廃人の惑星  ♂3:♀2
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廃人の惑星  ♂3:♀2

2013-06-03 14:15

       廃人の惑星           

       作者  はなみん 20120726

       台本化提案:秋

    *こえ部お題作者 Tome館長 アナウンス部分に使わせていただきました*

    HP   http://www.voiceblog.jp/curatortome/

    こえ部 http://koebu.com/user/poetome

    「廃人回収車」全文 

    http://koebu.com/topic/%E3%80%90%E3%82%BB%E3%83%AA%E3%83%95%E3%80%91%E5%BB%83%E4%BA%BA%E5%9B%9E%E5%8F%8E%E8%BB%8A 

    *この物語はフィクションです。実在の人物、団体、事件等にはいっさい関係ありません*

    *だいぶブラックジョークを含んでいます 苦手な方は回れ右*

    *ニコニコ動画で放送する場合、二枠必要です*

    *♂3:♀2 (叫び&かぶり有り)*


    りか:♀ 回収屋(ゴロウ)の娘 純粋なゆえの狂気がある(叫び、長セリフ有・殺人・生存)

    回収屋(ゴロウ):♂ 廃人回収業者 ぐーたらな大人(叫びセリフ有・銃殺)

    職員:♂ 地球政府の役人 とっても感じの悪い公務員 Bかぶり(刺殺)

    息子(ハヤト):♂ ニート 自分大好き 世間知らず(生存)

    イクミ:♀ ゴミ拾い歴3年の廃人 現実的だがノイローゼ気味 Aかぶり(銃殺)

    A:♀ 息子(ハヤト)の母 パチンコ依存症 セリフ少ない (洗脳)

    B:♂ 息子(ハヤト)の父 アルコール依存症 セリフ少ない (洗脳)

    婚約者:イクミの政略結婚相手 セリフ一箇所

     役表

    りか      :
    回収屋(ゴロウ)  :
    職員・B・婚約者:
    息子(ハヤト)   :
    イクミ・A   :

    1 廃人回収車

    りか    :“廃人回収車―、廃人回収車―

          毎度お騒がせいたしております。廃人回収車でございます

          ご家庭でご不用になりました長期ヒキコモリ

          処分にお困りのネット中毒者 手の付けられない腐女子

          厨二病患者など、どんな廃人でも無料でお引き取りいたします

          もう動けなくなった病人 動かなくなった死人など

          怪我 病気 生死にかかわらず、お気軽にお声をおかけ下さい“

          …ねえお父さん

    回収屋(ゴロウ):何だ、りか

    りか    :どうして私達廃人を回収しているの?

    回収屋(ゴロウ):そりゃお前、儲かるからだよ

    りか    :何で儲かるの?

    回収屋(ゴロウ):廃人を集めて持っていくとな

           地球政府のお役人さんが良い値で買ってくださるんだよ

           まあその料金もオレらの税金から出ているんだろうがな…

           選挙が終わったとたん税金上げやがって

    りか    :消費税また上がったもんね。30%?

    回収屋(ゴロウ):この前まで5%だったってのによ~

    りか    :ねえねえ、政府が廃人を買ってどうするの?

    回収屋(ゴロウ):どこかで働かせるんだと

    りか    :何をさせるの?

    回収屋(ゴロウ):知ったことか

    りか    :廃人って働けるの?ニートとか入ってるよ

           ニートって働いたら負けだって思ってるんでしょ

    回収屋(ゴロウ):施設に入れて更生させるって噂だ

    りか    :どうやって?

    回収屋(ゴロウ):脳みそに何やら細工するんだってよ

    りか    :細工って何?ハサミで切ったりするの?痛い?

    回収屋(ゴロウ):…はぁ。何だこの押し問答は…疲れる

           疲れる上に一円も稼げねぇ

           りか、無駄口叩いてないで仕事手伝え

           全く…お前を食わせる為に廃人回収車なんて

           胡散臭い商売してるんだぞ。ありがたく思えってんだ

    りか    :お父さん…

    回収屋(ゴロウ):自分の食いぶちくらい自分で稼げ。

           ほれ、アナウンス!

    りか    :“こちらは廃人回収車です。車はゆっくりゆっくり移動しております

           ご家庭でいらなくなった廃人はおりませんか?

           ネトゲ廃人 自称宇宙人 近所迷惑なロリコン息子

           世間に顔向けできないコスプレ娘

           働きもしない飲んだくれ暴力亭主

           パチンコ中毒なカラオケ大好き夜遊び奥さん、などなど

           どうにも手に負えない重い廃人でも大丈夫です

           力自慢の運転手が力ずくで運び去りますのでご安心ください”

    A     :ちょっとー、回収屋さーん

    回収屋(ゴロウ):はいよ!奥さん

    A     :うちのだんな持って行ってくれない?

           お酒ばっかり飲んで働かなくて困ってるのよ

    回収屋(ゴロウ):まいどー!

    B     :おいおいおい!

           お前だって毎日パチンコして家事もロクにしないじゃないか!

           こいつを回収してくれ!

    回収屋(ゴロウ):はいはい。二人とも動ける廃人ですな

           トイレットペーパー1つお渡しします

    息子(ハヤト) :安いなー

           救いようのないダメ人間だと思っていたけど

           ここまでとはなー。ははは

    B     :この子も連れて行ってくれ!

           学校中退したあげく就職もしないで部屋にこもっている役立たずなんだ!

