Jホラーの金字塔となった『リング』をはじめ、『仄暗い水の底から』『クロユリ団地』など数々のヒット作を生み出す、中田秀夫監督最新作が5月30日より公開となる『MONSTERZ モンスターズ』です。
『MONSTERZ モンスターズ』は、ひと目見るだけで人を意のままに操ることができる男と、その能力が唯一通用しない男との対決を描いたサスペンス・アクション。藤原竜也さんと山田孝之さんがダブル主演、石原さとみさんが共演という豪華キャストも話題になっています。今回ホラー通信では、中田監督にインタビューを敢行。作品への想いや、こだわった演出など、色々とお話を伺ってきました。
――本作は韓国映画『超能力者』がベースとなっていますが、監督がこの物語に惹かれた理由はどんな所にあるのでしょうか?
中田秀夫監督(以下、中田):(藤原)竜也君が演じる“男”は人間の社会に暮らしていて、人間を操る能力を持ちながら、家族も友人もいない孤立した人間ですよね。そんな疎外感を抱いている人間がもともと好きだというのもあります。そして、山田(孝之)君が演じる“終一”は、環境順応能力が異常に高く、男の能力が効かないばかりか、大怪我をしてもすぐに治ってしまうという、こちらも特殊な人間で。終一の設定は、少し変えていますが、この対立する2人の設定がアイデアとしてすごく面白いなと思いました。
――監督は以前より、「藤原さんが主役の映画を撮りたい」と思っていたそうですが、藤原さんのどういった部分に一番魅力を感じたのでしょうか?
中田:竜也君とは『インシテミル 7日間のデス・ゲーム』に出てもらった事がありましたが、あれは群像激だったので、今度はガッツリ主人公として撮りたいと思っていました。映画における俳優って、演技力はもちろん大切ではあるけど、大きなスクリーンで映えるかどうかが何より大切というか。竜也君は今、映画一本背負える数少ない一人だと思うんですね。本作の役は特に、ほとんどセリフが無いので、彼の様な存在感がマストだったわけです。和風の美男子でありながら、身長も高くて、立ってるだけでサマになる。それでいてアツい部分もあって……。でも今回は「あんまりアツい演技をしたくない」って言われたんですけどね。
――藤原さんご本人にですか?
中田:そうそう。『DEATH NOTE デスノート』とか『カイジ』とか、「藤原竜也って怒鳴ってばっかりじゃないか」ってネットで言われているらしくて(笑)。演じているキャラクターがそうだからしょうがないと思うんだけど、彼も意外と気にしていて「監督今回は静かにいってもいいですか?」って言われて。最後はね、結局アツくなりましたが。
――そのアツさが藤原さんの魅力の一つでもありますものね。山田孝之さんとの共演というのも意外な組み合わせであり、豪華でした。
中田:今回は主演のお二人と石原さんが本当に忙しくて、いつもならどんなに忙しくても1、2日はリハーサルの日をもらうんだけど、今回はリハーサル無しで。特殊な設定もあるから、やりながら相談して進めました。山田くんと竜也くんって同世代で、二人ともずっと主役をはってきたから、これまで交わる事が無かったんです。
――アクションに挑む山田さんの姿、というのもこれまでに無い新鮮さがありました。
中田:山田君、オファーは快諾してくれましたが、撮影入って後悔したって言ってましたね(笑)。アクションがすごすぎて。今回アクション監督を務めてくださった、下村勇二さんは、ドニー・イェンの弟子筋にあたる人なのでそれはもう本格的で。山田君も勘の良い人なので、すぐに飲み込んでいてすごいなと思いました。アクションの他にも、ちょっとしたセリフとか、繰り返し繰り返し練習して自然な演技が出来る様にしてくれたり、竜也君とは敵対する役なので、休憩時間におしゃべりで盛り上がりすぎて、本番で打ち解けた雰囲気が出ない様に意識してくれていたみたいですね。
――山田さんが数百人の人に襲われ、囲まれるシーンはこれまで日本映画では観た事の無い映像で、大迫力でしたね。
中田:オリジナルの映画は、あそこでカースタントになるのですが、アレンジしました。カースタントって皆さんハリウッド映画でたくさん観ているじゃないですか。予算が全然違うので、日本映画でやっても適わないと思っているんですよね。後は、肉弾戦にする事で「世界中の人々VS.終一」という状況を表現したかった。
――その他にも“男”に操られた人間が自分の首をひねって死ぬなど、『MONSTERZ モンスターズ』はホラー映画ではありませんが、ホラーファンが喜ぶ様なゾッとする演出も出て来ますね。
中田:「自分の首をひねって死ぬ」っていうのはあり得ない事だからこそ目を引きますよね。人間どんなに怪力の持ち主でも、意志があるから自分の力で骨折することはできない。その意志を無くした時に……っていう独特な死に方が強烈で面白いですね。
この映画全体が「あり得ない事」を描いているんだけど、世界のどこかには“男”や終一の様な人間もひょっとしたらいるのかもしれないと思ったりもする。以前、爆笑問題の大田光さんが「別の部屋にモノを取りに行って、着いたら何を取りに来たか忘れちゃう」と言っていたんですが、僕もしょっちゅうで(笑)。そういう時に「きっと今“男”に操られていたんだ」って想像すると面白いですね。本気で信じているわけではないんですが。
――本作も、終一と友人のやりとりなどクスっと笑える部分も多くて、そういった日常の演出もより映画にリアリティを与えているなと感じました。
中田:ホラーみたいにあり得ない事をやりすぎると、ちょっと漫画っぽいなとか自分で思っちゃうわけです。それでいて、貞子がテレビから出てくるのは嬉々として撮っちゃう自分もいるんだけど(笑)。あり得ない世界を描けるから映画って面白いんだけど、普通の日常を描きたいという想いもあったり。『MONSTERZ モンスターズ』は我ながら、「自分は何で生まれてきたんだろう」という男の葛藤など、情感たっぷりに撮れたなと思っているので、生身の人間が作り出すエネルギーをアクションでも感じていただきたいですね。
――今日はどうもありがとうございました!
『MONSTERZ モンスターズ』ストーリー
ひと目見るだけで人を意のままに操ることができる男と、その能力が唯一通用しない男との対決を描く。まなざしひとつですべての人を操ることができ、その能力ゆえに孤独に生きてきた“男”の前に、初めて力の通じない人物、田中終一が現れる。終一もまた、両親のいない孤独な人生を歩んできたが、“男”によって数少ない大切な人を奪われてしまう。自分の世界を守るため男は終一の抹殺を図り、終一は大切な人を守れなかった自分を責め、“男”への復讐を誓う。
(C)2014「MONSTERZ」FILM PARTNERS
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