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宴の従者・次「金流・花錦」後編
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宴の従者・次「金流・花錦」後編

2021-05-16 19:00

    「さて、まずは一勝。次も私が完封して2対0で勝つかいなぁ?」

     花錦はそう言いながら、持っていた扇子で付与付与と自分を仰ぐ。金流はそんな余裕綽々の姉にむすっとした表情を見せつつも、どうやって一矢報いてやろうかと冷静に思案していた。

    「前の負けを悔やんでいても仕方ありません。次は次です」

     金流はそう言って立ち上がり、覚悟を決めたかのような表情で花錦を目を合わせる。そして次のカードを懐から取り出して、スペルを発動させた。

    「潔いなぁ、そやったら私もしっかりとお相手せんと、この場を用意してくれた乙姫様に申し訳立ちませんなぁ、じゃあいくで、これが最後のカードや」


    裏符“タテマエメランコリー”

    “八百比流演舞「花錦」破”


    二人のスペルが輝き、金流が周囲に紫色のもやをばらまく、その隙間から、またも金流カラーの金の攻撃、今度は不定の丸ではなく、明瞭な弾丸のような弾、それが先ほど同様奔放に振りまかれ、花錦に近づく。

    「また、表裏一体の攻撃やろか?」

    「それは食らってからのお楽しみです、やぁっ!」

     金流は、鬱蒼とした紫のもやの中で、不自然なほどに陽気に攻撃の手を強めていく。対して花錦はと言うと、先ほどと同じく扇子を持ち、そして虹色の弾幕を発出する。波を成していたさっきとは違い、今度の花錦の攻撃は所謂“線”だった。列を成した虹色の針。そんな物体が直線と反射をもって金流に向かっていく。壁を見つけては反射し、時にはたゆたいながら金流の姿を捉える。

    「おっと…!」

     金流もその攻撃の法則性に気付き、自由に動きながらも花錦の攻撃の流れに気を配っている。

    「このもやもやは何なんやろなぁ?お姉ちゃん気になるんやけどー?」

     軽妙に金流に尋ねる花錦、しかし、それについて金流が答える訳もないし、花錦も答えないだろうと察しは付いている。だからこそ、花錦は、次第に金流を襲う攻撃の手を強めていったのだ。攻撃が苛烈になれば、金流も攻撃の真意を早く出さなければならない。準備の時間など与えてられるわけもないのだ。

    「ふふっ…やっぱり姉さまならそうすると思ってました」

    「さて、そうそう強気でいられる理由もようわからへんけど、どこまで攻撃に耐えられるのかは見ものやね、そろそろ真の力を開放した方がええんちゃうの?」

    「まだだよ、もうちょっと…」

     金流が小さくつぶやくと、花錦は一層攻撃する手を早め、増やしていった。そして、花錦の攻撃は、次第に金流の死角になりうる場所にも飛び始め、金流ものんびりを構えるのをやめた。

    「まだ………もう少し………」

     額にわずかに汗が滲む金流、遠景からもそんな機微を逃さない花錦は、此処で詰めよれば決められると踏んで、一気に攻勢を強めた。金流を目がける23の直線、それらの全ての切っ先が、金流の方を向いた。

    「これで終わりやね」

    「よしっ!!」

     花錦の攻撃は、的になっていた金流に次々と直撃した。





     かのように見えた。

    「ふぅ、視認性が落ちてたから間一髪で何とかなりました」

     金流は地上に降り立ち、先ほどの花錦の攻撃を間一髪で潜り抜けていた。そして、自分が起動したカードをもう一つ取り出して、もう一度スペルを宣言する。

    裏符“ホンネフィリアの濃霧”

     金流がカードを再び起動すると、空間を覆っていたもやが濃くなり、色の紫と相まって周囲が重苦しい空気に包まれていく。舞を踊るようにしていた花錦の目に、金流が映らない程にもやは刻、視界が大きく遮られている。

    「視認性を押さえるスペル?それだけやろか?」

     独白する花錦は、扇子を泳がせて周囲のもやを振り払おうとする。しかし、風にあおられて周りのもやがちょっと晴れるだけで、視界がよくなることはない。そして、晴れないもやとしばらく格闘していた花錦は、もやの向こうに普通ではない気配を感じた。

    「…金流?このもやの奥に弾幕仕掛けて待っとるやろ?」

     もやにまぎれるような色覚の何かが周囲にうろついている。花錦は、金流の性格などを鑑みて、もやのむこうに弾幕を配していると察したのだ。罠のように仕掛けられている何かに、花錦は警戒の糸をぴんと張った。

    「隠すだけの安直な攻撃やったら、私には傷も与えられへんけど、金流の事やからそういう安直難をやりそうにはないなぁ」

     聞こえよがしに声をかける花錦、しかしそれに反応はなかった。花錦は特に口惜しさを感じることもなく、改めて扇子を開き、そしてもやの向こうへ色彩の刃を飛ばして見せた。


    パチン!