    回収屋(ゴロウ):こりゃまた、どうもー

    息子(ハヤト) :何すんだよ離せ!オレよりうちのばあちゃん持って行けよ!

    回収屋(ゴロウ):はーい。こちらのおばあさんもですね。よいしょっと

           じゃ、ポケットティッシュも一個つけます

           ちゃんと縁側に置きましたからね?

    りか    :家族全員回収車に乗せたら、そのティッシュは誰が使うの?

    回収屋(ゴロウ):知らん!こういう決まりなんだ

           よーし出発。りか、アナウンス!

    りか    :“廃人回収車―、廃人回収車―。毎度お馴染み廃人回収車でございます…”

    回収屋(ゴロウ):…ふぅ、今日はこのくらいだな

           そろそろ役所によって帰るか

    りか    :お父さんもだよね

    回収屋(ゴロウ):ん?

    りか    :お父さんも廃人だよね

    回収屋(ゴロウ):…何だと!?

    職員    :地球政府廃人部門で~す。あー山本さん、いつもお疲れ様です

    りか    :職員さん、今日はお父さんも引き取ってください。この人廃人なんです

    職員    :おやそうでしたか!

    回収屋(ゴロウ):ちょっと待て!りか

    りか    :誰かが廃人て言ったら廃人なんでしょう?私、お父さんを廃人にする

    回収屋(ゴロウ):馬鹿言ってんじゃねえぞ

    りか    :怒りっぽいし、怒鳴り声は大きいし、お母さん泣かせるし

           こんなお父さんもういらない

    回収屋(ゴロウ):大人をからかうな!てめえ後で見てろよ

           おぃ、あんたからも何か言ってくれ

    職員    :実の娘さんがお父さんを廃人認定したんですから

           あなたは立派な廃人ですよ

           他の人と一緒に回収させていただきます

    りか    :ありがとう

    回収屋(ゴロウ):嘘だろ、ちょ…!どこに連れて行くんだ!やめろ!

    職員    :ほら暴れない!周りを見てください

           皆さん絶望してぼんやりしているでしょう

           山本さんも大人しくしてくださいよ

    回収屋(ゴロウ):りか…りか、悪かった!オレが悪かった謝る

           これまで乱暴にしちまってごめんな

           反省するからよぉ…

    りか    :ばいばい廃人

    回収屋(ゴロウ):助けてくれー!

    りか    :”廃人回収車ー、廃人回収車―

           毎度お騒がせしております。廃人回収車でございます

           ご家庭でご不要となりました長期のヒキコモリ

           手の付けられない腐女子など

           どんな廃人でも無料でお引き取りいたします

           体の動く廃人でしたらティッシュをサービスいたします

           廃人回収車ー、廃人回収車―”


    2 資源は大切に


    息子(ハヤト) :…っ!?ここは、どこだ…!

    職員    :手術控え室です

    息子(ハヤト) :オレの家族は…

    職員    :すでに手術を終えて隣の建物に移るところです。ほら

    息子(ハヤト) :…何だよあれ。何でヨダレ垂らしてフラフラ歩いてるんだよ

           だらしない親だったけど、あそこまでじゃなかったぞ

    職員    :そりゃあ当方の脳外科手術を受けたんですからね

           当たり前ですよ

           頭蓋骨に穴をあけて脳の一部を切り取るんです

           今では技術も上がって死亡率も減ったんですよ

           仕上げは去勢措置…どうです、スキがないでしょう

    息子(ハヤト) :じ…人権侵害だ!訴えてやる

    職員    :どこに訴えるんですか

           私達政府が取り仕切っている事業ですよ

           それに廃人の皆さん、とっても幸せそうでしょう?

           言う事もよく聞くし…           

           社会不適合者でいるより

           よっぽど世間の役に立つというものです

           ああ…そうそう、貴方のおばあさんは燃料部門に回しました

    息子(ハヤト) :燃料って何だよ。ばあちゃんに何すんだよ!?

    職員    :労働力にならない廃人は、身体の使えるところを取り出して

           残りは発電所で燃やして電気にするんです      

           灰だって肥料になりますし。資源は大切にしなければね

           身体は動かないとは言え口は達者で…     

           孫に廃人認定されたと最後まで泣き叫んでいらっしゃいました

           ああ、金歯は残ってましたっけ。ご覧になりますか?

           もちろん金は有効な資源としてこちらで回収させていただきますが

    息子(ハヤト) :そんな…!

    職員    :今度は貴方の番です

    息子(ハヤト) :嫌だ!お願いだよ。ニートやめるから、学校行くから

    職員    :無理ですよ、もう廃人回収部門に来てしまったんですから

    息子(ハヤト) :そうだ!何でも言うこと聞くよ。だったら手術受けなくてもいいだろう?

    職員    :そう言われましても…

           おや、もう五時ですか終業時間になってしまいました

           困りましたね。貴方がごねてるから悪いんですよ?

           残業しない主義なのに

    息子(ハヤト) :じゃあ、オレ自分で隣のビル行くからさ

           あんたもう仕事切り上げて家に帰れよ。な?

    職員    :うーん…ま、良いでしょう

           は~い、おでこ出してー

    息子(ハヤト) :…何だよ

    職員    :フフフ…ちょっと失礼しますよ

    息子(ハヤト) :…ぐあぁ!!!

    職員    :ただの焼きごてですよ、騒がしい人ですね

    息子(ハヤト) :あっ…がぁあっ!

