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「十文字曳参のヲタコンテンツ批評」 critique.010「弱虫ペダル」
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「十文字曳参のヲタコンテンツ批評」 critique.010「弱虫ペダル」

2013-11-26 13:00


    【ヲタ評×弱虫ペダル】
    秋葉系男子小野田坂道と自転車競技部の出会いを描く青春系自転車アニメ。なんだか地味な雰囲気だけど、噛めば噛む程面白い、ド直球王道アニメの魅力とは!?



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    弱虫ペダル Vol.1 初回生産限定版


    ヒメ♪ヒメ♪ヒメヒメ大好きヒメ♪

    第十回のテーマはアニメ『弱虫ペダル』

    本作は自転車競技部に入部した秋葉系男子小野田坂道と仲間達の活躍を描く青春自転車アニメである。
    (どーん!)

    本作は週刊少年チャンピオンで連載中の同タイトルをアニメ化した物で、自転車競技部という地味な題材の割にはコミックアニメ共に中々の人気を見せている。

    コミックは雑誌の下積みがあるのでさておき、アニメの人気に関して。漫画のアニメ化は実は中々難しくて、よほど知名度がないとコミックの人気を大きく超えてヒットするのは難しい。某サッカー監督漫画や宇宙飛行士漫画はその展で惜しい結果となっている。

    弱虫ペダルに関しても本来はそこまでヒットする作品ではなかったと僕は見ている。内容の面白さとは関係なく、視聴者の大半は題材とタイトルの雰囲気で視聴するアニメの選別を終えてしまうケースが多いからだ。
    (実例を挙げると、サーバント×サービスを女性向けアニメと勘違いして見なかった人が結構いるのだ)

    弱虫ペダルのスタートが成功した理由は複数あるが、やはり宝島社が出版する『このマンガがすごい!』に選ばれた事が大きいだろう。進撃の巨人ブームの火付け役の一翼を担って以来、このマンガがすごい! はマイナー系マンガにおける安心と信頼の太鼓判のようになっている。

    また、放送前後に行われたコミックスの宣伝も非常に効果的だ。本放送ではまだ見られていないが、マンガ版の宣伝では非常に癖の強いタッチで描かれたキャラクターの大ゴマが使われている。

    個性的でアクの強いあの一枚絵は、人気街道爆進中の進撃の巨人やテラフォーマーズを想起させ、視聴者の安心と興味を大いに引いた事だろう。かくいう僕も、早くあの場面が出てこないかと心待ちにしている一人だったりする。

    と、上記の理由で地味な題材の割りに破格のスタートを切った弱虫ペダルだが、放送内容は肩透かしだ。ファンタジーにしても有り得ない爽やかで前向きなオタクの主人公と、今ひとつパッとしないライバルポジションの友人、瞳孔のかっぴらいたヒロインは自転車オタクの解説ポジションで、しばしばライバルキャラを食ってしまっている。

    話の内容も単調で、前評判や宣伝から予想していたような激しさは見られない。むしろ、当初想定していたものに比べるとあまりにも平凡で地味で爽やかな、王道の見本のような作品だ。

    というのが二話までの感想。勿論、この程度の事で一々見限っていては良作とは出会えない。特にマンガ原作の出だしは編集部との兼ね合いもあって定番の形になりやすいのだ。

    三話以降から大きく化ける、という事はない。けれど、確実に面白くなってはいく。さながら、ゆっくりと加速しながらギアを重くしていくように。このマンガがすごいに選ばれた実績や宣伝に使われた一コマから奇を衒った作品かと思っていたが、本作はむしろ逆だ。

    ヲタクキャラとしては嘘っぽいが、実直で素直で誠実な主人公、ライバルキャラとしては没個性的だが、誇張のない平凡な人間性と当たり前の優しさや向上心を持つ少しだけ不器用なライバル、自転車が好きで好きでたまらない、無理な恋愛属性を持たない変人のヒロインなどなど。

    過剰な演出、過剰な展開、過剰なキャラと、演出過多な作品が多い昨今、弱虫ペダルは地味な題材に真摯に取り組み、平凡すぎてもはや王道から外れつつある古き王道の魅力を再認識させてくれる良作と言えるだろう。

    どこが面白いと言われると非常に難しいが、逆に言うと一部のコアなファンを獲得する為の大きな粗は伺えない。ヲタク非ヲタク関わらず通用する普遍的な熱さが最大の売りと言えるだろう。

    キャラクターとして確立され過ぎていない分、ふとした時に見せる平凡かつ地味な反応が一々人間くさく可愛らしい。実は変人の主人公と、それに振り回されるライバルキャラという構図も回を増す毎にボディーブローのように効いてくる。

    下り坂を駆け下りる為じわじわと坂を上るような構成の本作。最終話にどんな展開が待っているか楽しみで仕方ない!

    それまで待ちきれないという人は、今すぐ本屋に走って原作をゲットだ!




    十文字曳参103.jpg(じゅうもんじ えいさん)
    アニメ、マンガ、ノベル全般を愛する孤高の評論家。
    作家、文筆家としても活躍する。
    ぬこPの依頼で「ヲタクの評価」のコメンテーターに就任。
    「CoTri(当チャンネル)」と「ヲタクの評価」のコラボ企画として、
    不定期で色々な作品について語る予定。


    ヲタクの評価(テスト運営中)
    http://yuruwota.myplayers.jp/


    十文字曳参 著
    SDイラスト こたつねこ

    企画 こたつねこ(ぬこP)
    配信 みらい図書館/ゆるヲタ.jp



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