最後にふとんを買ったのはいつでしょうか? そんなこと覚えてないという方がほとんどでしょう。筆者もその一人。今回は生活に密着しているのにあんまり気にしたことがない“ふとん”を作る現場に突撃して、羽毛ふとん職人たちの“愛”を取材してきました。ふとんの品質は“愛”で決まるのかも?
●東京西川の羽毛ふとん工場を見てきたぜ!
羽毛ふとんといえば東京西川。今回はその東京西川の羽毛ふとんを、原材料となる水鳥の原毛から暖かな眠りを提供する製品までを一貫生産で作っている、西川レベックスの宇都宮工場へお邪魔しました。
ここでは、まず水鳥の原毛が運び込まれます。原産地はポーランドやハンガリーなど、約10か国。ヨーロッパでフォアグラなどとして食べられる鳥の副産物として羽毛が大量に日本へ来るそうです。この原料からふとんまでを、一貫生産しているのは業界でもめずらしいとか。
海を越えてやってきた原毛が、私たちがいつもお世話になっているふとんになるまでは、いくつかの工程があります。簡単にいうと、入荷したての原毛を、検査して、洗って、検査して、選別して、加湿乾燥して、また選別して、検査して、検査して、検査して……。
原毛は原産地できれいにしているものの、不純物もいっぱいありますし、その中から最上質の“ダウン”を、より分けなくてはなりません。普通なら数回洗浄→検査→選別すれば業界基準は十分クリアできます。しかし、東京西川は独自の厳しい基準を持っており、さらに東京西川だけの“フレッシュアップ加工”をするのがポイント。では、その工程を見ていきましょう。
第一のステップは「洗浄」。まずはゴミを飛ばす“除塵機”を通します。
除塵機を通すと、きれいに見えた原毛から大きなゴミが取れます。このあと洗剤を使って洗うと、においの元になる油脂がほどよく抜けます。
第二のステップは「検査」。普通は8回くらいしかしないすすぎを西川は約10回もやります。
その理由は、一般的に業界では50cmのシリンダーに排水を入れて透明度を測るところ、東京西川では、2倍の100cmのシリンダーを使って透明度を検査するため。このためすすぎの回数が多くなり、しっかり洗うことでにおいや、いたみの元になる有機物を少なくなるように工夫しています。
ずらりと並ぶ特製の機械。静電気でこびりつかないよう、木でできているものが多いです。
第3のステップは「選別」。機械には3か所の窓があり、選別された原毛を目視で確認が可能。下から風を送り、軽い上質なダウンだけが選別されていきます。
窓を開けると粉雪のように舞うダウンが。
ここまでが原毛からダウンをきれいにする「1セット」。市販されているふとんの中には、ここまででふとんに詰めているものもあるようですが、東京西川はなんと、さらに東京西川だけの“フレッシュアップ加工”をします。
蒸気での加湿、乾燥、冷却をすると、縮こまっていたダウンのつぼみが開き、より大きな“満開”のダウンになります。大きくなるということは、ふとんにした際にふっくらとし、暖かみを逃がさないということ。この状態にして最後にもう一度、上質なダウンをふとんに使うために選別をするのが東京西川の特徴です。
フレッシュアップ加工すると羽毛がふっくらします。同じ重さでも加工前と比べて加工後の羽毛はボリュームがアップ。
ここまでの工程で、入荷原毛から約20%ものゴミを取り出すことができました。残るは上質なダウンのエリートたちです。
●品質検査は人の手と目できっちりチェック
検査もきっちり人の目によって行われます。いままでは機械が連なる“工場”の雰囲気でしたが、ここは一気に“研究室”っぽく。ここでは“組成混合率検査”が行われています。これはサンプルとして取り出した3グラムのダウンを人の目でより分け、東京西川の厳しい基準をクリアしているかをチェックします。
その他にもかさ高性検査、洗浄度検査、ダック含有率検査、さらにはニオイ検査まで。これらの検査を精密機械と人の手で行います。
3グラムのダウンを人の目でより分けます。
厳選された羽毛は水に浮き続けます。しかも水についていた表面を触っても、吸湿しながら放湿しているため、さらさらです。このように羽毛は保温性だけでなく、湿気を吸って放湿する機能にも優れた天然のエアコンと言われる素材なので、掛けふとんの素材に適しています。
●最終工程はまさに職人技――そして注目は“ハンコ”?
