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東方海恵堂、番外編"宴の従者"下ノ二
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東方海恵堂、番外編"宴の従者"下ノ二

2015-08-05 10:00
    ニコニ・コモンズ連動
    道中(舞姫と乙姫の部屋 ~ 1)
    ボス(深海の雨と踊れ ~ Dance of fascination)

    「はい、お疲れさま」


     全ての弾幕が撃ち果たされた時、まるで軽くジョギングでもした後のように彼女が声をかけてくる。こちらはジョギングどころか中東の銃撃戦も冷めるような弾幕に、精も根も尽きかけているというのに…

    「本当に当たりませんでしたね。あなたから運以上の何かを感じますよ」

     少し舌を出しながら、お茶目を装った顔と一致しない振る舞いを見せる。すでに口調も立ち姿も他所向け用である。二面性、げに恐ろしきかな。

    「さて、私の案内はここまでです。後は…」

     彼女はそう言うと、自分の後ろをちらりと振り返った。

    「金流?その方は?」

    「あっ、風花姉さん!」

     彼女の後ろ、いつの間にか壁際にそびえていた大扉から、新たな女性が顔を覗かせていた。金流さんの軽装な格好とはうってかわって、きらびやかな衣装に身を包んだ身の丈高い女性だった。七色と表しても足りない、色と言う色の全てをその身にやつしたような衣、まるでどこぞの歴史書で読んだ十二単を思わせる華やかさがある。


    深海エクスプレッシーヴォ
    風花/Fuuka


    「この人は迷いこんだ放浪人。よくわからないけどここに連れてこられたんだって」

     …と、隣にいる金流さんが伝える。向こうにいる女性はややいぶかしげな顔をしたがすぐに表情をやわめて、扉を開いてその衣の全景を現した。

    「ようこそ海恵堂へ、私は風花(ふうか)…そちらにいる金流の一つ上の姉に当たります」

     そんな恭しい挨拶をするや否や、彼女は何かに呼びかけられるように扉の奥へと振り返る。大扉の向こうに顔を送り込んで、なにやら会話をしているようだが。

    「はい………えっ、こちらにですか!?は、はい…乙姫様がそう仰るのでしたら………」

     なにやら驚きやら困りやら、色んな反応が聞こえてくる。その中で"乙姫様"という言葉も聞こえてきた。これはいよいよ浦島太郎っぽくなってきた。

    「…お客様。私たちの先客から、こちらのお部屋に案内するようにと仰せつかりました。ここからは私がご案内します」

     風花なる女性は、座り込んでいる私をかざし手で案内する。すると風花さんの傍らに立っていた金流さんがジト目で風花さんを見つめながら、

    「風花姉さん、ここが関係者以外立ち入り禁止のバックヤードだって忘れてる上に私はお客様とまで言ってない」

     …とこっそりつぶやいた。風花さんはそれを聞いてハッとすると同時に少し照れくさそうな顔をした。

    「そ、そうでしたか、失礼しました。ですが、先客が申してるのは事実です、どうぞこちらへ」


    ………


     案内されるまま中に入ると、そこは今までのどの部屋よりも広く、そして豪華な場所だった。今までよりはるかに広く、多くの飾り物にあふれている…が、その豪華さとは裏腹に、またさっきの舞台裏の喧騒との対比もあって…この部屋は静かだった。そんな部屋の向こう側に、大きな玉座と小さな少女の姿があった。

    「やあやあ、まさか私以外の客人とはね」


    海恵堂プリンセス
    観福宮 XX/Kanpukugu ()70]-[!|v|£


     玉座に悠々と座る少女はまるで私を待ちかねたような期待のまなざしを私に向けていた。大きな玉座に違いなほど姿は小柄だが、その少女からはぞっとするような雰囲気を感じる。子どもらしいあどけなさも見えるが、幾何学文様の入った着物に自分の認識力を疑いそうになる綺麗な羽衣、さしずめ彼女は、この場所の姫…先ほどの言葉を借りて言うなら"乙姫様"なのだろう。

    「なんだい?おとぎ話でも見るような目をして?」

     まじまじを見つめる私を見て、その少女は怪しげな笑みを浮かべてそう言った。

    「乙姫様、お客人を招くとは言いましたけど、この方をどうしますん?」

     私と少女がそんなやり取りをしていると、少女の傍らにいた女性がたおやかな所作と共に質問を投げ掛ける。風花さんよりもより大人びていて、直感でこの人が風花さんの上の姉妹だと気づいた。


    サーヴァント
    花錦/Hananishiki


    「面白そうじゃない。だってあなたたちの姉妹を倒した人間だよ!前に会ったあの人間たちみたいなすごい人だと思うじゃない!」

     目を爛々と輝かせて大きな女性に語る少女。好奇心旺盛な子供とその母親のような構図だ。次の言葉が出るまでは…

    「きっと風花や花錦も倒せるんじゃないの。ねぇ?」

     どことなく不敵な笑みを浮かべる少女。嫌な予感にはもう慣れたが、この感じは少し違う。この少女は、もしかして…

    「…乙姫様がそない言いはるんやったら…風花、お相手したりぃな」

     余計な考え事をするより早く、向こうに立つ年上の女性が言葉を発した。その言葉に、私のそばで私を案内してくれていた風花さんがビクッと身体ごと飛び跳ねるように反応した。

    「は、はいっ!?わ、わかりまし・・・ましっ・・・た!」

     いきなりの事にかなりうろたえている風花さん。彼女はすぐに私から離れて一歩前へ…そしてツカツカと歩き出して私のまん前に立つ位置で立ち止まる。そして踵を返して私と向かい合うと、そこからさっきまでのおどおどした彼女からは想像できない、凛とした視線が私に突きつけられる。

    「よ、よくわかりませんが…姉さまのご命令です。あなたに恨みはありませんが、この風花…舞い踊りますっ!!」

     そう言うと風花さんはどこに隠し持っていたのかわからない大きな扇子を一組手にすると、それを私に向けて言い放った。どうやら私は、このどこか拙い風花という少女と"踊らされる"ようだ。
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