    職員    :8810番。あなたはこれから8810番ですからね

           ではさようなら

           ああ全く、3分も長く働いてしまった

    息子(ハヤト) :痛え…。額に焼きごてって…どこの家畜だよ


    3 イクミとの出会い


    イクミ   :8810番なら、はー、やー、と。ハヤトって呼ぶわ

    息子(ハヤト) :君は…

    イクミ   :イクミ、193番。いち、きゅー、みっつで、イ・ク・ミ

    息子(ハヤト) :なるほどね…しっかしみんな数字の焼印押されているんだな

           イクミは、普通に話せるのか

    イクミ   :ラッキーだったの。貴方みたいに

    息子(ハヤト) :そうか。イクミが居てくれて良かったよ

           真面な奴オレ一人かと思って心細かったんだ

    イクミ   :真面かどうかは分からないけれど

    息子(ハヤト) :へ?

    イクミ   :何でもない

    息子(ハヤト) :それにしても…汚くて臭い所だな

           周り中ヘラヘラ笑ってる奴らばっかりで気味が悪い

    イクミ   :ここに来た人たちは皆頭の中をいじくられて

           よく命令を聞く本当の廃人にされるの

    息子(ハヤト) :そんな事をしてどうするって言うんだよ

    イクミ   :地球政府が使うの。廃人たちに世界中のゴミを拾わせるんだ

    息子(ハヤト) :ゴミ拾い!?

    イクミ   :ええ。ゴミのような人間がゴミを拾うのよ。適材適所って言うんだっけ

           廃人にはぴったりでしょう?

    息子(ハヤト) :ぴったりって言われても…

    イクミ   :今、この星はゴミだらけなのよ

           誰かが綺麗にしないと住めなくなってしまう

           そこで地球政府が出した結論が、廃人回収車による労働力の確保

           廃人は年々増える一方だものね

    息子(ハヤト) :だったら、こんな酷い事する前に

           ゴミを拾えって一言いえばいいじゃないか

    イクミ   :貴方なら拾った?

    息子(ハヤト) :え

    イクミ   :貴方、部屋にこもりっきりだったんでしょう?

           学校にも行ってなかったんでしょう?

           社会や大人達を恨みながらネットやゲームばかりしていたんでしょう?

           そんな人にゴミを拾って地球を住み易くしましょうなんて言って

           やると思う?

    息子(ハヤト) :それは…

    イクミ   :だから仕方がないのよ

    息子(ハヤト) :これから一生ゴミを拾って生きるのか

    イクミ   :そうよ。明日朝早いからもう寝たほうがいいわ

    息子(ハヤト) :こんな人生いやだ。家に帰る

    イクミ   :帰っても貴方の面倒を見てくれる人なんて一人も居ないんじゃない?

    息子(ハヤト) :ああ…。家族みんな、廃人になったんだっけ

           ははは、はは…うぅ…(泣)

    イクミ   :8810番君。貴方ってまだ涙が出るのね

    息子(ハヤト) :イクミは平気なのか

    イクミ   :平気っていうか…もう諦めた

    息子(ハヤト) :何だよそれ

    イクミ   :一年もすればハヤトもそうなる

           いっそ手術を受けて皆のようになっておけば

           楽だったって言ってるかもね

    息子(ハヤト) :君は何年ここに居るんだ

    イクミ   :三年

    息子(ハヤト) :そんなに…

    イクミ   :あーあ…何も考えずぼんやりして、ただゴミを拾っていられれば

           幸せなんだろうな

    息子(ハヤト) :おかしいよ、ここ、変だよ。イクミも変だ

           何もかも間違ってる!

    イクミ   :ハヤトは元気だね。ふふ

    息子(ハヤト) :笑うな…お願いだから笑うなよ

    イクミ   :やっぱり涙は無い方がラクだな


    4 彼女の過去


    息子(ハヤト)M:あれから三か月。くる日もくる日もゴミ拾い

           つらい、きびしい、休みたい

           廃人達は文句も言わず毎日ゴミを拾い続けている

    イクミM  :時々倒れる人がいる。倒れると車に乗せられてどこかに行ってしまう

    息子(ハヤト)M:車には『燃料部門』と書いてある。ばあちゃんが行ったのと同じ所だ

    イクミM  :あの車に乗った人は誰も帰ってこない

           きっと燃やされて電気になってしまうのね

           さすが地球政府、無駄がない。資源は大切に

    息子(ハヤト)M:ここに居たら遅かれ早かれ資源ゴミだ。いつか脱走してやる

           それだけを心の支えにして今日もゴミを拾って歩く

    イクミ   :ね、昔話してもいい?

    息子(ハヤト) :何だよいきなり…

    イクミ   :何となく。聞いて欲しくなったんだ

    息子(ハヤト) :うん…いいけど

    イクミ   :昔々ある所に小さな印刷工場がありました

    息子(ハヤト) :印刷工場?

    イクミ   :うんそう。年賀状とか広告とかね。年末はとっても忙しいんだ

    息子(ハヤト) :へぇ

    イクミ   :工場は小さくて、家族で何とか経営していました

           工場長の娘は毎日毎日インクと紙にまみれて

           家業を手伝っておりました

           注文された原稿や画像の汚れを

           パソコン画面でちょっとずつ消したり、営業したり…

    息子(ハヤト) :原稿の汚れ?それやんないといけないの?

