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東方海恵堂、番外編"宴の従者"下ノ一
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東方海恵堂、番外編"宴の従者"下ノ一

2015-08-01 02:05
    ニコニ・コモンズ連動
    道中(龍宮歓待の帳の奥)
    ボス(ミスティ・カレンな深海棲女)

    ガバッ!!

     ようやく弾幕がおさまったと・・・ひと段落つくまもなく私の体は勢いよく押し倒された。そして目の前には幼げながらも人を殺す・・・いや、人を"喰らう"ことを微塵もためらわないような少女の表情があった。

    「ねぇ妹たちいじめた?もしかして泣かせたの?怪我とかさせた?まさか大ケガとかさせてないよね?もしそうなら今ここで私が食べ…」

    「清川やめてやれ。普通の人間に私たちを傷つけることはできない。妹たちも、恐らく今の様に攻撃を避けられただけだろう」

     門の前の人が、私に馬乗りになる彼女に諭す。あわや少女ならざる恐ろしいまでの怪力で首を一捻りされそうになろうとしたところで、私は少女に対して激しく頷いた。

    「そ………そうなんだ…まぁ、確かにさっきからずっと避けてばかりだったね」

     大筋で納得しただろう少女が私から離れる。離れる間際の表情に少し安らいでかわいらしい女の子らしさが垣間見えたが、先の一コマを思い返してすぐにそんな移り気は失せた。

    「ごめんね。私、妹たちが喧嘩してたり怪我したりすると見境なくなっちゃうのよ。けど、どうしてあなたはここに来たの?」

     落ち着いた少女から、疑問が投げ掛けられる。やはり私の存在は誰も理解してはいないようだ

    「あぁ、それなんだけど…亀に連れられてここに来たのに誰も歓迎しないし"カエレ!"としか言われないし、挙げ句うちには亀などいないって…」

    「へぇ」
    「確かに亀という話は私も聞かないな」
    「黒波が知らないなら私も知らないねー」

     門番二人が思案する。やはり亀の事は知らないようだ。何だ、私は亀のような何に乗っていたんだ?

    「…で、まぁ歓迎はいいから早く帰ろうかとここまで案内されてきたんだ」
    「そっかぁ…姉様達なら知ってるかな?」
    「しかし、私の一存ではここは開けれんぞ」

     二人が先に通すか否かと話し合っていると、二人が寄りかかっていた門が内側から開かれて、中から女の子が現れた。


    「それなら私がお通ししましょう」


     扉の奥から金髪なびく新たな少女。こちらにいる二人に比べて背もそこそこ高く、私とやや近い。彼女が顔をのぞかせると、二人の門番は背筋を伸ばして新たな少女に向き直った。

    「あっ!金流姉さん」
    「金流様。今はもてなしの最中では?」
    「今は休憩中、外がなにやら騒がしいとお客様からの言葉がありましたので。お客様、ここからは私(わたくし)がご案内しますわ」


    海恵堂ミスティ・カレン
    金流/Kinryu


     丁寧な物言いの彼女は門番にそう言って、私を扉の奥に手招きした。案内されるがままに門の奥に入ろうとしたとき、後ろに立っていた二人の表情が苦々しかったのをわずかに知覚した。

     扉の奥はあわただしかった。静かではあるが今まで以上に妖精がせわしなく飛び交っている。

    「この通路には衣装部屋と台所と化粧室とその他諸々が詰め込まれております。そのために少々騒がしいことになっていますので・・・」

     そう言って苦笑いを浮かべる。つまりここがこの竜宮城のバックヤードというわけだ。そんなことを思っていると、彼女がこちらを向き直って深々と一礼をした。

    「妹たちが申し訳ありませんでした。私はこの海恵堂の従者の4番目…金流と言います」

     ここに来て初めての自己紹介だった。そして今までの彼女の"妹"にあたる者たちの紹介もついでにしてくれた。

    「とりあえず、元の地上に帰る手続きを姉さんたちと行いましょう。手違いでこちらにいらしたのでしたらさぞご迷惑をおかけしたことと…」

     彼女は恭しく謝辞を述べた。今までの不遜な応対のせいで、今の彼女がとても良心的に見える。私はそんな騒がしくも敬意を持った対応にどこかほだされかけていた・・・しかし、私の前に立っている金流さんが不自然にニコニコしているのに気がついて、その緩んだ空気は不穏をはらみながら晴れていった。

    「ところで…妹たちの攻撃を全て避けるだけでここまで来たのですよね?」

    「…はい」

    「で、休憩もしたし、もう体力大丈夫”よね?"」

    「…いいえ」

    「つまり、私は興味深い人間を私は一人占めできるってことよねっ!」

    「何を言っているのかわかりません」


     金流さんは笑っている。それは柔らかな微みではなく、とても無邪気でにんまりとしている。さっきまでのやさしさのこぼれる笑みではなく、何かを・・・そう、"新しい玩具"を見つけた子どものような・・・そんな笑顔だった。またか、またか。しかもいつのまにか口調も変わっている。

    「だったらアタシの弾も是非避けてみてよ!だーいじょうぶ死にはしないからさっ!」

     さっきまでの敬虔な態度から一変して馴れ馴れしい言葉遣い、今までのよそ行きとは打って変わって快活な表情。何よりも、今までで一番自然な身体の動き。これがさっきまでお客様を案内していた金流さんの本当の姿なのだろう。そして、彼女がタン!と空に跳ね上がると同時に彼女を取り囲む複数の球体を目の当たりにした。どうやら私はまた死に物狂いで逃げなければならないようだ。

    「さっ!アタシの弾幕も、よ~く眼に焼き付けてねっ!」

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