大ヒットシリーズ『ロード・オブ・ザ・リング』の60年前の世界を壮大なスケールで描く、映画『ホビット』。その第2作目『ホビット 竜に奪われた王国』が2月28日(金)より、日本でも公開となりました。
前作よりアクションシーンも増し、息もつかせぬ展開、通常の2倍(毎秒48コマ)で撮影されたハイフレームレート3Dの臨場感溢れる映像に惹き込まれる本作ですが、今回の大きな話題のひとつといえば……“エルフ”の登場ではないでしょうか。
そうです、本作では『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズで、日本でも多くの人を魅了したエルフの王子「レゴラス」が登場! さらに、美しい女戦士・森のエルフ「タウリエル」も登場します。
劇中でも登場する言語「エルフ語」を研究し、翻訳監修も担当された信州大学 人文学部 伊藤 盡(いとう つくす)准教授に、エルフ語のことや、今回の映画に登場するエルフの印象についてお話しを伺いました。
※エルフ語は小説「ホビットの冒険」や「指輪物語」の作者J.R.R.トールキン氏の創造言語の総称。現代の日本語と千年前の日本語が異なるように、トールキン氏は何千年にもわたる言語の歴史をも創造し、言語を作り上げていった。
――エルフ語は創作の言語ですが、伊藤先生は、どういったきっかけでエルフ語を研究するようになったのでしょうか?
伊藤先生:大学の卒業論文でトールキンのエルフ語について研究を始めたのが最初です。物語が面白かったのはもちろん、言語を構築する過程や背景を学べば学ぶほど、あまりに奥が深いので驚きました。そしてトールキンは物語を作り上げる順番が明らかに違う。なんでそんなに言葉というものにこだわるのだろうかという、秘密を探りたかった。実際探ってみたら興味が尽きず、研究を続けることになってしまった、ということです(笑)。
――エルフの中にもさまざまな種族がいて、その種族でも言葉は変わると思うのですが、大人や子ども、性別などでニュアンスが変わったりはしますか?
伊藤先生:今のところ、映画で使われているものでそういうニュアンスの違いはありません。しかし、階級というか、高貴なエルフは少し言葉に違いがあります。それから地域による方言差は非常にあります。
エルフ語の中の同じ「シンダリン」という言葉でも、場所による言葉の違いから、軽蔑心が起きたり、「お前の言葉は気に食わない」といった部分を、トールキン自身が物語の設定として描いています。
――日本でもあるような、“方言の違いでの衝突”が物語の中でも起こっているのは面白いですね。
伊藤先生:そうですね。トールキンという人が言語を扱う学者だったので、実際の自分達が扱う言語と、決して無関係ではないというところも感じさせる、そういう魅力や面白さもあります。
――映画『ホビット』シリーズでは今作がエルフの本格的な登場となりましたが、エルフに関するシーンをどのようにご覧になりましたか?
伊藤先生:とにかく今回登場するエルフの戦闘シーンは本当に見事だと思いました。演じた役者さんも素晴らしいですが、メインのエルフ2人は、きちんと個性が出ていますよね。
特にオーランド・ブルームは、『ロード・オブ・ザ・リング』と『ホビット』の動きを明らかに関連付けているそぶりが見えるんです。この第2作目を観た後、もう一度『ロード・オブ・ザ・リング』のレゴラスの動きを見てみると、「あ、ここが同じだ」とか「ここは少し成長してる」「まだ“ホビット”のときは若い」などそういう部分が見えてきていいな、と思いました。
――また、とてもエルフらしい魅力が出ているな、と感じた場面はありますか?
伊藤先生:本当にいっぱいあるのですが、タウリエルの描写がとても良かったです。タウリエルは映画でのオリジナルキャラクターなので、場合によっては原作が好きな人たちに受け入れられないのではないか、と心配するところもあったのですが、このタウリエルの描き方、演じ方は、原作に非常に調和するものだったと思います。
“シルヴァン”という、いわゆるレゴラスやスランドゥイルとは別なエルフの種族なんですが、種族の特徴がタウリエルという名前に表れています。タウル=森、イエル=娘という「森の娘」という意味があります。まさにその名前のとおり、森の中で彼女は非常に活き活きと活躍し、また星々を眺めることを熱心に語ったりと、“森の中に生きるエルフ”として描かれている。スランドゥイルのような石に囲まれた地下に住むエルフと、明らかに空気が違います。この描き方が良くできているな、と感じました。
●『ホビット 竜に奪われた王国』で使われた言語について
今回の劇中では、トールキン教授が創造した歴史の中で変化した言語から「シンダリン」と「クウェンヤ」の2つが使われています。元はひとつの言語から派生した「シンダリン」と「クウェンヤ」は、何千年という歴史を経て発音も文法も異なるものに変化した(という設定)。
映画の中でエルフたちが話している言葉は「シンダリン」で、魔法使いのガンダルフは雅語の「クウェンヤ」で呪文を唱えているそう。雅語というとうーん、今で考えると祝詞の言い回しのような感じかと思ったのですが、「琉球語と東北弁くらいの違いかな?」とのこと。結構大きく違いますよね。
トールキン氏の物語の中では、「クウェンヤ」は宗教的な典礼を行う際に使用する言語としても位置づけられているようです。なるほど、それは魔力が強そう、と魔法の呪文に使われたことにも頷けました。
映像も素晴らしいですが、このようにこだわっている言語にも注目してみると、さらに作品の魅力を楽しめそう。映画『ホビット』、奥が深いです!
エルフ語講座の記事はコチラ↓ URL:http://getnews.jp/archives/528316
<エルフの王子“レゴラス”にバッタリ会っても安心! 「エルフ語」講座を受けてきたよ>
『ホビット 竜に奪われた王国』全国公開中
<3D/2D/IMAX3D同時公開 HFR3Dも公開(※一部劇場にて)>
オフィシャルサイト:www.hobbitmovie.jp
配給:ワーナー・ブラザース映画
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