    イクミ   :うん。大企業だと綺麗な画像送ってくれるんだけど

           個人や中小企業のは結構汚いんだ

           余白が汚れている所はドットで修正

    息子(ハヤト) :面倒くせぇ…

    イクミ   :そうね…でも売上伸ばさないといけないから、しょうがない

           せっかくのお客さんに

           原稿汚いからって突っ返す訳にもいかないでしょ

    息子(ハヤト) :ふぅん…大変そうだな

    イクミ   :皆一生懸命働いていたんだけど、いつの間にか借金がかさんで

           もう駄目だって時

           工場長が娘に縁談を持ってきたんだ

           嫁に行けば負債を肩代わりしてくれるって人がいるって

    息子(ハヤト) :縁談…今時?

    イクミ   :まだある所にはあるのよ

           娘の相手は大手の森林伐採会社の御曹司だった

           御曹司っていっても50代のおじさん

    息子(ハヤト) :森林伐採…?

    イクミ   :山や森の木を切り倒して売るんだ

           その木が紙になる。紙は印刷して新聞や雑誌になる

           あの会社はお金欲しさにやり過ぎて、環境保護団体に目を付けられてる

    息子(ハヤト) :それ、ヤバくない?

    イクミ   :ヤバいかどうかなんて言ってられなかった

           だって結婚しなきゃ工場は確実に潰れる

           娘もその事をよく知っていて、嫌とは言わなかったの

    息子(ハヤト) :ねえその娘ってさ…

    イクミ   :とんとん拍子に事が運んで、気が付いたらもうお見合い当日でさ

           都心の有名なフレンチ料理店

           仲人さんと振袖の娘…型どおりでしょう?

    息子(ハヤト) :お見合いの事なんて分からないけど

    イクミ   :社長の息子は零細工場の娘を気に入った

           どこが良かったんだか今だに分からないけれど…

           娘も自分を良く見せようと、会社を救おうと必死だったから

    息子(ハヤト) :森林伐採で問題に…どっかで聞いたなぁ

    イクミ   :アマゾンとかインドネシアで貴重な森を切り開いてるの

    息子(ハヤト) :…あぁ~、それね。一度ネットで見た事ある

    イクミ   :そのお陰でオランウータンや像の数がどんどん減って…

    息子(ハヤト) :ふぅん

    イクミ   :森林があっという間に消えていくんだよ!?

           ハヤトはそういう事全然考えないの?ねぇ…

           自然が無くなったら、人間だって生きてはいけないのよ!?

           紙はあったら便利だけど

           他の生き物を殺してまで手に入れる物?

    息子(ハヤト) :まあそりゃあ…そうだけど。流石に無かったら困るだろ

           落ち着けよイクミ

    イクミ   :工場でも沢山紙を使ってた

           社会には必要な仕事だけど…それで環境が壊れていくなら

           私も地球を壊す手伝いをしていたのかな

           そんな事望んでるわけじゃないのに

           もう人でいるのが苦痛だわ

           この星に人類なんて居るからいけないんだ

           人間が不自然な事ばかりするから、他の生き物は大迷惑よ

           しかも自分がしている事に全然自覚がない

           目隠しをして崖っぷちを歩いている巨人みたい

    息子(ハヤト) :真面目だなー

    イクミ   :私はずっと悩んでた。けど仕事はやめられなかった

           そうしなきゃ食べていけないし…

    息子(ハヤト) :だったら何も悩む必要ないじゃん。考えすぎだよ

    イクミ   :考えるのを止められないの!

           悩まないなら…どんなに楽だろう。私には出来ない

    息子(ハヤト) :…お見合いはどうなったの?

    イクミ   :そうだった…あのね、その御曹司さんいけ好かない奴でさ

           親の会社が強大なのをカサにきて

           いつも上から目線でしゃべるんだ

           「ボクと結婚できてよかったね。玉の輿だ、一生恩に着ろよ」

           そんな事を言ってた

           「そのかわりボクの私生活に口を出すんじゃないぞ」って…

           お見合いの席からいきなりよ

           この縁談、絶対受けるに決まっている様な口ぶりで…嫌な男

    息子(ハヤト) :そうだね

    イクミ   :…一度は受けたのよ。工場を救う為には仕方ない

           自分ができるのはお金持ちと結婚する事くらい

           家族のため従業員のため…あんなに苦労して頑張っている人達を

           私の好き嫌いで路頭に迷わせる訳にはいかない

    息子(ハヤト) :時代錯誤だ

    イクミ   :それでも!そうするしかなかったの

           …でも式が近づくにつれて決心が鈍ってきて

           家から式場に向かう途中そのまま逃げ出した

    息子(ハヤト) :花嫁が…逃げた!?

    イクミ   :どうしても…耐えられない。あの男と一生を共にする事なんて…

           私は自分可愛さに親を裏切ったのよ

    息子(ハヤト) :…しょうがないじゃん。お互いの心の問題だろ?結婚なんてさ

    イクミ   :…ふふ。ハヤトは優しいね

           ま、結局すぐに捕まって廃人認定されたんだけどね

    息子(ハヤト) :え…え?だって何も悪くないのに

    イクミ   :悪い所が無くても、廃人だと言われれば廃人て事になるんだよ

           もし反対する人がいたら

           政府が廃人かどうか決める事になってる

           私の場合結婚相手が廃人認定をして、すぐに両親が控訴した

           でもね運が悪い事に…いいえ当然と言えば当然だけど

           あの大企業は政府に顔がきいた

    息子(ハヤト) :汚ねぇ…

    イクミ   :そういう訳で無理やり廃人回収部門に連れてこられたんだ

           抵抗はしたからね…引きずられてボロッボロ…

           いよいよ手術って時に

           縛り付けられた処置台の上で叫んだよ

           ”助けてください”って…

           これだけは絶対言いたくなかったのに…

    息子(ハヤト) :イクミ…そんな…言って当たり前だ、オレだって…

    イクミ   :それを聞いた時のあのおぼっちゃんの顔ったら…

           獲物を捕まえた猫っていうか

           あいつ、私の耳元で囁いたの

    婚約者   :「こんな悪い子にはお仕置きしなくちゃね

           そうだいい事を思いついた

           このまま脳外科手術無しで…シラフのまま

           廃人達の間に放り込んだらどうなるかな

           狂った奴らとゴミにまみれた一生か

           ねぇ、キミならどれくらい耐えられる?一週間?一年? 

