行き当たりばったりであり、目先の問題を最小限の修正でなんとかしのいできた。リチャード・ドーキンスは「盲目の時計職人」と呼んだ。

    よく言われるのが人間の目の構造。網膜の手前に視神経の束があるので、外からの光が網膜に到達する邪魔になっている。しかしこの目の構造は魚類の頃から引き継がれていて、いまさら変えられない。心臓が2心室の構造になっているのも、かつてエラ呼吸から肺呼吸に切り替えた時に、最小限の構造変更で済ませた名残だ。もし人間の体をいまゼロから再設計すれば、もうすこし効率良くなるだろう。

    コンピュータとて例外ではない。現在のキーボードの配列などどう考えても不合理。過去なんどか合理的な配列への切り替えが試みられたがすべて失敗に終わった。一度普及したものは容易には変えられない。2000年問題とかも。

    常識が不合理なのもそういうことだろう。

       *   *   *

    では常識のコアはどうだろうか。それは生物の本能と限りなく等しいものであれば、普遍性のある万人に(というかすべての生物に)共通のものが存在するといってもいい。

    それは個体の維持と種の保存。この2つであり、個体の維持というのは結局は種の保存のためだから、最終的には種の保存こそが生物の本能であり、常識のコアともいえる。地球上の生物はすべてこのために行動している。だからしばしば自己犠牲&利他的な行動をとるわけだ。

    人間も例外ではなく、自分の命も他人の命も基本的には重要ではない。種の繁栄こそが最終目的。むろん種の繁栄には個体の維持も必要だから、生物は自分や他人の命を守ろうとするが、それは二次的なものだ。

    よく勘違いしている人がいるが、自己犠牲や愛国心とかは、生物の本能に反しているという人がいる。でもそれは逆で、生物は個体よりも種の繁栄を優先しようとするのだから、これが本来の姿。むしろ近世の個人主義などの方が生物としては不自然。

       *   *   *

    某プロブロガーは「必要もないのに他人を傷つけるのはダメだ」という。これは常識よりも上位の存在の「真理」なのだという。俺から見るとこれはまだまだ常識のコア(生物の本能)の二次的産物に見える。

    種の繁栄のためには仲間同士で殺しあっていたら、基本的には不利だろう。だから人間は基本的には協調行動をとる。とはいえ一方で種の利益としてその方がプラスなこともある。生物は同種の間でもしばしば争う。人間が行う戦争などその最たるものだ。

    でもそれは長期的に見れば、種の繁栄に役だつのだろう。その環境において餌の量などで生存できる個体の数が限られるなら、同種で争い、強い個体が生き残るのが種としても有利。それによって今度は異種族間の競争に勝てるわけだ。

       *   *   *

    ということで彼の言う「真理」、俺の言う「常識のコア(=生物の本能)、はここまで基本部分にさかのぼるなら、確かに絶対普遍のものが存在するだろう。しかし彼の言うようなレベルは、まだまだ真理ではない。

    人間は、特に先進国の国民は、あまりにも恵まれた環境で生きているので、人間もまた生物の一つであり、生存競争を戦っていることを忘れてしまってると思うのだよね。地球上で生きられる個体の数は限られている。地球から取り出せる食料やエネルギーは無限ではない。となれば必然的にどの個体、どの種族が生き残るべきかという選別から逃れられない。人間社会が競争と弱肉強食を基本原理に成り立っているのは、生物としての行動様式を反映したものだ。

    彼のいう「必要もないのに」というのは、単に「自分にとって」必要もないのに、という近視眼的な視点。村や国家、そして人間という種、のためにその争いが必要かどうかの視点を持つべき。

       *   *   *

    一口に生存競争と言っても、どうすれば種の利益を最大化できるかは、非常に難しい。汎用的な戦略はないといっていいだろう。ある種が有力な戦略をとったとすると、他の種はそれに対応して戦略を変えてくるだろう。そうなると最初の戦略は有効ではなくなってしまう。相手は生物だけではない。人間が地球環境を自分の都合のいいように変えてしまったら、回り回って人間にとって都合が悪くなってしまったりする。そうなったらまた戦略を変えなければならない。

    果てしない試行錯誤、それが生存競争の本質。その中で場当たり的に編み出されたのが「常識」であり、不合理で矛盾だらけなのは、当然なのだ。生存競争を勝ち残るための一貫した「正しい」戦略などないのだから。

    執筆: この記事はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。

    寄稿いただいた記事は2013年09月04日時点のものです。

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