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「未来の党」の自滅 問われるべき脱原発政党の中身
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「未来の党」の自滅 問われるべき脱原発政党の中身

2012-12-22 20:01
    「未来の党」の自滅 問われるべき脱原発政党の中身

    今回は濱田 幸生さんのブログ『農と島のありんくりん』からご寄稿いただきました。

    ※すべての画像が表示されない場合は、http://getnews.jp/archives/279890をごらんください。

    ■「未来の党」の自滅 問われるべき脱原発政党の中身
    「未来の党」の自滅 問われるべき脱原発政党の中身
    早朝の北浦の前浜。もやっていますが、水鳥がにぎやかです。
    (画像が見られない方は下記URLからご覧ください)
    http://px1img.getnews.jp/img/archives/efbd8d01.jpg

    今回の衆院選で、私は「日本未来の党」を注目していました。初めはかなり好意的に、そして途中からは失望と共に、ですが。

    そして結果は報じられているとおり、公示前62議席、改選後9議席でした。もはや出直しが効くかどうか分からない負けっぷりです。

    特に小選挙区ではわずか2人しか勝利できず、そのひとりは「あの」小沢一郎氏です。

    「原発ゼロの会」の阿部知子氏もかろうじて比例で復活しているありさまですから、脱原発派はほとんど国会に議員を送り込めなかったことになります。

    「未来の党」代表代行で、脱原発運動の中心的存在だった飯田哲也氏は、中国電力上関原発の着工問題で揺れる山口2区においてもダブルスコアで敗北し、惜敗率により比例復活もかないませんでした。

    この党は党として当然持つべき組織体制や綱領がまったく整っていない上、党首嘉田氏は現職知事とのパートタイムですので、このまま個々別々に他の政党に吸収されていくか、小沢氏のミニ私党となっていくことでしょう。

    もっとも小沢氏に今後も政治生命が残っていればですが。彼と組んだことについてはここでは触れませんが、おそらくもっとも後悔しているのは、嘉田氏と飯田氏のはずです。

    一方民主党は、鳩山、菅内閣時代までは原発比率50%路線の原発推進政策に邁進していたので、「にわか脱原発派」と呼ぶことにしますが、この「にわか派」ですら原発立地を抱える13選挙区中わずか1選挙区で勝ったにとどまっています。

    (下図参照 産経新聞12月18日)

    「未来の党」の自滅 問われるべき脱原発政党の中身

    (画像が見られない方は下記URLからご覧ください)

    http://px1img.getnews.jp/img/archives/m02.jpg

    「原発銀座」の異名がある若狭湾の福井3区でも自民の圧勝、今、活断層が問題となっている東通原発がある青森2区でも自民が勝利しました。

    さて、飯田氏は現実政治の中でもみくちゃにされました。

    大阪市特別顧問で橋下氏の下にいたかと思うと、橋下氏の大飯原発再稼働容認あたりからきしみ始め、「維新の会」そのものが原発推進派の石原老人に乗っ取られてしまった為に、いまや公然と罵り合う仲です。

    山口知事選での敗北に続いて、今度はピュアな学者肌の嘉田氏と組んだのですが、またもや今度はあろうことか、エコが日本一似合わない男・小沢一郎氏に冷や飯を食わされ、締め切りに名簿提出できずに、嘉田氏の元部下に「よしなに」計らってもらったという醜態ぶりでした。

    私はこの「未来の党」の飯田氏が書いた「未来の党」の事実上の綱領である「原発完全ゼロへの現実的なカリキュラム」を読んだ時に、そうかこの人においてすらこんなレベルだったんだ、となんともいえない落胆を味わったことを思い出します。

    この飯田氏は、現在ある電力体制を批判する時の切り口は大変にシャープでした。実際にこの部分で私も教えられたことが多くありました。

    しかし、現実に脱原発をする上では難問は山積しています。このブログで取り上げただけでもこれだけあります。

    (1) 使用済み燃料の最終処分はどうするのか

    (2) 代替エネルギーは何を考えるのか

    (3) その拡大のための財源はどうするのか

    (4) 電気料金値上がりによる国民生活や経済への圧迫をどのように回避するのか

    (5) 脱原発が完了するまでの期間の原子力安全・規制機関はどのようにあるべきなのか

    (6) 化石燃料の増大によるCO2対策はどうするのか


    私は飯田氏の著書を何冊か読んでいますが、それについてほとんど書かれておらず、ドイツのFIT(電力の全量固定買い入れ制度)だけを、理想的事例として持ち上げているだけでした。

