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「十文字曳参のヲタコンテンツ批評」 critique.026「鬼灯の冷徹」
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「十文字曳参のヲタコンテンツ批評」 critique.026「鬼灯の冷徹」

2014-03-17 13:00

    「十文字曳参のヲタコンテンツ批評」
    http://ch.nicovideo.jp/contri/blomaga/tag/103
     

    【ヲタ評×鬼灯の冷徹】

    人口爆発によって人手不足に悩まされる地獄。閻魔大王に代わって日々膨大な仕事を処理する第一補佐官、ドS鬼神の鬼灯と、地獄の住人の日常を描いた作品。え、能力バトル物じゃなかったんですか!? 地獄系コメディー、鬼灯の冷徹の魅力とは!

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    鬼灯の冷徹 第1巻 【期間限定CD地獄】Aver.(Blu-ray)(外付け特典なし) 



    この世の行い気をつけて~!

    本作はモーニングで好評連載中の漫画、鬼灯の冷徹のアニメ化作品。原作漫画は全国書店員が選んだおすすめコミック2012で一位を受賞している。

    冬アニメ選定の際、本作を腐女子向け能力バトル物と勘違いした人間は少なくない。かくいう筆者もその口である。その手のアニメに多い女性受けするキャラデザと硬派なタイトルに勘違いしたわけだ。

    蓋を開けてみる。開始五秒で勘違いに気づくだろう。鬼灯役を務める安元洋貴氏の口から発せられる軽快な調子の歌と、ずらりと整列する地獄の住民オールスターズ。そこに当初予想していたシリアスな雰囲気はなく、一見してコメディー作品だと気づかされる。

    ここはじ~ご~く~、じ~ご~く~、た~の~し~い~じ~ご~く~

    この歌の歌詞が語る通りの作品である。本作は地獄を題材にしているが、そこに悲壮感はなく、むしろサーバントサービス以上にお役所物の雰囲気がある。閻魔大王は頼りない好々爺で、部下であるはずの鬼灯に日々いびり倒されている。

    そもそも、本作は地獄を題材としていながら、地獄的ではない。勿論、地獄的な要素は常に中心にある。だが、料理の仕方は実に斬新で、オリジナルの解釈に溢れている。地獄と現世の差は薄く、だからこそ現実味があり、些細なエピソードが一々共感を誘う。

    その構造は大ヒット作品、中村光氏著の聖☆お兄さんに近い。どちらも、誰もがなんとなく知っているが、深くは知らない題材を、オリジナリティ溢れる作家性で再構築し、女性作家ならではの本筋に縛られない構成で描いている。主人公の主人公性が薄く、必要とあらば容赦なく脇役に追いやり、客観的描写でキャラクターを掘り下げる手法も、非常に女性的と言える。

    男女平等が叫ばれて久しいが、それでも世の中は男性的だ。アニメや漫画の構造を一つとっても、それは顕著である。男性的な作品の特徴は主人公の主人公らしさだろう。主人公が物語の軸に座り、全てを牽引する。主人公抜きには始まらず、進まない。極端に言うと、それが男性的な物語だ。

    一方、女性的な作品とは、前述したように、主人公はあくまで主要人物程度の意味しか持たず、むしろ作者自身が影の主人公として、箱庭世界を客観的に運営していく構造と言える。

    無論、どちらが良いなどと決め付けるつもりはない。どちらでも、面白ければそれでいい。問題は、男性的な話は理性的過ぎて、起承転結の枷にはまり易いと言う事だ。綺麗な構成と言えば聞こえはいいが、長い歴史の中で培われた壮大な予定調和を演じるだけのアニメは多い。無論、それにはそれの良さがあるのだが、構成の美醜だけを競うようになっては本末転倒だ。

    本作のような、箱庭の中をただ住人が生活するだけの物語。起承転結の枷に囚われず自由にキャラクターが動き回る作品がアニメ化され、多くの視聴者の共感を得ているのは、昨今の脚本構成の美醜ばかり比べる風潮を憂う身として、非常に嬉しい限りである。

    起承転結は大事だが、それはあくまで創作に用いる道具の一つであり、不可欠な骨ではない。その事を忘れてしまえば、創作は自由度を失い、どこかで見た焼き直しのような物ばかりになるだろう。

    と、堅苦しい話が続いたが、本作は面白い。地獄トリビアは勿論、作者である江口氏の生み出した地獄観とそこに息づく獄卒達を見ているだけで、あっという間に三十分が過ぎてしまう。

    女性は勿論、男性にもお勧め出来る作品であり、題材の普遍性から、非オタク世界の住人も親しみやすい、オールジャンルな作品と言える。何かと趣味を共有し辛い男オタクと女オタクである。もしも相手がいるのなら、本作のDVDを購入し、肩を寄せ合って視聴するのもいいだろう。相手がいない方も、本作を見れば最低三十分は独り身の孤独を忘れられる事請け合いだ。



    十文字曳参103.jpg(じゅうもんじ えいさん)
    アニメ、マンガ、ノベル全般を愛する孤高の評論家。
    作家、文筆家としても活躍する。
    ぬこPの依頼で「ヲタクの評価」のコメンテーターに就任。
    「CoTri(当チャンネル)」と「ヲタクの評価」のコラボ企画として、
    不定期で色々な作品について語る予定。


    ヲタクの評価(テスト運営中)
    http://yuruwota.myplayers.jp/


    十文字曳参 著
    SDイラスト こたつねこ

    企画 こたつねこ(ぬこP)
    配信 みらい図書館/ゆるヲタ.jp




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