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何故みんな、今回の美味しんぼが面白かったか面白くなかったかの話をしないのか(不倒城)
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何故みんな、今回の美味しんぼが面白かったか面白くなかったかの話をしないのか(不倒城)

2014-05-23 14:30
    何故みんな、今回の美味しんぼが面白かったか面白くなかったかの話をしないのか(不倒城)

    今回はしんざきさんのブログ『不倒城』からご寄稿いただきました。

    ※この記事は2014年05月15日に書かれたものです。

    ■何故みんな、今回の美味しんぼが面白かったか面白くなかったかの話をしないのか(不倒城)

    漫画なんだから、まず「面白いか面白くないか」で評価されるべきだと思うんですよ。

    いやまあ、勿論私の観測範囲から漏れている可能性は否定しませんけど、Webやら新聞やらテレビやら、果ては原作者さんに至るまで、書いてある内容の是是非非のことばかりで、誰も「今回面白かった?つまんなかった?」という話をしません。何故なんですか。漫画で一番重要なのは「面白いかどうか」だろうが!!作者の個人的な意見なんて超どうでもいいんだよ!!!

    という前提を敷いた上で、以下は私の意見なんですが。すいません全然面白くなかったです。

    といっても、この「面白くなかった」というのは、特に今回の美味しんぼが、という訳ではなく、ここ10年くらいの美味しんぼに共通の問題点であり、これについては特段新しい視点ではないと思います。

    現在の美味しんぼの面白くなさの理由は単純です。漫画として面白くなる筈の要素が片っ端から(作者さん自身に)潰されてしまったからです。

    Web上には幾多の美味しんぼソムリエの皆さんがいらっしゃり、以下には既出話も多いかとは思うのですが、一応列挙してみます。

    かつての美味しんぼには、読者にカタルシスを提供する仕組みがきちんと用意されていました。


    ・ 山岡の、組織に対する反骨精神とそれによるヒーロー性
    ・ 圧倒的な敵役としての海原雄山と、その横暴さによるストレス
    ・ それに対して、山岡が海原雄山に一矢を報いることの出来るカタルシス
    ・ それ以外にも、食通ぶって知識をひけらかしている嫌味なキャラを山岡がへこませるカタルシス
    ・ トラブルメーカー、コミカル枠として色々ドジをやる富井の存在
    ・ 東西新聞社の人間関係と絡んだ、栗田とのラブコメ要素

    一見して頂けば分かると思うんですが、これらの要素、現在の美味しんぼではほぼ全滅です。せいぜい富井くらいしか残っていません(最近頻度低いけど)。吾らの唯一の希望、富井。頑張れ富井。

    本来、漫画としては、美味しんぼって「アウトローヒーローもの」に近かったと思うんですよ。アウトローヒーローとしての山岡が、既存の権威に真っ向反抗して、料理を題材に色んなものをぶった切る。読者はそれでカタルシスを得る。

    ギャラリーフェイクなんかと同じく、ブラックジャックを意識した部分もあったんじゃないかと推測します。料理に関するうんちくはその背景というか、小道具に過ぎなかった。で、上に列挙してあるだけの「面白い」要素が詰め込まれていた。

    これらの要素がスポイルされてしまった原因は、今更言うまでもなく三つに大別されます。


    ・ 海原雄山が人格者化してしまって大ボスがいなくなってしまった
    ・ 雄山と関連して、山岡も丸くなってしまった
    ・ 栗田との人間関係も片付いてしまった

    これに対して、残った要素が料理についての偏った視点に基づくうんちくだけなんだから、そりゃ漫画として面白くなる訳がありません。なんか飯くってごちゃごちゃいってるだけの漫画です。

    いや、ストーリー漫画として人間関係が展開する必要があることは理解出来ますし、いつまでも山岡ヒーローものが続いてもマンネリ化してしまう、というのも理解出来ますよ。そういった点では、いつか雄山と山岡は和解しなければいけなかったし、その為に雄山の横暴さが影をひそめてしまうのも仕方ないことではある。

    ただ、「かつて用意されていた面白い要素」が外れて、それでも連載を続けるのであれば、作者は「他の面白い要素」「他の面白くする工夫」を導入しなくてはいけません。漫画を面白くし続けなくてはいけません。

    そして、昨今(といってもここ十年くらい)の美味しんぼからは、「漫画を面白くしよう」という試みないしテコ入れが、少なくとも個人的には感じられず、その為首尾一貫して「面白くない漫画」であり続けてしまっている、というのが私の評価です。

    勿論これは、「美味しんぼはそもそもストーリー漫画からドキュメンタリー漫画に方向転換した」「だから、ドキュメンタリー漫画として評価しなくてはいけない」という前提を敷いた上での話です。ドキュメンタリー漫画にはドキュメンタリー漫画としての「面白くする為の工夫」があるべきで、その為の主役である筈のキャラクター達がとにかく薄過ぎるんです。かつての濃さを知っているだけに、この喪失感は非常に大きい。

    そして、ドキュメンタリーならドキュメンタリーで面白くする為の、展開としての意見の相殺・相克というものが殆どない。「回答(要するに作者の意見)」が一つ出てくると、誰もそれにぶつかろうとしない。

    漫画として面白くしよう、じゃなくて、単に山岡や雄山というかつての人気キャラクターをスピーカーにして作者の偏った意見を表出するだけのドキュメンタリーもどきになってしまっている。こんだけつまんない事態もなかなかありません。

    一言で言って、我々は放射能がどうとかに対して意見をするその以前に、「美味しんぼ面白くない!!続けるんならもっと面白くする工夫しろや!!!」という声をこそ挙げるべきではないのか、と思うわけなのです。

    というか、もしかするとアレですか。皆さん、「最近の美味しんぼは面白くない」なんてことはとっくの昔に前提事項として共有・諦めていて、その上で語ってたりするんですか?だったらすいません。

    ということで、ここまでの私の意見を端的にまとめると、


    ・ 漫画は、何よりもまず「面白いか面白くないか」で評価されるべきである
    ・ 今回(というかここ十年くらい)の美味しんぼ面白くない
    ・ 初期(個人的にはせいぜい20~30巻くらいまで)の美味しんぼはとても面白かった
    ・ ドキュメンタリーにしても作者の意見が最優先されるドキュメンタリーって面白くないよね
    ・ 富井がんばれ。超がんばれ。今だそれゆけぼくらの富井
    ・ 全っ然関係ないけれど、私が一番好きな料理漫画は鉄鍋のジャン!です。登場人物がクズしかいなくて楽しいですよねあの漫画

    ということになり、他に言いたいことは特にないということを最後に申し添えておきます。あと、鉄鍋のジャンは面白いんで皆さん読みましょう。

    執筆: この記事はしんざきさんのブログ『不倒城』からご寄稿いただきました。

    寄稿いただいた記事は2014年05月22日時点のものです。

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