西アフリカの広域で、エボラ出血熱の感染が拡大している。
エボラ出血熱とは、エボラウイルスの感染によって発症する疾病で、感染後、2~21日の潜伏期を経て、突然の発熱、頭痛、倦怠感、筋肉痛、咽頭痛等の症状を発症する。その後、嘔吐、下痢、胸部痛、出血(吐血、下血)等の症状が現れるとされている。
現在、エボラ出血熱に対するワクチンや、ウイルスに退所する治療法はないため、患者の症状に応じた治療(対症療法)を行うことになる。(未承認薬によって、症状を回復したケースが報告されているが、今の時点では確実な治療法ではない。)
もっとも恐れられているのは、致死率の高さだろう。1976年にコンゴ民主共和国で、エボラ出血熱が初めて確認された時は、318名の患者のうち、280名(88パーセント)が死亡するという猛威をふるった。
そのため、今回の感染拡大は、世界各地で警戒を強める結果となっているが、残念ながら科学的な根拠のないデマも増えているのが実情だ。
●西アフリカでの感染拡大は、家族の看護やご遺体にふれる葬儀の習慣から
西アフリカ諸国へ渡って、エボラ出血熱の治療にあたる医療関係者なども感染するケースが出てきた。
非常に残念なことに、アメリカでは、エボラ出血熱に感染した医療関係者などを帰国させないようにという意見が増えているという。帰国させれば、アメリカ国内でエボラ出血熱が蔓延するという理由のようだが、エボラウイルスは空気感染しない。患者の体液が粘膜に付着した場合に感染するケースが多いとされている。
エボラウイルスは、インフルエンザのように、くしゃみなどによる飛沫で感染するほど感染力はなく、医師や看護師が患者の採血を行った際に、謝って注射針を自分の手に刺してしまう場合などが最もリスクが高い状態となる。
一般の人が感染するケースとしては、感染した患者を家族が看護する場合に、血液などに直接触れたりするケースがリスクが最も高いケースとなるとされている。また、西アフリカ諸国では、患者が亡くなった場合に、葬儀の際に遺族が患者の遺体にふれる習慣があるという。そのため、感染拡大を招いているというのがWHO(世界保健機関)をはじめとした専門家の見解だ。
また、エボラ出血熱が拡大している西アフリカの地域は、医療機関では絶対に必要な、二次的な感染を防ぐための衛生設備が管理されていないことが多いといわれている。使い捨ての注射針やマスク、医療関係者のウエアなどいった必需品も不足するケースすら珍しくないともいわれる。
現在は、他国の医療従事者が、二次感染を予防する物資を持ち込んで治療を行っているので、少なくとも医療機関での二次感染リスクは低い。
●それでも広がる科学的な根拠のないデマ
必要な物資と、各国の協力があれば、今回のエボラウイルスの拡大は封じ込めが可能になると思われる。
現に1976年にコンゴ民主共和国でエボラウイルスによる死亡者が初めて出た時は、318名の感染者のうち280名(88パーセント)が死亡した。しかしながら、2012年のコンゴ民主主義共和国での発生は、57名であり、死亡者は29名(51パーセント)である。
このデータは、感染の拡大が見られた際に、適切な対応を行えば、被害の減らすことができることがわかる。それにもかかわらず、先に述べたアメリカでの「感染者をアメリカに帰国させるな」といった科学的根拠のないデマは増える傾向にある。
もっとも深刻なデマが以下の例だろう。
治癒した患者からもエボラ出血熱に感染することがある
通常、エボラ出血熱の症状がが起きている患者からしか感染はしない。また、空気感染はしないことが分かっている。
エボラ出血熱は、抗菌作用のあるタマネギやその他の薬草でウイルスを殺すことができる
一般的に抗菌作用があるとしても、ウイルスに採用するとは限らない。接触を避け、患者に接触したラテックスのグローブや衣類などは、熱による処分などが好ましい。
塩水を大量に使えば感染しない
WHOが警告しているが、科学的根拠はない。また、この噂を信じた人が、体調を崩すなどの健康被害も起きているという。
超自然的な力でエボラ出血熱を予防・治癒させる
もっとも無責任なのは、超自然的な力でエボラウイルスを予防したり、治療ができると触れ込む、民間療法の専門家だ。西アフリカのとある国では、伝統的な民間療法師や祈祷の専門家が、エボラの予防や治療が可能だと触れ込み、かえって感染を拡大させる懸念を生んでいる。
冷静に考えれば、荒唐無稽な話であっても、パニックになれば、こういった危険な方法にすがる人も増えてくる。
日本とて笑えない。かつて、HIVの感染が確認された時、「空気感染するのではないか?」といった憶測や、特定の性的嗜好のある人しか感染しないというデマを生んだことがある。
西アフリカでのエボラ出血熱の感染拡大は、このまま封じ込められると思うが、先に日本国内で発生したデング熱をはじめ、感染拡大が考えられる疾患の発生が言われる際は、正確な情報を取り、的確な対応を心がけるようにしたい。
※画像は『足成』より
http://www.ashinari.com/2011/01/19-344825.php
※この記事はガジェ通ウェブライターの「松沢直樹」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?
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