ここまでの工程をクリアすると、やっと「東京西川印の羽毛」を名乗れます。それも、責任を持った形で――。別工程で縫製されたふとんはマス目のように区切られていますが、東京西川のふとんにはここにも工夫があります。
ここからは雰囲気が変わり、手を動かす職人の出番。
長年羽毛ふとんを使っていると、首回りだけ羽毛がなくなって、端っこに寄ってしまうという経験はないでしょうか。これは、ふとんの“マス目”の間にあるトンネルから羽毛が移動してしまい、そこだけ寒くなってしまう、なんてことがおきるため。東京西川はそのトンネルを工夫して、マス目を羽毛が移動しないように、複雑な縫い方をしているのです。
この方法は東京西川の秘伝、ソリッドステークキルトと呼ばれ、もちろん特許取得済み。
この工夫されたトンネル、順番にマス目ごとに充填するのは熟練の工員。掃除機のようなノズルから、一定量ずつ羽毛が充填されています。東京西川ふとんの最新の製品では、暖かさを保つために表と裏で上下のマス目の数が違う2階建てのものも登場。もちろん手間はかかりますが、暖かさのためなら苦じゃないとのこと。羽毛はその日の湿度により、充填する量も調整しているとか。まさに、職人技です。
吹き込み口を感覚で合わせていく姿はまさに職人技。
この後、口ぬい、検品、検針を行い、無事羽毛ふとんとして完成しました。このふとん一枚につき約100羽分の水鳥が使われているそうです。積まれたふとんを見ると、そこには大きな説明書と、目立つ“タグ”が貼られています。このタグには、西川産業の大きなロゴに、縫製した人、検査、検針をした人のハンコが押されています。これが東京西川の“責任”。この情報とタグについている管理番号を見ると、このふとんがいつ、どこで、誰が作ったのかだけでなく、原材料はいつ、どこから輸入されたのかまで追うことができます。
他のふとんだと、社名すら書いてないことも多いのだとか。1つの工場で原料から製品まで、一貫生産する東京西川ならではの自信がこのタグに表現されています。ところで、あなたのふとん、タグはありますか? 今日帰ったら寝る前にぜひチェックしてみて下さい。
責任の証し、東京西川の“タグ”にはかかわった職人たちの名前が記載されています。
あとは出荷を待つばかり。この工場では1日1000枚~1500枚の羽毛ふとんが生産されています。
●あふれるふとん愛は「暖かな眠りを提供するために」
今回、工場を案内してくれたのは、西川レベックス販売部長の中村富夫さんと、西川産業 営業企画室の佐藤功之介さん。中村さんはこの工場を熟知しているだけでなく、とにかくダウンを愛し、ふとんを愛し、眠りを愛する人でした。説明にも力が入り、「このふとんであたたかな眠りを届けたい」という熱意がビンビン伝わる工場見学でした。
実は中村さん、あまりに眠りに傾倒するあまり、自費で滋賀まで行き、睡眠学講座を受講、眠りに関するきっちりとした資格まで取るほど。筆者がちょっと不眠症なのをアピールすると、「え、眠れないの? もしかして寝る時間も不規則?」と取材そっちのけで相談に乗ってくれました。
筆者もそうなのですが、私たちは「ふとんを買う」ことにあんまり気をつかっていなかったのかなあと思います。そもそもふとんを買うだなんて、引っ越しや結婚などの大きな節目しかチャンスがないですし、忙しいとあまり考えずに値段だけで決めがちです。日本には寒暖差のある四季があり、湿度も高いことから汗をかいてもすぐに放出される天然のエアコンとしての羽毛ふとんが好まれます。日本人は世界で一番“羽毛好き”と言われているそうで、日本で創業447年を誇る東京西川の技術と愛にあふれた羽毛ふとんなら安心して買えるのではないかと思いました。
でもやっぱりふとんの良しあしが分からないや、という方も安心してください。東京西川は全国の寝具店やデパートに“眠りのプロ”“羽毛ふとんのプロ”がいます。ライフスタイルの変わり目だけでなく、眠りに自信がなかったり、ちょっとでも興味を持ったらぜひ、西川チェーンのスリープアドバイザーに相談して欲しいとのことです。おそらくそこにも、ふとんを愛し、眠りを愛する“職人”がいるはず。筆者も今度お話を聞きに行こうかな……と思うほど、楽しい取材でした。
参考リンク:
お近くの販売店|東京西川公式サイト
http://www.nishikawasangyo.co.jp/r/shops/
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