    そして元々工学系の人ですから、スーパーグリッドなどの技術の進歩がありさえすれば、再生可能エネルギーが直ちに代替エネルギーとなるかのような書きぶりでした。

    もちろんその新規送電網投資や電気料金の大幅な値上がりで、厭戦気分のドイツの現状などおくびにも出てきません。

    何度か言っていますが、個人が脱原発を叫ぶのと、国政に参加する政党がそれを言うのとはまったく次元が違うのです。

    個人としての市民や研究者が脱原発を叫ぶ場合、必ずしも使用済み燃料問題までを考える必要はありません。あるいは、代替エネルギーの財源まで踏み込んで考える必要はないのです。

    しかし、政党となると違います。特に、「未来の党」は脱原発の専門店ですから、経済や農業政策について素人であっても愛嬌ですが、ことこの分野については完全な回答を準備しておかねばなりません。

    それでなくしては、国政に参画するなど10年早いのです。

    「未来の党」は、「卒原発」で電気代が値上がりするので、交付国債で値上げを先送りする、という公約を打ち出しました。

    交付国債の償還財源は最終的には送電費に上乗せされると書いていますから、いずれにせよ電気代が上がる事には変わりはありません。

    飯田氏は経済がわかっていませんね。電気料金の値上げを国債で充当したとしても、問題を先送りしただけなんですよ。

    それは本来は消費者が払うべきコストを、国が立て替えただけで、どこの会社もそれによっで売り上げが増えるわけでもなく、従業員の収入や雇用も増えるわけでもありません。

    要するに、「卒原発」をした結果の電気料金値上げ分を、国(税金)が尻拭いをしているだけで、まったく無駄な国債の利用方法です。景気はピクリともせず、財政負担のみが増大します。

    一種の福祉政策のような発想なのでしょうが、エネルギー問題を福祉問題と同じ発想法で混同されては困ります。

    このような発想は、飯田氏のオリジナルというより、小沢氏が民主党に持ち込んだバラ撒き政策の帳尻を国債などの政府支出で充当しようという考え方に影響されたみたいです。

    いわゆる「政府所得移転」政策といって、ただ政府が国民にその財源(政府所得)の金庫を開けて金をバラ撒いているだけです。(バラ撒き政策: 政府がデフレ不況期において、不足している需要を創らずに、国民への贈与である所得移転の支出を増やすこと。この政策では雇用も所得増加も生まれず、財政負担が増えるだけです。典型は、民主党の子供手当、高校無償化、高速道路無償化など。) 飯田氏は「電気料金値上げ手当」とでも称するのでしょうか。あまり選挙民は喜ばないと思うけど(笑)。

    このような方法をとる限り、もし「未来の党」が政権をとっても、小沢氏が言ったような「政権とれば金などいくらでも湧いて出る」などということがないのは証明済みな以上、民主党政権の子供手当てと同じ運命をたどるでしょう。

    これでは「卒原発」は財源枯渇で、子供手当と一緒でただの1年で廃止です。原発ゼロまでにはどう少なめに見積もっても20年はかかるので、これでは政策になりません。

    また、飯田氏は新規着工住宅に太陽光パネルを設置すれば、原発の代替となるというのが持論でしたが、このパネルの財源も国債を当て込んでいるのだと思います。

    これは一見自民の建設国債と似た発想ですが、自民党案が国内雇用を創出するのに対して、太陽光パネルはサンテックパワーなどの中国製が優勢なために、国富は中国へと流出していくことになります。ドイツはまさにそうでした。

    ■関連記事

    「NHK特集「揺れるドイツ自然エネルギー政策」に見るドイツの脱原発入り口戦略の失敗」 2012年9月17日 『農と島のありんくりん』

    http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/09/post-ceb6.html

    使用済み核燃料の最終処分問題についても、脱原発派はひたすら六ヶ所村の再処理工場を批判するだけでよかったわけですが、国政政党となった場合、現在約2万8千トン積み上がったプルトニウムをどのように処分していくのか回答せねばなりません。

    ■関連記事

    「使用済み核燃料(核のゴミ)の処分を考えない原発ゼロはありえない」 2012年11月29日 『農と島のありんくりん』

    http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/11/post-ebe9.html

    また、飯田氏がいくらスゥエーデンで学んできたからといって、かの国は消費税率25%(最大・軽減税率あり)ですよ。

    スゥエーデンを見習えと言って、消費税反対とはこれいかに。脱原発を押し進めていくなら、増税は不可避です。一種の環境税として徴収し、合わせて電気料金も値上がりしますから、国民生活は苦しくなる一方なのは当然です。

