「ルール」とはなにか?・・・ある主婦の投書から(リサイクル)(中部大学教授 武田邦彦)

今回は武田邦彦さんのブログ『武田邦彦(中部大学)』からご寄稿いただきました。

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■「ルール」とはなにか?・・・ある主婦の投書から(リサイクル)(中部大学教授 武田邦彦)
少し前、朝日新聞の声の欄に「分別を守らない人がいる! ルールは守れ!」と憤慨して投書している主婦の声が載っていた。このような声を乗せる朝日新聞も新聞だが、可哀想にすっかり騙されている主婦が恥をかいた。

「ルール」というのは「お上」が決めるものではない。民主主義では国民や何かのグループが「合意のものの約束」として決める。だから「ゴミを分別する」というルールはない。

リサイクルがスタートする時、ルールは次のように決められた。

1)消費者が分別してゴミを出す、

2)自治体が分別したゴミを分けて収集する、

3)業者がリサイクルして「物質として」再利用する。

その時に「ルール」を作る人が広報用に作った絵が次の絵である。

「ルール」とはなにか?・・・ある主婦の投書から(リサイクル)(中部大学教授 武田邦彦)

(画像が見られない方は下記URLからご覧ください)

http://getnews.jp/img/archives/2014/01/rule.jpg

このルールを最初に破ったのが政府で、リサイクルが始まってすぐ、「リサイクルした材料は物としては使えない」ということが分かり、「サーマルリサイクル」という言葉を作り(英語でいえば日本人はわからない)、「焼却もリサイクル」に入れた。これだけでルールは破たんしている。

次に業者はそれに追従してリサイクルを止めて焼却するようになった。自治体も焼却を承知で分別ごみを集め、それを一緒にして燃やし始めた。このようなことで社会が正常に進み、若者が意欲を持つはずもない。

2006年夏。名古屋大学工学部の卒業生が私のところに来て、「私は耐えられません。毎日、リサイクルするということでゴミを受け取り、リサイクルの証明書を出して、そのまま焼却しています。私は大学で何のために技術を勉強したのかと哀しくなります」という。

実直な日本人、純粋な若者はまだ日本にいる。「悪貨、良貨を駆逐する」ではないけれど、これからの日本を背負い、真面目に努力しようとする若者を壊しているのは、このような一つ一つの「ルール破り」である。

今や、分別リサイクルのルールを守ろうとしているのは「全体の動きを見ないで正義を主張する主婦」だけになった。つまり、「自分がしていることが、多くのまじめで純粋な人を傷つけている」ということを知らず、「悪」(真の意味のルール破りの自治体など)に手を貸していることだ。

「ルールというのは、参加者がそれを守る意思がなければ成立せず、ルールが成立しているかどうか質問に答えなければルールとして存在しない」ということは民主主義の社会に住む大人の知っていなければならないことだ。

知らないことは時に「悪」となり、他人を傷つける。「私の思い」だけでは悪人が多いこの日本社会では善人を痛めつけることになる。

ところで、先日、ある自治体の首長にお会いしてリサイクルの話になった。立派な市長さんで私の言うことを理解していただけると思い、「市民に分別させて市はそのまま焼却している。それで誠実と言えるのか」ということを聞いたら、「問題はある。レジ袋も少なくなったので、熱が足りずに重油を足している。でも、市民の環境意識を高めるための行政的手法だ」と言っておられた。

お上が環境に悪いことをしているのに、市民を教育するという感覚だった。これまでも政府や自治体が環境に悪いことをしながら「環境の意識を高める」ということを言うけれど、間違った論理や科学、方法で教育はできない。単なる自治体の言い訳と考えられる。

レジ袋の追放のようにどこから見ても不合理で環境を汚すことが、白昼堂々と行われ、それを追及されると「市民の環境意識」に逃げる社会、それはまともな社会ではないだろう。朝日新聞も少しは見識を持ってもらいたい。

執筆: この記事は武田邦彦さんのブログ『武田邦彦(中部大学)』からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2014年01月21日時点のものです。

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