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海恵堂異聞:M.c.s. 海探抄之三
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海恵堂異聞:M.c.s. 海探抄之三

2017-07-08 19:00

    「あらあら~、もう時間切れのようね~、あなたの勝ちよ~」


    「はぁ………はぁ………」

     肺が…

    「だいじょうぶ~?」

    「だ、大丈夫じゃ…ありません…ね………」

     綿津見様に作ってもらった"本物の"空気の泡の中に戻って、また呼吸を整える。妹のあやおりちゃんは水を凍らせて剣のような玉を散らしていましたが、このすいめいちゃんは水の中に空気の玉を作って戦います。

    「あれは…あの空気の玉は何なんですか…?」

     ようやく声が音をもって出せるようになって、すいめいちゃんの出していた空気の玉について質問をしてみる。

    「あれは~、私の"水を散らす能力"で~、水を分解した空間です~」

    「水を分解…じゃあやっぱり空気の…?」

    「でも~、あの中には酸素しか残ってないから~………」

     つまり、すいめいちゃんの作った空間は、高濃度・高分圧の酸素だけの空間で、人間が中に入ったら危険なものと言うわけで、私はそれに幾度と無く足を踏み入れていたわけで…

    「私、何で生きてられるんでしょうか………?」

    「うふふ~、あやおりが認めた相手なだけあって、とても楽しかったわ~」

    「こちらは死にそうなんですがそれは」

    「うふふ~、それじゃああなたは次に進まないとね~」

     無視ですか。

     ともかくすいめいちゃんはそう言うと、私のそばに立ってあちらとばかりに手をヒラヒラとさせる。

    「このまま真っ直ぐ行けば、私たちの住み処"海恵堂"が見えてきますから、何も考えず真っ直ぐに進んでください~」

    「かいけいどう…?」

    「はい~。人間的には"龍宮城"に近い場所でしょうか~?」

     果てなく広がる白砂の地面と、視界のはっきりしない海の向こうを指して真っ直ぐと言ったすいめいちゃん。妹のあやおりちゃんの時と同じようにあやふやな説明ですが、これも恐らく"行けば分かる"というものなのでしょうか。

     そして、ここに来てようやく目的が分かってきました。

     町で起きた一連の噂話はあやおりちゃんやすいめいちゃんの行動が原因、その中でまことしやかに囁かれていた"龍宮城"の話は、その二人やその姉妹達が暮らしている"海恵堂"という場所の可能性が高い。つまり、私は噂の解明の為にこれから案内される海恵堂に向かう必要があるようです。

    「それなら、私はすいめいちゃんに勝って、その海恵堂に行くことができると言うわけですね?」

    「どうぞ~」

     柔らかな笑顔で手をひらひらさせながらお見送りをしてくれるすいめいちゃん。私はそれを見届けて案内されたままに先に進もうとした。

    「あ~、そう言えば~、貴女は檍原と言う名前なんですよね~?」

    「あ、はい。改めて紹介させていただきます。私は"檍原 つくし"神様を下ろせる"普通の人間"です」

    「それは、ツッコミ待ちの台詞かしら~?」

     ばれました?

    「あはは…それで、私の名前がどうしたのですか?」

    「いえ~、檍原の名前を持っている貴女が"どうしてここにいるのかな"~って思ったのよ~。貴女はどうしてここにいるの~?」

    「 」


    ……………


     景色の変わらない海底を進むこと小一時間、白砂の地面が急激な下り坂の様相を呈してきました。すいめいちゃんは、深く潜れるようになれば、それが道しるべとも言っていたので、どうやらこの道で正解のようです。

    「………」

     ただ、すいめいちゃんの出した疑問に結局答えを出せずにここまで来てしまいました。一期一会の相手に簡単にお話しできる事じゃないと思ったので…


     今頃、あの人達は私を血眼で探しているのでしょうか

     きっと叔父様達も探しているのでしょう

     いつか、帰ることになるのでしょうか



    「………戻りたくないなぁ」



     上の空で考え事をしながら、海を深く深く進んでいくと、明らかに変わり映えのする景色が目に飛び込んできた。

    「…わぁ」

     規則正しく並んだ灯籠の灯る大回廊、忙しなく動く魚ではない人型の何か、そして山の上にあっても遜色のない、幾階層にものぼる城のような建築物。この一角だけが、深海にありながらさながら城下町のようにきらびやかで絢爛な場所と化している。

    「これが、漁師さん達の噂していた…そして、ここが"海恵堂"………?」

     一歩歩くのも憚られるような美しさに目を奪われる。そして、磨き上げられた石畳に足を落として、左右に広がっている少し背の低い町並みに目を遣る。そこで動き回っていたのは、子どもより小さくて羽根の生えた人型のもの…有り体な言い方をするなら、妖精のようなものだった。

    「妖精に、人魚…これはまるで、幻想の世界のような…」




    「は――――っはっはっはっは!!」




     自分が見ている景色の突拍子も無さに言葉を零していると、水を隔てていることを忘れるような高らかな笑い声が耳を打った。そして、一直線の大回廊の向こう側…おそらく件の海恵堂であろう大きな建物の門前で、腕組みをして構えている少女の姿を確認する。

    「ようやくここまでやって来たしっ!さぁ、アタシと勝負するんだしっ!」

     およそ私と同じくらいの背格好、少し紅色を差した綺麗な金色のショートヘアー、私を見据えるパッチリとした瑠璃色の瞳、それと…悔しいですが私より幾分目立つ身体のライン、どうやら次の相手はこの子のようです。

    「あなたも、あやおりちゃんやすいめいちゃんの姉妹なのですか?」

     私が投げかけた質問に、不遜な笑みを浮かべてその少女は組んでいた両手を大きく開いて、次には自分を指差すように親指を立てた。さながら大仰な演技でもするかのように…

    「いかにもだし!聞いて驚け見て叫べ、アタシはこの海恵堂の最強の門番…海の四女"海 天平"だしっ!」


    無知蒙昧リトル・ハルフゥ
    海 天平/Kai Tenpyou



    「なかなか人間が来なかったから退屈してたし。だからあなたは思いっきり楽しませてもらうし!」

     引き続きの大仰な身振り手振りで、今度は天平…ちゃん?が私を指差した。そして同時に、彼女の周りに歪みのような空間が現われる。球の形で周囲を漂っている何かは、恐らくあの子の能力なのでしょうが、その正体はまだつかめません。

    「アタシの能力は"微振動を操る能力"うかつに触れると壊れちゃうから、死なないように気を付けるんだしぃ?いひひ…」

     あぁ、語るに落ちました。そういう能力のようです。しかしその規模は未知数です。あやおりちゃんやすいめいちゃんはその能力を所狭しと駆使していました。それならその姉になる天平ちゃんの能力も侮れないと…

    「さぁっ!アタシももう全力で準備をしているしっ!アンタも全力でアタシと勝負をするんだしっ!」

     あぁ、語るに落ちました。天平ちゃんの周囲を浮遊している歪んだ物体の数は8つ。つまり、どうあがいても一度にあの8つの歪み分の能力しか出せないと言うことになるのでしょう。それはさておき、この天平ちゃんは、もしかして…

    「…まぁ、侮るべからずですよね。わかりました、ここまで来たらいける所まで行きます。海 天平ちゃん、いざ尋常に勝負をしましょう」

    「いひひっ、さぁ!勝負だしっ!!」

     向こうに対する攻め手も特に考えず、私は天平ちゃんとの勝負に臨んだ。

    ニコニコ動画連動
    道中(海恵堂の天平大路
    ボス(未聞の懐風藻 ~ Oumi's lost page

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