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【新刊レビュー】杉村三郎シリーズ第3弾『ペテロの葬列』 宮部みゆき作品至上“最悪”で最高な傑作
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【新刊レビュー】杉村三郎シリーズ第3弾『ペテロの葬列』 宮部みゆき作品至上“最悪”で最高な傑作

2014-03-14 08:00
    978-4-08-771532-3

    ■新刊レビュー『ペテロの葬列』

    ●書誌情報

    どんな本?

    『誰か』『名もなき毒』に続く杉村三郎シリーズ、第3弾! 拳銃を持った老人によるバスジャックという事件に巻き込まれた杉村は、いつしか巨大な悪の渦の中に! 魂が震える現代ミステリー!!

    ●読みどころ
    どこまでも現実的な心理描写。まるで呪いのように悪意がゾロゾロと列を成していく。主人公・杉村が中立的な視点で物語を見つめている。

    ひとりよがりな正義感、自分の弱さとの葛藤、愚かで救いようがない人の性。だけど憎みきれない。むしろ、守りたい、救いたい……。“人間”という存在を如実に著した作品。鬱エンド注意。

    ●レビュー
    オススメ度:★★★☆☆
    読了時間:約8時間

    筆者は宮部みゆきさんのファンである。だが、この作品は嫌いである。この作品は嫌いにならざるを得ないほど、人の心が現実的に、そして哲学的に描きこまれている素晴らしい作品だと思う。

    『誰か』『名もなき毒』に続く杉村三郎シリーズ第3弾であるが、前作を読んでいなくても十分に引き込まれる内容になっている。

    主人公は一見、温厚で、“平々凡々”なサラリーマンである。ただ、資産家の外腹の娘婿という特殊な立場に立ち、よく事件に巻き込まれ、それでも平々凡々としているというのは、ある意味とても出来た人間であるのではないかと思う。

    バスジャック事件を起点として、現れていく人々の闇。「知らなければよかった」ことのなんと多いことか。“悪”を「悪」と単純に言い切れず、心に釈然としない想いが蓄積されていく。

    後半への流れは「『特命係長 只野仁』か!」とツッコミたくなった。そこからは少々ワクワクした。念のため言っておくと、エロがあるという意味では決してない。

    そこから少し先までは、まだ余裕を持って読める。隠された謎を知りたくて知りたくて、物語に引き込まれる。

    終わりに近づくと、次第に救いを求めて読み進めていく形になる。結局、主軸となっているバスジャック事件そのものは、この物語の中でいちばん平和な部分と言っても過言ではなかった。あと、桃子ちゃんは天使。

    “悪”が繋がる、繋がる。繋がっていく――。けれど、そこまで繋がってほしくなかった。

    悪意の渦の中で、怒りや悲しみを抱えつつも善人であり続けた杉村。そんな彼を襲う衝撃のラストに、かなり気持ちが落ち込んだ。頭をガンと殴られたように、クラクラした。

    読み返し、考えていくと、女性としては納得できなくもないが、それでも結構なダメージをくらう。純粋な男性にはオススメできない作品だ。

    ●詳細情報
    書籍名:ペテロの葬列
    著者:宮部みゆき
    価格:1800円(税抜)
    出版社:集英社

    ※表紙画像、書誌情報は集英社のコミックス・書籍検索サイト『BOOKNAVI』より

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