展示会に出展した試作品が不正競争防止法2条1項3号の「商品形態」として守られなかったハナシ(地裁だけど)
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展示会に出展した試作品が不正競争防止法2条1項3号の「商品形態」として守られなかったハナシ(地裁だけど)

2016-02-22 23:55
    判例全文(東京地裁 平成27年(ワ)2077)


    この件について興味があって知りたいという人がいたので書いてみます。
    地裁なんで、ひっくり返る可能性もアリなんですが。
    (判決言い渡し日は2016/1/14 控訴されたかどうかがすぐわかるといいんですけどね~) 

    事案を簡単にまとめますと。
    原告さん
    ①平成23年11月1日 TOKYO DESIGNERS WEEK 2011にコレを出品

    ※判決文より

    ②平成24年6月6日 インテリアライフスタイル東京2012にコレを出品

    ※判決文より

    ③平成27年1月5日頃 ウェブサイト等でコレの販売を開始

    ※判決文より

    被告さん
    平成25年秋ごろ(つまり②と③の間)に製品の輸入販売を開始
    判決文には資料が無いのですが、多分コレじゃないかと思います。

    で、原告さんが「パクられた!」となって訴えを起こした事案です。

    訴えの根拠は不正競争防止法と著作権法です。
    著作権法については今回は割愛しますが、簡単に言うと、こういうシンプルなプロダクトデザインは「著作権は無理スジ」です。

    不正競争防止法の訴えの根拠なのですが、不正競争防止法にはこんな条文があります。

    第二条  この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。
    (略)
     3号 他人の商品の形態(当該商品の機能を確保するために不可欠な形態を除く。)を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、又は輸入する行為

    工業製品のデザインは主に意匠登録によって守られるのですが、全ての製品について意匠登録を求めるのは事業に対して酷なので、3年という期限を切って無登録でも守ることにより、公平な競争原理を確保しようという趣旨の条文です。
    基本的には、発売された商品について3年間はデッドコピーレベルの模倣から守る趣旨です。

    で、時系列を確認するとわかる通り、原告さんが商品の販売を実際に開始したのは被告さんが輸入販売を開始した後なんですね。
    だけど、デザインのコンセプト自体は被告さんの輸入販売の開始前に展示会に出展した時点で完成していて、展示物からもそれはわかります。
    原告さんが「パクられた!」と憤る気持ちは十分にわかります。

    原告「試作品を展示会に出した時点で、商品のコンセプトは完成しているし、不正競争防止法の商品形態として守られる!」
    被告「まだ商品として売ってないじゃん。それじゃあ商品形態とは言えないでしょ?」
    ということで争いになりました。
    なので、裁判においては、①②の展示物のみが保護されるか否かの判断の対象となっています。

    で、結果から言うと原告さんの負けです。
    今回の事案に関しては、展示会に出展された試作品は、不正競争防止法2条1項3号で形態が保護される「商品」ではないと判断されました。

    理由として列挙されているのは
    ・展示会への出展の際、原告の試作品は銅線で外部電源に接続する構成となっている
    ・平成24年7月、被告側の輸入業者が原告さんに②の製品化について問い合わせを行った際、「製品化の具体的な日程が決まっていない」との回答だった
    ・実際に製品化された③は本体がUSBによって電源に接続される構成となっている

    これらの理由から、①②の試作品は、一般の家庭等において簡単に使用することができない開発途中の試作品であり、市場における流通の対象となる物とは認められないから不正競争防止法2条1項3号の「商品」ではない。

    という判断です。

    まぁ、原告さんの気持ちはわかりながらも、法律に明確に規定されていない部分を「気持ち」で守ることの危険性を考えると仕方のない判断かなぁという気がします。
    少なくとも、地裁レベルで原告さんが勝てる事案ではないんでしょうね。
    「実質的に違法性あり!」
    という踏み込んだ判断を勝ち取るには知財高裁での判断を仰ぐしかないでしょう。


    ですが、今回の裁判で学ぶべきところもあります。
    それは、

    すぐにでも受注を受けられる状態ではないのに、特許や意匠での保護も準備せずに開発中の製品を衆目にさらしてはいけませんよ。

    という事ではないでしょうか。

    ①②の出展の段階で既に受注可能な状況であれば、今回のような事は起こらなかったかもしれませんし、受注可能な状況であれば仮に納品までに数か月を要するような状況であったとしても「商品」として認められたかもしれません。
    特に、被告側の輸入業者は原告さんに対して製品化についての問い合わせを行っているようですので、仮に原告さんが受注を受けられる状態であれば原告さんから仕入れていたのかもしれません。

    今回の製品で大事な部分は、
    「水を張ったコップにスティック状の本体を挿して加湿器として機能させる」
    という商品のコンセプトでしょうから、それが知られてしまうことはとてもハイリスクな事だという認識が甘かったということかと。
    っていうか、まだ受注可能な状態じゃないのに、なんて展示会なんかに出展したのかという疑問もあるんですが。
    ともかく、商品のコンセプトを公開するときにはコンセプトをパクられるリスクを考えましょうという教訓です。

    知財の仕事をしていると、割とこういった問題は耳にするところです。

    まだ市場にはない新しいモノでなんとなく売れそうなんだけど、アイデア自体は言われてみれば簡単な事で特許を取るには厳しい

    そういったアイデアをどう保護するか?
    弁理士によって考え方は違うと思いますし、事案によっても答えが違うのですが、それを考えるのが弁理士の仕事の面白いところだったりします。
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