生産現場からエンタメまで、幅広い分野で活躍するロボットを集めた日本最大級のロボット展示会『2013 国際ロボット展』が、11月9日まで東京ビッグサイトで開催されています。
どちらかというと産業ロボットが中心で、一般向けというよりは技術交流と商談の場の趣が強いイベントですが、普段あまり見かけることのない巨大ロボットがガシャガシャ動いている様は、メカ好き男子にとってはたまらないものがあります。今回は会場で注目を集めていたロボットたちを紹介しましょう。
業界最大手・FANUCブースの人気者『ゲンコツ・ロボット』シリーズ。ラインを流れてくるお土産用の菓子をカメラで読み取り、仕分けながら箱詰めするデモが行われていました。個食需要の高まりとともに弁当製造業などからの注文が多くなっています。似たような形をした3本腕の3軸および6軸ロボットは、ABBというスイスのメーカーが持っていた特許権が数年前に失効したため、国内各社も製造・販売するようになり、現在のトレンドとなっているそうです。1本腕のアームロボットと比較すると、腕から手の部分が軽いため圧倒的に速いのが特長。その速さは160分の1秒のシャッタースピードでもブレてしまうほど。反面、精密さと可搬重量では劣ります。
今回の最大最強ロボ、FANUC『M-2000iA』。車のボディも軽々持ち上げる、最大可搬1350kgのアームロボット。床からの高さは5m近くにも。これぞ産業ロボット!
ビジョンセンサと学習機能を備えたアームロボットFANUC『R-1000iA』。ここではデモ用のため、整頓された積み荷を左から右に移し替えているだけに見えますが、雑然と積み上げられた状態でも、ちゃんと認識してきれいに積み上げていくことができるそうです。倉庫とか小売店の出荷現場で活躍中。
センシング技術と知能化技術は今日の産業ロボットの大きなテーマ。三次元メディアのロボット用3次元ビジョンセンサ『TVSシリーズ』は、バラ積みされたパーツを自動ピッキングするための目の役割をするシステム。各社のアームロボットと連携させ、最小限のティーチング(動きを覚えさせること)で作業が可能になります。パーツをつまみ上げる動作には、鳥がエサをついばむ時にも似た生々しさが。これも“不気味の谷”? 第5回ロボット大賞・最優秀中小・ベンチャー企業賞を受賞。
世界中の工場に約1000台の納入実績がある川崎重工業の『BXシリーズ』は、車の組み立てラインを再現したデモを実演。これだけ大がかりになるとティーチングも大変そうですが、CADデータからジョブを自動生成するソフトウェアのおかげで、人が操作する作業はほんのわずかで済むそうです。
川田工業のヒト型ロボット『NEXTAGE』。台車に乗って自らライン上を移動しながら2本の腕を用いた協調作業が可能。作業員が使っている工具をそのまま使うこともできます。2体で組み立てラインの作業を再現するデモでは、パーツを受け渡す際に「じゃあ後はよろしく」「うん(うなずく)」みたいな小芝居も。終了後、説明員にあの小芝居は必要だったのか突っ込んでみたところ、「実は頭部カメラは使わなくてもできる作業だったが、工場で手だけを動かして作業していると不気味な印象を与えてしまうため、あえて人間ぽい動きをするプログラムを仕込んでみた」とのこと。人との共存のためには人に不快感を与えないことも大切。こちらはロボット大賞の次世代産業特別賞を受賞。
サービスロボットゾーンでは高齢化社会を見据えた介護関連ロボットが目立っていました。トヨタは『生活支援ロボット HSR』を出展。タブレット型端末で指示することで、物を運ぶ、落ちた物を拾う、高いところの物を取るといった動作をある程度自律的に行うことができます。高齢者や手足が不自由な方との共存に向け、現在は実証実験の最中。
トヨタの『トルクサーボロボットアーム』は、人との共存をテーマに研究開発が進められている将来ロボット技術。こちらは手先の向きを固定したまま、柔軟に腕を動かすデモ。人とぶつかった時に力を受け流すような外力柔軟適応動作が可能です。握手してみると腕全体が柔らかく動き、従来のガチガチのロボットとはまったく異なる印象でした。
おばあちゃんの手押し車がこんなにスタイリッシュに! この『電動アシストカート』を作っているのは、安価なラジカセのイメージがある船井電機(いや、失礼)。内蔵したモーターにより、電動アシスト自転車と同じような感覚で坂道をスイスイ登っていきます。GPSを利用した見守り機能も搭載。もちろんちょっとした荷物を入れるスペースもあるし、疲れたら椅子にもなります。「10万円を切るぐらいで出せたらいいなぁ」とのこと。
見た目も会社名もなんだかカッコイイ、サイバーダイン社の『災害対策用ロボットスーツ HAL』。福祉用のレンタルは既に始まっており、現時点では最も完成度の高いパワードスーツだと思われます。
大和ハウス工業も介護ロボット事業に参入。世界一癒やし効果があるとギネス認定されたアザラシ型セラピーロボット『パロ』などを出展。お値段は35万円より。
テレビカメラが集まっていた東洋理機工業の、世界初のネイルアートロボット。人間と同じ道具を用いてネイルチップに正確にアートを施し、10分ほどで仕上げます。しかし実用性を突き詰めていくと、人間の仕事がどんどん奪われてしまいそうで、少し不安にもなりますね。
実用第一になりがちな企業ブースのロボットに対して、ロマンが感じられる大学の研究室ブース。大阪大学大学院新井研究室の腕脚統合型ロボットは、ただの多脚ロボかと思ったら、そのうち2本が腕になる! 頑張ってタチコマを完成させてください。ちなみにコントローラはXbox 360の純正品。PS3じゃダメだったんですか!?
東京大学石川・奥研究室は、YouTubeで話題になった『1mmオートパン・チルト』の技術デモを展示。1000分の1秒単位の画像処理技術と小型ミラーの制御技術により、ラケットの上で跳ねるピンポン球をカメラの中心に捉え続けます。今回、その技術の核心であるミラー部分を撮影することができました。2cm角ほどの2つの小さなミラーが高速でブルブル動いているのがわかります。なるほど、こうなっていたのか! このような高速視線制御デバイスは今後のロボットビジョン用途に欠かせません。もう少し身近なところでは、例えば一眼レフカメラに組み込んで、手ぶれ補正のような機能を得るのにも使えるかもしれません。
立命館大学ロボティクス学科は2足の油圧ロボットを展示。今回はバーを持って上下左右に降っても踏ん張って倒れないところまでで、歩行はこれからの課題。『PetMan』に追いつき追い越せ。
「さすがにボストンダイナミクスは出展してないか……」とガッカリしていたところ、ちょっとだけ繋がりのあるアイテムを発見。ロボット掃除機・ルンバでお馴染みのiRobotが参考出展していたマニピュレータ『ARM-H』は、DARPAから資金提供を受けて開発された自律型ロボットマニピュレータ。低コストで頑丈・柔軟な特長を備えています。ただの掃除機メーカーになったかと思っていたのに、これでいったい何をしようとしているのか……?
『2013 国際ロボット展』公式サイト
http://www.nikkan.co.jp/eve/irex/
※この記事はガジェ通ウェブライターの「ろくす」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?
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