           フフフ…キミに相応しい罰じゃないか?

           ボクをおとしめる様な事をするからいけないんだ」

    息子(ハヤト) :…っ!!

    イクミ   :それで…私は処置されずにここに入った

           手術を受けなくてラッキーだった…?

           いいえ違うわ。あれからずっと後悔してる! 

           ハヤト…三年も廃人達の中に一人ぼっちでいるのは辛かったよ

           …こんな苦しい思いをするなら、せめて両親を助ける為に

           あいつと結婚すれば良かった。その方がまだ浮かばれる

           ここに居たってうちの会社は立て直せない

           廃人部門に来たら死んでるのと同じ

           二度と外には出られない

           馬鹿だった…若くて考えなしで親不孝でそれから…

    息子(ハヤト) :もういい! (抱きしめる)

    イクミ   :…ハヤト?

    息子(ハヤト) :もうわかったから…自分を責めるの止めろ

    イクミ   :でも…これは私への罰なのよ

           仕事で地球を壊しつづけて

           結婚相手を選り好みして

           家族を助けるのも嫌がって

           人間でいるのも辛いと思っていた私への罰

    息子(ハヤト) :イクミのせいじゃない。相手が悪かっただけだ

    イクミ   :私さえ我慢していればみんな救われたのよ!

           う…うわぁああ(泣)

    息子(ハヤト) :イクミはもう、十分に頑張ったよ

    イクミ   :う…うぅ…っく…

    息子(ハヤト) :偉そうな事言えないけどさ…

           その御曹司って奴より、オレの方がまだましだと思うよ

    イクミ   :うぅ…ハヤト?

    息子(ハヤト) :オレ、今までぼんやりと生きてきた。ここに来てそれが良く分かったよ

           とりあえず大人が悪いって決めつけて何もしようとしなかった

           臆病なのを社会のせいにしていたんだ

           初めて会った時…イクミ言ったよな

           「ネットやゲームばかりしてたんでしょ」

           …その通りだよ

           自分の居心地のいい世界に逃げていた

    イクミ   :あれは言い過ぎだったね…ごめん

    息子(ハヤト) :最初はさ、正直ムカついてた。お前なんか何にもわからないくせに…って

           でもさイクミ

           …イクミと一緒にいると、落ち着くんだ

    イクミ   :落ち着く…?こんな場所でも?

    息子(ハヤト) :うん。覚えてる?オレが拾うゴミの量足りなかった時の事

    イクミ   :覚えてるよ

           拾う量が少ないと、足りない分キロ単位で一回ずつムチ打ちの刑

    息子(ハヤト) :そうそれ。外に出て体を動かすなんて久しぶりでさ

           要領は悪いし全然足りなくて

           これは絶対やられるなって覚悟してたら

           イクミが自分の分けてくれた

    イクミ   :だって…ハヤト入ってきたばかりだったし。ムチで打たれるのって

           初めは中々耐えられるものじゃないよ

    息子(ハヤト) :そうなんだろうな。でもおかげでオレ達二人とも

           3回ずつムチ打ちになった

    イクミ   :痛かったよね…

    息子(ハヤト) :わざわざ服めくるんだもんな…えげつないよな

           あれが公務員だなんて信じらんないよ

    イクミ   :そうだね…

    息子(ハヤト) :その時、イクミの…見えたんだ

    イクミ   :…何?

    息子(ハヤト) :背中の傷

    イクミ   :…!

    息子(ハヤト) :その赤い筋、ムチのあとだろ?

           嫌ってほどやられてんのにさ…どんだけ痛いか分かってるのに

           オレの為にまた…そんな必要無かったのに

           何で…オレなんかの為に

           そんな奴今まで一人もいなかったから…感動しちゃってさ

    イクミ   :そんなにすごい事じゃない

    息子(ハヤト) :すごい事だよ!他人を気遣うなんて…こんな状況で

    イクミ   :大げさだなハヤトは

    息子(ハヤト) :それからさオレ…あの、あったかいな…って

    イクミ   :?

    息子(ハヤト) :イクミのそばで生きてるって、あったかいなって気がして

           愛おしいって言うか…えっと…

    イクミ   :私の事、好きなの?

    息子(ハヤト) :ストレートだな!先に言うなよ

    イクミ   :ふふふ…ハヤト面白い

    息子(ハヤト) :笑う事ないだろ?これでも勇気振り絞ったんだぞ

    イクミ   :ふふ…ごめん。あははは

    息子(ハヤト) :何だよもぅ…

    イクミ   :あはは…はぁ。ありがとう

    息子(ハヤト) :…え?

    イクミ   :私はハヤトに会うためにここに来たのかな

           …好きだよ

    息子(ハヤト) :え!?本当?…女の子に好きって言われたの初めて…

    イクミ   :ハヤトの事大好き!!

