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特別会計騒動を振り返って(疑似科学ニュース)
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特別会計騒動を振り返って(疑似科学ニュース)

2014-08-31 18:30
    特別会計騒動を振り返って(疑似科学ニュース)

    今回はメカAGさんのブログ『疑似科学ニュース』からご寄稿いただきました。

    ■特別会計騒動を振り返って(疑似科学ニュース)
    2004年に「特別会計への道案内」という本が世に出てきて、それまで注目されなかった「特別会計」というものが一躍脚光を浴びた。ちなみに2008年に改訂版が出ている。内容の概略は下記に載っている。

    「母屋(一般会計)でおかゆを食っているのに、離れ(特別会計)で子どもがすき焼きを食っている」2005年08月13日 『モジログ』

    http://mojix.org/2005/08/13/142350

    日本の国家予算は(2004年当時)、80兆円とみんな思っているが、それは一般会計の分であり、それとは別に387兆円におよぶ特別会計がある。国会で議論されるのは一般会計のみであり、特別会計にメスを入れろよ、と。

       *   *   *

    2003年に当時の「しおじい」こと塩川正十郎財務大臣が「母屋ではおかゆ食って、辛抱しようとけちけち節約しておるのに、離れ座敷で子供がすき焼き食っておる」と発言して、小泉改革という雰囲気もあり盛り上がった。

    母屋=一般会計が80兆円しかないのに国会で無駄使いをあれこれ追求されているのに、離れ=特別会計で387兆円という膨大な予算がノーチェックで官僚たちが使い放題だ、と。たしか「朝ズバ」でみのもんたが毎回張り切って政府の無駄遣いを批判していた。

       *   *   *

    しかし上記の記事が引用している読売新聞の図にもあるが、「一般会計から特別会計への繰り入れ」「特別会計から一般会計への繰り入れ」など、これらの関係は単純ではない。また「重複」という言葉がたびたび出てくるように、各予算の歳出を単純に合計してしまうと、同じお金が何度もカウントされてしまう。

    A予算の中にx予算、y予算、z予算がある場合、A=x+y+zなのであって、これをA+x+y+zと足し合わせてはいけない。これぐらい単純なら誰でもわかるのだが、しかし膨大な予算の相互の関係は複雑で、それが外からはなかなかわからない。結果として387兆円という数字だけが国民に注目され、ひとり歩きした。

       *   *   *

    批判の矢面にさらされた財務省はたまらず国民に向けて特別会計について「わかりやすい」説明を出す羽目になった。当時のものは消えてしまったようだけど、平成26年度予算について同様の説明をしているページがある。

    「特別会計の歳出予算額」 『財務省』

    http://www.mof.go.jp/budget/topics/special_account/yosan.htm

    特別会計の歳出総額は411兆円だが重複分を除くと195.2兆円であり、内訳は国債償還費91.7兆円、社会保障給付費58.9兆円、地方交付金19.3兆円、財政融資資金16.6兆円、東日本大震災復興費3兆円…と除いていくと残りは5.8兆円である、と。当時(2004年頃)は震災復興費はなかったわけだが、大筋としてはそんなに変わらなかったと思う。

    ようするに財務省の言い分としては、国債償還費は過去の借金の返済分だし、社会保障費や地方交付金は法律にしたがって支出しているだけで、実際に自由にできる金額はほとんどない、ということなのだろう。つまり自分たちが非難されるのは濡れ衣だ、と(笑)。

       *   *   *

    ただこの財務相の反論(?)はほとんど話題にならなかった。マスコミにとっても国会議員にとっても、官僚の無駄遣いを叩く内容は国民ウケするからどんどんアピールするが、反論はあまり報道されない。

    そして「特別会計=財政赤字の諸悪の根源」みたいな雰囲気を持ち越したまま、2009年に「消費税を増税しなくても財源は捻出できる」というマニフェストを掲げた民主党が総選挙で勝利、政権交代が行われた。

    民主党政権下で特別会計にメスを入れるという「事業仕分け」というものが行われた。蓮舫議員が官僚たちに「2番じゃいけないんですか」と迫ったシーンは当時国民に注目された。しかし官僚たちをやり込める蓮舫議員の小気味良いディベートに熱狂する国民が多い一方で、なんか変だと感じる国民もいた。

       *   *   *

    一番の違和感は見直し額が結局1.7兆円程度だったことだろう。大山鳴動してこれだけ?と。特に2004年頃の387兆円という特別会計のイメージをそのまま引きずっている人々にとって、1.7兆円というのは、肩透かしを食らったはず。

    しかし前述のように純粋に自由になる特別会計予算は10兆円前後であり、その中から見直すとすればせいぜいこの程度の額になるのもしかたない。すべては387兆円という実態のないイメージだけの数字がひとり歩きしてしまったためといえよう。

    結果的にこれが国民の民主党政権への失望の1つとなり、再度の自民党政権への交代につながった。民主党は特別会計によって政権を得て、特別会計によって政権を失ったわけだ。

    執筆: この記事はメカAGさんのブログ『疑似科学ニュース』からご寄稿いただきました。

    寄稿いただいた記事は2014年08月29日時点のものです。

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