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2017-09-22 23:15

    昨日に引き続き、植村玄輝・八重樫徹・吉川孝編著『ワードマップ現代現象学』を第2章まで読み進めた。

    「経験の現象学的な分類とは何か」と題された本章の主題は、現象学の方法論としての(記述された)経験の「分析」がどのようなものであるかについて解説することである。
    さて、人間の多様な経験をただ雑多に分析しても、それは学問とは呼べない。優れた人間観察眼を持った作家・占い師・精神科医等が人間に関する深い洞察を得て、それを書籍や論文のうちに書き起こしたとしても、それは学問ではない。それらはあくまで学問の「材料」足り得るだけだ。問題は、学問が一般にその研究対象と方法論によって規定されている以上、「分析の仕方」にも一定の規範が必要とされるという点にある。では現象学な分析とは実際にどのようなものなのか。

    まずそもそも一般論として、分析とは「ある全体の中に区別をもうけること(36頁)」、より正確に言えば「ある全体の中に意義のある仕方で区別をもうけること」である。ここで、意義のある区別には大きく二つの種類が考えられる。一つは「関係的な観点」に基づいた区別、もうひとつが「内在的な観点」に基づいた区別である。前者は、あるものを別のものとの関係において(あるものの関係的特徴によって)区別するものであり、代表的な関係性としては因果関係・動機付け関係・正当化関係・基づけ関係(存在論的依存関係)などがある。後者は、あるもの自身の性質(あるものの内在的な特徴)に基づいた区別である。

    現象学もまたこうした分析(ないし意義のある区別)に関する一般的な考えに従い、経験を「類型的に」区別する(=分類する)。
    ※「分類」=「類(Kategorie)に従って分ける」という言葉の背景に潜むアリストテレス的類概念と、「類型的区別」=「類型(Typus)に従って分ける」という言葉の背後に潜むこの場合とりわけデュルタイ的な類型概念の差異についてはここで解説しないが、以下では後者の「類型的区別」の意味で「分類」という言葉を用いる。
    結果として例えば、知覚・想像・想起・像意識・他者認知・思考・感情・意志・行為が異なる種類の経験として区別される。以下で、もう少し具体的に確認してみよう。
    ※なお補足しておくと、経験の構造的区別として(作用の)質量・性質・所与性の形式を区別する『論理学研究』期のフッサールに従えば、上述の区別はあくまで所与性の形式に関する区別ということになる。

    例えば、知覚は次のような内在的特徴(1-3)および関係的特徴(4-8)を持つ。
    1.「射映」構造をもつ。
    2.対象の現出が意のままにならないという受動性を持つ。
    3.注意が(身体能力の範囲で)自由に変更可能である。
    4.身体運動に連動して知覚内容も連続的に変化する。
    5.時間の変化に連動して知覚内容も連動的に変化する。
    6.知覚には先取りが含まれる。
    7.(6の帰結として、)知覚は充実ないし幻滅する。
    8.(6および7と相関して)知覚は定立的な作用である。すなわち、正しかったり間違っていたりする。知覚が充実される場合、その知覚は錯覚や幻覚ではない真正の知覚であり、その際知覚された対象は現実に存在するであるとみなされる。

    それに対し、想像・想起・像意識・他者認知・思考・感情・意志・行為といった種類の経験は上述のような特徴を(完全には)持たない。というよりも、より正確に言えば、上述のような特徴を持つ種類の経験こそが「知覚」に区分されるのである。従って、例え全能の神であってもその知覚は例えば物の一面しか捉えられないといった射映構造に支配される。もし神が事物の全体を一挙に把握したならば、それは「知覚」とは異なる種類の認識なのである。ここに挙げられた知覚以外の種類の経験の具体的特徴に関しては省略するが(同書2章2節を参照のこと)、最後の一つ注意喚起しておきたいのが、以上の説明が全て「経験の側から」なされているということである。次のような主張、すなわち知覚と想像の違いは「前者が現実のものを見るのに対して、想像は現実に存在しないものを思い浮かべる」という点にある、とするような主張はそもそも何が現実に存在し何が現実に存在しないかが、経験とは独立に予め知られていないければ意味をなさない。この主張の正否そのものはともかく、これは経験の「外側」にあるものを使った経験の分類である。それに対して、現象学的説明は経験それ自体の特徴に従って経験を分類する。

    (上述の文章中の※印は全てブロマガ筆者による補足)


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