    息子(ハヤト) :!?…大声出すなって

    イクミ   :だって嬉しいんだもの。
           …こんな気持ち久しぶり、ハヤトといればゴミ拾いでも何でも平気。
           私まだまだ頑張れそう

    息子(ハヤト) :…イクミ

    イクミ   :うん?

    息子(ハヤト) :好きだ

    イクミ   :私も  

    息子(ハヤト) :オレと一緒に逃げよう

    イクミ   :…それは

    息子(ハヤト) :ここを逃げ出すんだ

    イクミ   :一緒に行きたいのはやまやまだけど…そんな勇気無い

           逃亡した者は殺されるんだよ

    息子(ハヤト) :置いてなんか…好きな人を見捨てるなんてできない

    イクミ   :…ハヤト

    息子(ハヤト) :二人で自由になろう

    イクミ   :自由…?自由か。夢みたいね…

    ーーーーーーーーーーーーーーニコニコ生放送切り取り線ーーーーーーーーーーーーーー

    5 ゴロウさん


    息子(ハヤト) :チャンスをうかがって過ごすうち、廃人の中に仲間を見つけた

    回収屋(ゴロウ):よう、お二人さん

    息子(ハヤト) :10056番、ゴロウさんだ

    イクミ   :こんばんはゴロウさん

    息子(ハヤト) :何とこいつはオレや家族をここに連れて来た廃人回収車の元運転手

           そもそもの原因はこいつにある

    回収屋(ゴロウ):あの時は、え~…なんて言ったらいいか…すまなかったな

    イクミ   :ハヤト、廃人回収はゴロウさんの仕事だったんだよ

           家族を食べさせる為に働いていただけ。責めたって仕方ない

    息子(ハヤト) :それはそうだけど…

    イクミ   :印刷業やあの伐採会社よりよっぽど立派な仕事だよ

           私なんかよりよっぽど…

    息子(ハヤト) :イクミは過去を気にし過ぎ

    回収屋(ゴロウ):今の聞いたか馬鹿息子。立派な仕事だってよ

           ねえちゃん良い事言うねぇ

    息子(ハヤト) :いや、オレの人生めちゃくちゃになったのは

           半分くらいお前のせいだ

           廃人回収車さえ家の前を通らなければ

           家族全員平和に暮らしていられたんだ

    回収屋(ゴロウ):無茶言うなよ

           車を走らせる地域やルートを決めたのはオレじゃない、上の奴らだ

           一回謝ったんだからもういいだろう

           え?めんどくせぇ兄ちゃんだな

           済んじまった事をぐだぐだ言っても何にもならんだろうが

    息子(ハヤト) :そうやって自分で開き直るところが癇にさわるんだよ!

    イクミ   :ハヤト!落ち着いて

    息子(ハヤト) :くそっ

    イクミ   :あの…ゴロウさんはお子さんに廃人認定されたんだっけ?

    回収屋(ゴロウ):恥ずかしながらその通りなんで…

    息子(ハヤト) :自業自得だ、ぐーたら親父

    回収屋(ゴロウ):お前だって引き籠りの癖に

           知ってるぞ、そういうのヒッキーって言うんだろ。や~いヒッキー

    息子(ハヤト) :もう違う!青空の下ゴミ拾いしてるだろ!?

           やればできるんだよ、おっさんと違って

    回収屋(ゴロウ):自分のばあさん回収車に乗せやがった奴より、よっぽど人間できてるね!

    息子(ハヤト) :このっ…!

    回収屋(ゴロウ):ばあさん今頃灰になって畑にまかれてんじゃねえのか?

           可哀想に何て孫だ

    息子(ハヤト) :…それを言うなよ、後悔してるんだ

    イクミ   :お互い様だよ

    息子(ハヤト) :こんな奴と一緒にするな

    回収屋(ゴロウ):やめたやめた!ケンカなんかしてる場合か

           もうそろそろ廃人連中がアヤシイ。今にも発狂しそうだぜ

    息子(ハヤト) :無理な外科手術なんてするからだ

           副作用は人格変化 無気力 抑制の欠如 衝動性

           いつ暴走するかわからない

    イクミ   :一人暴れだしたら、きっと全員に伝染するわ 

    息子(ハヤト) :その大混乱に乗じて逃げ出す

    回収屋(ゴロウ):ここは地獄だ。ムショ帰りのオレが言うんだから間違いない

    息子(ハヤト) :ゴロウさん…本当駄目な大人だったんだな

    6 脱出

    イクミ   :二人とも見て…始まった

    回収屋(ゴロウ):うわ…おっかねえ

    息子(ハヤト) :いつも大人しかった廃人達が

           物を壊したり近場の人間を襲っている

           巻き込まれそうだ…ぅわ、危ない!

    イクミ   :早く逃げよう。こっち

    回収屋(ゴロウ):あ、こら!置いていかないでくれー

    息子(ハヤト) :ハァ、ハァ…やっぱり警備が手薄になってる

    回収屋(ゴロウ):このドアを抜ければ晴れて下界だ

    イクミ   :鍵がかかってる

    回収屋(ゴロウ):そんなもん、体当たりしてドアごとぶっ壊しちまえばいいんだ

    息子(ハヤト) :へえ…たまには意見が合うなゴロウさん

    回収屋(ゴロウ):おう。もやしみてえなお前に出来るかどうか分からんから

           二人で同時に体当たりするぞ

    息子(ハヤト) :誰がもやしだこの野郎

    回収屋(ゴロウ):は!図星だろうが

    息子(ハヤト) :一言多いんだよおっさん

    回収屋(ゴロウ):根が素直なんでね

    息子(ハヤト) :何だとこいつ…!