    「ん?」

     途端、花錦は何かがはじけたような音がしたのを聞いた。そして瞬間、その弾けた弾こそが罠であったと悟った。

    「なんや…身体が…重い…?」

     花錦は、自分の身体に何かが纏わりついたような重量感を感じた。しかし、それは物理的な重さではない。倦怠感にも近い、自分の内側から出てくる重さ。そして、花錦が振れるとともに、花錦の周囲のもやがうっすらと晴れて、すでに攻撃の手を整え終わった金流が待ち構えていた。

    「この“ホンネフィリアの濃霧”は、精神に作用するトラップを封じ込めた技。相手が道を切り開こうとしたら、罠が発動して、自分の身体の操作を遅らせるスペルなのです。その効果の強さと時間はその者の裏の顔の深さに比例してますので、姉さまは…かなり重い負荷になってる事でしょう」

     現れた金流が、どこか寂しげにも似た顔でそう説明する。裏の顔の深さという計りようもない単位によって行動を縛られる弾幕、これは何が何でも外れとして引きたくないものだ。

    「え?姉さま何か言いました?」

    「私なんも言うとらんよ。それより金流、これで終わりでええんか?」

     体にかかっているであろう負荷で、肩の高さまで上げていた扇子が少しづつ下がっていく。その中で花錦が告げたその一言。その言葉に金流もハッと我に返り、花錦ん最後の攻勢をかけようとする。

    「そうでした、とにもかくにもこれでアタシの勝利、姉さまには申し訳ありませんけどこれにて私は勝ち、試合は引き分けになります!」

     そして、金流が時運の用意していた金色の一発の弾丸を放つ。これで終わりだな、一勝一敗の引き分け

    「かかった」

     異様な予感、それは金流が目の前で対峙していたものではない、それは、花錦ではない。

    「えっ!?」

    いない、今の金流の前に花錦はいない。今までそこにいたのは何だ?そして花錦はいったいどこにいる?完成っしていたすべてが、今まで弾幕を繰り広げていた花錦の姿を探す、そして、それまで花錦だと思っていたものは、雨に流れる泥水のように消えていき、金流がどうにか放った弾丸は宙を切った。

    「まさか…またアタシっ!」

    「せやで?やっぱり詰めが甘いんよな、金流は」

     金流がその声に気付いて、自分のとなりに居た“本物の”花錦にナイフを一つ放たれるまで、その場にいた誰一人しての花錦がそこにいるという事を理解できなかった。

    「うそ…どうして…?」

     倒れゆく金流は、隣に寄り添っていた花錦に疑問だけを残して、静かに倒れていった。

    「今日の花錦“破”はな、悲恋に沈んだ恋人が生き延びていた相手に自分の幻影を見せて。それに狂った相手をずっと隣で見守り、そして最後にその首に手をかけるんよ…つまり、誰にもあんたの隣の私は見えとらんし、誰もがあんたが相手しとった私を眺めていた言う事やね」

     パタリと倒れる金流に、細々と説明する花錦、そして金流のもやは晴れ、弾幕の全てがフェードアウトするように消えていき、この試合が終了したことを静かに告げた。

    「さて、これで私の勝ちやなあ金流」

    「あ………あぁ………」

     花錦は、寝そべって半泣きにしている金流に徐にまたがると、ニコニコとしてその手をワキワキさせて、馬乗りにして身動きの取れない金流の逃げ道を完全にふさぐ。

    「あ~あ、まだまだ金流にはストーリーを深く理解する力はないみたいだねぇ、もうちょっとだけ金流には負けてもらうしかないなぁ、ねぇ?」

     立ち合いである乙姫がそんな一言をだれともなくかけて、空を切った言葉を合図に、この二人のスペルバトルは終了していった。


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