思考の仮想化

今回はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。

■思考の仮想化
嫌なことを考えるのはなぜ嫌なのだろう。嫌なことを行動に移すのが嫌なのはわかる。痛いこと、苦しいこと、空腹、そういう目に遭うのは嫌だ。しかし考えるだけでも嫌なのはなぜだろう。たとえば大切な人が死ぬとか、考えたくない。

過去のいくつかのエントリで述べてきたが、人間のネイティブな思考は感情であり、基本的に脊髄反射に近いものだ。単純な論理回路にステートマシン(状態遷移)が加わったもの。昆虫など脳らしい脳を持たない生物の思考はおそらくこの程度。

人間はそういう感情の思考回路の上に、論理的な思考回路を組み上げている。たとえばJavascriptで別な言語のインタプリタ、たとえばbasic言語など、を書くようなもの。この場合Javascriptのインタプリタ上で、basicインタプリタが動作することになる。インタプリタが2重になるので、とても動作は遅いし、効率もよくない。人間が論理的思考を苦手とするのも同じ理由だろう。感情にベースの利口回路が一生懸命論理的思考回路をシミュレートしているのだ。

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そしてこの論理的思考回路は完全ではない。そもそも人間が思考する動機が、生物として生きるためだから、論理的思考から行動の目的や価値(食物を摂取するとか、外敵に恐怖を感じてから逃走するとか)を与える感情的思考をアイソレートできない。それをやってしまうと、そもそも思考する意味を見失ってしまうからだ。

しかしこの構造が、感情的に嫌な思考を論理的にすら出来なくしている。論理的な思考と現実の区別が上手くいかず、「考えたくない」となる。頭の中の仮定と、現実に起きていることの区別がつかなくなる。

嫌なことを考えられる人というのは、頭の中でもう一段の仮想化をやっていると思うのだよね。よく「嫌なことから逃げるな!」「勇気を出せ!」とか、精神論的な話になるけれど、そういうものではない。上述のように人間の脳の仕組み上、「嫌なことを考えるのが嫌」という感情は回避できない。

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さらなる仮想化が必要。シミュレータをもう一段増やす。すなわち「他人事」として考える。頭の中に自分とは無関係な人物を想定し、その人物がどう問題解決すべきか?を考える。自分が問題解決するのではなく、架空の人物に解決させる。

むろん考えた結果を実行に移す場合は、結局は自分がやるしかないけど、考える段階の苦痛はこの仮想化で回避できるのではなかろうか。「現実から逃げない」人というのは、勇気があるというよりも、この手法を経験的に体得しているのではないだろうか。そもそも「勇気」というものは、すなわち「恐怖を克服する」ということは、仮想化なのかもしれない。

あと、せっかくそうやって考えても、結論が「とにかくがんばる」のような精神論では意味がない。あくまで冷静な状況分析でなければ。

執筆: この記事はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2013年12月06日時点のものです。

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