    回収屋(ゴロウ):お?やるか坊主

    イクミ   :ちょっと!こんな時に喧嘩しないで

    息子(ハヤト) :…ああ

    回収屋(ゴロウ):お前との腐れ縁ももうぐ終わりだ。行くぞ!

           うぉおお!

    息子(ハヤト) :だぁああ!(ドア壊れる)

    イクミ   :ああっ、二人とも大丈夫?

    息子(ハヤト) :う、ん…何とか、だいじょ…

    職員    :8810番、10056番、手をあげろ

    息子(ハヤト) :!?

    回収屋(ゴロウ):拳銃だ

    職員    :逃げ出そうとしても無駄ですよ

    息子(ハヤト) :何で…何だって職員が今ここにいるんだ

           あんなに廃人達が騒いでいるのに

    職員    :それは193番に聞けば分かるんじゃないですか?

    息子(ハヤト) :イクミ!?

    回収屋(ゴロウ):おいおい嬢ちゃん…たれこんだのか?

    息子(ハヤト) :おっさんは黙ってろ!イクミがそんな事するか

           罠に決まってる。絶対信じないぞ!

    職員    :ふふ…世間知らずですね、元ニートさんは  

    息子(ハヤト) :うるさい!

    職員    :動くな!発砲しますよ

           193番、のろのろしていないでこっちに来なさい

    イクミ   :ごめんなさい

    息子(ハヤト) :イクミ…

    イクミ   :逃げるなんて無理

    息子(ハヤト) :二人で静かに暮らそうって約束したじゃないか

    回収屋(ゴロウ):あんただけ残ってれば良いだろう。何て事してくれたんだ!

    イクミ   :手術を受けさせてって頼んだの

           そしたら相応の働きをしてからじゃないと駄目だって、この人が…

    回収屋(ゴロウ):くそう、この女!

    イクミ   :私達政府にマークされていたのよ!

           3人が出会った頃から行動が目立ってきて…

           動きが普通の廃人達と違う…しかも何か企んでいるようだって

           遅かれ早かれ処分されていたわ

    職員    :193番はね、どうしても脳外科手術を受けて

           幸せになりたいんだそうですよ

    イクミ   :ハヤトとゴロウさんを捕まえる手引きをすれば手術してくれるって

           そうじゃなかったら死ぬまでゴミ拾いだって

    息子(ハヤト) :一緒に逃げようって言ったじゃないか。イクミだってオレの事

    イクミ   :好きだよ

    息子(ハヤト) :だったら…

    イクミ   :私弱虫なの。逃げて隠れて、それからどうするの?

           政府に追われてどうやって生き延びるつもりなの!?

           そんな生活無理。もう疲れちゃったのよ…ラクになりたいの

    職員    :おしゃべりはその辺にしてください。こっちだって忙しいんです

           脱走の現場を押さえたんですから、あなたたち二人燃料部門行きです

           特に8810番、貴方を洗脳しなかった事が公けになったら

           私の首が飛びかねない…さっさと燃やしてしまいましょう

    回収屋(ゴロウ):おおぉ…オレは手術しただろう!お前らが失敗しただけだ

    息子(ハヤト) :ゴロウさん

    回収屋(ゴロウ):大人しくゴミ拾いに戻るからさぁ、見逃してくれよ!

    息子(ハヤト) :ゴロウさん!

    職員    :何甘い事を言っているんですかこの期におよんで

           焼却処分に決まっているでしょう

    回収屋(ゴロウ):そんな…

    職員    :洗脳措置も失敗する事があるんですね…一万人に一人の確率ですか

           興味深い

    回収屋(ゴロウ):嫌だ!燃やさないでくれぇっ

    イクミ   :廃人が燃やされて灰塵(かいじん)になるのよ

           ふふふ…いいじゃない。ゴロウさんもこれでラクになれるわ

    職員    :往生際が悪い所は何時までたっても変わらないんですねぇ、山本さん

    回収屋(ゴロウ):あ…あぁあ!

    職員    :はいはい暴れない。これも決まりなんですよ

           …うっ、がぁ!(刺される)

    イクミ   :職員さん!

    息子(ハヤト):胸にナイフが…誰だ

    りか    :お父さん!

    回収屋(ゴロウ):りか!?

    りか    :よかったやっと会えた

    職員    :ぐ…、ふっ…!

    りか    :っ!!死んじゃえ!地球政府なんてみんな死んじゃえ!(職員を何回も刺す)

    回収屋(ゴロウ):りか…何でここに

    りか    :お母さんが新しいお父さんを連れてきたの

           政府のお役人さんだよ、優しい人なんだよっ…て

    回収屋(ゴロウ):あいつ再婚したのか

    りか    :でもその人お母さんをぶつ。もう止めてって言っても止めない

           優しいなんて嘘だった

           泣いても謝っても、そいつ怒った顔で近づいてくる

           怖かったよ…怖かったよぅ…

           ぶたれてぶたれて…とうとうお母さん死んじゃった!   

    回収屋(ゴロウ):何だって!

    りか    :私が廃人認定しても引き取ってもらえないの

           政府の人間が廃人のはずないって…

           お前の方こそ認定するぞって脅かされた

           それからはお母さんの代わりに私がずっと叩かれる…

           毎日毎日毎日毎日毎日毎日…!