    それをこのデフレ不況の真っ只中でやればいかなることになるのか、少し想像力を働かせてほしいものです。

    もし増税に頼らないというなら、景気をよくして税収を上げるしかないのは当然ですが、すると自民党的な積極財政を取るしかないわけです。そのためには経済・財政・金融政策が必要です。

    つまりは「未来の党」は、原発反対・消費税反対・TPP反対と「反対」ばかりをつなぎ合わせた無責任な党でしかなかったのです。

    原発問題はいくつもの方程式のようなものです。

    原発を止めようと思えば、財政問題について考えねばならず、「核のゴミ」を解決するにはプルトニウムの核不拡散問題という外交・安全保障の問題になり、代替エネルギーで化石燃料が増えてしまうことによるCO2増大や、貿易赤字の増加も考えていかねばなりません。

    「命が大事か、経済が大事か」、というようなムード的な二分法ではなにも答えていないのと一緒です。繰り返しますが市民が言うのはかまいませんか、政党が言うのは愚かです。

    私はこのような形で、日本て初めて本格的に誕生した脱原発政党が挫折したことを実に残念に思います。

    東京新聞政治部長は選挙後に紙面で、官邸前のデモの盛り上がりや、6割の人が原発に反対していることを捉えて、「原発の存続をもくろむ自民党は民意を反映していない」と批判しています。

    確かに自民党の大勝は小選挙区制度のマジックです。それを一番よく承知しているのは自民党です。だから自民党は、今回の選挙で「」をまったく頼りにせず、ドブ板選挙に徹しました。

    ドブ板選挙の是非はともかく、この方法に徹する限り、基礎組織がない「未来の党」に勝機はありません。

    ならば、自民党批判をしても仕方がないではありませんか。問われるべきは脱原発派の主体そのものなのです。

    では「風」は脱原発に吹いたのでしょうか。東京新聞政治部長が言う6割の「脱原発」を支持する国民が、比例区で「未来の党」に投票すれば、このような結果にはならなかったはずです。

    無党派の「風」をもっともよく反映するはずの比例区は、自民と維新で二分しました。「未来の党」は、60%の脱原発の「風」どころか、5.61%(北関東ブロック)にすぎませんでした。

    政党たる基礎組織がない、綱領はやっつけ、そして「風」は吹かないの、ないない尽くしの「未来の党」が勝てるほど世の中は甘くありません。

    これは、脱原発派政党たる「未来の党」が、原発ゼロへの「回答」を真面目に用意してこなかったことに対する国民の評価です。

    国民は民主党の空手形にうんざりしているのです。にもかかわらず脱原発政党は、「風」頼みに終始しました。

    つまりは脱原発派は、自民党に負けたのではなく自滅したのです。その反省をしないで、自民党批判をしてもなんの意味もないではありませんか。

    私は本気で脱原発政党を作ろうと思うならば、他政党批判をするのではなく、真剣な脱原発シナリオを書き込んで、それを国民と共に議論していく地道な作業が必要だと思うのです。

    少なくとも、私が挙げた脱原発するにあたっての6つの問題程度に関しては、きっちりした、国民誰もが納得する回答を準備せねばなりません。

    迂遠なようですが、脱原発政党が再起するにはそれしかありません。そしてあまり時間がない。その期限は来年7月末の参院選なのですから。

    なお、本稿は、選挙前に大筋を書きましたが、選挙期間中には妨害になると申し訳ないので手控えました。言いたいことはまだ沢山ありますが、今日はこれにて。

    ●■交付国債で電気料値上がり抑制 未来、「卒原発」構想案
    朝日新聞 2012年12月01日

    日本未来の党(代表・嘉田由紀子滋賀県知事)が今後10年で「卒原発」を実現するための構想案が1日、判明した。電力システム改革を掲げ、脱原発に伴う供給体制移行期の電気料金値上がりを抑制するため、政府が3年間交付国債を発行することなどが柱だ。

    構想案は、党代表代行に就任する飯田哲也・環境エネルギー政策研究所長を中心に作成、「原発完全ゼロへの現実的なカリキュラム」とした。10年間で全原発廃炉を表明した嘉田氏の方針を具体的に示すのが狙いだ。2日に発表する総選挙の政権公約とあわせ、公認候補者に同意を求める。

    案では、3年間を「原発と電力システムの大混乱期」として改革集中期間と位置づける。原発を稼働させないことによる電気料金の値上がりを防ぐため、政府が電力会社に値上げ相当分を必要時に現金に交換できる交付国債として給付。3年をメドに発送電分離を進め、再生可能エネルギーの普及で収益が増える託送料(送電料)で回収するとしている。

    執筆: この記事は濱田 幸生さんのブログ『農と島のありんくりん』からご寄稿いただきました。

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