今回は奥山真司さんのブログ『地政学を英国で学んだ』からご寄稿いただきました。
※この記事は2013年10月26日に書かれたものです。
■韓国トップたちの怪しい「世界観」
今日の横浜北部は台風のせいで雨です。
さて、今回は最近色々と話題の韓国について少し。
その前にまず最初にお断りしておきたいのですが、私はいわゆる「嫌韓派」でもなければ「親韓派」でもありません。
すでにご存知の方もいらっしゃると思いますが、私は国際関係論でいうところの「リアリズム」という立場、つまり、「すべての国家は利己的である」という前提からものごとを分析するような教育を受けてきた人間であります。
そういうことなので、どうも日本以外の他国のことを「好き/嫌い」、もしくは「善悪」という立場で判断することにはあまり慣れていないんですが、これを前提として議論を進めていきたいと思います。
くどいようですが、私が専門で勉強してきた(古典)地政学では、国家の「世界観」、もしくは「地理観」というものが、国際関係の動きを現実的に見る時に非常に重要であるとされております。
最近つとに反日姿勢を強めている韓国ですが、この国の「世界観」、とくにそのリーダーたちが日本についてどのように考えているのかを、あるソースから仕入れました。
その前に、みなさんもご存知の通り、私はアメリカの戦略論の大家であるエドワード・ルトワックの中国論である『自滅する中国』という本を翻訳したわけですが(おかげさまで3刷行きました!)、この中の第16章が、近年の韓国の対外政策についての興味深い分析となっております。
このルトワックの韓国分析は重要なので、まずは目立った部分を書き出してみましょう。
●国家は普通は独立を尊ぶものだが、従属したがる国もある。それが韓国だ。彼らは中国と中国人にたいして、文化面で深い敬意を持っている。
中国の「マーケットの将来性」にもその原因がある。
● 極めて奇妙なことに、韓国は大規模な北朝鮮の攻撃を抑止するのは、グローバル規模の軍事力を持つアメリカの役目だと考えられており、実際に天安沈没事件や延坪島の砲撃事件にたいしても(死者が出たにもかかわらず)ほとんど報復は行っていない。
● つまり実際のところ、韓国政府は米国と中国に依存する従属者となってしまっている。米国には(北との)全面戦争への抑止力、そして中国には(北からの)一時的な攻撃にたいする抑止力を依存しているのだ。
● 現在のような政策を保ったままの韓国は、いわゆる「小中華」の属国として、しかも米韓同盟を続けたまま、中国による「天下」体制の一員となることを模索しているのかもしれない。
韓国が自国の安全保障のコストとリスクを受け入れず、かわりに従属者になろうとしているのは明らかだ。
● このような韓国の安全保障の責任を逃れようとする姿勢は、「日本との争いを欲する熱意」という歪んだ形であらわれている。
ところが日本との争いには戦略的に何の意味もないし、日本へ無理矢理懲罰を加えても、韓国側はリスクを背負わなくてすむのだ。
さて、私はこの部分を初めて読んだ時に、二つの点について疑問を持ちました。それが、
1. 従属したがる国もある。それが韓国だ。
2. 彼らは中国と中国人にたいして、文化面で深い敬意を持っている
という部分でした。
私は留学時代に韓国の同年代の人間と付き合いがあった経験から、上記(2)の「文化面で深い敬意を持っている」という部分については、今でも「ルトワックの分析はちょっと間違ってるかなぁ」と微妙に思っているところがあります。
しかし(1)の「従属したがる」という部分については、これは本当なんだな・・・と、あらためて実感したことがありました。
それは、今年の8月に韓国で行われた、「日韓次世代指導者交流」というイベントに関係者として参加した人物から、かなり信ぴょう性の高い情報を聞いたからです。
このイベントというのは、どの国でもやっている、国会レベルの議員同士の二国間の交流イベントであり、今年は日本の議員たちがソウルに訪問*1しております。
*1:「「第7回日韓次世代指導者交流事業」開催(ソウル)」 『日韓協力委員会』
http://www.jkcc.asia/3business/JKCC_bus_zisedai_7.html
ここに関係者として参加したある人物が、私に貴重な情報をいくつか教えてくれたのです。その場で彼が見たり聞いたりした韓国側の議員(しかもかなりの高官)たちの発言や態度などを要約すると、以下のようになります。
● 鳩山元首相の言ったような「日中韓による”東アジア共同体”を作ろう」というリアリズムに欠ける発言が韓国側から多く出されて正直困った。● 韓国側の議員は、メディアの前とそうでない時で、態度がまったく違った。
● 韓国側は「いざ有事になったら日本は必ず助けに来てくれる」と根拠もなく確信をしている様子であった。
● その証拠に、ある高官は「たとえば円・ウォンスワップが実質的に消滅したが、その代わりに元・ウォンスワップを中国と結んだ。ところが両通貨ともに国際通貨でない。元とウォンのスワップにはあまり意味がないことはわかっている」と発言。
● しかもさらに続けて、「それでもいざという時には日本に飛び込めば、必ず助けてくれる」という驚きの発言を(しかもかなり本気で)している。
● 彼らが議論をふっかけてきたのはいわゆる「従軍慰安婦」問題であり、竹島については一言も発言なし。
とのこと。
これらの発言や態度からわかるのは、韓国では現在の政府のトップレベルにおいても、日本にたいする完全な「甘え」があるという点です。
これはつまりルトワックのいうところの、「従属したがる国もある。それが韓国だ」という分析は正しいということになります。
ただし韓国にとって、これは地政学的に非常に大きな問題を抱えることになります。なぜなら古典地政学の1つのテーゼとしてあるのは、
「世界観と現実の地理の間に大きなギャップが出てくると、悲劇が起こる」
というものであり、この点において、韓国は自分たちの置かれた地政学的に厳しい状況に目をつぶって、
「どうせいざとなったら日本が助けてくれるはず」
と、勘違いしている可能性がかなり高いからです。
そして実際に、日本は97年の通貨危機の時に韓国側に緊急資金援助して救っており、しかもそれが感謝されるどころか、逆に「妨害した」として恨まれている部分があるわけです。これは必然的に、「現実の地理」(東アジアの現実)と、「世界観」(いざとなれば日本を含む他国に頼れる韓国)というもののギャップを生みます。
つい最近ですが、韓国の国会で旭日旗の使用を禁止する法案が提出されております。
しかしこういうことをやってしまうと、極端な話、いざ朝鮮半島有事となった時に最悪の場合、たとえば自衛隊の艦船が韓国の港に寄稿できなくなったりする可能性もあります。
これは、彼らが彼らは現実的・戦略的にものごとを考えることができなくなっているという証左であり、別の言い方をすれば、日本からの救済という「オプション」を自ら排除するかの如く行動することで、ある意味で、自分で自分の首を締めるようなことをしている…とも言えるわけです。
私たちが韓国とお付き合いをする際には、「彼らの世界観はかなり特殊なものである」ということを、情緒的にではなく、冷静に見極めて、しっかりと理解しておく必要があるのではないでしょうか?
執筆: この記事は奥山真司さんのブログ『地政学を英国で学んだ』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2013年10月31日時点のものです。
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