           あんまり痛いから私我慢できなくて、我慢できなくてその人を…

           その人を包丁で刺しちゃった!

    回収屋(ゴロウ):ひっ!

    りか    :元のお父さんの方がましだった。新しいお父さんよりましだった

           だから私、お父さんを迎えに来たの…

    回収屋(ゴロウ):二人も刺しやがって…今さら何言ってんだ!

           お前のせいでオレは脳みそいじられて、散々ゴミ拾いさせられて

           その上!燃やされるところだったんだぞ!

    りか    :一緒にうちに帰ろう?もう私にはお父さんしかいない…

    回収屋(ゴロウ):うわぁ!返り血で真っ赤じゃねえか!こっちに来るな人殺し!

    息子(ハヤト) :静かに!騒いだら見つかる。もう皆で逃げようよ

           りかちゃんも一緒にさ…今ならきっと

    イクミ   :そうはいかないわ

    息子(ハヤト) :イクミ!

    イクミ   :貴方達を差し出して、私は手術を受ける!

    回収屋(ゴロウ):狂ってる…お前ら全員狂ってるよぉ

    職員    :逃が、し、ません、よ…

    回収屋(ゴロウ):うわぁ!まだ生きてんのか!?

           …う、撃たないでくれ…おい、待てよ、お…っぎゃあぁ!(撃たれる)

    息子(ハヤト) :ゴロウさん…

    職員    :全く…しご、とを増やさ、ない、でくだ…さい

           こんな、事をして、も、手当…着かないんですよ!

    イクミ   :ああぁあ!(撃たれる)

    息子(ハヤト) :イクミ!

    回収屋(ゴロウ):よくもやったなこの野郎。最後の最後で…

           あと少しでシャバに出られるとこだったのによぅ!…っくはぁ…(死亡)

    りか    :嫌…い…や…嫌ああああああああ!お父さあん!

    職員    :私、とした、ことが、大失態、ですよ…ハァハァ…

           こう、なったら…皆さんまとめ、て、燃料になって、もらい、ましょうか

    りか    :…っ!!こいつぅ!死んでって言ったのにいぃ!うあぁあああああ!

           このお!このお!このおおおおおお!(職員をめった刺し)

    職員    :がぁああ!(死亡)

    息子(ハヤト) :イクミ…イクミ!

    イクミ   :ハ、ヤト…あぁ…やっと、ラクに、なれる

    息子(ハヤト) :しっかりしろ!オレ達自由になれるんだぞ!

    イクミ   :ふ…ふふ…まだ、涙が出るん…だね、8810番君…

           ハヤト、は、元気、だなぁ…

    息子(ハヤト) :一人で楽になって、どうするんだよ!?

    イクミ   :ごめ…な、さい…私、弱虫なの…。ごめん…なさ…(死亡)

    息子(ハヤト) :ウソだろ、おい。こんなのって…イクミーーーーーーーーーーー!


    7 生きるってこと


    息子(ハヤト) :有刺鉄線にかこまれた一軒の家がある

    りか    :家の前には立札がある

    息子(ハヤト) :危険!高圧電流と地雷を仕掛けてあります!

           ご用の方は必ずインターホンを押してください

           我々は貴重な友人を失いたくありません

           先日も一人ここでお亡くなりになりました

    りか    :私達は廃人ゴミ処理制度に反対します

           集え、仲間たち。立ち上がれ、地球人!

    息子(ハヤト) :結局イクミとゴロウさんは死んだ

    りか    :私とハヤトは二人で逃げた。血だらけの手と手、つないで逃げた

    息子(ハヤト) :オレ達だけでも生き延びるんだ

           苦しくっても、つらくっても、何が何でも

           それが生きるって事だろう?なあ、イクミ…

    りか    :誰も私をぶったりしない。やっと安心して暮らせるの

           これが自由?これが生きてるって事?

    息子(ハヤト) :オレ達は地球政府に勝てるだろうか

    りか    :分かんない。確かなのは地球上にあと少ししか

           普通の人間がいないって事だけ

    息子(ハヤト) :それよりさ、人間て生きていてもいいんだろうか

    りか    :そんなの…りかには分かんない

    息子(ハヤト) :自然を壊して、空を汚して、他の生き物を死滅させて…

           まるで自分達に不利な環境にわざわざ作り変えている様な

    りか    :それは…えっと

    息子(ハヤト) :このままだったら…人類は絶滅する

    りか    :わかった!

           人間は、次に生まれてくる何かのお母さんになろうとしてるんじゃない?

    息子(ハヤト) :何かって何だよ

    りか    :この環境にぴったりの生物

    息子(ハヤト) :人間でも…動物でもない生物?

    りか    :そうよ。私達、その子たちの為に自分を犠牲にしてるんだわ…

    息子(ハヤト) :りか…

    りか    :素敵なお母さんね。素敵、素敵!

           それだったら絶滅してもいいわ。その方がいいわ。うふふ

    息子(ハヤト) :…今日もどこかで廃人回収車の呼び声が聞こえる

    イクミ役の人:”廃人回収車―、廃人回収車―。こちらは廃人回収車でございます

           ご家庭でいらなくなった廃人はおりませんか…”

    息子(ハヤト) :ここは、廃人の惑星


    終わり

    *この物語はフィクションです。実在の人物、団体、事件等にはいっさい関係ありません*




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