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郷ひろみの子どもの名前「兄」「陸」は古風でしかも個性的!命名漢字の意味は?
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郷ひろみの子どもの名前「兄」「陸」は古風でしかも個性的!命名漢字の意味は?

2014-07-07 16:30
    郷ひろみオフィシャルサイト

    歌手の郷ひろみ氏(58)が、この度生まれた自分の双子の男の子に、「兄」(けい)と「陸」(りく)と名づけたとして話題になっている。

    日刊スポーツはこう報じている。

    「長男は、家を継ぐ、人が集まってくるような中心人物になるようにと兄(けい)と、次男は、何事にも立ち向かい昇り竜となるべく陸(りく)と名付けていた。(http://www.nikkansports.com/entertainment/news/f-et-tp0-20140706-1329871.html)」

    この2つの名前は割合に古風な名前であるし、郷氏がわざわざいうように漢字の字義を踏まえた命名である。最近の芸能人では珍しい。

    そもそも、男性名で漢字一字というのが最近では珍しいのだ。

    昭和20年代~30年代の男の子名づけランキングでは、1位~10位まで、ほとんどが「茂・誠・隆」など漢字一字名であった。最近では「悠真・大翔・陽翔」など漢字二字が主流である。むろん、最近でも「蓮」など一字名がないわけではないが、昔ほどではない。

    郷氏が「いろいろな先生に見ていただいた」と語っていた通り、最近の芸能人が付けたがる、漢字の意味を理解せずに付けた、いわゆるキラキラネームとは一線を画すものである。こういう、漢字の本来の意味を踏まえた命名はとても良いものだと筆者は考える。いずれもきちんとした意味があるので、解説してみたい。

    ■「兄」は兄弟順という意味だけではない!家を仕切る人の意味だった。古代から用例あり
    まず、「兄」(けい)は中国古代の辞書『説文解字』及びその注釈(『説文解字注』)ではそのものずばり「長じるの意味である。愚かな人は兄弟の順序だとしか思っていないようだ。しかしそれは、大きな間違いだ。長じるという意味が先にあり、兄弟の順で長じるのが兄だから、兄弟順をも示すようになったのだ」としている。

    ネット上では今回の報道を受けて、「えっ?子供の名前で、兄だって?兄弟の兄か、変な名前だなー」という声があった。昔の辞書で「愚かな人は兄弟の兄としか理解していない」とわざわざ書かれている所を見ると、この間違いは昔からあるらしい。

    また、漢字研究の大家・白川静博士によれば「兄という字の『口』の部分は「サイ」という祝詞を入れる器のことで、それをつかさどる人、つまり、家の(最も大事な)祭事を仕切る人の意味」(白川静『字通』より、分かりやすく改めた)であるという。

    まさしく、郷氏のいう『家を継ぐ、人が集まってくるような中心人物』こそ「兄」であるのだった。

    「兄」を名前に使う人は、最近の人では余りいない。中日ドラゴンズのベンチリポーターの下嶋兄[しもじま けい]氏ぐらいしか思いつかない。

    しかし、古くはかなりあった名前なのである。例えば、古代の貴族・蘇我赤兄[そがの あかえ]、橘諸兄[たちばなの もろえ]、戦国武将の犬童頼兄[いんどう よりもり]などである。

    ■陸は「神様が降りてくる、神聖な高い平地」の意味。
    さて、「陸」の方はどうか。中国古代の辞書『説文解字』には「高い平地のことだ」とある。白川静博士によると、この高い平地は神様が降りてくる神聖な地であり、そこに「まん幕」を張ったという意味だという。

    よく、日本の古い集落では鎮守様などの古い神社が高台に設けられている。その意味に近い(古代中国の風習が日本に残存している例が多いと白川博士は常々述べている)。

    郷氏のいう何事にも立ち向かい昇り竜となるべく」というのは、おそらく「竜神が高い平地から昇っていくように、何事にも立ち向かう」の意味であろうか。

    意味の似た字に「隆」があり、この字は最近ほとんど子どもの名前に使わなくなったが、昭和20年代~30年代には子ども名前ランキングの常連であった。

    「陸」を名前に使う人も、「兄」と同様に、最近の人では余りいない。

    ただ、戦前の作家・清見陸郎など、昔は結構あった名前である。

    名前にはきちんとした意味を持つ漢字を使った名乗り字を使うべきだ、という専門家の声は以前からあった。

    キラキラネームを排して、かつ個性的な名前をつけた郷氏の例は、子供の名前をつけたい若いお父さん、お母さんには参考になるのではないか。

    (画像は「郷ひろみオフィシャルサイト」[http://www.hiromi-go.net/]より)

    (参考にした年代別子ども命名ランキングは明治安田生命のもの[(http://www.tonsuke.com/nebin.html)]を基準としました。また、参考文献として、段玉裁『説文解字注』と白川静『字通』平凡社を用いました)

    ※この記事はガジェ通ウェブライターの「松平東龍」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?

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