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「岩盤規制」は新たなビジネスチャンスの宝庫[連載:岩盤規制(2)]
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「岩盤規制」は新たなビジネスチャンスの宝庫[連載:岩盤規制(2)]

2014-07-12 09:30
    役人の掟

    ●「岩盤規制」は新たなビジネスチャンスの宝庫

     農業、医療、福祉、教育、エネルギーなど、さまざまな分野の「岩盤規制」で、「特定利権」の利益が守られ、一方、多くの「消費者」の利益が害されている……ということを前回の記事でお話ししました。

     例えば、参入規制によって新たな事業者の参入が抑制されれば、すでに参入している事業者(既得権者)は、新規参入による競争に直面することなく、ビジネスを続けることができます。競争がなければ、事業者が値段をつりあげたり、商品・サービスの質を低下させたりといったことが起きても、消費者には選択の余地がありません。このため、消費者の利益が害されるのです。

     これは、別の見方をすれば、新たなビジネスチャンスが害されている、ということでもあります。

     新たな事業者が、独自のアイディアや技術を持ち込んで、参入する可能性が奪われているのです。

     日本では新規開業が少ない、と指摘されることがあります。

     たしかに、OECDの”Measuring Innovation”というレポートで、2000-2007年の開業率(新規開業した企業数÷企業総数)の国際比較がなされているのをみれば、

    ・主要先進国の開業率は、概ね10~15%程度であるのに対し、
    ・我が国は約4%で、比較されている各国の中で最下位です。
    http://www.oecd.org/site/innovationstrategy/45188031.pdf

     なぜ日本では、新規開業がこんなに少ないのでしょうか?

     「日本人は安定志向でベンチャー精神に乏しい」といったことが言われることもあります。たしかに、一面で正しいかもしれません。しばらく前にホリエモンが登場した頃、伝統的日本社会になじまない異人種のように扱われたのも、その表れだったでしょう。

    しかし、これが日本人の伝統的気質であるかのように説明するのは、大きな間違いです。

     例えば、昭和初期には、松下電器(昭和10年創業)、トヨタ自動車(昭和12年創業)、ブリジストン(昭和6年創業)など、のちの世界的な大企業が次々に創業されました。また、戦後も、ソニー(昭和21年創業)、本田技研(昭和23年創業)などが創業されました。

     決して、日本人が伝統的にベンチャー精神を持っていなかったわけではありません。

     それでは、なぜ最近になって、ベンチャー精神が乏しくなったのか……というと、大きな理由は「岩盤規制」の存在だと思います。

     「岩盤規制」のある分野は、ベンチャー精神のある人にとっては、ちょっと垣間見るだけでも、大きなチャンスと映るはずです。なぜなら、限られた既得権業者が、新たな工夫を施すこともなく、昔ながらのやり方でビジネスを続けているからです。「こんな工夫をしたら、大きなチャンスがあるはずだ」といったことを考えついた人は、決して少なくなかったと思います。

    しかし、そういう人たちはどうなったでしょうか? 結局、「岩盤規制」によって行く手を阻まれ、撤退を与儀なくされてきたのです。

    そんな経験が社会で蓄積されていく中で、「新しいビジネスチャンスを切り開こうとしても、成功は難しい」という認識が世間に広まり、ベンチャー精神を奪っていったのです。

     その意味では、これから数年間は大きなチャンスです。

     ようやく、「岩盤規制」を取り払おうとの動きが出てきているからです。

     今年1月、安倍首相はスイスのダボス会議で、「今後2年間で、残された岩盤規制を(少なくとも特区では)打ち破る」との趣旨のスピーチをしました。このスピーチは、日本国内以上に、世界中の関係者から注目されました。日本が「規制大国」であり、その改革が長年の課題だったことは、世界で知られているのです。

     そして、このスピーチは、単に口約束に終わらず、現実化しつつあります。

     例えば、今年の通常国会では「電気事業法改正」が成立し、電力小売事業への参入自由化が実現しました。従来は、家庭向けの電力事業は地域独占で、新規参入は認められていませんでした。例えば関東圏の家庭であれば、東京電力からしか電気を購入できませんでした。これが、今回の法改正により(実施は2016年目途)、誰でも電力小売事業に参入できることになりました。

     電力の地域独占は、まさに巨大な「岩盤」の典型例でしたから、これは大きなチャンスです。

     それ以外の分野でも、この1か月ほど、新聞報道もしばしばなされていますが、農業改革、医療改革といった議論も前進しつつあります。

     電力、農業、医療、介護、教育・・・、いずれも「岩盤規制」によって、ビジネスチャンスが長年抑え込まれてきた分野だからこそ、大きなチャンスが広がっているのです。

    (株式会社政策工房代表取締役 原 英史)

    ●関連書籍
     『日本人を縛りつける役所の掟 岩盤規制を打ち破れ』(7月1日刊行)では、21分野の岩盤規制をとりあげ、それぞれの規制の裏側を解説しています。
    http://www.amazon.co.jp/dp/4093897492

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